中小企業がM&Aで譲渡する最適なタイミングとは?好条件のポイント

中小企業のオーナー経営者が企業譲渡を行う上では、タイミングは非常に重要です。本記事では、将来的なM&Aを考えている経営者に向けて、M&Aに最適なタイミングはいつか、M&Aを好条件で成立させるためのコツ、注意点などを解説します。

M&Aでタイミングが重要な理由

M&Aで重要な要素はいくつかありますが、そのなかでタイミングは非常に重要なポイントとなります。タイミングを見誤ってしまうと、譲渡価格が低くなる可能性が高いです。また、相手が見つからずにM&Aが成立しないといったリスクもあるため注意しましょう。適切なタイミングでM&Aに踏み切れば、思わぬ高値で譲渡できる可能性もあります。

このように、タイミングによってM&Aが成功するかどうかは大きく異なるため、M&Aを行う際には適切なタイミングを逃さないための準備が大切です。

最適なM&Aのタイミングを掴む5つの視点

M&Aでベストなタイミングを見極めるには、次で紹介する5つのポイントを意識しましょう。

会社の業績がよい

まずは、会社の業績がよいときです。会社が順調で業績がよいときにM&Aを検討するのはイメージがしにくいでしょう。なぜ、経営がうまくいっているのに会社を手放さなければいけないのか、と考える経営者も多くいます。

しかし、譲受側の立場で考えた場合、業績が悪い会社より業績がよい会社のほうがM&Aを検討しやすいという事情があります。最適な相手を見つけやすく、譲渡価格を含めた譲渡条件を有利にし易いため、余力がある段階で検討するとよいでしょう。

体力が衰えたと感じはじめる

高齢になったことなどが理由となり、体力の衰えを感じはじめた場合もM&Aを検討するタイミングです。体力が落ち切ってしまったり病気が発覚したりすると、自分主導でのM&Aを進めることが難しくなります。

また、経営者の体力が低下すると意欲も落ちてしまい、会社の業績が悪くなる可能性もあります。そのため、体力が完全に衰えたり病気が見つかったりする前の、経営者が健在なうちにM&Aを検討するとよいでしょう。

業界再編の動きがある

業界再編のときは、M&Aが活発になります。たとえば、業界のなかで競争が激化、もしくは市場の縮小が進んだ業界で、経営の効率化などを目指すことで、業界全体の環境が大きく変わることがあります。

このような場合、M&Aも活発になるため好条件や、より高い価格で譲渡できる可能性が高まるでしょう。業界再編のきっかけはさまざまですが、法改正による再編や感染症の流行、人口減少などの社会的要因が挙げられます。

自社の「強み」が評価されるタイミングである

会社の強みによって、M&Aにベストなタイミングが変わる可能性もあります。会社の持つ強みとは、たとえば会社の立地や取引先、保有しているノウハウや技術、所有するコンテンツ、ブランド力などです。

まずは、自社にどのような強みがあるのかを把握して整理しましょう。そのうえで、自社の強みが高く評価されるタイミングを見極めます。たとえば、立地が強みなら地域開発や好景気で地価が上昇したタイミングなどを狙いましょう。

業界が好調

景気も判断基準となります。所属する業種又は業態の景気が良いと、M&Aで譲受したい会社が増えます。今まで買収を考えていなかった企業でも買収を積極的に検討する可能性があるため、M&Aが成立しやすくスムーズに進む可能性があるでしょう。

候補先が複数あることで、金額の面でも有利に働きます。より高く譲渡できる可能性があるため、景気が良い時期はM&Aを考えるためには良いタイミングです。

業績が悪い場合のM&Aのタイミング

すでに業績が悪いケースもあるでしょう。業績が悪い場合には、以下のタイミングでM&Aを検討するとよいでしょう。

経営意欲も落ちているなら譲渡できるときに決断する

業績の回復の見込みがなく、経営者自身の経営意欲も落ちている場合には、できるだけ早めに譲渡できる可能性を模索しましょう。時間をかけてしまうとさらに状況が悪化して、M&Aが成立しにくくなる可能性も高いです。業績の評価が悪かったとしても、技術やノウハウ、立地、商圏など、譲受側にとって魅力となる要素やメリットがある可能性もあるため、M&Aが成立する場合もあります。

経営意欲が落ちていないなら可能性を探し検討する

業績が落ちていても経営意欲に衰えがないのなら、自力で事業を続ける方法がないか、事業資本提携の可能性はないかなど、あらゆる可能性を模索することが有効です。M&Aで譲渡する場合にも、経営陣として会社に残る選択肢もあります。経営意欲がある場合は、諦めずにさまざまな道を検討するとよいでしょう。

M&Aを好条件で成立させるポイント

譲渡のタイミング以外にも、M&Aを好条件で成立させるコツがあります。ここでは、4つのポイントを紹介します。

早めにM&Aの準備を進める

M&Aで会社を譲渡する場合、1年から数年かかると思っておいたほうがよいでしょう。M&Aには長い時間がかかるため、精神的な負担も大きくなりがちです。譲受側とのマッチングや条件交渉・手続きだけがスムーズに進んだとしても、M&Aが成立した後のPMI(統合プロセス)にも時間が必要になります。

そのため、情報収集しながらできるだけ早めに準備を始めるとよいでしょう。動き出しが遅くてタイミングを逃すケースは少なくありませんが、早くてタイミングを逃すケースはあまりありません。M&A交渉時に相手が自社を理解できるような資料を準備しておくのも効果的です。

欲を出さない

欲を出しすぎないこともポイントです。複数の譲渡先が望める場合、さらによい条件の会社が出てくるかもしれないと譲渡先の決定を先送りしてしまうケースもあるでしょう。その結果、マッチングできない、最初のオファーよりも条件の低い譲渡先しか残らないといった事態も考えられます。

そのため、M&Aに最適なタイミングが来たら欲を出しすぎないようにして、自社にとってよい譲渡先を見極めます。業界動向などのチェックも必要です。

M&Aの目的を明確にしておく

M&Aの交渉において、譲受側との条件の調整は欠かせません。条件の調整を行ううえで重要なのが、M&Aの目的です。なぜM&Aが必要なのかという目的を明確にしておくことで、譲れない点や譲歩してもよい点などがはっきりするため、交渉を進めやすくなります。

たとえば、後継者がいないため社外の第三者に事業承継をしたい、経営を効率化するためにM&Aをしたいなど、目的を明確にしておきます。目的がM&Aの成立になってしまうと、売却後にトラブルが発生する可能性もあるため注意しましょう。

会社の業績を保ち将来性を高める

会社の業績を保つことも重要です。よい業績を維持することができれば、将来性も高まるため好条件でのM&Aにつながりやすくなります。業績がよければ譲受側から見ても魅力的に映るため、候補先が見つかりやすいでしょう。

そのため、譲渡や売却をするからといって経営管理体制に手を抜かず、しっかりと経営を続けていくことが重要です。営業体制の強化や借入返済なども積極的に行い、将来性を高めていくことを意識しましょう。

譲渡時期以外の注意点

M&Aを成功させるにはタイミングも重要ですが、他にも注意したいポイントがあります。

情報漏えいに細心の注意を払う

情報漏えいしないように、細心の注意を払いましょう。M&Aの手続きを進めていることが漏れないように注意することが重要です。事前に情報が漏れてしまうと、交渉が破談になるリスクもあるため注意しましょう。会社でM&Aのことを話したり仲介会社の担当者が頻繁に自社に出入りしたりすると、情報漏えいしやすくなります。

従業員や取引先、金融機関といった関係各社には、M&A成立後に伝えます。M&Aでは、譲渡側、譲受側どちらからも情報が漏れないように、双方とM&A仲介会社で秘密保持契約を結び対策することが一般的です。

早めにM&Aの専門家に相談する

選択肢の1つとしてM&Aが浮かんだ時点で、M&Aの専門家に相談するとよいでしょう。M&A仲介会社は相談無料というところも多いです。そのため、気軽にM&Aについての相談ができます。

M&Aを成立させるには、早めの準備が重要となるためできるだけ早めに相談し、適切な準備を始めましょう。みつきコンサルティングなら、M&Aが最適かどうかといった基本的なことから相談できます。自社に合った道を検討できるため、まずは相談してみるとよいでしょう。

M&A(会社売却)のタイミングのまとめ

M&Aをよりよい条件で成立させるには、タイミングが重要です。この記事で解説した、ベストなタイミングを把握して、できるだけ早めに準備を進めましょう。M&Aを検討する場合には、ノウハウや経験のあるM&A仲介会社などに相談することをおすすめします。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループです。そのため、M&Aありきの提案ではなく、事業所内承継や親族内承継など、さまざまな選択肢を比較して選択できます。経営コンサルティング経験者も多く在籍しており、精密な事業計画書の策定も可能です。M&Aにつきものの相続対策もワンストップで対応できるため、M&Aを検討している場合はご相談ください。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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