親の会社を継ぐべきか|メリットとデメリット・必要な素養・娘は?

親の会社で働きたくない!?

日本における事業承継では子供が親の会社を継ぐケースが多くあります。会社を継ぐ後継者からすると、働き方の自由度の高さや定年退職やリストラなどの不安から解放されるなどのメリットがある一方で、経営者としての重い責任を負うなどデメリット的な要素もあります。親の会社を継ぐか否かは、これらのメリットとデメリットを十分に理解した上で、自分自身の意思で決定することが重要と言えます。

家業を継ぐメリット

親の会社を継ぐメリットとして、以下の点が挙げられます。

働き方の自由度が高くなる

経営者になれば、仕事のスケジュールやタスクの優先順位などを自分で決定でき、時間的な自由度が高くなります。また、経営方針や組織体制に自分のアイデアやビジョンを取り入れることができることなども働き方の自由度が高くなると言えます。

定年退職やリストラの不安がなくなる

経営者となるため、リストラなど不安からは解放され雇用の安定化が図られます。定年退職などもないため、退職時期を自分で決めることができることも働き方の自由度が高くなる要因の一つでもあります。

高い給与水準を維持・創業者利潤の獲得ができる可能性がある

経営者は、給与も自分で決定することができるため、親から引き継いだ会社の業績を維持・拡大できれば、高い給与水準を維持できる可能性があります。また、将来の引退では、一般的なサラリーマンの水準よりも高い金額の退職金を受領できる可能性や、第三者への会社売却による創業者利潤の獲得などが期待できます。

家業を継ぐデメリット

親の会社を継ぐデメリットとして、以下の点が挙げられます。

一度会社を継いだら簡単にはやめられない

経営者は従業員の雇用や会社の存続などに責任を負う立場であるため、一度会社を引き継ぐと簡単にやめることはできません。経営者としての責任やプレッシャーの大きさに立ち向かう覚悟が必要です。

借金の引継ぎや個人保証の変更も引き継ぐ必要がある

引き継ぐ会社の借入金がある場合、これらの債務を後継者が引き継ぐことになります。また、借入金等に紐づく個人保証を先代経営者(親)がしている場合、引き継ぐ後継者が保証人に変更される必要があります。

親の会社を引き継ぐ際に多額の資金が必要になる可能性ある

引き継ぐ会社の株価が高い場合、後継者が株式を取得する際に多額の資金が必要になります。株式取得に必要な金額によっては、金融機関等から借入を行い、株式を取得するケースもあります。

跡継ぎに必要な3つの素養

親の会社を継ぐ際に、後継者に必要とされる能力として経営力、実務能力、リーダーシップ力の大きく3つが挙げられます。これらの能力を身につけ磨き上げることが、円滑な事業承継と会社の発展に必要不可欠となります。

経営力を身につける

経営者として会社のビジョンや目標を設定し、実現するための戦略を考え、実行する能力が求められます。これらの能力を磨くためには、ビジネスのトレンドや市場動向を把握し、適切な意思決定を行う経験を積むことが重要です。これらの経験のほとんどは、会社を引き継いでからしか積むことができないため、他の経営者の成功や失敗体験から学ぶことも有効であると言えます。

また、財務や経理、法務などの知識も経営力の一部です。会社の財務状況を正確に把握し、適切な資金調達や投資判断を行うためにはこれらの知識が必要不可欠です。これらの知識は、専門的な知識であり、年々変化するものでもありますので後継者の方が一定の知識を取得した上で、専門家との連携を取りながら専門的な知識を補完していくことが重要です。

実務能力を磨く

経営者が会社の事業内容を深く理解することは当然ですが、営業や実務を実行する能力がある方が望ましいと言えます。すべての業務に精通し実務能力を磨き上げることは難しいですが、現場の業務を経験することで、従業員の働き方や顧客のニーズを肌で感じ取ることができるため、社内体制の構築や将来の会社の方向性を考え、経営判断を行う上では貴重な情報となります。

また、会社を運営する上でマーケティング、財務、オペレーション、人事管理、戦略立案など、幅広い分野のスキルが求められます。これらのスキルを身につけるには、実際の業務に携わることに加え、経営者向けの研修や勉強会への参加も効果的と言えます。

リーダーシップを発揮する

経営者には、従業員を先導し、会社のビジョンと戦略を明確に伝え、会社組織を統括するリーダーシップが求められます。リーダーシップを発揮するには、従業員や株主などと適切なコミュニケーションを取り、良好な関係を構築することが重要です。また、リーダーとしての信頼を得るためにも企業倫理やコンプライアンスを重視した経営を実施することも重要です。会社を引き継いだ後、会社が一丸となって経営を行うためには、後継者のリーダーシップが必要となります。

娘も後継者になれる?

事業承継の後継者を娘にすることは、従来の慣習や課題がある一方で、近年その重要性と可能性が認識されつつあります。以下に、娘に家業を継ぐことの是非について考えてみます。

近年の動向

娘を跡取りとすることを後押しする環境が芽生えつつあるように思います。世の中にの状勢を見てみましょう。

人材確保の観点

少子化が進む現代において、一人っ子世帯が増加しています。そのため、女性が事業を承継しなければ後継者がいないケースも多くなっています。人材確保の観点から、娘を後継者候補として検討することは十分にあり得ます。

多様性の促進

女性経営者の比率が主要先進国に比べて低い日本において、娘への事業承継は企業の多様性を高める機会となります。ダイバーシティの推進は、社会全体の問題であると考えられており、政府や官公庁、証券取引所なども女性役員の積極登用を推進しています。以下は、プライム上場企業だけに課せられた義務ですが、政府等の本気度が伝わってきます。

  • 2025年までに、女性役員を最低1人選任すること
  • 2030年までに、女性役員比率を30%以上にすること

娘を社長にする良い面・悪い面

娘を後継者とすることのプラス・マイナスを紹介します。

女性経営者の利点

女性が経営者であることで、しなやかなマネジメントが期待できます。

多様な視点の導入
  • イノベーションの促進: 女性後継者は、多様な視点を経営に取り入れることができ、これが企業のイノベーションを促進する可能性があります。特に、女性消費者が多い市場では、女性の視点が製品やサービスの開発において重要な役割を果たすことがあります
  • 経営戦略の多様化: 女性経営者は、従来とは異なるアプローチで経営戦略を立てることができるため、新たな市場やターゲット層へのアプローチが可能になります
組織内コミュニケーションの向上
  • スムーズな引き継ぎ: 家族内でのコミュニケーションが円滑であることが多く、特に父親から娘への事業承継では、意思疎通がスムーズであることが期待されます。これにより、業務の引き継ぎが円滑に行われる可能性があります
  • 社内文化の変革: 女性後継者は、柔軟なコミュニケーションスタイルを持つことが多く、これが社内文化の改善や従業員との関係強化につながることがあります。

女性特有の課題

女性であるが故のハンデも無い訳ではありません。これらの点に対する覚悟を娘本人が持てるか、慎重に見極めて頂きたいと思います。

教育と準備の不足

女性の跡継ぎは、男性と比較して後継者教育を受けないまま、現経営者の体調悪化等により、突発的あるいは覚悟していないうちに事業の承継が進んでしまうケースが多い印象を受けます。

社会的偏見

家制度や男性長子相続の風潮が残る地域が依然として多くあり、その影響を強く受けるのが中小企業です。それら周囲の偏見や固定観念を克服する必要があります。

ワークライフバランスの課題

子育てなどの家庭の責任を女性が負担するという従来の役割分担の意識が残っている場合、家庭を営みながらキャリアを継続することは心理的にも、体力的にも、過度に負担が重いものになる可能性があります。

娘に継ぐ場合の対策

娘を事業承継の後継者とすることには、課題はあるものの、多くの可能性もあります。適切な準備と支援体制を整えることで、娘への事業承継を成功させることができるでしょう。

専門家のサポート

事業承継の専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることも検討しましょう。

コミュニティの活用

女性の事業承継者をサポートするコミュニティを活用することで、経験や知識を共有し、課題解決につなげることができる可能性があります。例えば、日本跡取り娘共育協会(跡取り娘ドットコム)のようなコミュニティに入会すると良いでしょう。

意識改革

組織のあり方や働き方のモデルを変革し、多様な人材を活用できる環境を整備することが必要です。

教育と準備

計画的な後継者教育を行い、十分な準備期間を設けることが重要です。

親の会社で働くための具体的な準備

親の会社を円滑に継ぐためには、周到に準備することをお勧めします。具体的には事業計画の策定、資金対策、株式移転の検討、補助金の活用など、さまざまな側面から準備を進めていくことが重要です。

経営状態を改善し、事業計画を策定する

親の会社を引き継ぐ際は、まず現在の経営状態を正確に把握することが重要です。財務諸表や事業報告書などを詳細に分析し、強みや弱み、機会や脅威を洗い出し現状分析を行います。その上で、経営状態に改善の余地があれば、会社を引き継ぐ前に手を打っておくことが望ましいでしょう。

また、将来の事業展開を見据えた事業計画の策定を行うことも必要です。市場動向や競合他社の動きを分析し、自社の強みを活かせる戦略を立てます。具体的な数値目標を設定し、目標達成に向けたロードマップを描くことで、会社を引き継いだ後に後継者がやるべきことを明確にした上で経営を行うことが可能となります。

株式の移動方法を検討する

親から子への会社の株式の移転方法としては、相続、生前贈与、株式売買の3つの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の状況や株式取得者の経済状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。株式の移転方法によって、税務上の取り扱いや株式の評価方法も異なります。最適な株式移転方法を選択するには専門的な知識も必要となりますので、専門家の助言を得ながら慎重に検討を進めることをお勧めします。

相続税・贈与税の資金対策と事業承継税制の活用

親の会社を引き継ぐ際に株式の移転が伴う場合、相続税や贈与税の負担が生じる可能性があります。これらの税金対策として、事業承継税制の活用を検討してみるのも良いかも知れません。事業承継税制とは、一定の要件を満たせば、相続税や贈与税の納税が猶予・免除される制度のことを言い、適用要件をクリアすればこれらの税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

例えば、2018年4月1日から2023年3月31日までに特例承継計画を提出した場合、10年以内の株式の贈与・相続の際の税金が、全株式を対象に100%納税猶予されます。この特例を活用することで、事業承継に係る税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

事業承継引継ぎ補助金の活用を考える

会社を引き継ぐことを契機に新しい取り組みを行う場合、事業承継引継ぎ補助金の活用が可能です。この補助金は事業の再構築、設備投資、販路拡大などに係る費用に対し2/3又は1/2の補助率で、上限600万円以内または800万円以内の補助を受けることが可能です。補助金を活用することで、事業承継後の新たなチャレンジに係る資金負担を軽減できますので、要件や申請方法を確認し有効に活用することをお勧めします。

親の家業を継ぐべきか(まとめ)

親の会社を継ぐか否かの判断は、慎重に検討すべき重要な事項となります。会社を引き継ぎ経営者になるメリットとデメリットを理解し、自分の意思と適性に基づいて判断することが大切です。会社を引き継ぐ判断は、急にできるものでもありません。経営者に必要な経営力、実務能力、リーダーシップ力を磨きながら会社を継ぐための準備を少しずつ進めてみてください。準備を進める中で会社を継がずM&Aという選択肢を検討することもあるかも知れません。会社や後継者になる方にとって最善の策を選択できるよう、色々な方面からの検討が必要になるでしょう。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験実績が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。  みつき税理士法人と連携することにより、税務面や法務面のサポートもワンストップで対応可能です。M&Aをご検討の際は、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。 

著者

潟野和徳
潟野和徳名古屋法人部長
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。
監修:みつき税理士法人

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