近年、ブランドM&Aが関心を集めています。ブランドM&Aとは、企業などが保有するブランドの獲得を目的としたM&Aです。この記事では、ブランドM&Aについて解説します。アパレルを中心にブランドM&Aを実施する理由やメリット、事例も網羅しているため、ブランドM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
ブランドM&Aとは
ブランドM&Aとは、1から成長させるのではなく、高い知名度を持つブランドの譲受で、短期間での展開が可能なM&Aの手法です。実施する目的は企業ごとに異なりますが、近年は、ブランドを買うM&Aが目立っています。ブランドM&Aは特にアパレル業界において、コスト(費用)削減や事業展開などを目的に、多く行われている現状です。
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ブランドの重要性と価値
ブランド力は、商品やサービスに対する、消費者の認知や評価の高さを表します。近年の消費者は、多様な選択肢のなかから商品を選べる環境に置かれています。多くの競合に勝つためには、商品にブランド力を持たせ、競合との差別化を図ることが重要です。
アパレル業界とは
アパレル業界とは、衣服に関する商品やサービスを取り扱う業界です。デザインや企画、製造、販売などを行います。アパレルメーカーや各種製造業者、小売店など、さまざまなタイプの企業で構成されているのが特徴です。
業界におけるブランドM&Aの動向
大きな転換期を迎えたアパレル業界では、従来からの転換と改革を図るための取り組みが求められています。また、販売チャネルの強化を目的として、業種を問わないM&Aの実施が多い傾向です。
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ブランドM&Aが盛んになった理由
国内市場が成熟し、新たなブランドの確立が厳しくなっていることが、ブランドM&Aの背景にあります。例えば飲料業界は、高い地位を築き上げたブランドが多く、ロングセラー商品が売り場を占めているため、新ブランド育成が難しいといわれています。アパレル業界においては、市場状況が横ばいで伸び悩んでいる現状です。
参考:アパレル業界 売上高ランキング(2021-2022年)-業界動向サーチ
ブランドM&Aで得られるメリット
ここでは、M&Aを行うことで得られるメリットについて、譲渡側と譲受側に分けて解説します。
【譲渡側】事業を存続できる
譲渡側の場合、自社ブランドを譲渡できれば、ブランドや商品を消滅させずに済みます。また、経営が危ぶまれる小規模企業においても、ブランドM&Aにより事業を継続可能です。
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【譲受側】事業の拡大や多角化ができる
譲受側の場合、新たな要素を他企業から取り入れることで、事業の拡大や多角化が実現できます。既存の知名度や販路を活用することで、ブランド展開を効率的に進められるでしょう。
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アパレル業界同士のブランドM&Aの事例10選
アパレル業界同士のブランドM&Aについて、具体的な事例を解説します。
TSIホールディングスと3ミニッツ
TSIホールディングスは、アパレルの企画から販売までを取り扱う多数の傘下企業を持ちます。同社は、Webマガジンの運営を行う3ミニッツに対してM&Aを実施しました。デジタル企業化を目的とした、経営戦略の一環です。ETRÉ TOKYOの事業を譲受し、新たに設立した子会社で同事業の運営を行うことで、新たな顧客層の獲得や市場拡大が期待されています。
C.R.E.A.Mとジャパンイマジネーション
レディースのカジュアルブランドを手掛けるジャパンイマジネーションと、ドレスの企画から販売までを行うC.R.E.A.Mの事例です。C.R.E.A.Mは、フォーマルなシーンを意識した事業展開だけではなく、他分野への展開も模索していました。このM&Aでは、ジャパンイマジネーションから2つのブランドを譲受し、自社サイトを活用した展開を行っています。
W&Dインベストメントデザイン・八木通商とリデア
多くの海外ラグジュアリーブランドを扱うセレクトショップ「STRASBURGO」を展開するリデアと、W&Dインベストメントデザイン、八木通商の間で行われた事例です。ファンド運用会社であるW&Dインベストメントデザインと、数々のブランドを扱う繊維専門商社である八木通商がリデアの共同スポンサーとなり、新設されたオンラインストアに事業が譲渡されました。
宝島ジャパンとアパレルECサイト運営会社
アパレルショップ3店舗を運営する宝島ジャパンと、アパレル・雑貨を中心とするECサイト運営会社の事例です。宝島ジャパンは、アパレル販売ビジネスのデジタル化を目的として、インターネットに強く、類似事業を取り扱う企業とのM&Aを検討していました。
過剰在庫を抱えるECサイト運営会社とニーズ(需要)が合致し、デジタル面の強化やシナジー(相乗効果)が期待できることから、宝島ジャパンが事業と在庫を譲受しました。
ワークトゥギャザー・ロックトゥギャザーと神戸ザック
創業約50年もの歴史を持つ神戸ザックと、セレクトショップを運営するワークトゥギャザー・ロックトゥギャザーの事例です。このM&Aの背景には、神戸ザック側の後継者不足があります。廃業を検討していましたが、神戸市産業振興財団のサポートチームによる支援を受けたことがきっかけで、M&Aに至りました。
神戸ザックが、ワークトゥギャザー・ロックトゥギャザーに「イモック」の事業を譲渡し、神戸ザック前代表の指導の下で製造・販売される流れとなりました。
ニッセンとマロンスタイル
大きいサイズの女性専用アパレルサイトを運営するマロンスタイルと、婦人服を中心にさまざまな通販事業を手掛けるニッセンの事例です。ニッセンは、特殊サイズセグメントへの経営資源集中を目指しており、その一環としてM&Aを実施しました。ニッセンがマロンスタイルの全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。
ワールドとラクサス・テクノロジーズ
高級ブランドバッグのレンタルサービスが特徴のラクサス・テクノロジーズと、多数のアパレルブランドを展開する企業の持株会社であるワールドの事例です。それぞれのニーズ(需要)が合致して、大きなシナジー(相乗効果)が期待できるため、ワールドが譲受する形でM&Aが行われました。
アングローバルとアンドワンダー
アングローバルが、アンドワンダーの全株式を取得し、子会社化した事例です。TSIホールディングスの子会社だったアングローバルが、EC分野を得意とするアンドワンダーを取り込むことで、事業規模の拡大を図りました。
花菱縫製とメルボグループ
オーダースーツの企画から販売までを行う花菱縫製と、紳士服やメンズウェアーを扱うメルボグループの事例です。花菱縫製とメルボグループは、生産・販売事業を統合することでシナジー(相乗効果)を発揮できると考え、M&Aに至りました。
TSIホールディングスがHUF
TSIホールディングスは、HUFの株式を90%取得し、子会社化しています。HUFは、アメリカ・欧州に事業展開するアパレルブランドです。日本での販売権は、「STUSSY」を展開するTSIホールディングスの子会社が取得しています。同グループ企業のノウハウを積極的に取り入れることで、国内・アジアを中心とした海外市場での成長が見込まれています。
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異業種とアパレル業界によるM&Aの事例8選
異業種とアパレル業界によるM&Aも行われています。ここでは、具体的な事例について解説します。
Spiberと豊島
豊島がSpiberの第三者割当増資を引き受けて、両社の間で共同研究契約を締結した事例です。環境に配慮した素材に注目し、アパレル産業全体に関わる事業を展開している豊島と、植物由来構造たんぱく質素材の産業化に取り組むSpiderとの、シナジー(相乗効果)が期待されました。主な目的は、さまざまな分野で構造タンパク質繊維を普及させるための共同開発です。
アパレルReSTARTファンドとFactory Express Japan
アパレルReSTARTファンドが、Factory Express Japanの全株式を取得し、完全子会社化した事例です。どちらも支援事業を展開する会社であり、Factory Express Japanの事業拡大を目的として行われました。
インキュベイト・ファンドとpark&port
インキュベイト・ファンドとEast Venturesが、park&portによる第三者割当増資を引き受けて、出資した事例です。park&portの資金調達を目的として行われ、この事例によって、park&portが調達した資金は、累計1億円を突破しました。
九州オープンイノベーションファンドとpatternstorage
patternstorageが、九州オープンイノベーションファンドとちゅうぎんインフィニティファンドを引受先とする第三者割当増資をした事例です。patternstorageは、アパレル生産管理クラウドソフトウェアなどを開発しており、アパレル製造業に対して、サプライチェーンのDX支援ソフトウェアの提供を予定しています。
FFGベンチャービジネスパートナーズが運営する九州オープンイノベーションファンドと、中国銀行と中銀リースが運営するファンドのちゅうぎんインフィニティファンドを対象に、資金調達を目的として行われました。
ZホールディングスとZOZO
日本最大級のファッションECサイトを運営するZOZOと、大手インターネット企業Zホールディングスの事例です。Zホールディングスが、議決権割合50.10%にあたる株式を取得してZOZOを子会社化し、両社の間で資本業務提携契約が締結されました。
株式会社ヤギと有限会社アタッチメント
繊維の卸売業などを生業とする株式会社ヤギが、アパレル事業を行うアタッチメントに注目し、M&Aに至った事例です。株式会社ヤギは、有限会社アタッチメントの全株式を取得し、子会社化しました。M&Aの目的は、自社で商品の企画から販売まで行うノウハウの獲得です。ブランド力と販売事業強化も期待されています。
AnyMind GroupとLÝFT
AnyMind GroupがLÝFTに資本参加し、資本業務提携契約した事例です。インフルエンサーを起用した、協同ブランドの立ち上げを計画していたAnymind Groupは、その一環として、フィットネスブランド事業を手掛けるLYFTとの資本提携を行いました。一方、LYFT側は、Anymindの持つグローバル網を活用した販路拡大を目的としています。
丸井グループの子会社とGOOD VIBES ONLY
アパレル業界向けにCGやAIを駆使したDXソリューションを提供するGOOD VIBES ONLYと、多くの事業を展開する丸いグループの子会社の事例です。丸井グループ子会社のD2C&Co.は、GOOD VIBES ONLYへ出資して、資本業務提携契約を締結しました。
丸井グループの実店舗運営やクレジットカード事業と、GOOD VIBES ONLYが提供するサービスのシナジー(相乗効果)を期待して行われました。
ブランドM&Aのまとめ
近年増加しているブランドM&Aは、1からブランドを成長させるのではなく、既存の認知度の高いブランドを獲得することで、早いブランド展開を可能にします。また、市場の成熟や消費者の動向変化に応じて、商品やサービスに対し、ブランド力を持たせることが成長戦略に必要です。
ブランドM&Aをはじめとして、効率的なM&Aを行うためには、専門知識が必要です。知識や経験がない場合、不利な条件でのM&Aとなってしまうケースもあります。このような失敗を防ぐためにも、M&Aの専門家に相談することがおすすめです。 みつきコンサルティングには、経営コンサルティング経験者も多く在籍しています。対象企業の詳細な事業分析を実施した上で、シナジー(相乗効果)創出を見込める候補先を紹介します。M&Aに関するご相談は、みつきコンサルティングにお任せください。
著者
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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