株式譲渡の仕訳とは?関係会社・子会社株式の会計処理と勘定科目

株式譲渡を行った場合の仕訳は、譲渡した株式の割合などによって異なります。この記事では、株式譲渡の仕訳について知りたい人に向けて、仕訳や具体的な勘定科目、注意点を解説します。会計処理・税務処理についての解説もするため、ぜひ役立ててください。

会計処理が必要となる株式譲渡とは

株式譲渡した場合に、会計処理(仕訳)必要となるのは、以下の場合です。

  • 法人が、保有する株式(子会社株式など)を売却した場合
  • 法人が、他の法人又は個人から、M&A等により株式を取得した場合

「譲渡側」の会計処理

譲渡側が法人である場合に、会計処理(仕訳)が発生します。ここでは、譲渡側の仕訳・会計処理について詳しく解説します。

対象会社(譲渡企業そのもの)の会計処理は不要

株式譲渡は、企業にとって株主が変更になるだけであるため、譲渡企業(対象会社)にとって会計上の変化はありません。そのため、会計処理、仕訳は不要です。

「対象会社の株主」の会計処理

譲渡側が法人である場合ですが、支配権・影響力の度合いに応じて、計上した「子会社株式」「関連会社株式」「投資有価証券」などの勘定科目から、取得原価を控除します。また、譲渡対価との差額については、売買損益として計上するのが特徴です。なお、支配権・影響力については、譲受側で詳しく解説します。

「譲受側」の会計処理

譲受企業の会計処理(仕訳)は、支配権の状況により、以下の3つのパターンがあります。

  • 支配権を取得している
  • 支配権は取得していないが影響力が大きい
  • 支配権も影響力もない

ここからは、支配権の概要とそれぞれのパターンでの仕訳について解説します。

「支配権」とは

支配権とは、株式会社の株式を一定数所有し、企業の意思決定を行える権利・権限です。株式譲渡により過半数の株式を取得した場合、または株式を過半数取得していなくても、実質的に過半数の議決権を行使できる状態の場合、支配権を取得していることになります。株式を100%所有している場合、一切の制約を受けないことから「完全経営支配権」と呼ばれています。

支配権を取得している場合の仕訳

未上場企業が株式譲渡で支配権を取得した場合、取得した株式の仕訳は以下のとおりです。

借方:子会社株式×××※貸方:現金預金×××

※「子会社株式」に代えて、「関係会社株式」としても良いです。

上場企業の場合は、連結修正仕訳と呼ばれる手順を踏むことが必要です。具体的には、上場企業が株式譲渡で譲受した資産や負債を再計算し、譲渡対価が上回った際は、その差額を「のれん」として仕訳を行います。

支配権は取得していないが影響力が大きい場合の仕訳

支配権はないものの影響力が大きい場合(例えば20%以上50%以下の議決権を保有している状態)の仕訳は、以下のとおりです。

借方:関係会社株式 ×××※貸方:現金預金 ×××

※一般に「関連会社株式」の勘定科目は用いません。

支配権も影響力もない場合の仕訳

支配権・影響力のどちらも保有していない場合(例えば議決権のうち20%未満の保有にとどまっている状態)の仕訳は、以下のとおりです。

借方:投資有価証券 ×××貸方:現金預金 ×××

会計処理する上での留意点

ここでは、株式譲渡における譲受側の会計処理のポイントについて解説します。

子会社株式として保有する場合は連結財務諸表を作成する

上場企業が子会社株式として保有する場合、連結財務諸表の作成が必要です。引き受けた資産・負債について、あらためて時価評価を行います。また、上場企業の場合は、取得価額との差額が「のれん」です。のれんは、一定期間で費用として償却するといった性質を持ちます。

「のれん」とは

のれんとは、時価評価と取得価額の差額のことです。上場企業でのみ仕訳が発生します。のれんは、その性質から譲渡側の時価を上回るブランド力といった、プレミア分ともいえます。ただし、プラスだけではなく、マイナスとなるケースもあるため、注意が必要です。プラスの場合は最大20年以内で定額法を用い、のれん償却として償却を計上します。

借方:のれん償却 ×××貸方:のれん ×××

関連会社株式だけ保有する場合は個別財務諸表で問題ない

子会社株式の場合と異なり、関連会社株式として保有する場合は、個別財務諸表を作成するのがポイントです。関連会社株式の場合は、持分法により会計処理が行われます。

上場株式で「投資有価証券」として保有する場合は決算期も仕訳が必要

上場株式で投資有価証券として保有する場合は、決算期に株式の評価替えの仕訳が必要です。この仕訳は、決算期ごとに行う必要があり、非上場株式の場合は不要となります。

株式譲渡の税務処理の概要

株式譲渡を行うことで、税金が発生するケースがあります。ここでは、株式譲渡における税務処理のポイントについて解説します。

「対象会社の株主」の税務処理

譲渡側の税務処理は、譲渡側が個人であるか、法人であるかによって異なることが特徴です。法人の場合は、譲渡価額と譲渡対象の資産・負債との差額が、譲渡益になります。譲渡益とその他の事業所得を合算した分が法人税の課税対象です。

個人の場合は、譲受側が法人であれば、取得価額と譲渡価額の差額である譲渡所得が、課税対象となります。税率は、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%です。また、譲渡金額が時価を下回る場合、時価と譲渡金額の差額が贈与として扱われるケースがあります。譲渡金額が時価よりも20%以上低い場合は贈与となるため、適切な譲渡金額の設定が必要です。

「譲受企業」の税務処理

株式などの有価証券の譲渡は、消費税法上で非課税となり、消費税の課税はありません。ただし、のれんが発生している場合、償却費用が収益として扱われるため、法人税が課せられます。

また、負ののれんが発生している場合、特別利益として一括計上する必要があります。負ののれんは、特別利益として認識するため、貸借対照表に計上されません。さらに、負ののれんとその他の取得を合算した分が法人税の課税対象となるケースもあります。

株式譲渡の会計処理(仕訳)のまとめ

株式譲渡を行う場合、仕訳や会計処理・税務処理など、複雑な手続きが多く必要になります。諸手続きを進めるためにリソースを割く必要があり、通常業務に影響が出たり、知識不足で手続きが円滑に進まなかったりするケースが多数あります。後々のトラブルを回避し、仕訳や会計処理を円滑に進めるためには、専門家への相談がおすすめです。

みつきコンサルティングでは、M&Aや事業承継、株式譲渡などに関して、経験豊富な専門家によるサポート体制が整っています。完全成功報酬で、公認会計士・経営コンサルタントがプロジェクト完了まで、途中費用0円でサポートします。株式譲渡に関するご相談は、みつきコンサルティングにお任せください。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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