2025年の日本企業のM&A件数は5,115件となり、過去最多を更新しました。「うちの会社も売れるのか」と迷うオーナー経営者に向けて、過去10年の件数推移と増加の背景を一次情報から整理します。譲渡先を見つけやすくなった今の市場環境と、会社売却を判断するうえで押さえておきたい材料を、現場の視点でわかりやすく解説します。
2025年のM&A件数は5,115件で過去最多を更新
数字だけ見て「関係ない話」と思う経営者は多い。ですが件数の伸びは、譲渡オーナーにとって「相手を探しやすくなった」ことを意味します。まずは最新の実数から押さえておきましょう。
レコフデータの集計によると、2025年の日本企業のM&A件数は5,115件で、前年比8.8%増となりました。5,000件の大台を初めて突破し、2年連続で過去最多を更新しています。取引金額も35.7兆円と過去最高でした。出所はマールオンラインの2025年M&A回顧です。この件数がどのような手法で構成されているかは、M&Aの基本とあわせて見ると理解が早まります。
過去10年のM&A件数の推移
件数は一直線に増えてきたわけではありません。景気やショックのたびに上下しながら、右肩上がりの基調を保ってきました。

直近の水準を下表に整理しました。2020年に新型コロナの影響で一時3,730件まで落ち込みましたが、翌年には回復し、以降は増加基調が続いています。
| 年(暦年) | M&A件数(公表ベース) | 前年比 |
|---|---|---|
| 2020年 | 3,730件 | コロナ禍で減少 |
| 2024年 | 4,700件 | 過去最多 |
| 2025年 | 5,115件 | +8.8% |
長期の変遷やリーマンショック期の落ち込みまで通して知りたい方は、M&Aの歴史で年代ごとの動きを追えます。
中小企業の会社売却は年間5,000件近くにのぼる
5,115件という数字は、上場企業の大型再編まで含んだ全体像です。「では中小企業だけだと、どれくらいなのか」。ここに、譲渡オーナーが本当に見るべきデータがあります。
中小企業庁が公表する登録M&A支援機関の集計では、資本金1億円以下の企業を対象にした譲渡側の成約報告が、2024年度に4,940件に達しました。制度が始まった2022年度の4,036件から着実に増えています。数字は中小企業庁の集計結果で確認できます。
| 年度 | 譲渡側の成約報告件数 |
|---|---|
| 2022年度 | 4,036件 |
| 2023年度 | 4,681件 |
| 2024年度 | 4,940件 |
これはあくまで登録支援機関が報告した分で、非公開の中小案件はこの数倍あるといわれます。会社を手放すオーナーは、決して珍しい存在ではありません。市場規模の全体像はM&A市場の動向でも整理しています。
M&A件数が増えている4つの背景
なぜ件数が伸び続けるのか。理由は景気だけではありません。中小企業の構造的な事情が、いくつも重なっています。

経営者の高齢化と後継者不足
最大の押し上げ要因が、経営者の高齢化です。事業は黒字なのに継ぐ人がいない、という相談は年々増えています。
帝国データバンクの調査では、2025年の全国の後継者不在率は50.1%でした。7年連続で改善しているとはいえ、いまだ2社に1社は後継者が決まっていません。詳しい数字はTDBの後継者不在率調査にあります。廃業ではなく第三者への承継を選ぶ経営者が増え、件数を底上げしています。件数増加の要因を掘り下げたい場合は、増加の背景もあわせてご覧ください。
海外市場や技術を取り込む戦略の広がり
国内市場の頭打ちを感じた企業が、海外の販路や技術を求めて動いています。円安も後押しし、日本企業による海外企業の譲受や、海外資本による対日投資が活発化しました。この分野の最新の潮流はクロスボーダーM&Aで扱っています。
選択と集中による事業の切り離し
コロナ禍で膨らんだ債務を整理するため、不採算や非中核の事業を切り出す動きも件数を押し上げました。上場企業のカーブアウトも増えています。「守るべき本業に集中する」という判断が、譲渡という形で表れているわけです。
公的な事業承継支援の拡充
事業承継・引継ぎ支援センターの整備や、中小企業庁の中小M&A推進計画など、制度面の後押しも見逃せません。相談窓口が身近になり、M&Aを選択肢に入れる経営者の裾野が広がっています。政策の全体像は中小企業白書の分析からも読み取れます。
件数の増加がオーナー経営者の会社売却に与える意味
ここからが本題です。件数が増えた市場は、譲渡を考えるオーナーにとって追い風なのか。答えは「条件つきでイエス」といえます。
譲受企業の裾野が広がり相手を見つけやすい
買い手の母数が増えたことで、業種や地域が限られる会社でも、条件に合う相手にたどり着きやすくなりました。5年前なら候補が数社だった案件で、いまは10社近くから打診が入る。そんな場面も現場では珍しくありません。どんな会社が実際に譲渡に至っているかは、M&Aの事例でイメージがつかめます。
小規模企業ほど後継者難が残るという現実
一方で、楽観だけは禁物です。後継者不在率を規模別に見ると、大企業が24.9%まで下がったのに対し、小規模企業は57.3%と高止まりしています。年商数億円規模の会社ほど、支援が届きにくい構造が続いているのです。件数が増えても、動き出しの遅れが選択肢を狭める点は変わりません。
件数増加は「売り手優位」を約束しない
よくある誤解として「件数が増えたのだから、待っていれば高く売れる」という発想があります。ここには落とし穴があります。譲受企業は数字とリスクをシビアに見ます。当社の支援現場では、譲渡を検討し始めた段階で次の3点を必ず確認します。
- 直近3期の決算書で、利益の再現性を説明できるか
- オーナー個人と会社の資産・経費が明確に分離されているか
- キーとなる社員や取引先が、オーナー交代後も残る見通しか
この3点が整っている会社は、市場が活況な今、複数の候補から条件を引き出しやすくなります。逆に手つかずのまま相場感だけで臨むと、せっかくの追い風を活かせません。M&Aニーズの強い分野を知りたい方はM&Aが多い業種を、承継型の実情は業界別の事業承継M&Aを参考にしてください。
今後のM&A件数の見通し
件数はこの先どうなるのか。過去の推移を踏まえると、多少の増減はあっても高水準が続くと見るのが自然です。
高水準の継続が見込まれる
リーマンショックやコロナ禍のような一時的な落ち込みはあっても、M&A件数は最終的に増加へ転じてきました。経営者の高齢化という背景が短期で解消しないため、事業承継型の需要は当面続きます。中小企業M&Aの先行きは中小企業M&Aの動向で、業界ごとの予測はM&Aのトレンドで詳しく整理しています。
相手が多い時期こそ準備の差が出る
候補が多い局面は、裏を返せば比較される局面でもあります。決算内容や社内体制を整えた会社から順に、良い条件で成約していく。市場が活況なほど、事前の準備が結果を左右します。中小企業M&Aの基本的な進め方は中小企業のM&Aで確認できます。
M&A件数に関するFAQ
件数データや市場環境について、経営者からよく寄せられる質問に答えます。
レコフデータの集計では、2025年の日本企業のM&A件数は5,115件、前年比8.8%増でした。5,000件を初めて突破し、2年連続で過去最多です。中小企業だけを見ても、譲渡側の成約報告は年間5,000件近くにのぼります。
買い手の母数が増え、相手を見つけやすい環境ではあります。ただし価格は決算内容と将来性で決まるため、活況イコール高値売却ではありません。現場ではまず、利益の再現性を数字で説明できるかを確認します。
売れるケースは多いです。実際、後継者不在を理由にした第三者承継型の譲渡が件数を押し上げています。黒字で取引先や社員が安定していれば、譲受を望む企業は見つかりやすい傾向にあります。
なります。中小企業庁の集計対象は資本金1億円以下の中小企業で、その譲渡側だけで年間5,000件近い成約が報告されています。規模が小さいほど早めの準備が効くので、まずは現状の棚卸しから始めるのがおすすめです。
M&A件数の推移と会社売却のまとめ
2025年のM&A件数は5,115件と過去最多を更新し、中小企業の譲渡だけでも年間5,000件近くにのぼります。相手を見つけやすい環境が整った一方で、価格や条件は決算内容と準備の差で決まります。「うちの会社も売れるだろうか」という不安は、正しい情報と早めの棚卸しで、着実に前へ進められます。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社です。中小企業の会社売却・事業承継に豊富な支援経験を持ち、財務・税務の視点から譲渡の準備から成約まで一貫してサポートします。件数が伸びている今の市場を活かしたい方は、情報収集の段階でお気軽にご相談ください。
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著者

- 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
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