M&Aは後継者がおらず、第三者に事業承継するための手段として多く用いられています。後継者に悩んでおり、M&Aを検討している経営者も多いでしょう。この記事では、M&Aを検討したい経営者に向けて、M&Aに向けてすべきことや譲渡後の選択肢について解説します。M&Aを検討する際の参考として、ぜひ役立ててください。
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社長がM&Aで事業承継するメリット・デメリット
M&Aによる事業承継には、経営者にとって大きなメリットがある一方で、デメリットも存在します。以下の表に主なものをまとめています。
| 事業承継M&Aのメリット | 事業承継M&Aのデメリット |
|---|---|
| – 後継者がいない場合でも事業を続けられる:後継者が不在のまま経営者が退いた場合、会社が廃業せざるを得ません。しかし、M&Aで事業承継することで廃業を回避することができるため、従業員と従業員の家族を守れます。 – 労働条件が向上する可能性がある:企業規模の拡大によって、労働条件が向上する可能性もあります。M&Aにおいては、買収側の企業規模は自社よりも大きいケースがほとんどです。そのため、財政面での余裕が生まれて労働条件や業績の向上などが期待できます。 – 創業者利益の確保:株式を譲渡することで、創業者は現金などの対価を得ることができます。この資金は、引退後の生活資金や新たな事業の資金として活用できます。 – 個人保証からの解放:経営者が会社の債務に対して個人保証をしている場合、M&Aによって買い手に保証を引き継いでもらうことで、個人保証から解放される可能性があります。 | – 喪失感に襲われる可能性がある:M&Aで会社を譲ることにより、喪失感に襲われる可能性があるでしょう。人生をかけて打ち込んできた仕事がなくなることで、喪失感を覚えて生きがいを失ったような感覚になる経営者も少なくありません。 – 権限の縮小と収入の喪失:会社を譲った後、会社に残るケースもあります。しかし、その場合には権限は小さくなり買収先の企業方針に従わなければいけません。会社を離れる場合には継続的に得ていた収入がなくなってしまうこともデメリットでしょう。譲渡したことで得た利益や貯蓄などで生活できるかしっかり検討することが重要です。 – 企業文化や経営方針の不一致:買い手企業の経営方針や企業文化が、自社と合わない場合、従業員や取引先との摩擦が生じる可能性があります。 |
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M&Aによる事業承継6つのステップ
事業承継の際には、中小企業庁が作成した「事業承継ガイドライン」が参考になります。これは、中小企業・小規模事業者が円滑に事業承継するための指針です。その中で紹介されている事業承継に向けての5ステップをベースに、費用負担のステップを加えるなど、少し補足して説明します。
ステップ1:何をいつから準備すればよいか把握する
M&Aによる事業承継は、経営者が60歳になる頃を目安に準備を始めましょう。事業承継はすぐにできるものではありません。準備には数年程度かかるため、早めに準備を始めることがポイントです。
事業承継の適切な方法を検討する
事業承継の方法はM&Aだけではありません。親族に譲る、従業員などに譲るといった方法もあります。そのため、自社にとって適切な事業承継についてしっかりと検討しましょう。M&Aと他の方法を比較し、どちらが最適かを検討するのも重要です。この際、早めに専門家に相談するとスムーズに進みます。
▷関連:事業承継とは|3つの承継先・対象・方法や成功事例・進め方も解説
ステップ2:経営状況・経営課題などを可視化する
自社の経営状況や経営課題を洗い出して、可視化しましょう。スムーズに事業承継を進めるためには、現状を正確に把握することが大切です。
ステップ3:事業承継を見据えてブラッシュアップする
事業承継は、事業を飛躍させる機会でもあります。次世代に承継するまでに、事業の維持や発展に努めましょう。経営状態の改善や自社の強み、魅力をアップさせることで、事業承継を有利に進めやすくなります。
ステップ4:事業承継計画を策定する
自社だけでなく、自社を取り巻く環境を整理しながら具体的な事業承継計画を策定しましょう。自社の現状、会社の理念などを確認し、計画を立案します。計画を立案した後は、譲受側の会社を探す「マッチング」を実施しましょう。
▷関連:事業承継計画書とは?作成方法・手順・注意点と記載例を紹介
ステップ5:M&Aを実行する
事業承継計画に沿って、M&Aの手続きを進めていきましょう。M&Aを進めていくうえで、社会状況や経営環境が変化するケースもあります。状況を見ながら、事業承継計画を柔軟に修正・ブラッシュアップしておくこともポイントです。
M&Aの条件を検討する
M&Aで事業承継することを決めた場合は、条件を検討しましょう。たとえば、会社や事業の売却価格や従業員の待遇など、譲受側に求めることについて検討します。M&Aの目的や優先する項目などを明確にしたうえで希望する条件を洗い出し、専門家に相談するなどして詳しい条件を詰めていくとよいでしょう。
M&Aの契約を締結する
デューデリジェンス(買収監査・企業調査)を行い、財務内容が正しいか、法的リスクなどの確認を行います。デューデリジェンスの結果を確認した後は、価格を含めた条件の調整を行いましょう。問題がなければ最終契約に進みます。契約時は専門的な知識が必要になるため、専門家に依頼してサポートを受けることがおすすめです。
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ステップ6:M&Aに関する費用を支払う
M&Aを進める際には、M&A仲介会社へ支払う依頼料や、譲渡に伴う税金など、様々な支出が発生します。以下の表は、M&Aで発生する主な費用と税金をまとめたものです。
| 費用の種類 | 内容・詳細 | 備考・相場 |
|---|---|---|
| M&A仲介会社への報酬(依頼料) | 相談料・着手金:M&A仲介会社と正式に契約を結んだ際に、最初に支払う費用です。 月額報酬:M&Aの譲受企業を探し、成約に至るまでの間、毎月支払う費用です。 中間報酬:譲受企業が見つかり、具体的な条件について基本合意がなされたタイミングで支払う費用です。M&Aの手続が順調に進んでいることへの成功報酬の一部と考えられます。 成功報酬:最終的にM&Aが成立した際に支払う費用です。成功報酬は、譲渡企業の譲渡金額に一定の料率を掛けて計算され、一般的には譲渡金額が高額になるほど報酬料率も上がる仕組みとなっています。 | 近年では、中小企業向けに着手金や月額報酬が無料のM&A仲介会社も増えてきています。成功報酬は「レーマン方式」と呼ばれる計算方法が一般的です。 |
| 譲渡に伴う税金 | 株式譲渡の場合の税金:株式譲渡による利益(譲渡所得)が発生すると、それに対して「譲渡所得税」が課されます。この譲渡所得税の税率は20.315%で、他の多くの税金と比較しても比較的低い税率となっています。そのため、譲渡企業にとっても負担の少ない方法と言えます。 事業譲渡の場合の税金:事業譲渡によってM&Aを行う場合には、「消費税」と「法人税」の2種類がかかります。消費税は、事業譲渡において、課税対象となる資産を譲渡する場合には、売却金額に対して消費税がかかります。法人税は、事業譲渡によって得られた利益は、法人の収益として計上されます。そのため、譲渡する事業に関連する資産から負債を差し引いた売却益に対して、法人税が課税されます。 | M&Aの手法によって発生する税金の種類が異なります。事前に税理士などの専門家に相談することをお勧めします。 |
▷関連:事業承継にかかる費用|承継先による違い・税金・コンサル・弁護士等
M&A後の社長の選択肢
M&Aで譲渡した後、経営者には2つの選択肢があります。ここでは、譲渡した後の選択肢を詳しく解説します。
続投|会社に残って働く
経営者の年齢が若い、まだまだ気力があるなど、自身が希望する場合には「子会社の社長」や顧問・相談役・会長などの立場で会社に残り、引き続き働くことも可能です。経営者が技術者という場合には、専門家として在籍し活躍することもできるでしょう。
続投するメリット
最大のメリットは、経営者が培ってきた経験や人脈を活かし続けられる点です。譲受企業にとっても、前経営者が残ることで取引先や従業員の不安を軽減でき、PMI(統合プロセス)がスムーズに進む可能性が高まります。また、経営者自身も「慣れ親しんだ環境で働ける」「急激な環境変化を避けられる」という安心感を得られます。技術やノウハウの継承期間を確保できるため、事業の安定性を保ちながら徐々に権限移譲を進めることが可能です。
続投するデメリット
オーナー権限がなくなるため、これまでのような即断即決や自由な経営判断ができなくなります。親会社の意向や承認プロセスに従う必要があり、これを窮屈に感じる経営者もいます。また、新しい経営方針と自身の考え方が合わない場合、モチベーションの維持が難しくなることがあります。報酬面でも、オーナー社長時代と比べて役員報酬が譲受企業の他の役員の水準に合わせて再設定されるため、収入が減少するケースが大半です。
勇退|会社に残らずゆっくり過ごす
会社に残らずゆっくり過ごすのも選択肢の1つです。年齢的に働くのが難しい場合には、引退して奥様と二人で旅行したり、家族の時間を増やしたりする経営者もいます。今まで支えてくれた家族に対する恩返しをする人も多いようです。また、新たなチャレンジをしたり趣味を見つけたりするなど、自分の時間を大切にするのもよいでしょう。
勇退するメリット
経営の重圧や資金繰りの悩みから解放され、精神的な自由を得られることが最大のメリットです。創業者利益(株式譲渡益)を原資に、旅行や趣味などセカンドライフを充実させる時間と資金を確保できます。また、完全に経営から離れることで、新しい経営陣が遠慮なく独自のカラーを出しやすくなり、組織の若返りや抜本的な改革が進みやすくなるという側面もあります。自身の健康管理や家族との時間を最優先できる点も大きな魅力です。
勇退するデメリット
長年仕事中心の生活を送ってきた場合、「燃え尽き症候群」のように生きがいや目標を見失ってしまうリスクがあります。社会との接点が急に減り、孤独感を感じることもあるでしょう。また、会社に対して「もっとこうすればよかった」という未練が残ったり、新しい経営陣のやり方に口を出したくなったりする葛藤が生じる可能性もあります。完全に引退すると、業界内での影響力や人脈が徐々に薄れていくことも避けられません。
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経営者をサポートする専門家
M&Aでは、専門家のサポートが必須です。ここでは、M&Aで経営者をサポートする主な専門家を紹介します。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、譲渡側と譲受側の間に立って、双方をフォローします。M&Aを成約に導くためにさまざまなサポートをする専門家で、M&Aのマッチングからクロージング(成約)までフルサポートするケースが多いようです。M&A仲介業者は中立的かつ客観的な立場で、M&Aのすべてをサポートします。
会計士・税理士
M&Aの各種手続きにおいて、会計や税務の専門知識が必要になる場面は多いです。たとえば、財務諸表の確認や企業価値の算出などが必要になるため、会計や税理の専門家のサポートは欠かせません。また、税金の計算なども必要となるため、会計・税務の専門家である会計士や税理士にサポートしてもらうとよいでしょう。
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M&Aで事業承継する社長のまとめ
M&A後の経営者には、引退してセカンドライフを楽しむ、顧問や会長として経営をサポートする、子会社社長として続投するなど複数の選択肢があります。会社に残る場合は後継者育成や従業員の安心感につながる一方、権限縮小や収入減の可能性があります。引退する場合は経営ストレスから解放されますが、喪失感を感じることもあります。
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著者

- 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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