みなし配当とは、会社法上・会計上は配当ではないものの、税務上は配当とみなされるものを指します。本記事は、みなし配当がどのような場合に生じるか、その税務上の取扱い、注意などを解説します。
みなし配当とは
みなし配当とは、会社法上・会計上の配当ではないものの、税務上は実質的に剰余金の配当と同様に扱われる株主への支払いです。具体的には、自己株式の取得や組織再編等に伴い、会社から株主に対して行われる払い戻しのうち、利益剰余金を原資とする部分が、みなし配当として取り扱われます。
なぜ配当とみなされる?
会社が株主に金銭を払った際、実質的に利益剰余金から払い戻されていると考えられるため、税務上は配当とみなします。単純に株式の譲渡という形式面だけでなく、利益剰余金を原資とする株主への分配という実質面を重視し、配当として取り扱うことで課税の公平性を確保することを目的としています。
税金はどうなる?
みなし配当は、税務上は配当と同様の扱いを受けます。従って、みなし配当となった場合は下記を注意してください。
- 法人株主であれば、一定の要件に該当すれば益金不算入となり、該当しない部分は益金となる(原則として課税される)。
- 個人株主であれば、配当所得として取り扱われる(課税される)。
詳しくは以下で解説します。
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みなし配当が発生する場合
みなし配当が生じる主なケースを紹介します。
会社から払い戻しを受ける場合
会社から株主への払い戻しには、以下のようなケースがあります。
自己株式の取得
会社が自己株式を取得する際、株主に対して支払う対価のうち、資本金等の額を超える部分はみなし配当となります。
例えば、資本金が1,000万円、利益剰余金が2,000万円、発行済株式数が100株の会社が、1株あたり24万円で10株の自己株式を取得した場合、以下のようになります。
- 交付を受けた金銭等の価額=240万円(1株あたりの時価24万円 × 取得株式数10株)
- 資本の払い戻し額=100万円(資本金1,000万円 × 取得株式数10株 ÷ 発行済株式数100株)
- みなし配当の額=140万円(240万円 – 100万円)
その他、自己株式に係る税務については、以下の章で説明します。
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資本剰余金からの配当
資本剰余金を原資として配当金が支払われた場合、税務上は資本剰余金に加え利益剰余金も原資として配当金が支払われたとみなされるため、みなし配当が生じることになります。
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会社清算時の残余財産分配
会社が解散・清算し、残余財産を株主に分配する際、その財産には利益積立金に相当する利益剰余金も含まれているため、分配額の一部がみなし配当となります。
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組織再編
会社の合併や分割など、組織再編に伴って株主が金銭等の交付を受ける場合にも、みなし配当が発生することがあります。
合併
適格合併を除く合併において、被合併法人の株主が合併法人から受け取る金銭等の額のうち、被合併法人の資本金等の額を超える部分は、みなし配当となります。
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会社分割
適格分割型分割を除く分割型分割において、分割法人の株主が承継法人から受け取る金銭等の額のうち、分割法人の資本金等の額を超える部分は、みなし配当となります。
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自己株式の取得の税務
みなし配当が生じる代表例である自己株式取引について、説明します。課税関係は、株式を取得した発行法人側、発行法人に譲渡した法人株主、個人株主、によって異なります。
発行法人(自己株式を取得した会社)側の税務
自己株式を取得した法人は、みなし配当の金額に対して源泉徴収を行い、自己株式を取得した翌月10日までに税務署に納付し、「配当等とみなす金額に関する支払調書」を株主に交付し、税務署に提出する必要があります。
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株主(自己株式となる株式を譲渡した株主)側の税務
株主が法人か個人かで、まったくことなる課税関係になります。
法人株主の税務
自己株式となる株式を発行法人に譲渡した法人の場合、みなし配当額のうち、一定の金額が法人税の所得の計算上、益金として算入されず、みなし配当は受取配当等の益金不算入の規定の適用を受けます。具体的には、以下のように計算されます。
- 完全子法人株式等に係るみなし配当全額が益金不算入
- 関連法人株式等に係るみなし配当負債利子控除後の金額が益金不算入
- 上記以外の株式等に係るみなし配当50%相当額が益金不算入(非支配目的株式等の場合は20%相当額)
個人株主の税務
自己株式となる株式を発行法人に譲渡した個人の場合、みなし配当は原則として配当所得として取り扱われます。配当所得に対する税率は、上場株式等の配当等と、非上場株式等の配当等で異なり、下記の税率で算出されます。
- 上場株式等の配当等申告分離課税で、20.315%の税率(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
- 非上場株式等の配当等原則として総合課税で、所得税は累進税率(最高45%)、住民税は10%、復興特別所得税は所得税額の2.1%。この場合、配当控除として、配当金に一定率を掛けた金額を税額から控除して確定申告することができます。
ただし、相続税の課税対象となった非上場株式を発行会社に譲渡した場合のみなし配当については、一定の要件を満たせば配当所得ではなく株式譲渡所得として取り扱うことができる特例があります。
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みなし配当の計算方法
みなし配当の計算方法は、取引の種類によって異なります。本章では、みなし配当金の基本的な計算式と、計算が多岐にわたる理由、非上場株式の場合の注意点について解説します。
みなし配当の基本的な計算式
みなし配当の基本的な計算式は、以下の通りです。
みなし配当の額 = 交付を受けた金銭等の価額 - 資本の払い戻し額
このうち、資本の払い戻し額は、次のように計算されます。
資本の払い戻し額 = 資本金等の額 × 取得株式数 ÷ 発行済株式等の総数
みなし配当の計算方法は多岐に渡る
みなし配当が発生する取引には、自己株式の取得、合併、分割型分割、株式分配、資本剰余金の配当、残余財産の分配など、様々なケースがあります。ケースごとに計算方法が細かく規定されているため、計算が多岐にわたります。
例えば、合併の場合は以下のようになります。
みなし配当の額 = 交付を受けた金銭等の価額 - (合併直前の資本金等の額 × 合併により交付された株式数 ÷ 合併直前の発行済株式総数)
株価算定が必要なときがある
非上場株式の場合、みなし配当の計算に必要な株価が不明瞭なことがありますが、自己株式の取得や、適格合併に該当しない合併で合併対価として非上場株式を交付する場合などには、みなし配当の計算のために株価の算定が必須となります。
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みなし配当の注意点と対策
本章では、みなし配当の課税リスクや複雑な税務処理などの注意点について解説します。
高額の課税リスク
個人株主が非上場株式のみなし配当を受け取った場合、総合課税の対象となり、所得税の累進税率(最高45%)と住民税(10%)、復興特別所得税(所得税額の2.1%)を合わせると、最高で約55%の税率となる可能性があります。
一方、配当ではなく株式譲渡をした場合、株式譲渡所得の税率は一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)となり、大きく税率に差があります。
したがって、みなし配当による高額な課税リスクを避けるために、みなし配当が生じる取引を行う際は、税務専門家に相談し、適切なサポートを受けることが重要です。
みなし配当の複雑な税務処理と専門家の活用
みなし配当の税務処理は、取引の種類や株主の属性によって異なるため複雑です。また、みなし配当の計算には、非上場株式の株価算定など、専門的な知識が必要となるため、税理士など専門家のサポートを受けることが推奨されます。
専門家のサポートやアドバイスを得ることで、適切な税務処理が可能となり、ペナルティのリスクを回避することができます。
みなし配当のまとめ
みなし配当とは、会社法上の配当ではないものの、税法上は配当と同様に取り扱われる株主への支払いのことです。みなし配当は、自己株式の取得や組織再編等に伴う払い戻しの際に発生し、税務上の取り扱いが複雑であるため、注意が必要です。特に、個人株主が非上場株式のみなし配当を受け取る場合、高額な税負担が生じる可能性があります。みなし配当に関する税務処理は専門家に依頼し、適切なサポートを受けることが重要です。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験実績が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。 みつき税理士法人と連携することにより、税務面や法律面のサポートもワンストップで対応可能ですので、M&Aをご検討の際は、成功するM&A仲介で実績のある、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。
著者
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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