一般承継人、包括承継人、特定承継人という概念をご存知でしょうか。本記事では、主に事業承継やM&Aの文脈で、これらの用語の意味や、相続人との違いについて解説します。
承継人とは
承継人とは、親族や他人から権利、地位、財産などを引き継ぐ人のことを表しています。承継人は承継方法によって「一般承継人」と「特定承継人」に分類されます。それぞれの特徴と具体例を説明します。
一般承継人(包括承継人)
「一般承継人」とは、親族や他人から権利や義務を包括的に引き継ぐ人を指します。
具体的には、親から財産を相続する場合が挙げられ、この場合の承継人は相続人とも呼ばれます。一身専属権など一部の例外を除いて、親が持つ権利や義務を無条件に引き継ぐのが一般的です。また、法人の場合、会社法上の合併や会社分割時においても、権利義務が一括で引き継がれることになります。
特定承継人
「特定承継人」とは、他人から個別の権利を引き継ぐ人を指します。特定承継が行われる際には、承継の対象となる権利義務の法律関係が特定されるため、他の権利や義務の法律関係に拘束されず、個別に引き継ぐことができます。
具体的には、土地の所有権を売買する場合、その土地を購入する人は特定承継人に該当します。また、法人における事業譲渡も特定承継にあたります。これは、事業の一部または全部を個別に引き継ぐ行為です。
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事業承継・M&Aにおける承継人
事業承継やM&Aにおいて、承継人の役割は重要です。承継人は単に権利や財産を引き継ぐだけでなく、事業の継続性や発展に大きな影響を与えます。特に中小企業では、適切な承継人の選定が企業の存続に直結することがあります。
一般承継人と特定承継人の違い
一般承継人(包括承継人)と特定承継人の主な違いは以下のとおりです。
項目 | 一般承継人 | 特定承継人 |
---|---|---|
承継の範囲 | 包括的 | 個別的 |
権利義務の承継 | 原則としてすべて | 特定のものだけ |
典型的な例 | 相続、合併 | 売買、事業譲渡 |
手続きの複雑さ | 比較的シンプル | やや複雑 |
リスク | 簿外債務も承継する可能性 | 選択的に承継可能 |
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承継する権利の範囲
一般承継人と特定承継人は、「包括的に承継するか」「個別に承継するか」の観点で異なります。
具体的には、自宅の土地と建物を相続で一般承継するケースを考察します。一般承継では、土地と建物の全てを一括で承継します。そのため、一般承継人は「土地に抵当権がついているため建物のみを承継したい」といった特定の財産や権利だけを承継することができません。対して、特定承継人は特定の一部のみを承継することが可能です。
承継する義務の範囲
権利と同じく、義務についても一般承継人は包括的に承継し、特定承継人は個別に承継します。
被承継人が借金などの債務を抱えていた場合、一般承継人は当然ながら債務者となり、返済を果たす義務が発生します。一方で、特定承継人は定められた範囲内でのみ債務者となります。特定承継人が債務などの義務を承継する場合、債権者にとっては債務者が返済可能な資産や収入があるかどうかが重要であるため、特定承継で個別に承継する際は、債権者の同意を得る手続が必要となります。
事業承継における一般承継と特定承継
事業承継の方法として一般承継と特定承継のどちらを選択するかは、以下の要因を考慮する必要があります。
- 事業の規模と複雑さ
- 承継する資産や負債の状況
- 税務上の影響
- 従業員や取引先への影響
- 将来の事業展開の計画
これらの要因を慎重に検討し、専門家のアドバイスを受けながら最適な承継方法・承継範囲を選択することが重要です。
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M&Aにおける一般承継と特定承継
M&Aにおける最も利用の多い方法は株式譲渡です。株式譲渡は、合併のように当然に権利義務が承継されるものではありませんが、事業譲渡のように個別の移転手続が不要という意味で、一般承継(包括承継)に該当すると言えます。
一般承継としての特徴
- 権利義務の包括的承継
株式譲渡では、対象会社(譲渡事業)の全ての資産、負債、契約関係が包括的に承継されます。 - 手続の簡便性
株式の所有者を変更するだけで済み、公的機関での手続が不要です。 - 従業員の雇用継続
従業員の個別同意なしに、そのまま雇用関係を引き継ぐことができます。 - 許認可の継続
会社が保有する許認可も原則そのまま引き継がれます。 - 債権者保護手続が不要
特別な債権者保護手続を行う必要がありません。
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株式譲渡の注意点
株式譲渡による一般承継には以下の注意点があります。
- 債務の包括的承継
簿外債務や偶発債務も含めて全ての債務を引き継ぐリスクがあります。 - 買収資金
株価が高額な場合、多額の買収資金が必要となります。 - デューデリジェンスの重要性:
包括的に承継するため、事前の詳細な調査が重要です。
以上のように、M&Aにおける株式譲渡は一般承継(包括承継)に該当し、対象会社の権利義務を包括的に承継する特徴を持っています。この特性を理解し、適切な準備と対策を行うことが、M&Aの成功につながります。
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特定承継の活用
一方、事業譲渡のような特定承継では、以下のような違いがあります。
- 個別の承継
特定承継では、権利義務を個別に選択して承継することができます。 - 手続の複雑さ
資産や契約の移転に個別の手続が必要となり、より複雑になります。 - 従業員の同意
従業員の雇用継続には、原則として個別の同意が必要となる場合があります。
そのため、M&Aの文脈では、特に以下のような場合には特定承継の活用が検討されます。
- 特定の事業部門や資産のみを取得したい場合
- 不採算部門を切り離して事業を再構築する場合
- 知的財産権など特定の権利のみを取得する場合
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円滑な事業承継・M&Aのために
事業承継やM&Aの際には、権利義務を一般承継(包括承継)で引き継ぐか、特定承継で引き継ぐかにより、必要な手続が変わります。自社の状況や承継の目的に応じて、適切な方法を選択することが大切です。また、事業承継やM&Aで権利義務を受け継ぐ過程で、整理すべき課題が多く存在します。その際にどのように対応すべきか迷った場合、専門家に相談することも効果的です。以下にその例を挙げます。
- 不動産の取得や売買に関する契約内容の確認
- 土地や建物の登記に関する手続の検討
- 個人情報保護や労働者の権利の維持に関する法律の遵守
- 企業の経営や財務状況を把握し、適切な事業承継方法の検討
以上のような課題に対処することで、円滑な事業承継やM&Aが可能となります。そのためには、専門家のサポートは不可欠と言っても良いでしょう。
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一般承継人・特定承継人と相続人の違い
一般承継人・特定承継人と相続人の違いについて説明します。
相続人とは
相続人は、被相続人(亡くなった人)の財産や権利義務を包括的に引き継ぐ者で、法律に基づいて決定されます。一般承継人とほぼ同義で使われることが多いです。日本の相続法に基づき、相続人は一定の順位に従って指定され、配偶者や直系尊属、直系卑属、兄弟姉妹などがこれに該当します。
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承継の対象と方法の違い
具体的な違いは以下のとおりです。
一般承継人
すべての財産や権利義務を包括的に承継します。相続人もこれに該当します。
特定承継人
特定の財産や権利のみを承継します。譲渡や贈与などの契約に基づくことが一般的です。
相続人
民法に基づき被相続人の全財産を承継する者であり、一般承継人の一種です。
一般承継人と特定承継人のまとめ
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験実績が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。 みつき税理士法人と連携することにより、税務面や法律面のサポートもワンストップで対応可能ですので、M&Aをご検討の際は、成功するM&A仲介で実績のある、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。
著者
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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