中小企業の経営者がハッピーリタイアを実現するために、M&Aによる事業承継は有力な選択肢です。その場合、早期の判断と準備、信頼できる支援機関の活用がポイントです。その他の方法を含め、経営者のハッピーリタイアについて考えます。
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ハッピーリタイアとは
ハッピーリタイアとは、経済的な余裕を確保した状態で定年を迎える前に退任し、自分らしいセカンドライフを楽しむライフスタイルです。
十分な資金準備と将来設計なしに早期退職を決断すると、理想の老後生活を継続することが困難になる可能性があります。特に多くの責任を背負う経営者の場合、より慎重な準備と計画が欠かせません。
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経営者にとってのハッピーリタイア
企業経営者が事業から早期にハッピーリタイアすることのメリットとデメリットは、どのようなものでしょうか。
ハッピーリタイアのメリット
早期退職により、経営者は数多くの恩恵を受けることができます。
精神的な負担からの解放
経営者は企業運営のあらゆる側面で重い責任を担っています。従業員の生活、取引先との関係、業績向上など、常に多方面からのプレッシャーにさらされる立場です。
ストレスの軽減
ハッピーリタイアを実現することで、こうした日常的なストレスから完全に解放されます。心身ともにリラックスした状態で生活を送ることができ、健康面でも大きなプラス効果が期待できます。
時間的な自由の獲得
経営者は休日であっても急な対応を求められることが多く、プライベートな時間を十分に確保することが難しい状況にあります。
家族との時間確保
退職後は仕事の制約から完全に解放され、家族と過ごす時間を自由に設定できます。これまで仕事優先で犠牲にしてきた家族との絆を深める貴重な機会となるでしょう。
趣味への取り組み
長年興味を持ちながらも時間不足で実現できなかった趣味に本格的に取り組むことができます。新たな技能の習得や創作活動など、個人の充実感を高める活動に時間を投じることが可能です。
居住地の自由度
事業所の立地に縛られることなく、好みの環境で生活することができます。温暖な地域への移住や、複数の拠点を持つライフスタイルなど、これまでは実現困難だった住環境を選択できます。
ハッピーリタイアのデメリット
一方で、ハッピーリタイアには注意すべき点も存在します。
キャリアの終了
現役を続けていれば、さらなる事業拡大や新分野への参入など、キャリアアップの機会は継続します。しかし、早期退職により、こうした可能性を手放すことになります。これまで築いてきた経験や人脈を活用する機会も限定されるでしょう。
時間を持て余すリスク
経営者は常に企業改善や戦略立案に頭を働かせています。突然この状況がなくなると、有り余る時間の使い道が見つからず、無気力状態に陥る可能性があります。退職前に具体的な活動計画を立て、どの程度の時間を要するかを見積もっておくことが重要です。
経済面での不安
収入源が年金と貯蓄に限定されるため、資産の減少に対する心理的負担が生じます。特に定年前の退職では年金受給額も減額されるため、不安は一層強まるでしょう。
また、経営者としての社会的信用を失うことで、住居確保や融資申込みの際の審査が厳しくなる場合もあります。投資による不労所得の構築など、収入源の多様化も検討する価値があります。
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ハッピーリタイア実現に向けた準備
ハッピーリタイアの成功には、綿密な事前準備が不可欠です。
個人の資金計画
退職後の生活費を正確に見積もり、十分な資金を確保することが最優先課題です。
年金受給額は退職時期や家族構成により大きく変動するため、一般的な数値ではなく個別のシミュレーションを実施することが重要です。銀行の相談窓口や専門家のアドバイスを活用し、具体的な数値に基づいた資金計画を策定しましょう。
事業の継続体制構築
経営者の退職後も企業が安定運営できる体制作りが必要です。役員や従業員が円滑に業務を引き継げるよう、十分な準備期間を設けて段階的に移行を進めることが求められます。特に外部から後継者を迎える場合は、既存従業員との関係構築や企業文化の理解に相当な時間を要します。後継者選定から実際の承継完了まで、数年単位での計画的な取り組みが成功の鍵となります。
詳しくは以下で説明ます。
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ハッピーリタイアできる方法
経営者がハッピーリタイアする方法としては、大きくは2つです。
- 廃業
- 事業承継
いずれの方法も、それによる退任が必ず経営者を幸せにするとは限ませんが、引退のルートしては、この2つしかありません。
廃業
近年、廃業件数は増加傾向にあります。帝国データバンクの調査によると、2023年の「休廃業・解散」は5万9千件(前年比10%増)となり、急増しました。
実際上、後継者が見つからない場合には廃業という選択肢はあり得ます。関係者への影響を最小限に抑えながら、事業を終了できるなら、静かな退職後の生活も可能かもしれません。
ただし、廃業には相応の費用が発生します。債務返済に加えて設備処分費用もかかり、各種手続も煩雑です。メリットとデメリットを慎重に比較検討したうえで廃業を選択することが重要です。
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事業承継
事業承継には、さらに以下のような選択肢があります。
- 親族内承継
- 社内承継(役員・従業員承継)
- 第三者承継(M&A)
帝国データバンクが公表した全国「後継者不在率」動向調査(2024年)によると、同族承継(≒親族内承継)の割合は年々低下しています。その一方で、内部昇格(≒社内承継)やM&Aほか(≒第三者承継)は増加しています。

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親族内承継
親族内承継は、現経営者の子息をはじめとした親族に事業を承継させる方法です。一般的に、他の方法と比べて、企業内外の関係者から全面的に受け入れられやすいこと、後継者の早期決定により長期の教育期間の確保が可能であること、家族などの身内に対し資産を後継者に移譲できるため、経営と相続が一体となるような承継が期待できることなどのメリットがあります。
一方、親族内に経営の才覚と志向性を兼ね備えた後継者候補がいるとは限らないことや家族間が相続に際しトラブルになる場合、後継者の決定・経営権の集中が難しいことなどがデメリットとしてあげられます。
また後継者の意志だけでなく、後継者の配偶者や周りの人間の意志も重要となります。事業承継を行ったことによりライフスタイルが変わり、家族との関係に悪影響を与えるケースなどもあります。
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社内承継(役員・従業員承継)
親族外承継の中で、役員・従業員承継は親族以外の役員・従業員に事業を承継する方法です。経営者としての適性のある人材を見極めて承継できること、社内で長年働いてきた役員・従業員であれば経営方針などの一貫性を保ちやすいことがメリットです。
一方デメリットとして、親族内承継の場合以上に、後継者候補が経営への強い志向性を有していることがポイントですが、そういった適任者が中々いないことや、後継者候補が豊富な経営資源を有していない場合が多いこと、個人資産の引き継ぎや株式の取得費用の準備など、経済的な問題が多いことが挙げられます。
組織体制が盤石な会社である程、後継者候補が複数いる場合などもあり、後継者とならなかったキーマンの離脱など、社中から後継者候補を選定する場合今後の経営に重要な問題です。
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第三者承継(M&A)
親族外承継の中で、M&Aは株式譲渡などにより承継を行う方法です。親族や社内に適任者がいない場合でも、幅広く候補者を外部に求めることができるなどのメリットがあります。
デメリットとしては、カルチャーの異なる従業員の融和や、賃金などの雇用条件の維持を図る難しさがある点や経営の一貫性を保つのが難しい点が挙げられます。
M&Aによるリタイアの効果
第三者承継(M&A)による引退は、他の手法に比べた相対比較では、ハッピーリタイアを実現できる可能性が高いといえます。M&Aで実現できる具体的なメリットは以下のようなものです。
創業者利益
M&Aは、対象企業の経営者がそれまでの努力により築き上げてきた事業の価値を、社外の第三者である買収企業が評価して認めることで初めて実現します。
そのため、M&A対象企業の経営者にとって喜ばしいことだと言えます。そしてその対価としてハッピーリタイアに充分な金額の現金を一時で受け取れるという創業者利益を獲得できる可能性があります。一般的な従業員の退職金とは異なり、老後資金としては十二分な金額になることが多いです。
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個人保証から解放される
親族内承継においては、オーナーが個人保証を金融機関やリース会社に差し入れているケースが殆どです。こういった場合は、M&Aの後日付けで個人保証を外すことを求めることが殆どであり、実際、個人保証から解放されるのが一般的です。
2020年度において、経営者保証の代替措置として、担保の全部に経営者保証を代替している企業は44%、担保の一部に経営者保証を代替している企業は36%でした。一方で、個人保証を外すためには譲受側の与信が関係してきますので、譲渡前に調査はすべきです。
経営の強化
企業を統括し、人を雇い、資金を集め、技術を開発し続け、ゼロからリスクを取って事業を育てていくのは本当に時間がかかります。譲渡先にとっては、既に存在する企業とM&Aすることで、一気にその時間を短縮することが可能になります。特に、既に利益を出している企業が多く存在する業界では、ゼロから始めて追いつくのは非常に難易度が高いものです。そこでM&Aすることでそのハードルを下げるとともに、対象会社の経営を強化することでグループとして成長することができるでしょう。また、対象会社にとって経営人材層の強化など、資金面以外でのメリットも非常に大きなものがあります。
このような時間短縮を目的としたM&Aの結果として、企業や事業の成長が加速する可能性があります。
雇用維持
事業承継問題の行き詰まりなどによって倒産の危機に瀕している中小企業が、既存取引先・地域の同業種・異業種企業とのM&Aによって、事業や雇用の維持を実現しているケースは日本中で多く見られます。
M&A対象企業の雇用維持は、地域経済の維持にもつながります。地域経済の源泉は、その多くが中小企業によるものであり、中小企業による雇用から生み出されているとも言えるからです。
一般的に譲渡企業より譲受企業の方が企業規模が大きいことがほとんどであり、譲渡後は譲渡企業の財務基盤は改善される傾向にあり、かつ利益水準も向上する傾向にもあります。
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時間を確保できる
アーリーリタイアを実現できると、まとまった時間が生まれるため、経営に忙殺されこれまででなかった趣味などに時間を充てることができます。
M&Aによるハッピーリタイア実現のポイント
第三者承継によるハッピーリタイアを成功させるために、以下の点に留意してください。
早めに判断する
M&Aをより早期に着手することにより、M&A後に残る金額が多くなるケースがあります。これは、経営者の年齢が上がれば上がるほど企業の業績は低迷する傾向があるためです。譲渡側が考えているほどお相手先がすぐに見つからないケースもあり、自身の考えより数年早い行動が望ましいといえます。
一方で、判断が遅ければ遅れるほどM&Aの選択肢は狭まる傾向にあります。
業績が良いタイミングでM&Aをする
企業体力が十分に余裕のあるタイミングで決断するのも非常に重要です。経営体力に余裕がない場合には、資金繰りに行き詰まりフレキシブルな決断ができなくなるケースも散見されます実際、タイミングが遅れた結果、倒産の危機に陥り、M&Aを検討することすら困難な状況になってしまったケースもあります。同じ譲受先であっても、譲渡企業の経営状況次第では譲渡条件、主に金額が大きく異なります。
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ハッピーリタイア後の公私のビジョンを明確にしておく
M&A対象企業の経営者は、引退後のビジョンを含む将来設計を事前によく考えておく必要があります。例えば、事業に関わり続けたいのか、別の事業に移行したいのか、それともボランティア活動や趣味を楽しむといった全く別のことを行いたいのかなどです。ハッピーリタイア後にどのような過ごし方をするかは、本人のその後の人生にとって本当に重要な要素です。
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信頼性できるM&A仲介会社を活用して進める
仲介会社は、譲渡元・譲受先の意向との擦り合わせに基づいてマッチング支援などを行う支援機関です。
M&Aの成功のためには、特に信頼性の高い仲介会社を活用して進めることが重要です。
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事業承継M&Aによるハッピーリタイアのまとめ
ここまでハッピーリタイアのためのM&Aについて述べてきました。メリット・成功のためのポイント・実際の事例を挙げたため、しっかりとイメージできた方も多いことでしょう。ハッピーリタイアのためのM&Aを実行する際は、高いタイミングで判断し、教育を進めることが特に重要です。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験実績が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。 みつき税理士法人と連携することにより、税務面や法律面のサポートもワンストップで対応可能ですので、M&Aをご検討の際は、成功するM&A仲介で実績のある、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。
著者

- 事業法人第四部長/M&A担当ディレクター
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国内証券会社(現SMBC日興証券)にてクライアントの資産運用を支援。みつきコンサルティングでは、消費財・小売業界の企業に対してアドバイザリーを提供。事業承継案件のみならず、Tech系スタートアップへの支援も行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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