会社売却(株式譲渡)の流れ|相談から成約までの手順と法務手続

後継者がいない、単独成長に限界を感じる。そんなオーナー経営者がM&Aで会社を引き継ぐとき、初回相談からクロージングまで何が起きるのか。各段階でやるべきことと、譲渡承認や株主名簿の書き換えといった実務まで、初めての方にも分かるよう道筋を整理しました。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。

会社売却(株式譲渡)の流れを一枚で把握する

「何から手をつければいいのか」。会社売却を考え始めたオーナー経営者が、最初にぶつかる壁です。まずは全体像をつかみましょう。

株式譲渡による会社売却の手続きと流れ(譲渡制限の確認から代金決済までの6ステップ)

会社の株式をまとめて譲り渡し、経営権ごと第三者へ引き継ぐ。これが株式譲渡による会社売却です。中小企業のM&Aでは、9割近くがこの方式で進みます。手法そのものの土台は株式譲渡の仕組みで整理しています。

相談から成約までの大きな流れ

進み方は、おおむね決まっています。準備、相手探し、交渉、調査、契約、決済。6つの山を順に越えていくイメージで捉えると見通しが立ちます。国の中小M&Aガイドラインでも、進め方がフロー図で示されています。

下表は、各段階の中身と、譲渡オーナーが担う役割をまとめたものです。

段階主な内容譲渡オーナーの主な役割
1 準備・相談目的の整理、価値の把握、専門家への相談決算書の準備、希望条件の整理
2 相手探し候補のリスト化、ノンネームでの打診開示範囲の確認
3 交渉・基本合意トップ面談、条件のすり合わせ理念や従業員処遇の説明
4 デューデリジェンス譲受企業による精査資料提出、質問対応
5 最終契約株式譲渡契約(SPA)の締結表明保証の内容確認
6 クロージング決済と株式の引き渡し、法務手続名義書換などの実行

全体にかかる期間の目安

半年から1年が一つの目安になります。相手が早く決まる案件もあれば、条件交渉に時間を要する案件も。焦って妥協するより、納得できる相手を待つ姿勢が結果につながります。

段階別に見る会社売却の進め方

ここからは6つの段階を一つずつ追います。各段階で「譲渡オーナーが何を判断するのか」に注目すると、流れが頭に入りやすくなります。

準備と相手探し

出発点は、売却の目的をはっきりさせること。引退して創業者利益を手にしたいのか、大手の傘下で事業を伸ばしたいのか。目的が違えば、ふさわしい相手も変わってきます。

ノンネームでの打診

候補企業には、社名を伏せた資料(ノンネームシート)から打診します。業種や規模、おおまかな財務だけを示し、関心の有無を探る段階です。情報が漏れないよう、開示は一段ずつ慎重に進めます。

秘密保持契約(NDA)の締結

関心を示した相手とは、まず秘密保持契約を結びます。社名や詳しい決算を開示する前の、いわば入口の関門。ここを通って初めて、企業概要書による具体的な検討が始まります。

トップ面談と基本合意

経営者同士が顔を合わせるトップ面談は、数字に表れない相性を確かめる場です。理念や社風が合うか。従業員を大切にしてくれるか。手応えがあれば、譲渡価格やスケジュールの大枠を基本合意書にまとめます。

基本合意は最終契約ではない

多くの基本合意は法的拘束力を持ちません。独占交渉権など、一部の条項だけが拘束力を持つ形が一般的です。後の調査しだいで条件が動く前提で読むのが安全でしょう。

デューデリジェンス(DD)への対応

基本合意のあと、譲受企業が財務・法務・税務・労務を精査します。これがデューデリジェンスです。譲渡オーナー側は、求められた資料をそろえ、質問に正直に答えていきます。

支援現場でよく見るのは、簿外の貸付や、個人と会社のお金の混在がこの段階で表に出るケース。意外と多い落とし穴です。隠さず先に伝えたほうが、結果的に信頼につながります。

最終契約(SPA)の締結

調査結果をふまえ、最終的な価格と条件を詰めます。これを契約書にしたものが株式譲渡契約(SPA)。表明保証や補償の範囲は、後のトラブルを大きく左右します。条項の詰め方は株式譲渡契約書の記載事項で確認できます。

クロージング(決済・引き渡し)

最後は決済です。譲受企業が代金を払い、譲渡オーナーが株式を引き渡す。これを同じ日に同時に行います。あわせて、次に述べる法務手続も済ませるのが通例です。

クロージングで行う株式譲渡の法務手続

ここからは、株式の名義を正式に移すための段取りです。かつて「株式譲渡 手続」を調べていた方が知りたかった、会社法上の流れにあたります。手続でそろえる書類は株式譲渡の必要書類にまとめています。

株式譲渡による会社売却の手続きと承認・名簿書換のフロー図

譲渡制限の確認

中小企業の株式は、たいてい定款で譲渡が制限されています。勝手に第三者へ売れない仕組みです。まずは自社が譲渡制限のある会社かどうかを、定款で確かめるところから始めます。

譲渡承認請求と承認決議

制限がある場合、会社へ承認を求めます。株主が「この相手にこの株数を譲りたい」と請求する流れです(会社法136条)。請求書の作り方は承認請求書の書き方を参考にしてください。

承認は誰が決めるか

取締役会があれば取締役会、なければ株主総会で承認を決議します(会社法139条)。会社が請求から2週間以内に通知しなければ、承認したものとみなされる点も覚えておきたいところ(会社法145条)。条文はe-Gov法令検索の会社法で確認できます。

株主名簿の書き換え

承認のあと、譲受人と共同で株主名簿の書き換えを請求します(会社法133条)。会社が名簿を書き換えて、ようやく株主としての権利が正式に移る。中小企業の多くは株券を発行していないため、この名簿書換が移転の決め手になります。

下表に、法務手続の流れと根拠条文を並べました。

ステップ内容根拠
譲渡承認請求譲りたい株数と相手を会社へ請求会社法136条
承認決議取締役会または株主総会で可否を決定会社法139条
結果の通知請求から2週間以内に会社が通知会社法145条
名簿書換譲受人と共同で書き換えを請求会社法133条

会社売却で個人にかかる税金の基本

流れと並んで気になるのが、手元にいくら残るか。株式を売ったオーナー個人には、譲渡益に対して税金がかかります。

個人が株式の譲渡で得た利益は、申告分離課税の対象です。税率は20.315%。内訳は所得税15.315%と住民税5%で、ほかの所得とは分けて計算します。詳しくは国税庁の株式等を譲渡したときの課税に整理されています。

譲渡益は「売却代金から取得費と譲渡費用を引いた額」で求めます。取得費が分からないときの扱いも含め、計算の細部は株式譲渡にかかる税金でまとめています。

会社売却をスムーズに進めるためのチェックリスト

段取りを誤ると、交渉が止まったり価格が下がったりします。準備段階で押さえておきたい項目を、現場の感覚で並べました。

  • 直近3期分の決算書と試算表を、すぐ出せる状態にしておく
  • 株主名簿と定款を最新に整え、譲渡制限の有無を確認する
  • 個人と会社で混在している資産や貸付を洗い出す
  • 主要取引先や金融機関との契約に、経営者交代を制限する条項がないか確認する
  • 個人保証の引き継ぎ方針を、金融機関と早めに相談する
  • 従業員や役員へ、いつ・どう伝えるかの段取りを決めておく

流れの中で見落としやすい論点

教科書どおりに進めても、つまずく場所は決まっています。支援現場で繰り返し見てきた落とし穴を挙げます。

情報が漏れて従業員が動揺する

売却の検討が早い段階で社内に伝わると、不安から離職が出ることがあります。開示の順番とタイミングは、相手探しを始める前に決めておきましょう。

個人保証の解除が後回しになる

借入のある会社では、社長個人の保証がほぼ必ず付いています。これが残ったままだと、引退しても責任は消えません。保証の引き継ぎは、価格と同じくらい重い交渉項目です。

ある製造業A社のケース

年商10億円ほどの製造業A社。後継者不在で第三者承継を選びました。準備段階で簿外の役員貸付が見つかり、DDで指摘される前に自ら開示。結果、信頼を損なわず、想定どおりの価格で成約に至りました。

会社売却(株式譲渡)の流れに関するFAQ

相談の場でよく挙がる質問をまとめました。個別事情で答えが変わるものは、その前提も添えています。

Q:売り手は何から準備すればよいですか

現場ではまず決算書と株主名簿の確認から入ります。譲渡制限の有無、株主構成、借入と個人保証の状況。この3点が整理できていると、相談から先の動きが軽くなります。

Q:親族へ株式を譲る場合も同じ流れですか

大枠は似ていますが、価格の決め方が変わります。親族間では税務上の評価額が問われやすく、贈与とみなされないかの確認も要ります。家族への承継は、第三者へのM&Aとは別の注意点があると考えてください。

Q:基本合意を結んだら、もう後戻りできませんか

多くの基本合意は法的拘束力を持ちません。DDの結果しだいで条件が変わることも、破談になることもあります。ただし独占交渉権などは拘束力を持つため、契約条項次第です。

Q:クロージングまでどれくらいかかりますか

半年から1年が目安です。相手探しに時間がかかる場合も、DDで論点が出て延びる場合もあります。スケジュールありきで動くより、論点を一つずつ片付ける進め方が安全でしょう。

Q:株券を発行していない会社でも買収できますか

できます。中小企業の多くは株券を発行していません。その場合は株主名簿の書き換えが権利移転の決め手です。株券のある古い会社では、交付の手続が別途必要になります。

まとめ|会社売却の流れを押さえて納得のいく承継を

会社売却(株式譲渡)は、準備から相手探し、基本合意、DD、最終契約、クロージングへと進み、最後に承認請求や株主名簿の書き換えで締めくくります。初めての決断に迷いはつきものですが、流れを先に知っておくだけで、見通しは大きく変わります。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループに属するM&A仲介会社です。中小企業の事業承継・会社売却を数多く支援してきた経験から、税務まで含めて一貫してサポートします。本格検討の前段階でも、まずは状況をお聞かせください。

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著者

潟野 和徳
潟野 和徳名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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