M&Aには多くのプロセスがあります。プロセスごとに必要な書類を作成しなければいけないため、必要書類をしっかりと把握しておくことが重要です。この記事では、M&Aを検討したいと思っている経営者に向けて、M&Aで必要な書類には、どのようなものがあるかを紹介します。
株式譲渡や事業譲渡などにおいて、一般に必要となる書類について、M&Aの流れに沿って説明します。それらの作成は、譲渡側(オーナー経営者など)がご自身で作成・用意すべき書類もありますが、大部分はM&A仲介会社が作成してくれます。
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1.お相手候補の選定段階での必要書類
M&Aの選定段階で必要な書類は、大きく分けて4つです。ここでは、それぞれの書類を詳しく解説します。
秘密保持契約書
秘密保持契約書とは、機密情報を外部に漏らさないことを約束するための契約書です。M&Aでは、譲受側に具体的な情報を開示する前に譲受側と譲渡側で秘密保持契約書を締結します。
たとえば、今後の交渉時に伝える社名や取引先、経営状況、業務内容といった機密情報を外部に漏えいしないようにする必要があります。また、M&Aを検討していること自体が機密情報となり、漏えいしてしまうと取引先などに悪影響を与える可能性もあるため、必ず秘密保持契約書を交わしましょう。
▷関連:M&Aにおける秘密保持契約の役割|締結タイミングや記載項目を解説
アドバイザリー契約書
アドバイザリー契約書とは、M&Aをサポートしてもらう仲介業者と交わす契約書です。アドバイザリーとは、助言や勧告、顧問という意味があります。
具体的な契約内容としては、M&Aを実施するうえでの仲介業者の業務範囲や業務責任、サポートに対する具体的な報酬、免責事項や秘密保持の内容などが挙げられます。M&Aの仲介業者に依頼する範囲を明確にするために、アドバイザリー契約書の締結が必要です。アドバイザリー契約書を作成する際には、弁護士のサポートを受けるケースもあります。
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ロングリスト・ショートリスト
仲介業者と条件を打ち合わせたうえで、ロングリストとショートリストを作成しましょう。ロングリストとは、M&Aの対象候補となる企業をまとめたリストのことです。ロングリストは一般的に10数社以上の候補をまとめます。
ショートリストとは、ロングリストからさらに条件を細かく設定し、数社程度まで絞り込んだリストです。ロングリスト・ショートリストを作成する際にはM&Aの目的を明確にして、それに合致する企業をリストアップすることが重要です。
▷関連:M&Aのロングリストとは?ショートリストとの違い・記載項目・注意点
ノンネームシート
ノンネームシートとは、その名のとおり匿名性のあるシートです。M&Aの際には仲介業者を介して、譲受側の候補先に匿名でコンタクトを取ります。ノンネームシートでは、譲渡側の企業名を匿名として譲受側の候補先に情報を提供します。
譲渡側企業の特定を防ぐために、記載情報は絞られておりエリアや業種、売上高といった最低限の情報に留められていることが特徴です。M&Aが成立するか不透明な段階のため、情報漏えいを防ぐ目的でノンネームシートを提供します。
2.交渉段階での必要書類
M&Aの交渉段階で必要な書類は、主に4つです。ここでは、各書類について詳しく解説します。
企業概要書
企業概要書とは、詳細な譲渡側の情報を記載した書類です。インフォメーション・メモランダムや頭文字を取ってIMとも呼ばれます。
譲受側と秘密保持契約を結んだ後は、譲渡側は譲受側に対して具体的な企業情報を開示しなければなりません。この際に用いられるのが、企業概要書です。たとえば、譲渡側の名称や所在地、事業内容、財務状況、組織形態などの具体的な情報が記載されています。譲渡側の価値を評価するための判断材料の1つでもあります。
▷関連:企業概要書(IM)とは?開示時期・重要性・記載内容・注意点を解説
意向表明書
意向表明書とはM&Aを実施する意向を記載した書類です。譲受側がM&Aを実施する意向の場合には譲渡側企業に対して意向表明書を提出します。譲渡側より提出された企業概要書などを参考にしながら検討を行い、意向表明書という形にして提出します。
たとえば、希望する価格や資金調達の手段、譲り受ける目的、スケジュールなどを記載するケースが一般的です。意向表明書は法的拘束力を持つものではなく、交渉をスムーズに進めるための材料として使われます。
▷関連:M&Aの意向表明書とは|目的、記載内容、基本合意書との違い、注意点
基本合意書
基本合意書とは、M&Aの交渉を進める際に交わす書類です。M&Aの交渉を行うなかで、譲受側・譲渡側双方がM&Aの実施に合意した場合に、基本合意書を取り交わします。基本合意書では、M&Aの基本条件や守秘義務、今後のスケジュールなどの項目が記載されます。
基本契約書の内容に沿ってM&Aを行うことになりますが、意向表明書同様に法的拘束力はありません。そのため、今後の流れ次第では変更される項目も出てきます。
▷関連:M&A・株式譲渡における「基本合意書」意向表明との違い・目的とは
デューデリジェンス(買収監査・企業調査)に関する書類
デューデリジェンス(買収監査・企業調査)とは、譲受側が譲渡側の財政状況や経営状況、事業内容、労務などを調査して、M&Aのリスクを検討することを指します。デューデリジェンス(買収監査・企業調査)に必要な書類の一例は以下のとおりです。
- 決算書、確定申告書(3期分)
- 不動産売買契約書
- 不動産登記簿謄本
- 経営計画書
- 月次試算表
- 固定資産台帳
- 固定資産税納税通知
- 商業登記簿謄本
- 株主総会議事録、取締役会議事録
- 定款
- 株主名簿
- 組織図
- 従業員名簿
- 雇用契約書
- 就業規則や退職金規定などの規程類など
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3.最終契約段階での必要書類
M&Aの最終段階で必要な書類は、最終契約書です。ここでは、最終契約書について詳しく解説します。
最終契約書
最終契約書とは、M&A実施における双方の権利・義務を規定する契約書です。DA(Definitive Agreement)と呼ばれることもあり、M&Aの手法によって最終契約書の名称は変わります。
株式の売買によって経営権を移転させる株式譲渡によるM&Aの場合には「株式譲渡契約書」(SPAとも呼ばれます)、事業の一部もしくはすべてを譲渡する事業譲渡の場合には「事業譲渡契約書」となります。2つ以上の会社を1つに合併する吸収合併の場合は、「吸収合併契約書」が正式名称です。
一般に、最終契約書への調印と同時に、またはその後少しの時間を空けてM&Aが実行(クロージング)されます。
▷関連:最終契約書(DA)はM&Aで最重要の契約!記載項目・注意点とは
▷関連:クロージングとは?M&Aにおける流れ・必要書類・前提条件を解説
最終契約書において重要な3つの条項
最終契約書を交わす際には、3つの条項が重要になります。ここでは、重要な3つの条項についてそれぞれ解説します。
競業避止義務
競業避止義務条項とは、一般的にM&A成立後に譲渡側に課せられる競業禁止の義務のことです。M&Aが成立した後、譲渡側がすぐに譲受側と同じような事業を再度行うことを一定期間禁止するものです。同様の事業をすぐに開始することで、M&Aの目的を果たせなくなる可能性があるため、譲受側に不利益を与えることを避ける目的で設けられます。
キーマン条項
キーマン条項とは、ロックアップとも呼ばれます。譲渡側の主要人物(キーマン)がM&A成立後の一定期間、譲受側に残ることを取り決めたものです。M&A後、譲渡側の社長や役員といった主要人物がいきなり抜けてしまうと、その後の運営がスムーズに進まないケースもあります。キーマン条項は、M&A後の事業運営を円滑に行うために定められるものです。
表明保証
表明保証とは、譲渡側が譲受側に対して表明し保証することです。M&Aの際にはデューデリジェンス(買収監査・企業調査)が行われますが、譲渡側の状態をすべて把握することはできません。そのため、譲渡側が譲受側に対して最終契約書に記載される、財務状況や法務、労務などの事項が正確な内容だと表明し保証する目的で、表明保証を行います。
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M&A・株式譲渡での必要書類のまとめ
M&Aでは、選定段階・交渉段階・最終段階とステップごとに必要な書類が異なります。そのため、どのような書類が必要かを事前に把握しておくとよいでしょう。M&Aの手続きや必要書類の準備には知識が必要になるため、M&A仲介業者を活用するのが一般的です。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループであるためM&Aありきの提案ではなく、複数の選択肢のメリット・デメリットを比較して適切な方法をご提案します。M&Aの対象になりにくい債務超過、収益赤字の企業でも、出資後(全部または一部)に事業再生を行い、企業価値を向上したうえでM&Aを実施することも可能です。M&Aをお考えなら、お気軽にご相談ください。
著者
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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