人口構造の変化、都市部への一極集中、働き方の多様性など様々な理由で、多くの中小企業が後継者不足の課題を抱えております。その後継者課題の対応策として、第三者への事業承継(M&A)が増加しています。
この記事では、中小企業におけるM&Aの現状、方法、成功のポイントなどについて解説します。また中小企業のM&Aにおける成功事例についても紹介しておりますので参考にしてください。
1.中小企業M&Aとは?
中小企業の定義
中小企業基本法において、業種により区別され、企業の資本金もしくは出資金と、常時使用する従業員数によって定義されます。
業種 | 定義 |
---|---|
製造業その他 | 資本金・出資金の総額が3億円以下の会社 または常時使用する従業員数が300人以下の会社および個人 |
卸売業 | 資本金・出資金の総額が1億円以下の会社 または常時使用する従業員数が100人以下の会社および個人 |
小売業 | 資本金・出資金の総額が5,000万円以下の会社 または常時使用する従業員数が50人以下の会社および個人 |
サービス業 | 資本金・出資金の総額が5,000万円以下の会社 または常時使用する従業員数が100人以下の会社および個人 |
参考:中小企業庁
M&Aとは?
M&Aとは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略です。M&Aの意味は、法人同士の合併または買収のことを意味します。2つ以上の法人が一つの法人に統合されたり(合併)、ある法人が他の法人を買い、子会社化すること(買収)です。以前のM&Aのイメージは、会社が乗っ取られるという、ネガティブなイメージが強かったですが、最近では企業の成長戦略や事業承継の選択肢として認知されてきていおります。
▷関連:M&Aの意味は?似た略語との違い、種類・目的・増加理由などを解説
2.中小企業M&Aの現状
経営者の高齢化により休廃業する中小企業が増加
帝国データバンクの調査によると、2022年の休廃業・解散件数は、全国53,426件で、前年度により減少しているものの高水準であると言えます。その中でも54.3%の企業が黒字休廃業、高齢経営者を理由とする休廃業の平均年齢が75歳となり黒字経営にもかかわらず経営者の高齢化を理由に休廃業する中小企業が増えています。
参考:帝国データバンク
後継者問題の解決策として中小企業のM&Aが増加
独立行政法人中小企業基盤整備機構に公表によると、令和4年度の全国の事業承継・引継ぎ支援センターへの相談者数は、22,361者(前年度比107%)、M&A(第三者承継)の成約数は、1,681件(前年度比111%)となっており、相談者・成約数数ともに過去最高件数。中小企業の後継者問題解決策として、M&Aが増加していることがうかがえます。
国が支援体制を整備し中小企業のM&Aを推進
国としても、中小企業の事業承継が円滑に進む為の支援様々な支援を行っており、事業承継の選択肢である第三者承継(M&A)についても、支援機関の強化や補助金、税制優遇措置の拡充など支援体制を整備しております。具体的には以下が挙げられます。
中小企業が安心してM&Aに取り組める為の基盤として、支援機関登録制度
M&Aの基本的な事項や手数料目安、M&A業者に対しての行動指針の提示の為、「中小M&Aガイドライン」策定
事業承継引継ぎ補助金の設置(事業承継やM&A)
参考:事業承継・引継ぎ補助金
経営資源の集約化(M&A)によって生産性向上等を目指す、経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、計画に基づいてM&Aを実施した場合の減税・準備金の積立
参考:中小企業庁「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用について」
3.中小企業M&Aが増加する背景
後継者のいない企業の事業継承手段
後継者のいない中小企業の事業承継手段として、第三者への事業承継を目的にM&Aの活用が増えております。
その背景には、廃業・解散することにより今までお世話になった取引先に迷惑をかけたくない、一緒に頑張ってきた従業員の雇用を守りたい、今まで培ってきた歴史と技術を継続させたいなど廃業・解散する際の課題解決の策としても有効であることが理由の一つです。
また、M&Aによる売却利益の獲得でリタイア後の生活費に充てることや、他の事業への投資、借入金に係る個人保証の免責など経済的対価を獲得できることでもM&Aは合理的な事業承継の手段と言えます。
人材・設備などの集約による生産性の向上
限られたリソースでの事業展開してきた中小企業が、人材や生産設備などの経営資源の引継ぎで生産性の向上が見込めることや、異業種企業が経営資源を引き継ぐことによる新規ビジネス参入時のリスク軽減効果が期待できることから、国としても中小企業のM&Aにおける支援の強化や補助金、税制優遇措置の拡充など支援体制を整備を行っています。
▷関連:経営戦略におけるM&Aとは?経営戦略の流れや目的、事例を解説
4.中小企業M&Aの成功事例5選
1.感染症の影響で閉店した豆腐店の承継により事業多角化に挑んだ中小企業
深山豆腐店は、伝統食材「石豆腐」を製造・販売する豆腐店で、新型コロナウイルスの影響による売上減少・また店主の高齢化も手伝い廃業することになる。そんな中、店主よりヒダカラへ事業を引き取ってもらえないかと冗談交じりでお話があり、伝統食材を絶やす訳にはいかないとの思いで事業承継を決意。クラウドファンディングで設備費用を集め、テイクアウトやイートインに対応する店舗へリニューアルし事業を展開している。伝統を守りながら事業の多角化に挑戦している。
2.長年愛される地元の味を守り続けている中小企業
岩手県花巻で1955年から続く老舗の餃子屋「夜来香(イエライシャン)」の店主が、自身の年齢が75歳を迎え事業承継を検討していた。地元の良いものを残していきたいと考えていた上町家守舎社長は、店主へ事業承継(M&A)を打診。他の候補先があったものの、事業への取り組み姿勢や味を守りぬくという固い決意を感じ同社への事業承継(M&A)を決意。事業承継後は、テイクアウトの対応の為、製造体制の強化・譲受側の飲食店事業とのコラボなどで売上を2.5倍に伸ばしている。
3.M&Aにより地元企業同士のグループ会社化により事業拡大を図る中小企業
長崎県長崎市の不動技研工業は、2018年に過去最高益を計上したが、脱炭素を目指す世界的潮流や主力事業である火力発電事業の先細りが懸念され、新規顧客の開拓や新規事業への進出などの検討をしていた。同じく長崎県のPAL構造も好業績を維持しながらも後継者不在による、事業承継課題を抱えており、不動技研工業へM&Aの声掛けを行い交渉が開始された。PA構造の経営陣や従業員の継続雇用、当面は事業内容の変更をしないことなどを条件にM&Aが成立。共に大手重工・エンジニアリングメーカーを顧客とするが、得意分野のすみ分けがでていること、今までは専門外として取れなかった仕事も両社の機能を活用し受注に至るなどグループシナジーが見込まれている。
4.M&Aによる成長戦略で首都圏進出を加速させた中小企業
島根県浜田市のタカハシ包装センターは、食品加工業者や食品スーパーへ包装資材の卸業と営んでいたが、人口減少による地域市場の縮小もあり、首都圏市場への進出を検討。本格的に進出を試みたが、地元志向の従業員が多く、首都圏への人材配置が難しかった。そこでM&Aを活用し首都圏での経営資源を獲得すべく動き出した。そんな中、食品業界に顧客を持つキョウワと出会い、M&Aの交渉を始めた。異業種であるものの商圏・顧客業界などは条件を満たしており、若さと真面目さを感じる社風に感銘受けM&Aが成立。キョウワの経営資源を活用し首都圏市場への足掛かりとなり、手ごたえを感じている。
5.業績不振の同業他社からの事業・従業員の引き継ぎにより事業多角化を実現した中小企業
日測は、埼玉県中小企業再生支援協議会が策定支援した再生計画に基づき、事業譲渡先を公募。かつての発注元であったエミックは、協力会社の手助けになるのであればとの思いと、注力していた受託試験事業に強みを持つ企業であったことあり、入札に参加し落札。受託試験事業と特殊チャンバーの製造販売事業をエミックが譲受した。エミックの受託試験事業の利益は2倍に拡大、景気に左右されにくい特殊チャンバーがサービスラインに加わったことにより経営の安定化にもつながった。また、文化の違う従業員同士が交わることにより切磋琢磨が生まれ、M&Aによる人材育成の効果も感じている。
参考:2021年版 中小企業白書(M&Aを通じた経営資源の有効活用)|中小企業庁
参考:2022年版 中小企業白書(経営資源の有効活用)|中小企業庁
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5.中小企業M&A 売り手のメリット
1.経営者保証を引き継いでもらえる
経営者が、事業承継を進めることを躊躇する理由の一つに経営者の保証があります。中小企業では経営者が債務の連帯保証人となっている場合が多く、後継者に債務保証を引き継ぐことができるのか、債務保証引継ぎ後、事業運営は大丈夫なのかなど心配ごとはつきません。また、後継者がいない中で会社を清算した場合、会社の状況によっては債務のみが残る可能性もあります。M&Aによる事業承継では、個人保証の免責を条件とすることが可能で、事業と合わせて経営者の保証債務の整理もできることも大きなメリットの一つです。
2.後継者問題を解決できる
後継者不在、後継者の経営力不安など様々な後継者問題があります。M&Aはこれらの後継者問題の解決策として最も合理的で有効な手段と言えます。親族内・自社社員などから後継者を探すも担い手がいない場合は、第三者への事業承継(M&A)により会社を引き継いでもらうことで解決します。また、後継者はいるものの経営能力に不安を感じる場合、後継者は事業に残しつつ経営支援を受ける為、M&Aにて経営権を譲渡することで後継者の負担を軽くすることも可能です。
3.従業員の雇用を安定させられる
M&Aにより会社を存続させることができれば、従業員の雇用を守れます。地方においては、地域の雇用を守る意味でも重要な役割だと感じます。また、多くのM&Aが対象会社よりも資金力や経営能力のある相手先を選ばれる傾向にあり、雇用の安定や福利厚生の向上などが見込まれます。
4.売却益を得られる
M&Aは、業績不振に陥った企業が従業員の雇用や債務保証の免責を目的として実施されるケースもありますが、優良企業や成長企業など事業継続が今後も可能な企業がM&Aを実施するケースがほとんどです。業績のよい企業は企業価値が高い為、対象株主はM&Aにより多くの売却対価を得ることが可能です。
▷関連:M&Aのメリット・デメリットとは?売り手・買い手に分けて解説
6.中小企業M&Aの課題
希望価格以下での売却になる可能性
譲渡側は高く売却したく、譲受側は安く買収したいという意識が働く為、必ずしも希望価額での売却で成約するとは限りません。譲受側は、決算書を元に資産の含み損益や未払い残業・税金の有無を検証し、最終的な売却価額が決定されます。希望価額での売却の為には、資金余力のある譲受会社をみつけることはもちろんのこと、複数社の候補先をみつけ競わせることも有効です。
従業員の雇用条件が変わる可能性
M&A後の従業員の処遇については法令違反や社会通念上相当のものを除き原則、譲渡前の水準が維持されることがほとんどです。よって雇用の安定化や処遇改善等のメリットがあります。しかしながら、譲渡側の社員と譲受側から派遣される人材との関係性や譲受側の譲渡後の関わり方により、譲渡側従業員との摩擦や古株人材の退職などを誘発することがありますので、M&A後も当面は前経営者が従業員と譲受側人材の橋渡し役になることが重要です。
取引先との関係性が悪くなる可能性
譲渡側の取引先は、現経営者が長年培ってきた信用のもとお付き合いされていることが多くM&Aによって経営者や担当者が変更になることを良く思わない取引先や、優良顧客が離れてしまうことも考えられます。取引企業との基本契約を確認の上、譲渡側と譲受側が一緒に説明に行くなど、M&A後の丁寧な引継ぎが大事だと言えます。
7.中小企業M&Aの流れ
譲渡企業におけるM&Aの検討から実行までの手続きとしては、下記のような流れになりま
す。業種や企業規模、譲渡側オーナーの意思決定スピードや条件に合う譲受候補先に出会えるかなどにより、M&A完了までの期間は様々ですが、中小企業におけるM&Aでは6カ月~1年間ほどの期間が多いようです。
- M&Aの検討開始
- M&Aスキーム(手法)の決定
- M&Aの譲受企業の選定
- 譲受企業とのトップ面談
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- 譲渡代金の受領・M&Aの完了
▷関連:M&Aのフロー|一般的なM&Aの流れを分かり易く解説
8.中小企業M&Aの方法
M&Aのスキームとは、M&Aを実行する際の手法(株式譲渡・事業譲渡・吸収合併など)のこと言います。譲渡側のM&Aの目的やM&A対象資産、事業の特性や事業に必要な許認可などを考慮しM&Aスキームを検討します。M&Aスキームによって譲渡側の獲得できる利益が異なったり、税務・会計上のメリット・デメリットがあったりしますので、専門家に相談しながら最適なM&Aスキームを決定することが大切です。
1.株式取得・資本参加
M&Aとは、法人同士の合併または買収のことを意味しており、合併や買収の方法として株式取得と資本参加という形態がとられます。代表的なM&Aスキームを説明します。
株式譲渡
譲渡企業の株式を、譲受企業が買収することで経営権を獲得するスキームとなります。譲渡企業の株主が変更するのみで、譲渡企業に付随する資産・負債、権利・義務がすべて引き継がれるのが特徴です。譲受側が譲渡側に株式対価として現金を支払うことにより完了します。
▷関連:中小企業の株式譲渡とは?確認事項やメリット・デメリットを解説
株式交換
譲渡企業の発行済み株式のすべてを譲受企業が取得する為、その対価として譲受企業の発行済み株式を交付するM&Aスキームのことを言います。完全子会社を図る際に使われるスキームですが、譲受側が非上場会社の場合は、非上場株式の現金化が難しい為、あまり使われないスキームです。
第三者割当増資
譲渡企業が、自社の新しく発行する株式を特定の第三者(譲受企業)に交付するM&Aスキームのことを言います。業務提携における関係性の強化や資金調達方法の一つとして用いられるスキームで、M&Aを成長戦略として検討する譲渡企業で多く実施されています。
2.事業譲渡・資産買収
事業譲渡・資産買収とは、譲渡企業の経営権ではなく、事業や資産の一部または全部を売買するM&Aスキームのことを言います。
事業譲渡
譲渡企業が持つ事業の一部またはすべてを譲受企業が引継ぐスキームを言います。譲受企業は対価として現金を支払います。譲渡側または譲受側が引き継ぎたい資産や負債、各種契約など指定して譲渡することができますが、権利・義務は引き継がれない為、事業に必要な権利・義務の再取得が必要となります。
吸収分割
譲渡企業が持つ事業に付随する権利義務の一部またはすべてを譲受企業へ引き継ぐスキームを言います。譲受企業は、譲渡対価としては自社株式の交付や現金で支払います。事業譲渡と違い引継ぎ対象となる事業に付随する権利・義務の移転手続きが必要ないことが特徴です。
新設分割
譲渡企業の事業に付随する権利義務の全部または一部を新たに設立した会社に引継ぎ、その引き継いだ会社を譲渡するスキームです。事業に付随する権利義務を直接、譲受企業へ譲渡するか、一旦新しい会社へ引継いだ後に譲渡するかの違いで吸収分割とほぼ同じスキームとなります。
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9.中小企業M&Aでの企業価値評価
純資産を基準にするコストアプローチ
譲渡企業の純資産額から企業価値を算出する方法です。貸借対照表の資産・負債の時価を検証し、時価純資産を算出する時価純資産法と貸借対象表記載の純資産(簿価)にて評価する簿価純資産法の2通りあります。中小企業のM&Aの場合、時価純資産法が多く用いられます。
将来的な収益の予測に基づくインカムアプローチ
譲渡企業の収益力をベースに企業価値を算出する方法です。主にDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法による企業価値算定方法が使われ、譲渡企業が将来獲得する予想キャッシュフローからリスクを織り込み、現在価値で差しい引いて企業価値を算出します。
市場価値をベースにするマーケットアプローチ
株式市場での市場価額をベースとして企業価値を算出する方法です。中小企業の場合、市場株価が存在しないので、類似上場企業の市場株価を参考に算出します。類似上場会社の株価倍率を基に算出する類似会社比較法と過去類似したM&A価額を基に算出する類似取引比較法の2通りあります。
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10.中小企業M&Aにかかる費用
仲介手数料・報酬
M&Aは条件交渉の範囲が広いことや専門的な知識が必要となることから、M&A仲介会社の存在が中小企業のM&Aでは非常に重要です。仲介会社への費用は、各社によって様々で着手金・中間金・成功報酬などフローが進むごとに費用が発生する会社やM&Aが成約したときのみ発生する完全成功報酬の会社がありますので、M&A仲介会社を選定する際は、費用体系の確認をすることも選定基準の一つと言えるでしょう。
税金
M&Aスキームにより譲渡側にかかる税金は異なります。個人株主が株式を譲渡した場合、分離課税で株式譲渡所得に対して所得税+復興特別所得税+個人住民税がかかり、税率は20.315%となります。法人株主が株式譲渡また事業譲渡をした場合、M&Aによる対価は法人が受領する為、法人税、地方法人税、法人住民税、事業税など税率は約30%となります。
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11.中小企業M&A 3つの成功ポイント
1.M&Aの目的を明確にする
M&Aを検討する場合、目的を明確にしておくことが重要です。この目的が明確であれば、どのような譲受企業を選ぶべきか、条件交渉で譲れない条件は何かなどの基準ができます。また、交渉が難航した際は、本当にM&Aをするべきなのかと迷いが出ることも珍しくありません。M&A実行の為の正しい判断とスムーズな意思決定は、M&Aの目的が明確であることが重要です。
▷関連:M&Aの目的|譲受側と譲渡側それぞれの目的(メリット)を解説
2.M&A後の影響を考慮しておく
M&Aは、譲渡企業に携わる様々な方に大きな影響を与えます。従業員は、自分たちの雇用や処遇はどうなるのかなど不安を抱えることになりますので、M&Aに至った経緯や今後の運営方針など、丁寧な説明が必要になります。また、取引先についてもM&A後も変わらぬ取引を継続頂く為、経緯の説明はもちろん取引先に迷惑をかけないよう、スムーズな業務の引継ぎが必要となります。M&A後の影響を予測し譲渡側・譲受側一体となって対応していくことが重要となります。
3.M&Aに詳しい人材を確保する
中小企業では、M&Aに精通した人材や専門部署を抱える企業はほとんどありません。顧問税理士などに相談することも可能ですが、M&Aの専門家ではないので知識や経験は限定的な可能性があります。広範囲な知識と交渉が必要なM&Aには、アドバイザリー会社などM&Aに詳しい専門家を確保することが重要です。
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12.中小企業M&A おすすめの支援機関
事業承継・引継ぎ支援センター
後継者不在や未定の中小企業に対して、専門家が事業承継・引継ぎに係る課題解決に向けた助言、情報提供及びマッチング支援を行う公的サービスです。公的サービスの為、全国の47都道府県に設置されており信用力はあるものの、民間と比べて実績数がまだ少ないことや競争がない為、スピード感は遅いなどを感じことがあるかも知れません。
金融機関
メガバンク、地銀、信金、日本政策金融公庫など最近は各金融機関でもM&Aに力を入れています。取引金融機関ですと自社のことをよく理解してくれているというメリットはありますが、行内マッチング(取引先同志のマッチング)が優先される為、相手候補先の選定が限定的になる可能性があります。
商工団体
「商工会議所」「商工会」「中小企業団体」など地域に根差した団体で、中小企業の経営者の方には身近な存在かも知れません。事業承継の相談はもちろん経営相談なども行っており、補助金などの公的制度のアドバイスも受けることができます。M&Aにおいては、実績数の少なさから相手候補先の選定やマッチング力に少しもの足りなさを感じるかも知れません。
士業事務所
弁護士
法律の専門家であることから、M&Aにおいても法務の切り口が必要な組織再編や株主や親族間の問題解決が必要なM&Aをご検討の際は相談することをお勧めします。
税理士・公認会計士
中小企業の経営者が相談窓口として、一番近い存在であるのが顧問税理士です。税務や会計の視点で検討し税務メリットを検討してもらえる点でも、経営者の強い味方です。独自のネットワーク構築やM&A専門子会社を作りサービスを提供している会社などM&A支援サービスが充実している会社もあります。
M&A仲介会社
M&Aアドバイザーとして、仲介業務やFA(ファイナンシャルアドバイザイー)業務を遂行するM&Aの専門家です。M&Aの専門知識を持たない中小企業にとっては、なくてはならない存在です。M&Aの条件交渉の上で、幅広い知識と経験を活かしM&A成約へ導いてくれます。
M&Aプラットフォーム
インターネット上のシステムを使い、譲渡側と譲受側のマッチングを行うプラットフォームサービスです。M&Aの当事者(譲渡側オーナーと譲受側企業)が、直接情報を記載し相手先とマッチングするケースや、アドバイザリー会社に依頼しプラットフォームを活用するケースがあります。プラットフォームを通じて候補先と出会えるチャンスは増えることやマッチングのスピード短縮などのメリットはありますが、M&A交渉は独自でやることになるので、プラットフォームの活用にはアドバイザリー会社を通して活用することをお勧めします。
13.中小企業M&Aの支援機関選び 3つのポイント
1.過去の実績を確認
M&Aにおける経験値は交渉時の武器となる為、経験豊富な支援機関を選ぶことが大事です。業界によって、事業運営特性が異なることから、優良な相手先とのマッチングや対象会社の強みを理解し相手方へ交渉することが必要なM&Aは、過去の実績から支援機関の経験値を図ることをお勧めします。
2.M&Aに関する専門家の存在を確認
法務・税務・財務・不動産・ビジネスなどM&Aを実行する為には、幅広い知識が必要です。検討や交渉をコーディネートする専門家(M&A仲介やFAなど)と各専門分野の専門家(弁護士・税理士・公認会計士など)で相談できる先を見つけておくことも重要と考えます。
3.費用の見積もりを比較す
M&Aの支援機関の費用体系は、着手金や中間金の有無、成功報酬算定時の基準金額が異なることなど各支援機関によって様々です。支援業務の範囲や深度により費用体系が変わるのは当たり前ですが、複数社の比較検討で自社にあった支援機関をみつけることをお勧めします。
▷関連:M&Aの相談はどこがよい?相談先一覧とメリット・デメリットを解説
14.中小企業M&Aを知る本3選
1.M&Aで創業の志をつなぐ 日本の中小企業オーナーが読む本
中小企業オーナーが事業承継の選択肢としてM&Aを選択した事例を集めた一冊。後継者候補を誰にするか、株主・取引先・親族など関係者が、多くのことを決断しなければならない事業承継をM&Aにて実施した中小企業オーナーの事例をまとめております。
2.事業承継のツボとコツがゼッタイにわかる本
中小企業オーナーの多くは、事業承継も時がくれば進めれば良いと思いギリギリまで準備をしません。いざ、事業承継のタイミングになり事業承継を進めると税務や法務の課題で進まないケースも少なくありません。そんな中小企業オーナーの悩みに税理士・会計士・弁護士などの専門家の視点で解説しています。
3.ストーリーでわかる初めてのM&A 会社、法務、財務はどう動くか
ストーリー形式でM&Aの過程を追えるので誰にとっても読みやすい形式になっており、法務のみならず、財務、税務、ビジネスの各パートについても満遍なく過程を追えるので各専門分野の視点からのM&Aを追体験ができる一冊です。
15.中小企業M&Aまとめ
中小企業がM&Aを検討する場合、社内に専門部署や専門人材を置くことが難しいことマッチング力やネットワークなどのリソースが足りないことを考えると、M&Aの専門家である支援機関の活用は必須だと考えます。
幅広い専門知識とネットワークで最適な相手先とのマッチングがM&Aが成功の近道です。弊社は税理士法人グループという強みを生かし、税務・会計の視点から譲渡企業オーナーの利益を最大化するスキーム検討も可能です。
また、M&A専門会社としての経験と知識、ネットワーク力を持ち合わせおりますので、最適なお相手先とのマッチングを実現しますので、M&Aをご検討の際には、是非一度ご相談ください。
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著者
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人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。
監修:みつき税理士法人
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