マイクロM&Aとは、小規模なM&Aとして小規模事業や個人事業主を対象としたM&Aの形式です。マイクロM&Aは、事業継承の問題からも年々ニーズが高まっています。本記事では、マイクロM&Aの概要やメリット・デメリット、手順、注意点などを解説します。マイクロM&Aに興味を持っている人は、ぜひ最後まで読んでください。
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マイクロM&Aとは
マイクロM&Aとは、一般的には譲渡価格が1,000万円以下のM&Aを指すことが多いです。明確な定義はありませんので、M&A会社によっては、異なる金額を想定しているところもあります。マイクロM&Aの対象となるのは、後継者がいない、または赤字経営など経営状態で悩む個人事業主や小規模企業が多い傾向があります。
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マイクロM&AとスモールM&Aとの違い
小規模はM&Aは「スモールM&A」と「マイクロM&A」に分類されます。マイクロM&Aは、より小規模な案件であるため、スモールM&Aに包含されます。

以下では、マイクロM&AとスモールM&Aとの違いについて解説します。
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譲渡価格が1,000万円以下のマイクロM&A
「スモールM&A」と「マイクロM&A」の違いは、譲渡価格にあります。マイクロM&Aとは、譲渡価格が1,000万円以下のM&Aのことです。
譲渡価格が1,000万円~3億円規模のスモールM&A
スモールM&Aは、一般的には売買価格が1,000万円~3億円規模のM&Aを指します。対象企業の年商が数百万~3億円程度、従業員数が数人~20人程度の場合は、スモールM&Aに該当することが多いです。
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マイクロM&Aと起業の違い
マイクロM&Aと起業との違いは、すでに顧客や取引先がいる状態から事業を始められる点です。人材採用や設備などの初期費用が不要であるうえ、顧客やノウハウなど事業に必要な環境が全て備っている状態からスタートできます。黒字事業であれば、譲受直後から収益が見込めるでしょう。
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マイクロM&Aが注目されている理由
ここでは、マイクロM&Aが注目されている理由を解説します。
個人(投資家)の需要が増加
無料で手軽に探せるM&Aマッチングサイトが増えたことで、小規模なマイクロM&Aが成立しやすくなり、以前よりも需要が高まっている現状です。マイクロM&Aは個人の自己資金でも譲受が可能な点から、注目を集めています。
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小規模事業者の事業承継のニーズが増加
帝国データバンクの調査によると、2024年の全国・全業種平均の後継者不在率は52.1%にも及んでいます。また、日本政策金融公庫が2023年に行った調査によると、中小企業のうち後継者が決定している企業は10.5%、廃業を予定している企業は57.4%です。「廃業予定企業」は、従業者数「1~4人」の企業が81.8%を占めています。
これらのデータからも、小規模事業者の事業承継のニーズが増加している点がうかがえます。マイクロM&Aは、友好的M&Aとして事業継承を解決する手段として活用されています。
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マイクロM&Aのメリット・デメリット
ここでは、マイクロM&Aのメリットとデメリットを譲渡側・譲受側それぞれの視点から解説します。
譲渡オーナー側
会社売却するオーナー経営者側の主なメリットとデメリットになります。
メリット:事業継承の解決と譲渡益の獲得
譲渡側のメリットは、後継者問題を解決しつつ、譲渡益を獲得できる点です。後継者がいない企業の場合、M&Aによって譲受側に自社を任せられるだけでなく、従業員の雇用先も確保可能です。また、譲渡益による利益が発生する可能性もあります。マイクロM&Aは、譲渡側にとって、廃業よりもメリットがある選択肢といえるでしょう。
デメリット:手元にお金が残らない可能性がある
マイクロM&Aの売買価格は1,000万円以下の取引になるため、仲介手数料や税金の支払いによって利益が手元に残らない可能性があります。また、マイクロM&Aは通常のM&Aよりも譲受側の候補数が少ないため、条件が合わずに失敗するケースもあります。入念に計画を立てなければ、思った成果が得られない可能性があるでしょう。
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譲受企業側
企業買収する買い手側の主なメリットとデメリットです。
メリット:低予算の譲受で経営資源を獲得可能
譲受側のメリットは、低予算の譲受で資源を獲得できる点です。マイクロM&Aは1,000万円以下の取引であるため、個人でも実施できます。創業するためのコスト(費用)を抑制できる点が大きなメリットだといえるでしょう。また、取引先の拡大や技術の引き継ぎによる生産性向上も見込めます。
デメリット:リスクが隠れやすい
譲受側は、M&Aによって譲渡側の事業が抱える負債などのリスクを取り込んでしまう恐れがあります。そのため、一般的には、M&A実施前にデューデリジェンス(譲受監査・企業調査)を行います。
しかし、マイクロM&Aの場合は、取引金額が少ないことから、手数料のかかるデューデリジェンス(譲受監査・企業調査)を実施しない場合もあります。そのため、簿外債務や売却側の虚偽情報などのリスクがあとから発覚するケースも考えられるでしょう。
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マイクロM&Aの流れ
マイクロM&Aを行う際の流れを整理した表は以下の通りです。
| ステップ | 主な内容 | 
|---|---|
| 1. M&A仲介会社やマッチングサイトへの相談 | ・最初に行うのは、M&A仲介会社やマッチングサイトへの相談 ・相談のうえ、事業売却は一部とするか・全てとするか、売却価格や売却方法など、売却条件の項目を1つずつ決めていき、優先順位を付けていく ・相談時には、直近3年分の税務申告書・決算書や勘定科目内訳明細書の写しなどを用意しておく  | 
| 2. マイクロM&Aに適切な企業の選定と交渉 | ・マイクロM&Aに適切な企業の選定と交渉を行う ・選定にあたっては、M&A仲介会社やマッチングサイトから、候補先をまとめたロングリストをもらう ・その後、秘密保持契約を締結したうえで、譲渡側として絞り込んだショートリストを挙げてもらう  | 
| 3. 経営陣同士の面談と条件交渉・契約締結 | ・交渉先が決まったら、M&A仲介会社などが間に入りながら、条件のすり合わせを行う ・条件に対して相互の同意が得られたら、基本合意書を締結する ・その後、デューデリジェンス(譲受監査・企業調査)を行ったうえでM&Aの最終条件を決定する ・最終契約書を締結する ・最終契約書が締結されれば、クロージング(成約)となる  | 
| 4. PMI(統合プロセス)の実施 | ・M&Aが完了した後には、PMI(統合プロセス)を実施する ・PMI(統合プロセス)を行い、統合後のシナジー(相乗効果)を発揮するためのプランを立てる ・具体的な経営戦略へ落とし込んでいくことが重要 ・PMI(統合プロセス)は、M&Aの成功・失敗を左右する重要な手順であるため、専門家のアドバイスを得ながら行うとよい  | 
マイクロM&Aの流れが4つのステップで段階的に進みます。
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買い手:マイクロM&Aを成功のポイント
ここでは、譲受企業がマイクロM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。
スピード感が重要
マイクロM&Aを行う際の注意点は、スピーディーに契約を行うことです。マイクロM&Aは、M&Aとしては少額である1,000万円以下の取引であるため、ライバルが多くなりがちです。そのため、スピード感を持って交渉を進めなければなりません。ただし、契約書は専門家によるチェックを受けてから丁寧に契約するよう心がけましょう。
マイクロM&A後のPMIやシナジーを考慮する
マイクロM&A後には、効果を確実にするためPMI(M&A後の経営統合プロセス)を行いましょう。PMIを実施することで、経営・業務・意識に関する統合がスムーズに進み、譲渡側・譲受側双方で従業員の摩擦が少なくなります。また、「統合された企業とのシナジー(相乗効果)が十分に発現するかどうか」もあらかじめ検討しましょう。
デューデリジェンスを徹底してリスクを回避
M&Aの契約締結前に、譲渡側のリスクを洗い出すデューデリジェンス(買収監査・企業調査)の実施は徹底しましょう。簿外債務やコンプライアンス違反など、潜在的なリスクを洗い出すことで、M&A後のトラブルを回避できます。
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マイクロM&Aの成功事例
ここでは、マイクロM&Aの成功事例を2つ紹介します。
カフェの譲渡
1つ目は、サバイバルゲームグッズやミリタリーグッズの輸入販売を営む株式会社グローバルトレーディングがカフェをM&Aした事例です。M&Aによって新しく始まったミリタリーカフェは、以前のカフェと比べて1日の売り上げが倍以上となりました。
レストランの譲渡
2つ目は、イタリアン・レストランバーOrso Verde(オルソ・ヴェルデ)を、個人に譲渡した事例です。オーナーは新たな事業を始めるために店舗の売却先を探しており、条件にしっかり合う譲渡先を見つけることに成功しました。前オーナーは、譲渡後もコンサルタントとしてサポートをしています。
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マイクロM&Aのまとめ
マイクロM&Aは譲渡価格1,000万円以下の小規模なM&Aで、個人事業主や小規模企業の後継者不在問題を解決する有効な手段です。譲渡側は事業承継の実現と譲渡益を獲得でき、譲受側は低予算で既存の顧客基盤やノウハウを引き継げます。
みつきコンサルティングは、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の実績を持ちます。税理士法人グループであるため、M&Aありきの提案ではなく、親族内承継や社内承継など複数の選択肢のメリットとデメリットを比較した提案が可能です。公認会計士や税理士が多数在籍し、財務・税務面の専門知識を駆使した総合的な支援を提供します。マイクロM&Aをご検討の際は、ぜひ当社にご相談ください。
著者

- 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
 - 
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人 
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