M&Aにおける買収とは|基本的な手順や手法、注意点などを解説

1.M&Aとは

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略称で、「合併&買収」を意味する言葉です。資本移動による「買収」「合併」を行うことを、一般的にM&Aと呼びます。M&Aは企業同士に限らず、企業と個人で実施されるケースもあります。近年はM&Aのプラットフォームの普及などによって、M&Aのハードルが下がっています。

M&A(買収)は投資の1類型

投資とは、一般に、リスクを取って資金を拠出し、その投資対象からリターンを得る取引をいいます。不動産投資や株式投資がの典型ですが、リスクマネーの共有と引き換えに、将来的に何かしらの果実を得る活動という意味では、M&Aによる買収も投資の一形態ということができます。

起業・独立する手段としてのM&A(買収)

自ら事業・会社を立ち上げるに際して、ゼロからスタートするやり方が一般的です。しかし、近年は、日本でもM&Aが一般化してきたため、既に存在する事業・会社を譲ってもらってスタートを切る起業家(アントレプレナー)も増え始めています。

2.買収の手法

買収とは、一方の会社(買い手企業)が、他方の会社(売り手企業)の株式や事業を取得する行為です。M&Aにおいては、事業の一部のみを買収することもあれば、株式を100%取得して会社全体を買収するケースもあります。M&Aの買収には、「株式譲渡」「株式交換」「事業譲渡」「第三者割当増資」といった方法があります。各買収方法の特徴を理解し、最適なものを選ぶことがM&Aの成功につながるポイントです。

株式譲渡

M&Aにおける株式譲渡とは、50%超の株式を金銭などの対価と引き換えて買収する方法を意味します。買収された企業は譲受側の子会社となり、事業継続が可能となります。株式譲渡には、直接株式を売買する「相対取引」、株式証券取引所で上場企業の株を買う「市場買付け」、不特定多数の株主から株式を買い集める「TOB(公開買い付け)」があります。

株式交換

株式交換とは、子会社となる企業の発行済株式のすべてを、親会社が取得するM&Aの方法です。買収された企業は別法人として存続できるため、余裕のある経営統合が可能な点が特徴です。2022年に法律が改正され、「株式交付」という制度が創設されました。株式交換においては、すべての株式を対象としなければなりませんが、株式交付では一部の交換が可能になっています。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社の事業の一部、もしくはすべてを買収するM&Aの方法です。事業用資産や権利義務に加えて、会社の事業部が持つ独自のノウハウなどの無形資産も譲渡の対象になる点が特徴です。事業譲渡によるM&Aでは、譲渡側の会社が対価を受け取るため、株主は直接利益を得られません。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、特定の第三者に対して新株を発行する方法です。出資を受ける形になるため、財務基盤の強化や事業継続などに効果が見込めます。公開会社は発行可能株式の総数範囲内なら、取締役会決議で新株の発行が可能です。そのためスムーズなM&Aが実施できますが、いくつかの要件に当てはまると、株主総会の普通決議もしくは特別決議が必要になります。

合併とは

M&Aは買収以外に「合併」による方法もあります。以下では、M&Aにおける合併の基本について解説します。

合併とは、複数の会社を統合させるM&Aの手法です。会社そのものを消滅させて、その会社が持っていた権利義務をほかの会社に引き継がせることが特徴です。一般的にグループ内の組織再編を目的として、実施されることが多い手法となっています。M&Aの合併には、「吸収合併」と「新設合併」があり、それぞれ異なる特徴・メリットがあります。

吸収合併とは

吸収合併とは、合併によって消滅した会社の権利や義務を、合併後の会社が引き継ぐ方法です。法人格を一体化することから、高いシナジー(相乗効果)が期待できます。資産だけでなく負債も引き継ぐ点がポイントであり、資産の管理に悩む経営者は、吸収合併で権利を放棄する方法も考えられます。

新設合併とは

新設合併とは、消滅する会社の権利・義務を新設される会社が引き継ぐ形式です。合併するすべての法人格が消滅することから、吸収合併と比較して必要な手続きが多くなります。また、消滅する会社の許認可や免許はなくなるため、新設会社が新規で取得する必要があります。

その他のM&A手法

M&Aには、買収と合併以外にも方法があります。

会社分割とは、譲渡側の企業が持つ特定の事業を、ほかの会社に承継する方法です。M&Aにおいて会社分割を実施する際には、新規に交付された株式を、譲受企業に譲渡する形が取られます。事業に関する権利・義務を、新設する会社に継承する場合には「新設分割」、既存会社に継承する場合には「吸収分割」と呼びます。

3.買収の流れ

M&Aにおける買収を実施する際には、手順の理解も重要です。以下では、M&Aの買収手順について解説します。

M&Aの目的達成を実現できる会社を選定する

M&Aの目的達成を実現できる会社を設定し、実際に選定します。求めるシナジー(相乗効果)を生み出せるように、慎重な判断が必要とされる段階です。M&Aにおける当初の目的から外れないように、軌道修正をこまめに実施しつつ最適な交渉先を探します。

M&Aで実施する買収方法を決める

先に解説した買収方法から、M&Aで実践するものを選択します。買収の目的や譲渡先企業との交渉を通して、最適な方法を導き出すことが重要です。買収方法の選定に悩む際には、早めにM&A仲介会社などに相談することも対策になります。

対象会社(事業)の企業価値評価を実施する

納得のいく買収結果を出せるように、M&Aの際には買収価格の企業価値算定を実施します。企業価値算定の方法には、主に以下の種類があります。

コストアプローチ:純資産を基準に、企業価値算定をする方法

インカムアプローチ:将来性を考慮した収益力で、企業価値算定をする方法

マーケットアプローチ:株式市場・M&A市場の取引金額で、企業価値算定をする方法

買収後の経営統合に注力する

M&Aは買収を実行して終わりではありません。むしろ、その後の対象会社との経営統合作業(PMIとも言われます)こそが企業買収の成否を決める重要なプロセスとなります。

4.買収を検討する際の注意点

M&Aで買収をする際には、注意すべきポイントがあります。どのような点に注意が必要になるのか、以下で解説します。

希望条件で買収できない場合がある

M&Aでは、希望条件で買収できないケースもあります。譲渡側にも思惑や事情があるため、交渉が難航する可能性も十分に考えられるからです。譲受側は企業価値の向上を図り、好条件での買収が実現できるように備えることがポイントです。

買収の成約まで時間がかかる場合がある

M&Aを実施してから買収の成約まで、時間がかかる可能性があります。譲受相手がみつからずに焦って買収を決めると、想定していた結果を引き出せないことも懸念されます。M&Aでは中長期的な視点も持ちながら、買収先を探すことが重要です。成約率の高い仲介会社を利用し、クロージング(成約)までの流れを支援してもらうのも1つの対策です。

社内にM&A人材がいるか

M&Aを成長戦略の中核に据えている場合には、買収を積極的かつ繰り返し行っていきたいものです。そうなると、M&A会社等の協力をもらいながらも、経営トップ層とそれらプロフェッショナルの橋渡しとなる社内人材がいることが望ましいです。いない場合には、実績豊富で信頼できるM&A会社を選定していくことが重要になります。

5.M&Aなら「みつきコンサルティング」にご相談

「みつきコンサルティング」は、財務に関する専門知識とノウハウを活かしてM&Aをサポートする仲介会社です。税理士や会計士といったプロによる企業診断・財務分析が可能なため、適切な売却価格の算定ができます。M&Aにおける買収計画を、スムーズに進めるための支援が可能です。成約率も80%以上と高い実績を誇り、完全成功報酬型であるため成約までコスト(費用)がかかりません。M&Aにおける適切なサポートを実施する環境が整っているので、ぜひ1度「みつきコンサルティング」にご相談ください。

6.買収のまとめ

M&Aを実施する際には、さまざまな手法が検討されます。買収による方法は柔軟性があり、スムーズな成約が可能なケースも多いです。「株式譲渡」「株式交換」「事業譲渡」「第三者割当増資」と、多くの手法がある点も特徴です。この機会にM&Aにおける買収についての詳細を確認し、具体的な計画に生かしてみてはいかがでしょうか。

M&Aによる買収を考える際には、「みつきコンサルティング」にご相談ください。財務のプロとして企業価値を正確に把握した上で、最適な提携先候補の検討とご提案が可能です。M&Aで少しでもお困りなら、ぜひ「みつきコンサルティング」にお問い合わせください。

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著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人