事業承継にかかる費用|承継先による違い・税金・コンサル・弁護士等

事業承継にかかる費用には相続税・贈与税などの税金や登記費用、税理士・弁護士・M&A仲介会社等への専門家報酬が含まれます。本記事では費用の全体像、事業承継税制、補助金・低利融資活用による負担軽減策、準備の手順まで分かりやすく解説します。

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事業承継にかかる費用-承継先による違い

事業承継先による費用の違い

事業承継は、誰に引き継ぐのかによって、必要な費用が異なります。ここでは、事業承継の種類とそれぞれに必要な費用について解説します。

親族内承継の費用

オーナー経営者の子供など、親族内で事業を承継するパターンです。一般に、親族外への承継に比べると費用が抑えられるという特徴があります。親族内承継の場合、多くの場合で意識すべきは相続税・贈与税になります。スキームによっては所得税や法人税も検討範囲に入ってきます。

いずれにしても、税金のシミュレーションは複雑であるため、事業承継に詳しい会計事務所やコンサルティング会社に相談することをおすすめします。これらの専門家報酬は、固定報酬、月額報酬またはタイムチャージにより、成果にかかわらず発生します。

社内承継(従業員承継)の費用

親族以外の役員・従業員などから、後継者を選んで事業を継承するパターンです。親族外承継のため、相続税が生じませんが、法人税、所得税、承継スキームに依っては贈与税が主に意識する費用になります。

社内承継の場合、後継者である従業員等が譲り受ける会社資産や自社株の対価を支払うことになりますが、一般に個人資産では賄えないことがほとんどです。この資金問題を解決するためには、MBOスキームなど、専門家のサポートが必要です。専門家報酬は、固定報酬、月額報酬またはタイムチャージにより、成果にかかわらず発生します。

第三者承継(M&A)の費用

第三者(大手企業など)に事業承継するパターンで、いわゆるM&Aです。相続税・贈与税も生じず、多くの場合で所得税だけ(承継スキームによっては法人税)を考えておけば良いです。

一方で、譲渡先を選定する段階から承継の実行(M&Aの成約)まで仲介会社のサポートが欠かせず、その費用が多額になる点に注意が必要です。もっとも、完全成功報酬制を採用するM&A仲介会社に委託すれば、成約まで費用がかかりません。

事業承継にかかる費用(税金)

事業承継では、譲渡企業の経営権を後継者や譲受企業へ移すための手続に伴い、さまざまなコストが発生します。大きく分けると「税金」と「専門家報酬」の二本柱ですが、補助金や低利融資を活用することで負担を抑えられる場合もあります。まず、税金費用の仕組みを見ていきましょう。

相続税

オーナー経営者が死亡し、親族が自社株や事業用資産を引き継ぐ場合に課税されるのが相続税です。相続税の負担は後継者が負担します。

  • 基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。この控除額を遺産総額が下回れば相続税は発生しません。
  • 相続税率は累進課税で、課税価格が高いほど税率が上がります。たとえば課税価格が1,000万円以下なら10%、6億円超なら55%です。
  • 配偶者が取得する財産については1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか高い額まで非課税となる配偶者控除があります。
  • 申告・納税期限は相続開始日(死亡日)の翌日から10か月以内です。延納や物納の制度も利用できますが、計画的な納税資金の確保が欠かせません。

相続税のポイント

  1. 控除額を超えるかどうかを早期に試算する。
  2. 自社株の相続税評価額が大きい場合は事業承継税制の活用を検討する。
  3. 納税資金が不足する場合は延納・物納や低利融資をセットで検討する。

相続税の速算表(主な税率)

  • 課税価格1,000万円以下:税率10%、控除額なし
  • 3,000万円以下:税率15%、控除額50万円
  • 5,000万円以下:税率20%、控除額200万円
  • 1億円以下:税率30%、控除額700万円
  • 2億円以下:税率40%、控除額1,700万円
  • 3億円以下:税率45%、控除額2,700万円
  • 6億円以下:税率50%、控除額4,200万円
  • 6億円超:税率55%、控除額7,200万円

贈与税

経営者が生前に子や孫へ株式や資産を移転する場合には贈与税が課税されます。

  • 基礎控除額は年間110万円。これを超える部分に累進税率(10~55%)が適用されます。
  • 贈与者が直系尊属の場合、特例税率が適用され負担が軽減されることがあります。
  • 申告は贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日に行います。

贈与税のポイント

  1. 小規模な贈与は暦年課税で非課税枠を活用する。
  2. 多額の株式移転は相続時精算課税制度や事業承継税制との比較検討が必須。
  3. 贈与後のキャッシュフローと議決権構成を必ず確認する。

贈与税の速算表(一般税率)

  • 200万円以下:税率10%、控除額なし
  • 300万円以下:税率15%、控除額10万円
  • 400万円以下:税率20%、控除額25万円
  • 600万円以下:税率30%、控除額65万円
  • 1,000万円以下:税率40%、控除額125万円
  • 1,500万円以下:税率45%、控除額175万円
  • 3,000万円以下:税率50%、控除額250万円
  • 3,000万円超:税率55%、控除額400万円

贈与税の速算表(特例税率:直系尊属からの贈与)

  • 200万円以下:税率10%、控除額なし
  • 400万円以下:税率15%、控除額10万円
  • 600万円以下:税率20%、控除額30万円
  • 1,000万円以下:税率30%、控除額90万円
  • 1,500万円以下:税率40%、控除額190万円
  • 3,000万円以下:税率45%、控除額265万円
  • 4,500万円以下:税率50%、控除額415万円
  • 4,500万円超:税率55%、控除額640万円

速算表の使い方(簡単な計算例)

贈与財産価格が1億円の場合(一般):

1億円-基礎控除額110万円=9,890万円(課税価格)
贈与税額は9,890万円×55%-400万円=5,039万5,000円

贈与財産価格が1億円の場合(特例):

1億円-基礎控除額110万円=9,890万円(課税価格)
贈与税額は9,890万円×55%-640万円=4,799万5,000円

このように、基礎控除額を差し引いてから速算表を当てはめることで簡便に税額を計算できます。同じ課税価格でも一般税率と特例税率で負担が大きく変わるため、直系尊属からの贈与かどうかを必ず確認しましょう。

相続税・贈与税の特例

上記の相続税と贈与税については、以下のような軽減または免除の特例が用意されています。

相続時精算課税制度

この制度を選択すると、親(60歳以上)から子・孫(18歳以上)への贈与について2,500万円まで贈与税が非課税になります。超過分は一律20%で課税され、贈与者死亡時に相続税で精算されます。

  • 2024年以降は別途年間110万円の基礎控除が追加され、少額贈与の柔軟性が高まりました。
  • 一度制度を選択すると暦年課税へ戻れない点がデメリットです。
制度利用のポイント
  • 株式評価額が高騰する前に移転することで将来の相続税負担を抑制。
  • 後継者の経営参画時期と贈与時期を合わせ、議決権移行をスムーズに。

事業承継税制(特例措置)

中小企業の非上場株式について、一定要件を満たせば贈与税・相続税の100%が猶予・免除される特例です。

  • 特例承継計画の提出期限は2026年3月31日、対象期間は2018年1月1日~2027年12月31日。
  • 後継者は株式を継続保有し、5年間の雇用継続などの要件を守る必要があります。
  • 猶予された税金は後継者の死亡など一定事由で免除されますが、途中で要件を外れると利子税付きで納付義務が復活します。
特例活用のポイント
  • 早期に計画書を作成し所轄県へ提出する。
  • 複数後継者案がある場合は専門家と議決権比率や役員構成を綿密に設計。
  • 猶予税額を踏まえた資本政策と配当方針を作る。
事業承継税制申請までのステップ
  1. 後継者および承継時期の決定
  2. 株式評価と事業計画の策定
  3. 特例承継計画書を作成し都道府県庁へ提出(2026年3月31日まで)
  4. 株式贈与または相続の実行
  5. 5年間の経営継続要件をモニタリング

書類提出後も毎年の報告が必要となるため、専門家の継続的なサポートを受けながら要件を維持することが成功の鍵となります。

所得税

後継者に自社株を譲渡すれば、一般に、譲渡所得に対して課税が生じます。これは、事業承継先が親族か従業員か第三者(M&A)に拘わらず、発生するコストです。

  • 税率は所得税15.315%+住民税5%の合計20.315%。
  • 譲渡価格から取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡所得が課税対象です。

法人税

基本的に、事業承継において、法人税の課税はありません。M&Aにおいても同様に課税されません。ただし、事業譲渡の場合は、譲渡益に対して法人税が課税されるため、注意が必要です。

法人税の計算イメージ

例えば事業譲渡で譲渡益が2,000万円発生した場合、中小法人であってもこの譲渡益は会社の所得に含まれます。

  • 所得800万円以下の部分:800万円×15%=120万円
  • 所得800万円超の部分:1,200万円×23.2%=278万4,000円
  • 合計法人税額:398万4,000円

ここに地方法人税・法人住民税・事業税が加わるため、実効税率はもう少し高くなります。譲渡益発生の有無は承継スキーム設計の重要ポイントとなるため、会計ファームへの早期相談が不可欠です。

消費税

事業継承の場合、一般に、消費税は課税されません。株式譲渡の場合も非課税ですが、事業譲渡の場合は資産の内容に応じて消費税が課税されるため、譲渡対象の棚卸資産や設備の計上方法に注意が必要です。

消費税がかかるケース・かからないケース

  • 株式譲渡:非課税取引であり消費税負担なし
  • 事業譲渡:棚卸資産や備品の譲渡には標準税率10%または軽減税率8%が課税
  • 不動産譲渡:土地部分は非課税、建物部分は課税対象

消費税は課税資産と非課税資産が混在するため、譲渡対象資産の内訳を個別に精査する必要があります。

登録免許税・不動産取得税

上記以外の税金費用です。不動産を現物で移転させる承継スキームの場合は、特に注意が必要です。

登録免許税

土地所有権移転登記は固定資産評価額の2%、会社合併の移転登記は0.4%、会社分割は2%など。事業承継税制の軽減措置を活用すれば負担を減らせます。

不動産取得税

相続による取得は非課税ですが、生前贈与や事業譲渡による取得には税率3~4%が課税されます。

事業承継にかかる費用(専門家報酬)

税金対策だけでなく、承継プロセス全体を円滑に進めるためには複数の専門家の力が欠かせません。以下では代表的な4種の専門家と報酬体系の特徴を整理します。

税理士・会計士

事業承継でかかる税金の算出は、税理士・会計士への依頼が必要です。税金の算出だけではなく、事業継承に関する業務を、トータルでサポートするサービスもあります。事業継承について、現状分析から完了まで支援を受けることが可能です。

  • 相談料:1時間あたり数千円〜数万円
  • 事業承継計画策定料:数十万〜数百万円。計画の詳細度や将来シミュレーションの範囲で変動
  • 申告書作成料:贈与税・相続税・譲渡所得の申告で数十万円〜数百万円
  • 事業承継税制申請サポート:提出書類作成とフォローで数十万円〜数百万円
  • 自社株評価:数十万円〜数百万円(規模、複雑性による)

すべてパッケージで依頼すると総額で数百万円超になることもあります。

弁護士

弁護士と顧問契約をしていない場合、事業承継の相談に費用が発生します。顧問契約をしている弁護士の場合は、追加で報酬がどの位生じるかはケースバイケースになります。一般に、法的なトラブルを抱える状況でない限りは、事業承継のプロセスで弁護士に依頼する場面は多くありません(もしくは、まったくありません)。

  • 相談料:1時間5,000円〜数万円
  • 着手金:数十万円〜100万円程度
  • 報酬金:トラブル案件を解決した場合は、成果の10%前後が目安
  • 実費:裁判所費用や出張交通費は別途

司法書士

事業承継では、定款変更や役員変更を伴うことが多いため、司法書士への費用が生じます。会社分割や合併を伴う承継スキームの場合には、登記のみならず、一連の手続全般でも司法書士の出番となります。また、事業承継に付随して相続対策も進めるなら、遺言書作成や相続登記が生じる場合があり、これらも司法書士への依頼するのが一般的です。

  • 商業登記:定款変更3万〜10万円、役員変更1万〜5万円が目安
  • 組織再編登記:会社分割・合併は20万〜50万円超
  • 相続登記:不動産の価額や筆数次第で10万〜30万円

M&A仲介会社

第三者承継の場合は、専門家のサポートが必要です。M&Aアドバイザーなどの専門家への依頼は、M&Aの候補先を選定する段階から可能です。

  • 相談料:無料が多い。有料の場合、初回ヒアリングやスキーム提案に対し1時間あたり数万円が相場
  • 着手金:無料が多い。有料の場合、業務開始時に数十万〜数百万円を前払い
  • 中間金:有料の場合、基本合意時など節目で発生することがあり、想定取引価格の10%程度など
  • 成功報酬:取引成立時のみ支払う報酬。取引金額の1〜5%が一般的で、レーマン方式が多用

M&A仲介会社への手数料は、着手金や中間金が不要な「完全成功報酬制」を取り入れている場合も少なくないため、事前に確認しておくことをおすすめします。

事業承継に係る補助金・融資・保証制度の活用

専門家報酬や設備投資資金を一度に負担するとキャッシュが枯渇しかねません。ここでは公的支援策を3つ紹介します。

事業承継・M&A補助金

事業承継・M&A補助金とは、事業承継やM&Aを機に、新たな取り組みを行う中小企業などを支援する制度です。具体的には、事業承継が経営革新や事業転換をともなう場合、M&A時の専門家活用、さらにM&A後の経営統合(PMI)に関する経費の一部が補助されます。ただし、書類などの事前準備において経営に関する実績や知識が必要であるため、ハードルが高いといえるでしょう。

日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫には、低利で利用できる融資制度が用意されています。事業継承を検討している中小企業への融資や、再建資金としての企業再生貸付などがあります。具体的には、「事業承継・集約・活性化支援資金(企業活力強化貸付)」を提供しています。この融資は、事業承継やM&Aに取り組む組織をサポートするために作られました。事業承継を実施する場合や、事業承継をきっかけに、新たに事業などを始める場合にあたって、必要な設備資金や運転資金、株式取得のための資金として活用できます。

中小企業庁による支援

中小企業庁は、事業承継の際受けられる融資や保証の制度を事業承継の支援策として設けています。これらの融資や保証は、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)がもとになって提供されているものです。前述の日本政策金融公庫が提供する融資は、この法律の一環として提供されています。保証については、信用保証協会の通常枠とは別枠で保証が得られるため、金融機関の融資ハードルを下げられます。保証枠の利用可否は金融機関と保証協会の審査結果次第となるため、早めに相談ルートを確保しておくことが重要です。

専門家と二人三脚で進める、事業承継コンサルティング

事業承継は経営者にとって避けては通れない経営課題です。みつきコンサルティングでは、母体である「みつき税理士法人」と連携し、公認会計士・税理士などの専門家チームが、親族内承継から第三者承継まで、あらゆる選択肢に対応可能です。経験豊富なプロフェッショナルが、企業価値の算定から後継者育成まで、一貫してサポート。ご相談は無料で承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

事業承継にかかる費用のまとめ

事業承継には相続税・贈与税・登録免許税など多様な税金と専門家報酬が伴い、中小企業にとって大きな負担となり得ます。本記事で紹介した税制特例や補助金・低利融資を適切に組み合わせることで、費用を抑えつつ円滑な承継を実現させてください。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループであることから、M&A(第三者への継承)ありきの提案ではなく、事業所内継承、親族内継承など複数の選択肢のメリット・デメリットを比較できます。事業継承を検討している人は、みつきコンサルティングに、ぜひご相談ください。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人

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