M&A手数料の相場はいくら?売り手の費用体系と手取りの守り方

M&A仲介に支払う費用は、譲渡オーナーの最終的な手取りを大きく左右します。相談料から成功報酬まで種類が多く、レーマン方式の基準額の取り方ひとつで総額が2〜3倍変わることも珍しくありません。費用の内訳と相場、2025年に開示が義務化された手数料ルール、不利な体系を見抜く確認項目、手取りを残す仲介会社の選び方を、中小企業M&Aの支援現場の視点でまとめます。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。

M&A手数料とは|仲介に支払う費用の全体像

会社の譲渡を考え始めたオーナーが、価格の次に気にするのが費用です。「いくら払えば売れるのか」がつかめないまま面談に進み、契約書を見て初めて総額に驚く。そういうケースは、支援現場でも珍しくありません。M&Aの費用は、株式の譲渡代金から差し引かれる実質的なコストであり、手取りに直結します。中小企業のM&Aでは、相手探しから交渉まで自社だけで完結させるのは難しく、M&A仲介の仕組みとメリット・デメリットを押さえたうえで、専門会社へ依頼するのが一般的です。

仲介会社が手数料に見合って担う役割

手数料は単なる手間賃ではなく、成約までのリスクと専門業務への対価です。仲介会社が担う中心的な役割は、おおむね次の5つに整理できます。

  • 譲渡オーナーと譲受企業のマッチング。広いネットワークから条件の合う相手を探す
  • 情報の非対称の解消。中立の立場で両者の情報格差を埋める
  • 企業価値評価と価格交渉のサポート
  • 秘密保持を徹底した案件進行。情報漏えいによる価値毀損を防ぐ
  • 法務・税務・財務にまたがる専門知識の提供

M&Aが初めての経営者にとっては、基本的な流れの説明や意思決定の伴走そのものが価値になる場面も多いものです。

手数料には法規制がなく会社ごとに異なる

M&A仲介手数料に、法律上の上限はありません。各社が独自に料金を組み立てているため、同じ案件でも見積もりが会社ごとに大きく食い違います。ここに、譲渡オーナーが戸惑う最大の理由があります。

M&Aの手数料-レーマン方式による成功報酬

潮目が変わったのは2024年8月です。中小企業庁が中小M&Aガイドライン(第3版)を公表し、2025年1月から適用が始まりました。仲介者・FAは契約締結の前に、手数料の詳細な算定基準、レーマン方式の料率テーブル、最低手数料、相手方から受け取る手数料、担当者の保有資格や成約実績などを書面で説明することが求められています。手数料の不透明さに切り込んだ点で、売り手保護に大きく踏み込んだ改訂でした。詳しい背景は第3版で変わった手数料開示と業者選びの実務でも整理しています。

M&A手数料が発生するタイミング

費用は一括ではなく、プロセスの節目ごとに段階的に発生します。全体像を時系列でつかんでおくと、資金繰りの見通しが立てやすくなります。

M&Aの手数料が発生するタイミングの解説図。相談料、着手金、月額報酬、中間金、デューデリジェンス費用、成功報酬の流れを示している。

大きな流れは、相談料、着手金、月額報酬、中間金、デューデリジェンス費用(譲受企業のみ)、成功報酬の順です。なかでも成約時に支払う成功報酬が最も高額で、ここがレーマン方式で決まります。

M&A仲介手数料の種類と相場

手数料の名前と相場感を、まとめて確認しておきましょう。下表は、譲渡オーナー側で発生しうる主な費用を一覧にしたものです。会社によって有無や水準が異なるため、あくまで目安として読んでください。

手数料の種類発生のタイミング相場の目安主な留意点
相談料初回相談時無料〜数万円近年はほぼ無料。2回目以降や時間制の例もある
着手金仲介契約の締結時無料〜200万円不成立でも返金されないのが一般的
リテイナーフィー契約期間中に毎月月10万〜100万円長期化で総額が膨らむ。仲介では設定が稀
中間金基本合意の締結時成功報酬の10〜20%不成立でも返金されない。成約時は成功報酬から控除
成功報酬最終契約の締結時レーマン方式で算定最も高額。最低報酬額の設定に注意

売り手・買い手の双方に生じる費用

相談料は入口の費用で、いまはほとんどの会社が初回無料です。問題はその先にあります。

着手金とリテイナーフィー

着手金は契約時の初期費用で、相場は無料から200万円ほど。無料を掲げる会社も増えましたが、その分だけ成功報酬が高めに設計されている場合もあります。安さではなく総額で見るのが鉄則です。着手金や月額報酬の有無は、契約条件として事前に固める部分なので、アドバイザリー契約の種類と報酬の決まり方もあわせて確認しておくと安心です。

中間金と成功報酬

中間金は、基本合意などプロセスが一定段階に進んだ対価です。相場は成功報酬の10〜20%程度。成約時は成功報酬から差し引かれますが、破談しても返ってこないのが通例です。そして最大の費用が成功報酬。最終契約を結んで初めて発生し、その算定にレーマン方式が使われます。

デューデリジェンス費用(買い手だけに生じる手数料)

譲渡企業を財務・税務・法務の面から調べる費用で、負担するのは譲受企業です。中小企業の案件で200万〜500万円が目安。財務・税務DDで100万〜250万円、法務・労務DDで100万〜250万円ほどが多い印象です。専門性が要るため会計事務所や法律事務所に委託され、仲介会社へ支払う費用ではありません。

成功報酬の計算方法とレーマン方式

成功報酬の額は、ほとんどのケースでレーマン方式による報酬計算の仕組みで決まります。考え方さえ分かれば、見積もりの妥当性は自分で判断できます。

レーマン方式の仕組み

取引金額が大きくなるほど料率が下がる、累進逓減の方式です。金額を段階で区切り、区分ごとに異なる料率をかけて合算します。下表が一般的な料率テーブルです(契約時に必ず実際の数字を確認してください)。

取引金額の区分その区分に適用される料率
5億円以下の部分5%
5億円超〜10億円以下の部分4%
10億円超〜50億円以下の部分3%
50億円超〜100億円以下の部分2%
100億円超の部分1%

基準額の定義で総額が変わる4つのレーマン方式

同じレーマン方式でも、計算の土台になる「基準額」の取り方が会社によって違います。ここが、見積もりの差を生む正体です。代表的なのは次の4つ。

  • 株価レーマン:株式の譲渡対価だけを基準とする。最もシンプルで、手数料は低めに収まりやすい
  • オーナー受取額レーマン:株式譲渡対価に役員借入金の返済額などを加えた、オーナーの最終受取額を基準とする
  • 企業価値レーマン:株式価値に有利子負債を足した企業価値を基準とする。報酬は高くなりやすい
  • 移動総資産レーマン:株式価値に負債総額を足した移動総資産を基準とする。最も高くなりやすい

株価レーマンとオーナー受取額レーマンは、結果として大きく変わらないことが多く、譲渡オーナーに配慮した体系です。一方、企業価値レーマンや移動総資産レーマンは負債を取り込むため、借入の大きい会社ほど手数料が膨らみます。借入が9割の会社で個人保証も付いている、という中小企業の典型像では、この差が手取りに重くのしかかります。

4方式の計算シミュレーション

株式価値5億円の譲渡を例に、4方式を並べてみます。下表のとおり、基準額の取り方だけで成功報酬が1,200万円も開きます。

レーマン方式基準額の計算報酬基準額成功報酬
株価レーマン株式価値5億円5億円2,500万円
オーナー受取額レーマン+役員借入金1億円6億円2,900万円
企業価値レーマン+純有利子負債1億円7億円3,300万円
移動総資産レーマン+その他負債1億円8億円3,700万円
M&Aの手数料-レーマン方式の違い

最低報酬額の相場

小規模な案件でも一定の業務量はかかるため、多くの会社が最低報酬額(500万〜2,500万円程度)を設けています。レーマン方式の計算額がこれを下回ると最低報酬が適用され、小型案件では実質的な料率が跳ね上がることもあります。完全成功報酬を掲げる会社でも最低報酬は別、というケースがあるため、完全成功報酬のメリットと落とし穴を理解してから比較するのが安全です。

M&A仲介 主要25社の手数料比較

客観的な比較材料として、中小企業庁のM&A支援機関登録制度の登録機関データベースをもとに、主要な仲介会社25社の手数料体系(譲渡オーナー向け)を整理しました。2024年以降、登録機関には手数料の算定基準の開示が求められており、こうした横並びの比較がしやすくなっています。

主要なM&A仲介会社25社の手数料体系・最低報酬額の比較一覧表

                  注:太字部分は、一般に売主にとって不利な手数料体系

表のなかで、基準額が企業価値・移動総資産ベースの会社や、最低報酬が高額な会社は、売り手にとって不利になりやすい体系です。会社の数だけ料金表があると考え、複数社を一覧で見比べる姿勢が欠かせません。会社ごとの違いは上場・非上場・会計系を分けたM&A仲介会社の一覧でも俯瞰できます。

契約前に確認すべき手数料チェックリスト

見積書を受け取ったら、金額だけを見て一喜一憂しないことです。第3版ガイドラインが説明を義務づけた項目を逆手にとり、支援現場で実際に使っている確認リストを共有します。次の6点を質問すれば、不利な体系の大半は事前に見抜けます。

  • レーマン方式の基準額は、株価・オーナー受取額・企業価値・移動総資産のどれか
  • 最低報酬額はいくらで、どの段階で適用されるか
  • 着手金・中間金・月額報酬の有無と、不成立時の返金条件
  • 譲受企業からも手数料を受け取るか、その金額はいくらか
  • 担当者の保有資格・経験年数・成約実績
  • テール条項(契約終了後の報酬請求)の範囲と期間

以前、年商10億円規模の製造業の譲渡オーナーから、ある社の見積もりが別の会社の倍近いという相談を受けたことがあります。調べると基準額が移動総資産レーマンで、借入の厚い同社では割高に振れていました。納得できなければ手数料の交渉を検討してよい、とガイドラインも明記しています。質問できる相手かどうか自体が、誠実さの試金石になります。

M&Aの手数料を抑えるポイント

高く見える手数料も、打ち手を知っていれば合理的に圧縮できます。

仲介手数料が高くなる理由

背景には3つの事情があります。M&Aは戦略策定から候補探索、価値評価、交渉、DD、契約、統合まで工程が多く、調整が複雑なこと。財務・法務・税務・経営戦略にまたがる専門知識と経験が要ること。そして成立まで長期にわたり不成立リスクも抱えるため、成功報酬が高めに置かれること。料金の構造を理解すれば、削れる費用と削れない費用の線引きができます。

手数料を軽減する具体的な方法

支援現場でよく勧めるのは、次のような組み合わせです。

  • 複数社で相見積もりを取る:最低3社の総額を並べ、金額だけでなく実績や誠実さも合わせて評価する
  • 良心的なレーマン方式を選ぶ:株価レーマンかオーナー受取額レーマンの会社は、基準額が小さく手数料を抑えやすい
  • 補助金を活用する:要件を満たせば仲介手数料やDD費用の一部が戻る
  • 不要なオプションを断る:費用対効果で本当に要るサービスだけに絞る
  • 会社分割で取引価格を調整する:不要資産を切り離せば基準額が下がる。ただし税務判定に注意

補助金については、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)でFA・仲介費用やDD費用が補助対象になります。補助率は原則2分の1または3分の1、補助上限は800万円が基本で、年度や類型により引き上げ枠も設けられています。対象は登録支援機関を通じた費用に限られる点に注意が必要です。制度の使い方はM&A補助金の要件と申請の進め方にまとめています。

会計事務所系の仲介なら税務スキームで手取りを残せる

見落とされがちなのが、手数料の安さ以上に効くのが税務設計だという点です。M&A仲介会社は、上場会社系・非上場会社系・会計事務所系(士業系)に大別されます。このうち会計事務所系は、譲渡スキームの組み方や役員退職金の活用で、譲渡益にかかる税負担を抑えやすいのが強みです。会社分割を使った価格調整も、みなし配当や譲渡課税の判定を含めて設計できるかどうかで結果が変わります。数百万円の手数料差より、税務最適化による手取り差のほうが大きくなる場面は、現場では決して珍しくありません。

譲渡オーナーが仲介会社を選ぶポイント

仲介会社選びは、手数料の安さだけで決める話ではありません。目的に合った支援か、自社の規模や業種に合うか、担当者の実績と相性は十分か。総合点で見極めることが、企業価値の最大化と円滑な承継につながります。判断の物差しは信頼できるアドバイザーを見極める比較の視点でも詳しく扱っています。

手数料体系と総支払額を比較する

確認の順番はシンプルです。手数料の種類と金額を把握し、成功報酬の基準額の定義を確かめ、2〜3社の見積もりを総額で並べる。自社の純資産・有利子負債・想定譲渡価格を整理し、各社のレーマン方式で試算したうえで最低報酬額と比べ、高いほうを適用して総額を出す。複数シナリオで弾いておくと、面談での質問が具体的になります。どこに相談すべきか迷う段階なら、銀行・税理士・仲介会社の相談先の違いから比べてみてください。

自社の規模・業種に合う仲介会社を選ぶ

得意な案件規模は会社ごとに異なります。大手は営業力が強い反面、小規模案件には不向きなこともあり、中小企業専門の会社が小回りで強みを出す領域もあります。最低報酬額が手取りに与える影響、自社業界での実績、対応エリアも判断材料です。取引が数百億円規模になると、仲介に加えてFAも選択肢に入ってきます。

仲介型と片手FA型の違い

取引形態には、1社が双方を担う仲介(両手取引)と、当事者がそれぞれFAに依頼する片手取引があります。下表で要点を整理します。

比較項目両手取引(仲介)片手取引(FA)
担当1社が双方を担当当事者ごとに別々のFA
手数料双方から受領。総額は抑えやすい場合がある依頼者のみから受領。総額は高くなりやすい
立場中立。情報共有がスムーズ依頼者の利益を最優先
主な弱み利益相反のリスク交渉が対立的になりやすい

中小企業のM&Aでは両手取引が主流ですが、双方を1社が担う以上、利益相反への目配りは欠かせません。FAとの違いはFAの役割と仲介との違いを、利益相反の防ぎ方は仲介契約の利益相反と対処法を読むと、確認すべき点が見えてきます。

手数料は「手取り」で考える

最後に視点をひとつ。手数料は、譲渡代金から差し引かれて初めて意味を持ちます。料率の0.1%を削る努力も大切ですが、税金まで含めた手取り全体で最適化するほうが、残るお金は大きくなりがちです。会社売却の手取り額を最大化する方法や、出口戦略そのものを描く会社売却の手法と進め方とあわせて考えると、費用の優先順位がはっきりします。

M&A手数料に関するFAQ

売り手から実際によく受ける質問を、現場の答え方で整理しました。

Q:売り手の手数料はいくらが相場ですか

成功報酬がレーマン方式で算定され、株式価値5億円なら2,500万円前後が一つの目安です。ただし基準額の取り方で2〜3割は上下します。着手金や中間金の有無も総額に響くため、見積もりは必ず総支払額で比べてください。

Q:着手金を払ったのに成約しなかったら返金されますか

原則として返金されません。中間金も同様です。だからこそ契約前に、不成立時の精算条件を書面で確認しておくのが安全です。返金規定は会社ごとに違うため、口頭の説明だけで進めないことをお勧めします。

Q:手数料の安い会社を選べば得ですか

一概には言えません。着手金無料でも成功報酬が高い、基準額が割高、といった設計もあります。現場ではまず、料率より基準額の定義と最低報酬額を確認します。税務設計まで含めた手取りで比較するのが、結局いちばん損をしません。

Q:手数料は交渉できますか

できます。中小M&Aガイドライン第3版でも、納得できない場合は交渉を検討してよいと明記されています。相見積もりを根拠に提示すると話が進みやすいです。誠実に応じてくれるかどうかも、会社を見極める材料になります。

M&A手数料相場のまとめ

M&A手数料は成約までのコストであり、種類と発生タイミング、レーマン方式の基準額の取り方を押さえれば、見積もりの妥当性は自分で判断できます。相見積もり・補助金・不要オプションの見直しで圧縮も可能ですが、料率の差より税金まで含めた手取り全体で考えるほうが、残るお金は大きくなります。費用の不安は、知識でほぼ解消できます。

みつきコンサルティングは、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として、中小企業の会社売却・事業承継に特化した実績経験を積み重ねてきました。会計事務所系・士業系を代表する立場から、税負担を抑える譲渡スキーム設計まで一貫してご支援します。手数料と手取りのご相談は、みつきコンサルティングへお気軽にお声がけください。

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著者

西尾 崇
西尾 崇事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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