M&Aは、オーナー経営者にとっては事業承継や事業成長等のため、譲受企業にとっては事業規模拡大や新分野参入等のため実施されることが多く、近年その件数は増加傾向にあります。本記事では2024年を含む過去10年間のM&A件数の推移、今後の予測について解説します。
2024年の日本企業におけるM&A件数は過去最多の見通し
国内におけるM&Aの件数は、ここ数年で過去最多ペースで推移しています。レコフM&Aデータベースによると、2023年の日本企業におけるM&A件数は4,304件でした(公表ベース)。2024年は、11月までで4,278件であり、12月の件数が2023年と同水準(411件)と仮定すると年間では4,689件に達します。これは過去最多の成約件数になります。
出所:レコフM&Aデータベースを弊社にて再編加工
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M&A件数が増加している理由
近年、M&Aの件数が増加している要因はさまざまなものがあるとされています。この記事では、M&Aの件数増加に関わる理由を詳細に説明いたします。
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後継者問題の深刻化
日本国内においては、後継者問題が深刻化しています。事業自体は利益を上げているにも関わらず、後継者が見つからず廃業を検討せざるを得ない中小企業が増加しているのです。後継者が見つからない企業にとって、M&Aが有効な解決策となっており、これが件数の増加に繋がっています。後継者問題の早期解決は難しいため、今後もM&Aが注目されるでしょう。
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海外の技術や市場を取り入れる戦略が普及している
国内市場に限界を感じる企業が増えており、彼らは海外の技術や市場を取り入れる戦略に舵を切っています。更に、国内では需要が高まらない商品やサービスを、海外M&Aを通じて展開する事例も増えているのです。このようなクロスボーダーM&Aは、今後も盛んに実施されると予想されます。
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企業の不採算事業や非中核事業の譲渡も増えている
コロナ禍を経て債務が増大した企業は、不採算事業や非中核事業を譲渡することで過剰債務の解消を図っています。倒産リスクを軽減するため、事業の切り離しをM&Aで実施するケースが増えており、これもM&A件数の増加要因となっています。
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参考:過去のM&A件数とその背景
歴史を振り返ると、M&Aの件数は様々な要因によって変動してきました。本稿では、M&A件数の変化をめぐる歴史と、その背景について詳しく解説します。
リーマンショックによるM&A件数の影響
リーマンショック以前は、M&A件数が増加の一途をたどっていました。多くの企業がM&Aに関心を寄せ、2000年~2003年には1,700件前後で推移していましたが、2004年以降は2,000件を超える水準に達しました。しかしながら、リーマンショックが起こると、M&A件数は大幅に落ち込み、2011年には過去の低い水準まで戻ってしまいました。
新型コロナウイルスによるM&A件数の変化
リーマンショックを乗り越えた2012年から2019年にかけては、M&A件数は順調に増加していました。2019年には4,000件に達しましたが、新型コロナウイルスの影響を受けて2020年には3,730件に減少しました。それでも3,000件を超えていることから、国内の企業の間でM&Aが一定の浸透を果たしているといえるでしょう。そして、2021年と2022年には再び4,000件以上のM&Aが実現しています。
今後のM&A件数の予想
今後のM&Aの動向を予想することは、M&Aを実施する企業にとって重要な準備の一つです。ここではM&Aの今後について考察します。
- 後継者問題の解決策としてM&Aが注目され続ける
- 海外市場への進出や技術取得を目的としたM&Aが増加する
- 事業再編やリスク軽減を目的としたM&Aが引き続き行われる
- 経済再生などの変化に伴いM&Aの機会が増加する可能性がある
これらの要因を踏まえ、今後もM&Aの件数は増え続けるでしょう。
M&A件数の増加に対する期待が高まる
2025年以降も、M&Aへの期待はますます高まっていくでしょう。過去のデータを見る限り、リーマンショック後などの不況時であっても、一時的に減少しても最終的には増加傾向に転じています。
また、近年ではM&Aが認知度を高め、事業譲渡の方法としてますます普及しています。このため、M&Aに興味を持つ中小企業や個人も増えることが予想され、譲渡条件にマッチする相手を探しやすくなる可能性も高まっています。
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事業承継型M&Aの件数も増加が見込まれる
2025年以降も、事業承継のためにM&Aを活用するケースは増えると予想されます。少なくとも、高水準では推移すると考えられます。現状、事業承継における課題解決の手段は限られているため、M&Aを契機に事業譲渡を目指す経営者が増加する可能性があります。
しかし、事業承継やM&Aは手間と時間がかかるものであり、スムーズに交渉が進行しない懸念も存在します。そのため、M&A仲介会社に依頼し、専門家によるサポートを受けることが一つの解決策となり得ます。
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M&A件数のまとめ
近年、M&Aの件数は増加傾向にあり、2024年は過去最多となる公算です。また、今後もM&Aの件数が増え続けると予想されます。M&Aの件数が増えることで、交渉相手が増え、成約がしやすくなる可能性もあります。事業承継や事業の一部譲渡を考えている方は、M&Aを検討してみてはいかがでしょうか。
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著者
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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