ビジネスで必要なM&Aの知識とは?専門的な知識をわかり易く解説

M&Aが日本全国で拡がりを見せる中、その知識は、経営者だけではなくビジネスパーソンにとっても身につけておきたいことの1つです。本記事では、最低限知っておきたいM&Aの知識について、その概略を薄く広く解説します。M&Aの基礎を知りたい方は参考にしてください。

M&Aとは?

M&Aとは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」を意味し、企業や医療法人などの合併や買収を指します。株式譲渡や事業譲渡、会社分割、新設合併、吸収合併、第三者割当増資、株式移転、資本提携、業務提携など、M&Aの手法はさまざまです。日本では、事業承継を目的とした中小企業のM&Aが増加傾向にあり、団塊世代の引退の影響で今後も増えていくと考えられます。

なぜM&Aをする?

ビジネスにおけるM&Aの目的とは何なのでしょうか。ここでは、買収側と譲渡側の目的をそれぞれ解説します。

譲渡側の目的

現在、少子化により後継者不足が問題になっている企業もあります。M&Aにより会社を譲渡できれば、事業承継により事業の維持が可能になり、後継者不足の解決にもつながります。また、株式および事業の売却により資金の獲得することができ、引退後の生活資金や事業資金の確保ができます。また、借入に対する個人保証からの解放を目的とする人も少なくありません。結果的に、新たな事業への挑戦も可能となります。

買収側の目的

M&Aにより実績のある企業を買収すれば、事業成長にかかる時間を短縮できます。特に、新たな分野や地域に参入したい場合は、1から作り上げるよりも短い期間で事業展開できるでしょう。また、スキルを持った人材の確保も、M&Aの目的の1つです。優秀な人材の確保により、知識やノウハウ、技術などが獲得できます。

どんな方法を使う?

ビジネスにおける、さまざまなM&Aの方法のうち、ここでは「株式譲渡」「事業譲渡」「会社分割」「合併」の4つを解説します。

株式譲渡(会社すべての譲渡)

株式譲渡とは、株式の一部または全部を売却する手法です。経営権の移行手続きが比較的に簡単であるため、多くの中小企業のM&Aで行われています。また、株式を売却するだけで会社自体は存続するため、事業をそのまま継続したいと考えている方に適した手法です。

事業譲渡(会社の中身の譲渡)

事業譲渡とは、事業の一部または全部を譲渡する手法で、双方の会社が存続できることが特徴です。譲渡するものには「固定資産(有形・無形)」や「流動資産」「人材」「技術」「ノウハウ」などが挙げられます。特定の事業が抱えている潜在的な債務を切り離したい場合にも、活用することが可能です。

会社分割(会社を割って譲渡)

会社分割とは、権利義務のすべてまたは一部を他の会社へ承継させる手法です。権利や契約が、譲受側の会社にそのまま引き継がれます。会社分割には、新しく設立した会社へ事業を引き継ぐ「新設分割」と、既存会社に事業の権利や資産などを継承させる「吸収分割」があります。吸収分割は滅多にお目に掛かれませんので、実務上は新設分割で会社を2つに分けた後、どちらかの会社の株式を譲渡する、という方法になります。

吸収合併(他社と一体化)

合併は、2つ以上の企業を1つに統合する手法です。新会社を設立し、消滅する会社の資産や債務などを新会社に移す「新設合併」、統合する企業のうち1つ以外を消滅させる「吸収合併」があります。消滅する会社は存続する会社に吸収され、消滅する会社が持っていた権利・義務などのすべては、存続する会社によって引き継がれます。もっとも、実際には、殆ど目にすることのない方法です。

M&Aするメリット・デメリットとは?

会社を譲る方、譲り受ける方、それぞれにメリットとデメリットがあります。

譲渡側のメリット

事業の後継者がいない場合、廃業するしかありません。しかし、譲渡できれば事業の継続が可能になり、従業員の雇用も維持できます。M&Aの対価は金銭で支払われることが多いため、売却で得た資金で財務状況の安定化を図れることもメリットといえるでしょう。また、不採算事業を譲渡することで、業績が良好で収益が見込めるコア事業へ集中できます。

譲渡側のデメリット

売却側は、買収側の雇用や労働条件、待遇の変化に合わせなければならない場合もあるでしょう。しかし相手の条件に妥協してしまうと、M&Aが失敗してしまう可能性があります。なぜなら、雇用・労働条件や待遇の変化により、従業員のモチベーションが低下する恐れがあるからです。また、企業文化の変化が、組織や事業に悪影響を及ぼすこともあるでしょう。

譲受側のメリット

特定事業だけを譲受でき、優秀な人材や設備なども取得できるため、短期間で事業拡大が可能です。取引先や仕入れ先もそのまま手に入るので、手間をかけることなく規模拡大やエリア展開ができます。自社の弱い分野に強みを持った企業を買収すれば、事業の強化につながります。また、新規参入したい分野へのすばやい対応も可能です。

譲受側のデメリット

事業の多角化を無計画なM&Aで行った場合、統合がうまくいかず、企業価値の低下につながる場合があります。貸借対照表に載っていない簿外債務により、経営に悪影響が出る可能性もあるでしょう。また、統合の過程で企業風土や人事制度が変わることもあり、不満を持った人材が流出してしまう恐れもあります。

M&Aの大まかな進め方は?

M&Aを行うにあたって、どのようなビジネス戦略と手順を取ればよいのでしょうか。項目ごとに簡単に解説します。

1. 自社分析や目的を明確にする

M&Aでは、譲渡側・譲受側ともに希望条件を満たせるかどうかが重要になります。自社にどのような強み・弱みがあるかや、業界の規模やトレンド、景気動向などの分析を行いましょう。分析ができたら、経営者の高齢化や後継者不足、または既存企業の規模や対象エリアの拡大など、譲渡側・譲受側としての目的を明確化します。

2. アドバイザリー契約の締結

アドバイザリー契約とは、外部の専門家からアドバイスを得るために結ぶ契約をいいます。M&A成立には膨大な業務と専門的な知見を要するため、M&Aを専門とする会社に間に入ってもらいサポートを受けるのが一般的です。

アドバイザリー契約には、専任契約と非専任契約があります。専任アドバイザリー契約では、ほかのM&A仲介会社への依頼が制限されます。一方、非専任契約は、ほかのM&A仲介会社への依頼に制限はありません。非専任契約のほうが、マッチングの機会は増えますが、情報漏洩リスクが高まるというデメリットもあります。

3. 市場調査する

M&Aの方向性や需要を探るため、市場調査を行います。主な目的は、実施可能なM&Aの手法や、譲渡・譲受先を検討することです。特に、異業種企業との統合や新規参入を考えている場合には、未知の分野となるため念入りな調査が必要です。

4.  企業とのマッチングと合意

企業の優先順位をつけるため、20社~30社のロングリストを作成・検討後、数社~10社程度のショートリストを作りましょう。M&A仲介会社が両社の間に入り、匿名での情報提供から徐々に企業情報を開示します。譲渡側・譲受側がお互いM&Aに前向きであることが確認できたら、基本合意後にデューデリジェンス(買収監査・企業調査)を実施し、最終合意譲渡契約書を締結しましょう。

5.M&Aした後も大事

M&Aの実行(クロージング)した後、両社の統合作業に向けて適切なプロセスを踏むことが大切です。譲渡側と譲受側では企業文化や運営方法などが異なるため、両者の相違点や類似点を把握し、1つずつ統合していきます。

M&Aで成功した事例はある?

M&Aのビジネスの成功事例を3つ紹介します。

【事業売却】澤村製作所とカネバン

プラスチック射出成型を手掛けている創業50年の株式会社澤村製作所は、代表の高齢化にともない第三者への事業譲渡を実施しました。譲渡先は、アニメ向けグッズの製造・販売が主な業務である株式会社カネバンです。同業種であったため、M&Aはスムーズに進みました。自社で受けきれない製造を任せ、順調に売上を伸ばしています。

【株式譲渡】ライフ・コーポレーションと日輪

施設常駐警備事業を展開する株式会社ライフ・コーポレーションは、経営者の高齢化や後継者人材の不足にともない会社売却を検討していました。譲受側の株式会社日輪は、人材サービスを展開しており、自社の求人サイトに登録する高齢者の働き先の確保のためにM&Aを実施しました。このM&Aは、シナジー(相乗効果)による、新しい人材の入社実績につながっています。

【株式交換】LIGUNAとユーグレナ

スキンケアや雑貨、食品の企画開発・通信販売を行っている株式会社LIGUNAは、社内に後継者がおらず、外部で後継者を探していました。一方、食品や化粧品の販売などを行う株式会社ユーグレナは、ヘルスケア事業の強化・成長を希望しており、株式交換により株式会社LIGUNAを完全子会社化しました。

同じ事業理念を持つ2社が「持続可能性」を牽引し、商品開発力やブランド力を吸収することでヘルスケア事業の成長を見込んでいます。

M&Aについての必要知識のまとめ

M&Aにより、譲渡側は後継者問題の解消や資金調達が可能です。また、買収側は事業拡大やエリア展開、スムーズな新規分野への参入が可能になります。しかし、M&Aを無計画に行ってしまうと統合がうまくいかず、優秀な人材の流出や企業価値の低下につながる恐れもあります。M&Aを成功させるためにも自社分析や市場調査を行い、納得のできる譲渡先・買収先を見つけましょう。

M&Aに興味がある方は、みつきコンサルティングにご相談ください。多種多様な業種・業界で事業承継やM&Aを行ってきた豊富な経験により、売却成立後のフォローアップも可能です。M&Aを成功へと導くため、最適な候補先を提案させていただきます。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

【無料】資料をダウンロードする

M&Aを成功させるための重要ポイント

M&Aを成功させるための
重要ポイント

M&Aの事例20選

M&Aの事例20選

事業承継の方法とは

事業承継の方法とは

【無料】企業譲渡のご相談 
簡単30秒!最適なお相手をご提案

貴社名*
お名前*
電話番号*
メールアドレス*
所在地*
ご相談内容(任意)

個人情報の取扱規程をご確認の上、「送信する」ボタンを押してください。

買収ニーズのご登録はこちら >

その他のお問い合わせはこちら >