M&Aでの株主の権利(影響力)は?株主総会の要否・対策を解説

M&Aを実施する場合、株主は大きなカギを握る存在です。株主はM&Aにどのように関わるのでしょうか。この記事では、M&Aの実施を検討している人に向けて、株主がM&Aにおいて行使できる権利やその影響力について解説します。あわせて、M&Aを成功させるための株主対策についても解説するため、ぜひ参考にしてください。

株主とは

株主とは、企業に資金を提供する代わりに株式を取得した人のことです。出資した金額に応じ、企業は株主へ配当金を支払ったり株主優待を行ったりしています。

株主は企業の持ち主の1人であり、企業の経営にも参加できます。企業が重要事項を決める際は、必ず株主総会を開いて株主から同意を得なければなりません。株の扱いや株主の権利については、会社法でくわしく定められています。

M&Aでの株主の権利(影響力)

M&Aにおいて、株主はどのような権利や影響力をもっているのでしょうか。以下でくわしく解説します。

株主の権利は、自益権と共益権に分けられます。自益権とは、出資した企業から経済的な利益を受け取る権利です。株主の自益権としては、利益配当請求権や剰余金配当請求権があげられます。

一方、共益権とは、企業の重要事項の決定に関与し、経営の監督や是正をする権利を表しています。株主の共益権は、株主総会の議決権です。議決権があるため、株主はM&Aの実行に対しても意見できます。

高い持ち株比率を有する株主がいれば、その株主は単独でM&Aを成立させる、あるいは阻止することも可能です。株主は、M&Aに対して大きな影響力をもつ可能性があります。

M&Aと株主総会

M&Aを実施する上で、株主総会の決議が必要な場合と、必要ない場合があります。

株主総会が必要な場合

企業の重要事項を決定する場合、株主総会における特別決議が必要です。M&Aは企業の根幹に関わる重要な手続きであるため、特別決議が必要になる可能性があります。M&Aの実施に関して特別決議を行うべきケースをまとめると、以下のとおりです。

  • 企業のすべての事業を譲渡する場合
  • 子会社株式のすべてまたは一部を譲渡する場合
  • 他社の事業をすべて譲受する場合

このように、譲渡側になるケースだけでなく、譲受側になるケースにおいても株主総会における特別決議が必要となっています。

株主総会が不要な場合

企業がM&Aを実施するとしても、内容によっては株主総会での議決が不要となる場合もあります。企業にとって影響が小さければ、手続きを簡略化しても大きな問題は発生しないからです。株主総会での承認が省略可能なケースをあげると、以下のとおりです。

  • 簡易合併の場合
  • 譲渡側が会社法上の「事業の重要な一部の譲渡」に該当しない場合
  • 譲受側が譲渡側の特別支配会社である場合

株主がM&Aに反対する2つの場合

M&Aが反対されるのは、どのような場合でしょうか。代表的な2つのケースについて解説します。

株式の分散

株式の分散とは、株主が複数いる状態を表しています。株式の分散により経営者以外にも株式を保有している人がいる場合、単独株主権や少数株主権を行使できます。単独株主権は1株以上保有していれば請求できる権利、少数株主権は少ない株式数で請求できる権利のことです。

株式の分散が生じていれば、M&Aを実施しても譲受側はすべての株式を取得できません。よって、単独株主権や少数株主権を行使される可能性に対する懸念を理由とし、譲受側からM&Aを拒まれる恐れがあります。

株主との人間関係

M&Aの成立には株主との人間関係も大きく関わっています。譲渡先と株主の人間関係に配慮しなければ、M&Aを実施できない可能性もあるでしょう。

たとえば、小規模な企業では経営者と株主が密接な関わりをもち、良好な人間関係が築かれているケースも多いです。しかし、M&Aにより経営者が変わると、経営者と株主の関係性も変化します。新しい経営者と株主の人間関係が適切に築かれていない場合、株主は不安になるでしょう。株主が権利を損なうリスクを懸念すれば、株主総会においてM&Aに反対する恐れがあります。

M&A成功のための株主対策3つ

M&Aを成功させるには対策が必要です。ここでは、株主に対する3つの対策について解説します。

1.株主構成を確認する

M&Aの成否は株主が握っているため、具体的な株主構成を確認しましょう。どのような株主がいるかは、企業によって異なるからです。たとえば、経営者がほぼすべての株式を保有している企業もありますが、なかには従業員や取引先などをはじめとし、さまざまな立場の人が株主となっている企業も存在します。

株主構成を把握すれば、M&Aに反対しそうな株主や、M&Aを実施した後の企業経営に影響を与える可能性のある株主なども事前にチェックできます。M&Aを成立させるためにどのような対応が必要か検討しやすくなるでしょう。

2.株主ごとの株式保有数(持株比率)を調査する

株主構成を確認したら、各株主がどれくらいの株式を保有しているか調べましょう。上場企業なら、有価証券報告書に株主の名前や株式保有数が記載されています。

非上場企業であっても、株主名簿を確認すれば株主ごとの株式保有数が分かります。株主名簿は、会社法により作成が義務付けられており、変更があれば必ず更新が必要な書類です。そのため、常に最新の株式保有数が掲載されています。

株式保有数から持ち株比率を確認し、各株主がM&Aの成否に対してどの程度の影響力をもっているか把握しましょう。

株主名簿とは

株主名簿とは、すべての株主の基本情報が記載されている名簿です。株主の名前、住所、株式保有数、株式取得日などが記載されています。会社法では、株主名簿は企業の本店所在地に備える必要があると定められています。株式会社である限り、企業は株主名簿を保管し続けなければなりません。

3.名義株と譲渡制限株式への対策をとる

M&Aに向けた準備を進める中では、名義株と譲渡制限株式への対策も重要です。

名義株とは、株式名簿に記載されている株主と実際の所有者が異なる株式を意味しています。以前は企業を設立するために発起人が7名以上必要だったため、人数が足りない場合は他人から名義のみを借りるケースがありました。名義株の存在は譲受側にとってリスクになるため、事前に株主を明らかにして対応を考えなければなりません。

また、譲渡制限株式とは、株主が譲渡する際に企業の承認が必要な株式のことです。譲渡制限株式については手続きに手間がかかるため、早めに準備を進める必要があります。

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M&Aと株主の権利(影響力)のまとめ

M&Aを成功させるためには、株主についても配慮が必要です。株主構成を確認し、株主がM&Aに対してどの程度の影響をもたらすか考慮したうえで手続きを進めましょう。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社です。事業所内承継や親族内承継などの幅広い選択肢とともにM&Aを検討し、メリット・デメリットを比較したうえで最適な決断ができるようサポートしています。経営コンサルティング経験者も多く在籍しているため、詳細な事業分析に基づいてシナジー(相乗効果)の創出を見込める候補先の紹介が可能です。M&Aをスムーズに進めるために、ぜひ相談してください。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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