M&A後に会社名は変わる?商号変更の利点と欠点・回避法・相談先

事業承継のためにM&Aを検討する中小企業の経営者が増えています。譲渡後に行われる会社名が変わるのか、気になさる人も多いでしょう。本記事では、M&A後の社名はどうなるのか、変更事例などを含めて説明します。

M&A後に会社名はどうなる?

中小企業がM&Aで会社を譲渡した場合、会社名はどうなるのでしょうか。

社名は変わらないことが多い

中小企業が大手企業にグループに入るM&Aは増えています。この場合に、その大手のブランドを冠した社名に変更させるかというと、変更しないことが多いです。譲渡企業が長年使用してきた商号には、その業界、その地域で、長い年月をかけて蓄積されてきた信用(のれん)が宿っていることが多く、その点を譲受企業も大事にします。少なくとも、M&Aをして短期間で変更することは少ないです。

M&A後も社名を残すメリット・デメリット

M&A後に会社名を維持する場合、メリットとデメリットの両方があります。

会社名を維持するメリット

  • 従業員や取引先が混乱せずに済む
  • 既存の信頼力やブランド力もそのまま活かせる
  • 会社名が変わるとさまざまな手続きのために費用がかかりるが、会社名を維持すれば変更に伴う手続・費用が不要

会社名を維持するデメリット

  • 元の会社に対する従業員の帰属意識も残ってしまい、新しい組織への抵抗感が強くなる恐れがある
  • 会社の体制や方針が変わっても、会社名が変わっていなければ新鮮味を出しにくい

M&A後に会社名が変わることもある

M&Aを実施すれば、会社名が変わる場合もあります。M&A後の会社名の変更について明確なルールはなく、譲受側が判断することが多いですが、譲渡側とのM&Aの交渉のなかで決めていきます。

一般に、M&Aの方法として、株式譲渡であれば社名を変更しない(もしくは軽微な変更に留める)ことが多く、合併(実務的は殆どありません)であれば変更することが多いです。事業譲渡は、会社(法人格)ではなく事業を譲渡する方法のため、社名に影響はありません。

M&A後に社名変更する理由・背景

M&A後の会社名の変更は成長戦略の1つでもあります。ここでは、M&Aで会社名が変更される理由や背景について解説します。

心機一転するため

M&Aで会社名が変更される背景には、新しい会社として心機一転を図る目的があります。特に、合併した会社にマイナスのイメージがある場合、その払拭を目指しているケースが多いようです。

ブランド名やサービス名を押し出すため

ブランド名やサービス名を会社名に取り入れ、アピールしたいという狙いがある場合もあります。既存のブランド名やサービス名の認知度が高ければ、会社名に取り入れると消費者から認識されやすくなるでしょう。

会社名変更は株主総会で承認後に行う

M&A後の会社名を変更するかどうかは、存続会社が決定します。具体的には、株主総会の決議を経て定款を変更する必要があります。そのため、M&Aにおける会社名の変更は、存続会社の事情による場合が多いでしょう。

商号変更のパターン

M&Aにより社名を変更するケースについて、2つに分けて紹介します。

新商号とするケース

M&Aに伴って会社名を変更する場合、新社名をつけるパターンがあります。これまでの社名から新しい社名に変える方法です。メリットとデメリットの両方があるため、それぞれについて解説します。

新社名のメリット

M&Aに伴って新社名をつけると、譲渡企業に対する従来のイメージを一新することが可能です。また、従業員の旧会社への帰属意識も払拭でき、新たなスタートを切りやすくなります。

新社名のデメリット

それまでにない新しい社名をつければ、知名度や認知度を向上させるために労力を割く必要があります。知名度や認知度が高い会社が譲渡する場合、コストが余分にかかるでしょう。M&Aの手きと会社のアピールを同時進行で進める必要があり、手間が大きくなります。

社名結合するケース

M&Aに伴って会社名を変更する場合、複数の社名を結合するパターンもあります。社名結合にもメリットとデメリットの両方があるため、それぞれについて解説します。

社名結合のメリット

社名結合なら、M&Aにより譲渡する会社の社名を活かせます。もともとの知名度や認知度も維持しやすいでしょう。グループ企業として互いを尊重し易いメリットもあります。M&A前後の変化を社内外に感じさせたくない場合も効果的です。

社名結合のデメリット

社名結合を選択すると、もとの会社への従業員の帰属意識が残りやすくなります。その結果、合併後の仕事に対する意欲が低下する恐れもあります。また、複数の社名を組み合わせるため、社名が長くなりがちです。新鮮味もあまり感じられません。

会社名変更の事例

合併によって会社名が変更された事例は多数あります。会社名変更の事例を具体的にあげると、以下のとおりです。

  • ・東京三菱銀行+UFJ銀行→三菱東京UFJ銀行(現在の三菱UFJ銀行)
  • ・マルハ株式会社+株式会社ニチロ→マルハニチロ株式会社
  • ・オイシックス+大地を守る会→オイシックスドット大地(現在のオイシックス・ラ・大地)
  • ・JXエネルギー+東燃ゼネラル石油→JXTGエネルギー(現在のENEOS)

M&A後の社名変更を避ける方法

M&A後も会社名を変更しないためには、どうすればよいのでしょうか。回避の方法について紹介します。

築いてきた信頼力やブランド力をアピールする

譲受側は取引先の混乱を避けたいという思いがあり、事業承継ならもとの会社名が残るケースがほとんどです。ただし、あくまでも譲受側の判断によるため、築いてきた信頼力やブランド力をアピールするとよいでしょう。会社名の変更の有無については、M&Aの契約前に確認してください。

譲受側のM&A戦略を把握する

M&Aは成長戦略の1つであり、譲受側によってイメージしている内容は大きく異なります。そのため、なかには既存のブランド名や会社名の存続を望む譲受先もあります。会社名の変更を回避したい場合は、そのような譲受先を探しましょう。

会社名維持をM&Aの条件にする

会社名の維持を最優先したい場合は、M&Aの最終契約書(株式譲渡契約書など)の条件として盛り込む方向で、譲受企業と協議をしてくことになります。

会社譲渡の相談先

M&Aの譲渡側の相談先としては、さまざまな専門家があげられます。以下で具体的な相談先について解説します。

士業事務所

士業事務所とは、公認会計士、税理士、弁護士などのことです。M&Aにおいて重要な財務や法務などの専門家であり、さまざまなアドバイスが可能です。M&Aの譲受側から相談を受けるケースが多いようです。

FA(ファイナンシャル・アドバイザー)

銀行や証券会社などの金融機関がFA(ファイナンシャル・アドバイザー)としてM&Aの相談に乗るケースもあります。主に、金額の大きい大規模なM&Aについて対応しています。

M&A仲介会社

仲介会社は、M&Aの仲介業務を専門的に扱っている会社です。譲渡側と譲受側の中立的な立場からサポートします。主に中小企業のM&Aについて実績が豊富な会社が多くなっています。

M&Aにおいて仲介会社を利用すると、さまざまなメリットを期待できます。どのようなメリットがあるのか解説します。

成約までにかかる時間や労力を削減できる

M&A仲介会社はM&Aを専門に扱っており、円滑なコミュニケーションが可能です。譲渡側と譲受側の間に立って対応するため、双方のバランスを取る役割を果たせます。その結果、成約にかかる時間や労力の削減につながるでしょう。

譲渡先の選定をサポートしてもらえる

M&A仲介会社は、条件に合う譲渡先候補を紹介してくれます。M&Aについて多くの情報やネットワークをもっており、サポートを受ければ譲渡先の選定がスムーズに進みます。

トラブルが回避できる

M&A仲介会社に依頼すれば、M&Aに関して漏れのない取り決めができます。必要な情報をすべて盛り込んだ契約書や覚書を作成できるため、契約前後に発生しがちなトラブルの回避を期待できるでしょう。

M&A仲介会社なら「みつきコンサルティング」

M&A仲介会社としては「みつきコンサルティング」がおすすめです。状況にもよりますが、数社から数百社の候補を紹介できるネットワークを保有しています。専任コンサルタントがつき、プロジェクトの完了まで徹底的にサポート可能です。

M&A後の社名変更のまとめ

M&Aにおいては会社名が変更されるケースも少なくありません。会社名の変更は基本的に譲受側の判断によって決まるため、会社名を維持したいなら事前の交渉や契約が重要となります。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社です。事業所内承継や親族内承継といった他の方法とも比較しながら、M&Aの必要性を判断できます。また、M&Aとともに問題になりやすい相続対策にもワンストップで対応可能です。 M&A後に会社名を変更したくない場合も、条件に合う候補先を紹介できます。M&Aを検討している場合は、ぜひご相談ください。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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