事業承継の相談先は税理士・公認会計士がおすすめ!選び方・費用相場

事業の後継者不在率は、高い水準にあります。事業を引き継ぎたいと考えた際、どこに相談するべきかと悩む人も多いのではないでしょうか。本記事では、事業承継を検討している経営者に向けて、相談先の種類や選び方、そして注意点を詳しく解説します。

中小企業の後継者問題

帝国データバンクが2023年11月日に公表した『全国企業「後継者不在率」動向調査(2023年)』によると、2023年の全国の後継者不在率は53.9%でした。調査年により多少の増減はありますが、5~6割程度で推移しています。ということは、後継者候補を一応は念頭においている会社は4~5割程度あるということです。

後継者候補がいる会社、いない会社、いずれであっても、自社株の引き継ぎ(物的承継)と業務の引き継ぎ(人的承継)は大仕事であることに変わりはありません。そのため、自社が置かれている状況に適した事業承継の専門機関に相談することが大事です。

事業承継の相談先

事業承継の相談先には、どのようなものがあるのでしょうか。多くの中小企業が検討している一般的な相談先は以下のとおりです。

これらのうち、事業承継の選択肢(親族、社内、第三者)を広く検討したい場合には、公認会計士・税理士(及び系列コンサルティング会社)、または金融機関に相談することが一般的です。後継者が身近におらず第三者に託す場合は、これら以外にM&A仲介会社も相談先の候補に加わります。

公認会計士・税理士等の士業

事業承継を相談する場合、既に顧問として関わりのある税理士・公認会計士に相談することが最も多いでしょう。会社の成り立ちや、経営者の思考、家族構成など、最も身近で長年接しているため理解があります。いわゆる事業承継コンサルティングを支援内容としているのも、通常は会計事務所ないし会計系コンサルティング会社になります。

ただし、事業承継に関する専門知識があるかは、事前に確認しておくことが重要となります。弁護士を含め、親族内承継をサポートした経験はあっても、第三者承継の経験は乏しいことが一般的です。

金融機関

会社の資金貸付など、多方面で相談することの多い金融機関は、事業承継についても相談に乗ってもらえます。長期に渡る取引がある金融機関は、相談もしやすく、気軽に声をかけられるでしょう。事業承継に関連するセミナーを開催していることもあり、専門的なアドバイザーを紹介してもらえる可能性があります。

M&A仲介会社

M&A仲介業者は第三者承継(M&A)に関する豊富な実績を持ち、専門的なノウハウを社内に蓄積しています。これらの組織の多くは、税理士や行政書士など他の専門家とも連携しています。M&A仲介業者はM&Aに特化しているため第三者承継には強いのですが、親族内承継や社員承継には疎いことが一般的です。そのため、事業承継を総合的に検討したい方には不向きと言えるでしょう。

その他の相談先

上記3つのいずれかの相談先に委託することが一般的で多いですが、状況によっては次のような機関に相談することもあります。

事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センター

事業引継ぎ相談窓口と事業引継ぎ支援センターは、中小企業庁によって設置された、事業承継にまつわる公的な相談機関です。事業引継ぎ相談窓口は、全国の各都道府県に設置されており、事業引継ぎで生じる課題解決へのアドバイスや情報提供、マッチング支援などを実施しています。

さらに、全国の都道府県の中でも特に引継ぎ支援の数が多い地域については、より専門的な支援を実施する事業引継ぎ支援センターが設置されています。事業引継ぎ支援センターが設置されている都道府県は、2023年現在、北海道、宮城県、東京都、静岡県、愛知県、大阪府、福岡県の7箇所です。

事業引継ぎ相談窓口も事業引継ぎ支援センターも、無料で相談ができます。ただし、登録機関の支援や士業の支援といった具体的な支援を受ける際には、報酬が発生することもあるため事前に把握しておきましょう。

商工会議所

商工会議所とは、地域の商工業者によって構成される公共経済団体のことです。経営者に対する多角的なサポートを提供しており、事業承継に関する相談に乗ってもらえることもあります。商工会議所に入会していれば、無料で利用できるケースも多いため、ぜひ利用を検討してみましょう。

中小企業再生支援協議会

中小企業再生支援協議会は、事業再生を目指す中小企業を支援しています。全国の商工会議所などが運営に関わっており、借入金や資金繰りといった悩みに対して、専門家がサポートを提供します。

全国中小企業団体中央会

全国中小企業団体中央会は、国内では最大の中小企業団体です。国の企業のうち、中小企業の数は357万8,000件と、99.7%。その中小企業のうち、約7割を全国中小企業団体中央会が組織しています。中小企業の事業運営にまつわるノウハウや知見を数多く有しているといえるでしょう。事業承継に関するセミナーの開催なども実施しており、情報を集めるために適した機関といえます。

相談相手は税理士・公認会計士が最多(2023年公表)

金融庁が2023年6月に公表した「金融機関の取組みの評価等に関する企業アンケート調査」では、事業承継を相談する相手についてのアンケートが紹介されています。それによれば、最も多い相談先は顧問税理士で43.0%です。これには税務業務主体の顧問会計士も含んでいると思われます。次にメインバンクが18.5%と続いています。傾向として、これまでの付き合いを通して信頼できる相手に相談するケースが多いといえるでしょう。

事業承継の相談相手(地域別)

事業承継の相談先・相談相手

事業承継の相談先の選び方

事業承継の相談先は、どのように選べばよいのでしょうか。選び方のポイントについて、3つの観点から解説します。

豊富な解決事例がある相談先を選ぶ

まずは、解決実績の多い相談先を選ぶことを検討しましょう。解決実績が多い相談先であれば、相談者の状況に合った適切なアドバイスを提供してもらえます。特にM&Aの場合は、譲受側の選定や条件交渉など、検討事項が複数あるため、解決実績が豊富で、関連知識とノウハウをもった相談先の選定が重要です。

専門家との連携があるか

事業承継の実行には、法律と税金について深いレベルでの知識が必要です。トラブルを避け、円滑な事業承継を実現するためにも、弁護士や税理士と連携がある相談先を選びましょう。

費用が明瞭である相談先を選ぶ

事業承継の相談をする際には、費用がどの程度かかるのか、前もって明確にしておきましょう。手続きやサポートには依頼費用がかかるほか、成功報酬の場合、報酬が予想以上に高額になることもあります。費用面については後述します。

相談料金(初回無料が多い)

中小企業のオーナー経営者が事業承継を専門家に相談する際の費用は、親族内承継と親族外承継で異なる傾向があります。以下に両者の費用感について説明します。

親族内承継の費用

親族内承継の場合、一般的に以下のような費用が発生します。いずれの場合も、企業の規模や事業の複雑さ、承継の方法によって費用は大きく変動します。

  • 初期相談料:多くの専門家は初回相談を無料で提供しています。これは事業承継の全体像を把握するためのものです。
  • 事業承継計画の策定費用: 専門家が詳細な事業承継計画を立案する場合、50万円から数百万円程度かかることがあります。
  • 税務対策費用: 相続税や贈与税の対策を立てる際の費用で、案件の複雑さによって数十万円から数百万円程度が一般的です。
  • 法務関連費用: 株式の移転や会社の組織変更などに関する法務サービスで、数十万円から数百万円かかることがあります。

親族外承継の費用

ここでは第三者承継を念頭に考えます。社内承継(従業員承継)の場合は、上記の親族内承継に近いイメージになります。

第三者承継(M&A)の場合、上記の費用に加えて、以下のような費用が発生します。事業承継先の選択を広く考えず、親族内承継(及び社内承継)の選択肢がない、第三者承継に絞って委託する場合には、以下の費用のみが発生します。

  • M&A仲介手数料: 第三者への譲渡の場合、成功報酬として成約金額の3%から5%程度の手数料がかかることがあります。最低手数料は500万円~2,000万円程度が多いです。これ以外に着手金や中間金等が生じる場合もあるため確認が必要です。
  • 契約書の作成・チェック費用: 複雑な契約が必要な場合で、顧問弁護士等に相談するときは、数十万円~100万円程度の費用がかかる可能性があります。

なお、デューデリジェンス費用( 企業価値評価や財務調査のための費用)は、通常100万円から1000万円程度かかることが多いですが、これは譲受企業が負担します。

専門家に相談する際の留意点

実際に事業承継をする際、相談先とはどのような連携を取るのが望ましいのでしょうか。気をつけておきたい注意点について解説します。

士業はそれぞれ対応内容や注力分野は異なる

公認会計士や税理士が、必ずしも事業承継を専門分野としているわけではありません。得意とする分野が事業承継以外だった場合、適切な指示や助言が得られないこともあるでしょう。ただし、事業承継が専門外だったとしても、各士業と連携して業務にあたってもらえる場合、納得のいく事業承継が進められるかもしれません。

事業承継の相談内容や状況によって適切な相談先は異なる

経営状況や相談内容に応じて最適な相談先は異なることにも気をつけておきましょう。たとえば、親族内での承継で後継者が決定している場合は、相続税対策を得意とする税理士が適しています。一方、第三者承継の場合はM&A仲介会社やコンサルティング会社の活用が望ましいでしょう。

また、事業承継について情報収集を進めたい場合は、商工会議所や相談窓口を利用することで、全体を俯瞰的に把握できそうです。自分のニーズは何なのかをまずは把握したうえで、適切な相談先を見つけましょう。

事業承継に補助制度がある

事業承継を進めるにあたって知っておきたいのが、補助金や金融面での支援制度です。国を挙げて、事業承継を後押しする流れのなか、利用も増えています。

事業承継の相談相手のまとめ

事業承継は、多くの企業にとって大きな節目となるポイントです。複雑なプロセスをスムーズに進行させるためには、実績ある相談先の選定や専門家との連携などが重要になるといえるでしょう。事業承継については、多くの専門機関が支援を提供しており、国や金融機関からは補助制度も利用できます。

事業承継をお考えの際は、みつきコンサルティングにぜひご相談ください。税理士法人グループとしての深い知見に基づき、M&Aに限らず社内(従業員)承継、親族内承継などの選択肢を広げ、個々の企業により最適なソリューションへと導きます。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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