逆さ合併とは?メリット・デメリット、手続、事例などを解説

企業の組織再編に係る手法として、合併があります。合併には特殊な逆さ合併という手法があります。本記事では、逆さ合併についてのメリット、適格要件などについて解説します。

逆さ合併とは

吸収合併では、通常は規模の大きな会社が小さな会社を吸収合併します。例えば、親会社が子会社を吸収するケースがこれに当たります。本章では逆さ合併における基本的な知識を解説します。

小さな会社が大きな会社を吸収合併

逆さ合併の一番の特徴は、小さな会社が自社より規模の大きな会社を吸収合併する点です。吸収する側・される側の関係性が、一般的な吸収合併とは反対になる手法です。

合併には吸収合併・新設合併の2種類ある

合併には、吸収合併と新設合併の2種類の手法があります。それぞれの特徴は以下の通りです。

  • 吸収合併:吸収する会社が存続会社となり、消滅する会社を吸収する手法です。特徴としては、雇用や負債、資産などを引き継ぐ点にあります。
  • 新設合併:新たな会社を設立し、合併する会社を引き継ぐ手法です。この手法では、契約や許認可などは引き継がれない点が特徴となっており注意が必要です。

逆さ合併は、既にある会社が他の会社を吸収するため、吸収合併の一種といえます。

逆さ合併のメリット・デメリット

メリット

節税効果

多額の繰越欠損金を持っている会社が、含み益を有する会社と合併することで、繰越欠損金を相殺し、法人税額を抑えることによる節税手法が存在します。

ただし、繰越欠損金の利用に対しては制約が設けられており、一定の要件を満たすことで、繰越欠損金の引継ぎが認められます。具体的には、存続会社と消滅会社間での支配関係が5年以上あるかなどとなります。この要件を満たした合併を適格合併といいます。

合併差損の回避

消滅会社が債務超過に陥っている場合に逆さ合併を行うと、合併差損が計上されてしまうことになりますので、合併前に存続会社が保有する消滅会社株式の評価額を下げることで、合併差損の計上を避けることができます。

デメリット

合併に際しては、検討する事項が多く、手続きも煩雑になることがデメリットと言えるでしょう。

上場維持に逆さ合併を利用する際に証券取引所の承認を受けることができない場合は、裏口上場と見なされ、上場廃止の可能性があります。

また、合併対価として存続会社が消滅会社の株主に株式を付与している場合、存続会社の実質的な支配権は消滅会社の株主にあるため、株主総会の手続きが複雑になることがあります。

このように、逆さ合併という手法自体に専門性が必要とされるため、検討する際には、専門家への相談が必要不可欠です。

逆さ合併における手続

逆さ合併の手続き方法は、「存続会社」と「消滅会社」でそれぞれ異なるため、それぞれの相違点を理解しておくことが大切です。本章では、それぞれの手続きの流れについて解説します。

「存続会社」の手続

  • 決算公告
  • 合併契約締結
  • 合併書類事前設置開始
  • 株主総会による承認、債権者保護手続き、株式買取請求
  • 合併の効力発生日
  • 変更登記
  • 事後設置開始・財産や資産の名義変更手続き

「消滅会社」の手続

  • 決算公告
  • 合併契約締結
  • 合併書類事前設置開始
  • 株主総会による承認、債権者保護手続き、株式買取請求、新株予約券買取請求、株券提供手続き、登録質権者
  • 合併効力発生日
  • 解散登記
  • 事後設置開始・財産や資産の名義変更手続き

逆さ合併の手続き方法は、事業の目的や状況に応じて適切な手順を踏むことが重要となります。逆さ合併を検討する際は、専門家の適切なサポートを受けることが大切です。

逆さ合併における仕訳・会計処理

本章では、逆さ合併において重要となる逆取得と合併対価、取得企業についてそれぞれ解説します。

まず、合併対価とは、権利義務の承継対価として、消滅会社の株主に対して交付されるものを指します。合併対価には、存続会社の株式・新株予約権・社債などがあります。合併対価として存続会社の株式を交付する場合、消滅会社の株主は合併後に存続会社の株主になります。

次に、取得企業とは、企業あるいは企業の事業に対して支配権を得る企業のことで、企業結合に関する会計基準で用いられる用語で、対価として株式を交付する企業が取得企業となります。

逆取得とは、消滅会社の株主が存続会社の支配権を獲得した状態のことを指します。この際に、消滅会社の株主が実質的な支配権を得るため、消滅会社が取得企業となります。

取得企業では、通常のケースと変わりませんが、被取得企業では、取得企業の資産・負債を簿価で受け入れるために時価が用いられない点に注意が必要です。逆さ合併における会計・仕訳処理についても、逆取得の場合は留意が必要となります。

逆さ合併の事例紹介

本章では、逆さ合併の事例を紹介します。

わかしお銀行と三井住友銀行の逆さ合併

2003年3月に、三井住友銀行とわかしお銀行が逆さ合併しました。資本金1兆3,267億円、総資産98兆9,009億円の三井住友銀行が消滅会社となり、資本金208億円、総資産4,889億円のわかしお銀行が存続会社となりました。

合併後は、商号が三井住友銀行に変更されました。これは典型的な逆さ合併であり、逆取得のケースです。

旧みずほ銀行とみずほコーポレート銀行の逆さ合併

2013年には、旧みずほ銀行がみずほコーポレート銀行によって逆さ合併が実施されました。2011年に発生したシステムトラブルなどにより、旧みずほ銀行の逆さ合併は上場廃止を回避するため実施されたケースと言われています。

逆さ合併における2020年以降の改正点

近年、M&A、組織再編において、特定目的会社(SPC)が多く利用されるようになっており、企業の事業構造変化や成長戦略に活用されています。SPCは、金融機関や投資家から資金を調達しM&Aや組織再編を実施する目的として多く設立されます。ただし、SPCには以下のような課題も存在します。

  • SPCが合併存続会社の場合は、支配継続要件を満たすことができますが、その逆のケースでは組織再編の適格要件を満たさない点。
  • 逆さ合併が実施されて資産が移転しても、適格要件が満たされなければ、実質的な経済実態に変化がないとの見解や意見が増えており、税法の改正が求められています。

これらの問題への対応となるような税法改正が期待されています。改正が実現すれば、企業の成長を促すM&Aや組織再編が、さらに円滑に進行することが見込まれます。逆さ合併を活用するためには、税法改正や市場ニーズ、企業動向などを見据え、事例や手法、注意点などを検討する必要があります。

まとめ:最後に

逆さ合併は、他の合併手法と比較しても独自のメリットを享受できる可能性がある有効な手法ですり。

吸収合併を行うにあたっては、と状況分析及び対応力、コミュニケーション力が求められます。具体的には、存続会社や消滅会社の代表との交渉や、不満を抱える株主や従業員への説得が含まれます。

また、逆さ合併を含むM&Aにおける吸収合併は、法務や税務に精通し、深い会計知識が要求されるなど高い専門性も求まられます。

適切な専門家のアドバイスのもと、効果的な逆さ合併を実施することが会社の成長に繋がります。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験実績が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。 

みつき税理士法人と連携することにより、税務面や法律面のサポートもワンストップで対応可能ですので、M&Aをご検討の際は、成功するM&A仲介で実績のある、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。 

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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