廃業とは?M&Aとの比較・利点と欠点・税金面の違い・後継者難倒産

廃業とは、事業を止めることです。本記事では、廃業の定義や現状、廃業せずにM&Aを実施するメリット・デメリットについて解説します。廃業を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

廃業とは

廃業とは、一般に、経営者が事業を自主的にやめることです。法律上で定義されている用語ではありません。廃業する際には、「会社自体の解散手続」と「会社の財産の清算手続」の2つの手続を踏むことになります。もっとも、実務的には、これらの手続を踏まずに、何もせず休眠会社で放置することも多いです。

廃業と倒産、休業の違い

ここでは、廃業と類似した意味を持つ、倒産や休業との違いを解説します。

倒産と廃業の違い

倒産と廃業は似た意味を持っており、意味を間違えやすいものが倒産です。倒産とは、弁済期にある債務を弁済できなかったり、経済活動を続けられなかったりする状態、もしくはその可能性が高く、経営・事業の継続が困難となることなどを指します。

廃業は、後継者不足などの理由によって自主的に経営・事業をやめることなので、業績不振や債務などによって経営・事業の継続が困難となる倒産とは大きく異なります。

休業と廃業の違い

休業とは、一時的に事業を停止することを指します。停止するだけのため、会社自体が無くなるわけではありません。休業の場合、事業は停止しているものの、会社自体は存続します。会社自体が完全に消滅してしまう廃業とは、この点で大きく異なります。

廃業件数の現状

東京商工リサーチの調査によると、2023年に全国で休廃業や解散した会社は4万9千件にも及んだことから、注目されています。

廃業が増加している理由

廃業が増加している理由として、代表者の高齢化が進んでいることも大きな要因の1つです。上記の東京商工リサーチの調査によると、休廃業・解散した会社の代表者の年齢は、70代が最も多く42.9%で、60代以上を合わせると全体の86.9%と、高齢化が顕著であることが分かります。

後継者不在による倒産も多い(2024年11月TDB発表)

帝国データバンクが公表した全国「後継者不在率」動向調査(2024年)によると、2024年1月から10月までに発生した後継者不在による倒産は455件に達しました。前年の過去最多564件と同水準で推移していますが、特に10月は単月で63件と過去最多を記録し、増加傾向が加速しています。このまま推移すれば、2年連続で年間500件を超える見通しです。

後継者不在による倒産の推移

廃業のメリット・デメリット

ここでは、廃業することで生じるメリットとデメリットについて解説します。

廃業するメリット

  • 倒産に比べて従業員や取引先などに掛ける迷惑を最小限に抑えられる
  • 経営に関する精神面での負担から解放される

廃業するデメリット

  • 従業員の働き場がなくなる
  • 最悪の場合、従業員の家族の生計まで奪ってしまう可能性もある
  • 廃業したとしても代表者の個人保証はそのままになるため、会社資産で返済しきれない債務は、代表者の個人資産で支払う必要がある

廃業は避けた方がいい?

そもそも廃業は回避すべきものでしょうか。

廃業は避けた方がよい

廃業は、できるだけ避けるのが望ましいとされます。廃業を選択した場合、従業員に蓄積された知識や経験は消失してしまいます。M&Aによって事業が引き継がれることで、従業員が今まで培ってきたノウハウを活かすことが可能になります。

廃業する会社の約3割は、業績が順調

実は、廃業を検討する会社のなかには、経営状況の良い会社も少なくありません。日本政策金融公庫による「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」によると、「良い」が2.9%、「やや良い」が28.2%と、約3割は業績が順調であることが分かります。しかし、後継者不足などの理由によって、廃業を選択せざるを得ない状況になっているのが実情です。

廃業よりM&Aを選ぶメリット・デメリット

廃業を選択せずにM&Aを実施する場合のメリットとデメリットを説明します。

M&Aを選ぶメリット

廃業しないメリットです。

会社を存続させられる

まずは、企業を存続させられることが挙げられます。M&Aによって、今まで通りとはいきませんが、経営者が育ててきた企業への思いも含めて、譲受企業を通じて、残すことが可能です。

従業員の雇用を守れる

M&Aによって事業承継を行うことで、従業員の雇用を守れます。譲受企業には、従業員の雇用条件を引き継いでもらえることも少なくありません。

株式や事業の譲渡益を得られる

M&Aを有効活用することで、廃業を選択するよりも高い譲渡益を得られる可能性があります。相応の譲渡代金が得られた場合には、引退後の生計も立てられます。譲渡価格によっては、残った事業を立て直せるケースすらあるかもしれません。

個人の保証を解除できる

中小企業の場合、金融機関での借入に際し、経営者の個人保証が求められるケースがほとんどです。しかし、M&Aを実施した場合、一般的には、譲受企業に連帯保証をスイッチさせるため、経営者は個人保証から解放されます。

M&Aを選ぶデメリット

廃業しないで、M&Aをするデメリットも存在します。

譲受先探しに時間と労力がかかる

まずは、譲受先探しに時間と労力がかかることが挙げられます。譲受先の候補先をピックアップし、自社にとって最適な譲受先の選択が必要です。多くの情報を整理するために、時間と労力がかかります。

専門家への依頼費用がかかる

M&Aで後々の失敗を防ぐためには、専門家との契約が必須とされています。M&Aを行い、最善の結果を出すために、豊富な知識やネットワークを持つ専門家への相談が必要です。

廃業とM&Aの税金面の違い

廃業とM&A、それぞれにかかる税金について解説します。

廃業にかかる税金

廃業した場合でも税金がかかることがあります。

廃業時の企業価値

廃業して会社を清算する場合、資産は時価で処分します。従業員への退職金は、原則として会社都合退職になるため、上乗せを検討する必要があります。これらにより、支払うべき債務が換価価値を上回る場合には、オーナー経営者の自己負担が生じる可能性が出てきます。

廃業時の税金

残余財産の処分により売却益が生じた場合、それが繰越欠損金や他の資産の売却損を上回るときは、法人税等の課税が生じます。加えて、株主は会社清算後の残余財産を配当金として受け取りますが、この個人所得には累進課税が適用されます。最高税率は、残余財産が多いほど高くなり、4,000万円超の場合には最大で約56%(配当控除後は最大で約49%)になります。

M&Aにかかる税金

M&Aで多く利用されている方法は株式譲渡のため、それを前提に説明します。

M&A時の企業価値

M&Aでは、企業価値を算定する際、純資産に加えて「のれん」も考慮します。評価手法は様々でで、譲受企業がを高く評価してれれば、純資産を大きく上回る譲渡価格が付くこともあります。

M&A時の税金

オーナー経営者(個人)が自社株を譲渡した場合、譲渡益に20.315%の税金がかかります。これには所得税、復興特別所得税、住民税が含まれます。

廃業とM&Aの比較のまとめ

後継者不在等によって廃業を検討している場合、M&Aを有効活用することで、廃業よりもベターな結果を得られる可能性があります。M&Aを行った場合、株式や多額の資金を得られるケースもあり、場合によっては早期引退の実現も可能です。ただし、M&Aを成功させるには専門家への相談が欠かせません。

M&Aに関する相談は、みつきコンサルティングにお任せください。経営コンサルティング経験者も多く在籍しており、会社の詳細な事業分析を実施したうえでシナジー(相乗効果の)創出を見込めるお相手候補を紹介します。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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