M&Aの目的は、譲渡する側か、譲り受ける側かによって、異なります。本記事では、譲渡側と譲受側のM&Aの目的と課題について解説します。M&Aを検討し始める方は、参考にしてみてください。
「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」
そのような漠然とした疑問をお持ちではありませんか? みつきコンサルティングでは、20年間・500件以上のM&A支援実績をもとに、本格的なご検討の前でも、情報収集を目的とした無料相談を随時お受けしています。まずはお話をお聞かせください。

▷関連:中小企業M&Aの相談先ランキング|銀行・税理士・仲介会社の違い
M&Aの目的とは
そもそもM&Aとは、日本法に基づく合併契約や株式譲渡契約などの正式な手続を通じて、会社の権利義務を移転させる取引全般を指します。近年では業務提携や持分取得といった緩やかな資本参加も広義のM&Aに含まれ、活用シーンはますます多様化しています。背景には少子高齢化、デジタル化、国際競争の激化など、中小企業を取り巻く経営環境の急速な変化があります。限られた経営資源を効率的に活かしながら、短期間で大きな成果を求められる現代において、M&Aは“時間とリソースをまとめて獲得する手段”として存在感を高めています。
▷関連:M&Aとは|目的やメリット・デメリット、手法、流れを簡単に解説
その目的は数多く語られますが、【事業承継】【企業の成長戦略】【個人の人生設計】の3類型に集約できます。
事業承継
譲渡オーナーが長年培ってきた技術や顧客との信頼関係は、会社の大切な資産です。後継者不在による廃業は、その資産を社会から失わせるだけでなく、経済全体にも負の影響を及ぼします。いわゆる事業承継型M&Aなら、外部の経営者や同業他社、あるいは異業種の投資家にバトンを渡すことで、会社のDNAを未来へ繋げられます。特に製造業では熟練工の技能承継が課題となりますが、M&Aにより工場と従業員が一体で引き継がれるため、技術の断絶を防止できます。雇用が守られる結果、地域社会にも安心感が広がり、取引先との関係も維持されやすい点は大きな利点です。
企業の成長戦略
国内市場が成熟する中、企業は新しい成長ドライバーを外部に求める傾向が強まっています。ものづくり企業がサービス事業へ展開したり、IT企業がリアル店舗網を獲得したりと、領域横断の動きが活発化しています。こうした戦略を自社単独で実行しようとすると、ノウハウ構築やブランド認知に膨大な時間を費やしますが、M&Aで資本力やネットワークのある大手企業のグループに入れば一気に成長曲線を引き上げられます。譲受企業側は、スケールメリットを享受できるため、仕入コストの削減や研究開発投資の効率化など、収益構造の強化にも繋がります。
経営者自身のライフプランを考えるとき、老後資金の確保だけでなく“引退後に誰が会社を支えるのか”という想いも無視できません。株式を譲渡し経営の一線を退いても、顧問契約を結び知見を後進に伝えるケースも多く、完全に事業と縁を切る必要はありません。会社売却後の譲渡オーナーの会社への関わり方、生き方は実に多様です。
個人の人生設計
一方で、創業時に夢見た事業の社会実装が一段落すると、次なる挑戦へ踏み出すために資本を回収したいと考える経営者は少なくありません。IPO以上にM&Aは非上場会社にとって最も現実的なイグジット手段です。譲受時に支払われる譲渡対価により、経営者は努力の成果を一度に実感できます。さらに、株式譲渡益は事業再投資や資産運用、社会貢献活動など、次のステージへの原資として自由度高く活用可能です。
▷関連:中小企業のM&A仲介とは?メリットとデメリット・費用相場・選び方
売り手のM&Aの目的
譲渡オーナーがM&Aを決断する場面では、複数の目的が絡み合うことが多いものです。後継者問題と同時に資金調達を行いたい、経営不振からの再生を図りたい、あるいは個人保証の解除と会社の拡大を両立させたいといった具合に、課題をセットで解決するためM&Aが選ばれます。以下では代表的な5つの目的を取り上げ、対応するメリットや留意点を詳述します。
後継者の確保
総務省の統計によると、中小企業経営者の平均年齢は60歳を超えています。しかし、後継者が決まっている割合は半数に届かず、業績が好調でも廃業する例が後を絶ちません。第三者承継型M&Aを活用すれば、社外の経営者や同業他社へスムーズに事業をバトンタッチできます。譲渡対価は退職後の生活資金として活用でき、従業員にも雇用が継続する安心感を示せます。帝国データバンクの調査では、後継者未定企業が40%を超えるとの報告もあり、社会的課題の解決策として期待が高まっています。
会社の存続
資本力ある譲受企業グループに参加することで、最新のITインフラやグローバル販路、専門人材を共有できるようになります。結果として、新商品の開発スピードが上がり、品質管理やガバナンス体制も高度化します。不採算事業を譲渡すると固定費が圧縮されキャッシュフローが改善し、譲受企業からの技術供与や共同仕入によりコスト構造を見直せば黒字転換も視野に入ります。この“双方向のメリット”こそが、譲渡オーナーと譲受企業双方がWin-WinとなるM&Aの醍醐味です。
創業家の利益確定
非上場会社の創業者が自社株式の評価額をすべて現金化し、貢献に見合う報酬を得る事実上は唯一の道としてM&Aは重宝します。“創業者利益”は、創業者が抱えるリスクと苦労への対価であり、M&Aはそれを顕在化させる行為でもあります。利益を経営者が元気うちに確定させれば、その後の相続等の準備が容易になり、家族間トラブルの防止にも寄与します。
企業の再建
売上が減少し債務超過に陥った会社でも、財務リストラクチャリングと外部資本の導入で再生の道が開けます。譲受企業(スポンサー)が資本注入すると同時に、販路共有やコスト削減ノウハウを提供することで、短期間でのV字回復を狙えます。専門人材の派遣やERP導入支援など、単なる資本注入にとどまらない多面的な支援が行われる点も特徴です。
連帯保証や債務からの解放
中小企業の融資では経営者の個人保証が慣例となっています。債務を抱えたまま引退することは心理的負担が大きいだけでなく、家族の生活にも影響します。M&Aで株式を一括譲渡すれば、債務も譲受企業へ承継され、個人保証も外れます。オーナー経営者にとって、保証解除はプライベート資産への影響を遮断し、精神的ストレスから解放される大きなきっかけとなります。
譲渡オーナーが抱える課題とM&Aで得られる解決策を整理すると、M&Aは「会社と従業員を未来へつなぎ、経営者の想いを形にする包括的なソリューション」であることがわかります。とはいえ、M&Aは譲渡オーナーだけのために行われる行為ではありません。次章では、譲受企業の視点から見たM&Aの目的に焦点を当て、どのようなシナジーや成長機会が期待できるのかを掘り下げます。
▷関連:負債も事業承継される?債務超過、連帯保証、負債削減対策とは
買い手のM&Aの目的
譲受企業にとってM&Aは単なる規模拡大ではありません。時間を節約し競争優位を築き、経営を安定させる多面的な武器となります。ここでは代表的な7つの狙いを整理し、その要点を解説します。
費用圧縮と時間短縮
既に実績を持つ会社を傘下に迎えれば、商品開発や販路開拓に要する年月を一気に短縮できます。大量仕入や共同生産によるコスト削減効果も期待でき、いわば高速道路に乗るように成長曲線を加速できます。自前で人材を育成し設備投資を行う場合と比べ、立ち上がりの赤字期間を圧縮できる点が魅力です。
シナジー効果の発現
技術と顧客基盤、ブランドと販売チャネルなど、互いの強みがかみ合うほど利益の総和は膨らみます。販促費を抑えるコストシナジー、クロスセルで売上を積み上げるレベニューシナジーなど、具体的なターゲットを定義するほど統合後の指針が明確になります。
新規事業進出の安全弁
未知の分野へゼロから挑戦するのは資金も時間も高いリスクを伴います。実績ある企業を譲受すればノウハウと顧客をセットで獲得でき、新市場参入を最短距離で実現できます。ネットサービスのように初期キャッシュアウトが大きい事業では、M&Aが収益化までの“谷”を飛び越える橋渡しとなります。
ポートフォリオで収益を安定させる
一つの事業に依存すると市況変動の揺れがそのまま業績に波及します。異なる収益源があればリスクが分散され、全体として堅実なキャッシュフローが確保できます。景気敏感型の製造業が定額課金型サービスを取り込むように、収益サイクルが異なる事業を掛け合わせる例は多く見られます。
海外市場への橋頭堡
クロスボーダーM&Aで現地企業を譲受すれば、法規制や商習慣の壁を低くしつつ販路と人材を同時に確保できます。すでに市場に根づいたブランドを活かしながら自社製品を投入する“ツーウェイ展開”も狙え、国内だけでは得られない成長機会を取り込めます。
技術・人材を一括確保
高度な技術や専門資格者の育成には時間も資金も掛かります。M&Aでキーマンごと取り込めば即戦力を確保できますが、統合後に流出すれば効果は霧散します。リテンションボーナスやストックオプションなど、人材定着策をあらかじめ契約に織り込むことが肝要です。
競合を取り込みシェア拡大
ライバル企業をグループ化すれば市場シェアをそのまま上乗せできます。価格競争を回避し間接部門を統合することでコストも削減できますが、従業員や取引先の心理的抵抗が大きくなる点には注意が必要です。早期に方針を示し、双方が納得できる体制づくりを行うことが成功の鍵となります。
▷関連:2025年版【M&A仲介会社一覧】上場・非上場・会計系を紹介
目的別に選ぶM&Aの型
M&Aには用途に応じた定型があり、最適な型を選ぶことで効果を最大化できます。
水平統合でシェア拡大
同業種同士が組むことで販売網や生産能力を束ね、市場占有率を一気に伸ばします。価格競争の緩和や重複投資の削減で利益率も向上します。
垂直統合でバリューチェーン強化
サプライチェーン上の前後工程を取り込むことで調達から販売までを一気通貫で管理。品質と納期をコントロールし競争力を高めます。
新市場・新製品でフロンティア開拓
既存製品を新市場へ持ち込む、あるいは新製品を既存顧客へ届ける二方向を同時に狙います。海外企業の譲受による一足飛びの市場参入もここに含まれます。
周辺領域を補強する周辺拡大型
物流やITなど、中核事業を支える隣接機能を取り込むことでボトルネックを解消し、顧客体験を向上させます。
リスク分散を狙う多角化型
本業と異なる事業を傘下に加え収益源を複線化。景気変動や業界特有のリスクをやわらげ、長期的な経営安定を図ります。
▷関連:M&Aの水平型 vs 垂直型の違いは?シナジー効果・事例を紹介
M&A実行判断のポイント
M&Aは万能薬ではありません。検討段階で外せない6つの観点を押さえましょう。
他手段と比較し最適解を探る
融資や増資、社内新規プロジェクトなど代替策は常に存在します。費用・時間・組織への影響を比較し、M&Aが本当に最善か検証する姿勢が重要です。
リスク分析と目標設定の精緻化
期待効果と潜在リスクを列挙し、数値目標やKPIを設定して可視化します。買収後に簿外債務や人材流出が起きても経営が揺らがない体制を整えましょう。
統合後の人材流出を防ぐ
従業員の待遇や労働条件は原則維持し、不安を払拭する説明機会を確保します。キーマンが離職すればシナジーは失われるため、コミュニケーションを密に取ることが成功と失敗の分岐点になります。
企業文化を融合させる
社風は短期間で書き換えられません。互いの文化を尊重し、ワークショップやジョブローテーションで共通の価値観を醸成する地道な取り組みが不可欠です。
想定外コストへの備えを固める
買収プレミアムやのれんの減損、偶発債務の発生は財務に大きな影響を与えます。価格調整条項や網羅的なデューデリジェンスで備え、想定外の負担を最小化しましょう。
専門家を伴走者に選ぶ
デューデリジェンスや労務対応など専門知識を要する局面が多いのがM&Aです。実績豊富な仲介会社や会計士、弁護士と二人三脚で進めることで失敗リスクを大幅に減らせます。
▷関連:M&A仲介会社の比較|信頼できるアドバイザーを選ぶポイント
M&Aの目的のまとめ
M&Aは譲渡オーナーにも譲受企業にも複数の課題を同時に解決し成長を加速させる力強い選択肢です。目的と類型を正しく結び付け、リスクを定量的に把握したうえで専門家と伴走すれば、理想の成果に近づけます。
当社は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した実績経験が豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が多く在籍しております。M&Aをご検討の際は、みつきコンサルティングにご相談ください。
著者

- 名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
-
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
最近書いた記事
2025年8月30日不動産管理会社の事業承継を成功させる対策|節税・活用・M&A
2025年8月30日事業承継アドバイザリーとは?役割・依頼メリット・選び方・資格
2025年8月16日M&Aの失敗事例|大企業・中小企業の事例・失敗を避ける戦略と実務
2025年8月16日近年のM&A事例|最近の有名な事例・中小企業の成功事例も紹介