M&A仲介への転職は選考のハードルが高い一方、後継者不足を背景に採用需要は拡大が続きます。未経験から評価される経歴、求められるスキル、簿記やM&Aシニアエキスパート資格の位置づけ、年収の実態、選考を突破する準備までを、会計事務所系M&A仲介の視点で整理しました。会社売却を検討するオーナーが仲介会社を見極める視点にもつながります。
「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。
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M&A仲介への転職市場の現状と将来性
「営業には自信があるが、財務は詳しくない」。M&A仲介への転職を考える人から、よく聞く声です。結論から言えば、未経験でも入口は開かれています。ただし門は年々狭くなっており、通過には準備が要ります。まずは市場の全体像から押さえておきましょう。
後継者不足が支える構造的な需要
M&A仲介は、譲渡オーナーと譲受企業の間に立ち、譲渡・譲受を成約まで導く専門サービスです。近年の件数増加を牽引しているのは、中小企業の経営者高齢化と後継者不在という構造要因といえます。レコフデータの集計では、2024年の国内M&A件数は4,700件と過去最多を更新し、うち国内企業同士の取引が3,702件を占めました。2025年は5,115件とさらに水準を切り上げています。
市場の裾野が広がるほど、担い手となる人材の需要も伸びます。中小企業庁の中小M&Aガイドラインのもとで整備が進むM&A支援機関登録制度には、約2,800社が登録しています。制度と実務の両面で市場が成熟する局面にあり、長期の人材需要が見込まれる背景がここにあります。この件数の伸びを生む要因は、会社売却という選択肢が中小企業の出口として定着したことにも重なります。
M&A仲介会社の3類型を知る
転職先を検討するうえで、業界の見取り図は欠かせません。M&A仲介会社は、成り立ちから大きく3つに分けられます。
下表のとおり、証券や大手を源流とする上場会社系、独立系として急成長した非上場会社系、そして税理士法人や会計事務所を母体とする会計事務所系(士業系)です。同じ「仲介会社」でも、評価される強みも働き方の色合いも異なります。
| 類型 | 成り立ち | 特徴とカルチャー |
|---|---|---|
| 上場会社系 | 大手・上場企業を源流とする | 組織力とブランドが強み。研修や分業体制が整い、案件数も多い |
| 非上場会社系 | 独立系として急成長 | 実力主義でインセンティブ比率が高め。スピードと裁量が魅力 |
| 会計事務所系(士業系) | 税理士法人・会計事務所が母体 | 財務・税務の専門性が土台。FAS業務やコンサルを兼務できる場合がある |
それぞれの詳しい違いや、上場・非上場・会計系の顔ぶれはM&A仲介会社の一覧で確認できます。あわせてM&A仲介の役割と手数料の全体像を押さえておくと、面接での会話に厚みが出ます。
未経験者の採用は広がっているのか
成長市場ゆえに、ポテンシャル採用の門戸を開く会社は増えました。営業や金融の経験を汎用スキルとして評価し、育成コストを投資と捉える動きが背景にあります。一方で、大手や外資系は即戦力志向が根強く、難易度には濃淡がある点に注意が必要です。
隣接領域であるFAや投資銀行は専門知識・経験を厳しく問う世界で、未経験には高い壁となります。それに比べれば仲介の間口は広いものの、後述のとおり抜きんでた営業実績と学習姿勢が前提になります。会計知識が入口でどう効くかは、未経験からの転職で会計が活きる理由に詳しく整理しています。
転職難易度と選考で問われるもの
かつては「元気と行動量のある営業マン」で内定に届いた時期もありました。今は違います。開拓しやすい優良案件が一巡し、難易度の高い案件を論理で解きほぐす地頭と、財務の基礎が問われる時代に移っています。
評価されやすい経歴
コアターゲットは、20代から30代前半で「圧倒的な成果」を出してきた若手です。下表に、評価されやすい経歴と、その理由を整理しました。
| 経歴タイプ | 評価される理由 |
|---|---|
| 金融業界出身 | メガバンク・地銀の融資や法人営業、証券のリテールなど。決算書を読める素地と融資の知見が強い武器になる |
| ハイキャリア法人営業 | 無形商材や高額ソリューションの営業で、社内上位の成績を収めた実績。対経営者の折衝力に転用しやすい |
| 士業・コンサル | 公認会計士・税理士・中小企業診断士の有資格者や、コンサルファーム出身者。財務と論理の両輪を備える |
当社の現場感覚でも、地方銀行の融資担当から転じた30代が、決算書を読む力を足がかりに早期で戦力化した例がありました。前職の看板そのものより、その素地をM&Aの文脈へ翻訳できるかが分かれ目になります。
求められるスキル
多くの会社が最初に見るのは営業力です。ここでの営業力は、押しの強さではなく、相手の本音を引き出す傾聴に近いものを指します。前職の営業成績が相応の水準にない場合、狭き門になりやすいのが実情です。
そのうえで、案件を論理的に分解する地頭、決算書を読む財務の基礎、そして譲渡オーナーの感情に寄り添う誠実さが重なって評価されます。オーナー社長の人生を左右する決断に伴走する仕事だからこそ、対等に話せるかを厳しく見られます。
資格は必要か
資格は必須ではありません。ただし、入社後すぐ決算書に向き合うため、日商簿記2級程度の知識は学習意欲の証明として選考の加点になりやすいものです。3級相当の素養があれば、スタート地点としては十分でしょう。
公認会計士や税理士まで持つ人はごく一握りで、現実には後追いで学ぶ人が大半です。実務寄りの資格に関心があれば、M&Aシニアエキスパート資格の位置づけを確認しておくと、専門性のアピール材料を選びやすくなります。仲介会社側が資格と実績をどう見ているかは、資格と実績で見極める選び方の視点が参考になります。
未経験から選考を突破する準備
内定を分けるのは、才能より準備の解像度です。同じ経歴でも、語り方ひとつで通過率は変わります。ここでは支援現場で効果を実感してきた要点を絞って挙げます。

実績を数値で語る
職務経歴書に「営業を頑張った」と書いても伝わりません。「目標達成率○○%、社内○○人中○位、上位○%」のように、必ず客観的な数値へ落とし込みます。定量化された事実は、初対面の面接官にも成果の輪郭を一瞬で伝えます。
経営者との折衝経験をアピールする
M&A仲介は、最高意思決定者であるオーナー社長と向き合う仕事です。だからこそ、経営者の目線に合わせて対等に話せるか、本音を引き出す傾聴力があるかが問われます。前職で決裁者と渡り合った経験は、業種を問わず強い訴求点になります。
転職準備チェックリスト
下の項目を、応募前に自分の言葉で埋められるか確認してください。埋まらない箇所が、面接で崩れやすい弱点です。
- 直近の営業実績を、達成率・順位・上位割合の3点で数値化できる
- 決裁者や経営者と折衝した具体的な場面を、1分で語れる
- 志望する会社が上場会社系・非上場会社系・会計事務所系のどれで、なぜそこかを説明できる
- 簿記の学習状況を、期日つきの行動として示せる
- 最新のM&A動向を、後継者不足という背景とあわせて要約できる
- 失敗経験を、そこから何を学んだかまでセットで話せる
面接では、M&Aの基礎用語の理解度、難題への問題解決プロセス、経営者との対話を想定した受け答えが見られます。内定まで数カ月に及ぶことも珍しくないため、学習と応募を並走させる粘りが結果を左右します。業界の仕事像を早めに掴むなら、M&A会社の仕事内容と必要スキルが助けになります。
年収・報酬体系と働き方の実態
高年収は事実です。ただし、その裏側にあるハードワークまで見て判断したいところです。光と影の両面を、順に確認します。
年収水準とインセンティブ
多くの会社が月給とインセンティブの組み合わせを採用しています。個人の成約実績が報酬へ直結するため、成果次第では20代から30代前半でも大きく伸びます。下表に、未経験入社後のおおまかなイメージを示します。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 月給(未経験入社時) | 30万〜40万円が中心。ここにインセンティブが上乗せされる |
| インセンティブ | 成約手数料の5〜20%程度が担当者へ還元される会社が多い |
| 年収イメージ | 大型案件を成約すれば1,000万円超も現実的。実力主義の色が濃い |
年収の相場観をもう一段深く知りたい場合は、M&Aコンサルタントの年収相場を確認しておくと、入社後の見取り図が描きやすくなります。
ハードワークとプレッシャー
M&Aは、初回訪問から成約まで平均8カ月から1年近くかかる、足の長いビジネスです。終盤で交渉が破談することも日常茶飯事で、成果が出るまでは精神的なタフさが要ります。案件獲得の新規開拓から株価算定、提案資料や契約書の作成、地方への出張まで一気通貫で担う会社も多く、多忙になりやすい環境です。
だからこそ、成果偏重の評価に振り回されない自己管理が効いてきます。食事と睡眠のリズムを崩さず、案件を分散させてリスクを平準化する。長期戦を前提にコンディションを整える人ほど、結果を積み上げていきます。
転職後のキャリアパスと会計事務所系という選択肢
仲介会社で培うスキルは、外に出ても評価されます。出口を先に描いておくと、最初の一社の選び方も変わってきます。
キャリアの広がり
代表的な進路は、より高いインセンティブ率を提示する同業への移籍、PMIや企業価値向上を担うコンサルファームのFAS部門、そして買い手側に回る事業会社のM&A部門です。とりわけ事業会社側は、ワークライフバランスの改善を狙う転職先としても人気があります。買い手側の視点は事業会社のM&A部門への転職で具体的に掴めます。業界全体が抱える人材課題については、M&A人材の確保をめぐる論点も参考になります。
会計事務所系という道
大手上場系に目が向きがちですが、会計事務所系のM&A仲介も存在感を増しています。営業会社の色合いが強い一般的な仲介と異なり、会計事務所系はデューデリジェンスやバリュエーションといったFAS業務、会計系コンサルティングを兼務できる場合があります。税務・会計の専門性を土台に据えられる点は、コンサル志向の人にとってカルチャーフィットしやすい環境です。
その代表例が、みつき税理士法人を母体とする、会計事務所系・士業系のM&A仲介会社であるみつきコンサルティングです。税理士や公認会計士が財務面を、経営コンサルティング経験者が経営面を支える体制で、完全成功報酬制を採用しています。完全成功報酬の仕組みそのものは完全成功報酬とは何かで整理しています。
会社の譲渡を考えるオーナーが仲介会社を見極める視点
ここまでは転職を目指す立場の話でした。実は同じ知識が、会社を託す側にも役立ちます。良いアドバイザーの条件を知ることは、そのまま「安心して任せられる相談先」を選ぶ物差しになるからです。
後継者不在で第三者への承継を検討するオーナーにとって、相手選びは成否を分ける入口です。誰に相談すべきかはM&Aの相談先の比較で整理でき、仲介とFAの役割の違いはFAと仲介の違いで確認できます。手数料や規律の考え方は中小M&Aガイドライン第3版の要点が土台になります。自社の値づけが気になり始めたら、企業価値評価の考え方から手をつけると、相談の解像度が上がります。
M&A仲介への転職に関するFAQ
相談の現場で受けやすい質問を、実務の答え方で整理しました。
未経験でもM&A仲介に転職できますか
可能です。ただし前職での定量的な営業実績が前提になります。現場ではまず、達成率や社内順位を数値で示せるかを確認します。数字が弱い場合は、経営者との折衝経験や学習姿勢で補える余地があるかを見ていきます。
簿記や資格は取ってから応募すべきですか
取得を待つ必要はありません。応募と並行で学ぶのが現実的です。日商簿記2級程度の学習は、入社後すぐ役立つうえ選考でも加点されやすい傾向があります。まず学び始めた事実を、期日つきで示すことが効きます。
会計事務所系と大手上場系はどちらがよいですか
目的次第です。案件数や研修体制を重視するなら上場会社系、FAS業務や会計系コンサルも経験したいなら会計事務所系が向きます。志望動機を軸に、カルチャーが合う類型を選ぶのが失敗しにくい進め方です。
年収はどのくらい見込めますか
未経験入社では月給30万〜40万円に、成約手数料の5〜20%程度がインセンティブとして乗る形が一般的です。大型案件を成約すれば年収1,000万円超も現実的ですが、成果が出るまでの下振れも想定しておくべきでしょう。
激務と聞きますが実際どうですか
成約まで平均8カ月から1年かかり、終盤の破談もあります。多忙になりやすいのは事実です。案件を分散し、睡眠と食事のリズムを守れる人ほど長く成果を出せます。体力と精神力の準備は、入社前から始めておくと安心です。
現場ではまず、売却の目的と希望条件の整理から入ります。並行してM&A仲介会社に相談し、自社の状況を見てもらうのが近道です。決算書などの基本資料も早めに揃えておくと、その後がスムーズに運びます。
可能です。ただし情報管理の徹底が前提になります。秘密保持契約を結び、社内では信頼できる幹部だけに共有し、コードネームで扱うといった運用が有効です。誰にいつ伝えるかは、専門家と計画を組んで決めます。
準備からクロージングまで、目安は半年から1年です。交渉やデューデリジェンスが長引けば、さらに延びることもあります。焦らず、しかし資料を先回りで整えておくと、無用な待ち時間を減らせます。
売れる余地は十分にあります。買い手が赤字要因の解消や将来の黒字化を見込めたり、技術・人材・顧客基盤に価値を感じたりすれば成立します。今の数字だけで判断せず、潜在的な価値を専門家に洗い出してもらうのが第一歩です。
実績の豊富さ、会計士・税理士の在籍、報酬体系の明確さ、担当者との相性を見ます。複数社の無料相談を使って比較するのが確実です。公的な事業承継・引継ぎ支援センターも、あわせて検討したい窓口です。
M&A仲介への転職で押さえるべき要点のまとめ
M&A仲介への転職は選考のハードルが高い一方、後継者不足を追い風に採用需要は続いています。評価されるのは定量化された営業実績と経営者に向き合う姿勢で、簿記やM&Aシニアエキスパート資格が学習意欲を裏づけます。ここで語った目利きの視点は、会社を託す相手を選ぶオーナーにとっても、安心して相談先を見極める手がかりになります。
当社は、みつき税理士法人を母体とする会計事務所系・士業系の代表的なM&A仲介会社です。中小企業のM&A・会社売却に特化し、公認会計士や税理士を含む専門家が完全成功報酬制で伴走します。会社の譲渡をご検討なら、みつきコンサルティングにご相談ください。
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著者

- 名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
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人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
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