吸収合併契約書の記載事項とひな形|会社売却で合併を選ぶ判断軸

合併契約書に何を書けばよいのか、会社法が定める項目や条文例、印紙税と登記までの手続を実務目線で整理しました。株式譲渡と比べて合併を選ぶべきか迷うオーナー経営者に向けて、手取りや個人保証、取引先との契約承継でつまずかないための判断材料もまとめています。

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目次
  1. 吸収合併契約書とは|会社売却で合併契約が必要になる場面
    1. 会社法が定める合併契約の位置づけ
    2. 中小企業の会社売却で合併契約書が登場する3つの場面
  2. 会社売却のスキーム選定で見る判断軸|株式譲渡と吸収合併の違い
    1. 対価の形で売り手の手取りが変わる
    2. 手続にかかる時間の違い
    3. 当社が株式譲渡を優先して検討する典型パターン
  3. 吸収合併契約書の法定記載事項
    1. 存続会社と消滅会社の商号・住所
    2. 合併対価と割当ての比率
    3. 資本金と準備金の額
    4. 効力発生日
    5. 記載に不備があった場合のリスク
  4. 任意的記載事項と売り手が確認したい条項
    1. 従業員と役員の処遇は条文で明確にする
    2. 合併契約書では足りない論点は別の契約で補う
  5. 吸収合併契約書のひな形と条文例
    1. 標準的な吸収合併契約書の条文構成
    2. ひな形を自社用に直すときの注意点
  6. 締結から登記までの手続とスケジュール
    1. 株主総会の特別決議
    2. 債権者保護手続と反対株主の買取請求
    3. 効力発生後の登記と登録免許税
  7. 吸収合併契約書の印紙税
    1. 合併契約書は第5号文書として1通4万円
    2. 原本の通数と電子契約
    3. 印紙が不要な変更契約もある
  8. 合併後の取引契約はどう承継されるか
    1. 包括承継で既存の契約はそのまま引き継がれる
    2. 再締結や個別対応が必要になる場面
  9. 吸収合併契約書に関するFAQ
  10. 吸収合併契約書のまとめ|合併か株式譲渡かを先に見極める

吸収合併契約書とは|会社売却で合併契約が必要になる場面

「合併なら契約書は簡単なもので済むのでは」と聞かれることがあります。実際には、吸収合併契約書は会社法が中身まで指定する法定の契約書です。書き漏れがあると、合併そのものの有効性に響きます。

中小企業の会社売却では株式譲渡が主流です。ただ、合併や資本業務提携まで含めて手法を比べる場面もあるため、吸収合併の仕組みとあわせて契約書の役割を見ていきます。

会社法が定める合併契約の位置づけ

会社法748条は、合併をする会社に合併契約の締結を義務づけています。株式会社が存続する吸収合併では、同法749条が定めるべき事項を列挙しており、これが契約書の骨格です。条文はe-Gov法令検索の会社法で確認できます。

新しい会社を設立する新設合併もありますが、許認可や登記の手間から、中小企業では吸収合併が選ばれるのが一般的です。

中小企業の会社売却で合併契約書が登場する3つの場面

譲渡オーナーから見ると、合併契約書に向き合うタイミングは大きく3つに分かれます。どの場面かによって、目を配るべき条項も変わります。

買い手が対象会社を直接吸収する場面

譲受企業が存続会社、自社が消滅会社となる形です。株主であるオーナーは、存続会社の株式や金銭を合併対価として受け取ります。売却代金の受け取り方そのものが、合併契約で決まるわけです。

株式譲渡の後に買い手が合併する場面

いったん株式譲渡で子会社化し、数年後に親会社へ吸収する流れ。支援現場ではこのパターンが最も多く見られます。社名や従業員の処遇にかかわるため、M&A後の経営統合の計画として事前に確認しておくと安心です。

売却前にオーナーのグループ会社を一本化する場面

本業の会社と不動産管理会社を別々に持つオーナーは意外と多いものです。譲受企業から「1社にまとめてほしい」と求められ、売却前に合併することがあります。規模の小さい会社を存続会社にする逆さ合併を検討するケースも。

会社売却のスキーム選定で見る判断軸|株式譲渡と吸収合併の違い

会社を手放すという結果は同じでも、契約の当事者、対価の形、手続の重さはまるで違います。下表は、譲渡オーナーの立場から株式譲渡と吸収合併を比べたものです。

比較項目株式譲渡吸収合併
契約の当事者譲渡オーナー(株主)と譲受企業存続会社と消滅会社(会社同士)
主な契約書株式譲渡契約書吸収合併契約書
オーナーが受け取る対価現金が中心存続会社の株式または金銭など
自社の法人格そのまま存続する消滅する
株主総会などの承認譲渡制限株式は取締役会等の譲渡承認原則として両社で特別決議
債権者保護手続不要1か月以上の異議申述期間が必要
契約書の印紙税課税されない1通につき4万円
許認可会社に残るため原則そのまま承継されないものがある
オーナーの税金株式の譲渡所得税制適格か否か、対価の種類で変わる

表中の違いのうち判断を分けやすいのは、対価の中身と手続にかかる時間です。株式譲渡と事業譲渡の違いも並べて比べると、あえて合併を選ぶ理由があるかどうかが見えてきます。

対価の形で売り手の手取りが変わる

株式譲渡なら代金は現金で入り、課税も譲渡所得でほぼ完結します。合併はそうはいきません。対価の設計次第で、受け取るものも税金もがらりと変わります。

存続会社の株式を受け取る場合

税制適格合併で株式だけを受け取るなら、その時点での課税は生じません。ただし譲受企業が非上場だと、その株式をいつ、いくらで現金化できるかは契約の外の問題になります。買取の約束がないまま合併に応じ、手元に売れない株が残る。現場でよく聞く後悔の一つです。

金銭を受け取る場合

金銭を交付する合併は、原則として非適格合併になります。受け取った金額のうち資本金等を超える部分はみなし配当として配当所得に区分され、株式譲渡より税負担が重くなりやすい構造です。

手続にかかる時間の違い

株式譲渡は、契約締結と代金決済を同じ日に済ませることもできます。合併は債権者保護手続だけで1か月以上。準備を含めると2〜3か月は見ておくのが現場の感覚で、決算期や金融機関との調整を考えるともう少し余裕が欲しいところです。

当社が株式譲渡を優先して検討する典型パターン

合併が向く局面もありますが、会社売却の入口としては株式譲渡のほうが扱いやすい場面が大半です。支援現場では、次の項目に1つでも当てはまれば、合併より株式譲渡を先に検討します。

  • 建設業許可など、合併で自動的に承継されない許認可が事業の柱になっている
  • 賃貸借契約や主要取引先との契約に、合併を解除事由とする条項がある
  • 譲受企業が非上場で、対価として受け取る株式の換金方法が決まっていない
  • 借入金に代表者の個人保証が付いており、合併前に解除の見通しが立っていない
  • 繰越欠損金の引継ぎを前提にしているのに、適格要件の確認が済んでいない

反対に、すでに100%の資本関係がある会社同士の整理や、株式譲渡後のグループ再編では、合併のほうが管理コストを下げられることも多くあります。

吸収合併契約書の法定記載事項

ひな形を探す前に、会社法749条が求める項目を押さえておくと、自社用に書き換える箇所がはっきりします。下表は、株式会社同士の吸収合併で契約書に定める法定記載事項の一覧です。

会社法749条1項法定記載事項実務での確認点
1号存続会社と消滅会社の商号・住所登記簿の表記と一致しているか
2号消滅会社の株主に交付する金銭等の内容
(株式の場合は数と、増加する資本金・準備金の額)
対価の算定根拠を株主に説明できるか
3号金銭等の割当てに関する事項合併比率と端数の処理
4号・5号消滅会社の新株予約権者に交付するものと、その割当て新株予約権を発行していないか
6号効力発生日債権者保護手続が間に合う日付か

存続会社と消滅会社の商号・住所

当たり前の項目に見えて、本店移転の登記を放置していた会社ではここで表記がずれます。どちらを存続会社にするかは、許認可や取引口座の数で決めることが多いです。

合併対価と割当ての比率

合併契約のなかで交渉が最も集中するのがこの項目です。消滅会社の株主に何をどれだけ渡すかは、事実上の売却価格を意味します。

合併比率の根拠は企業価値評価で固める

株式を対価にするなら、両社の株式価値を比べて合併比率を決めます。根拠が弱いと少数株主の不満を招くため、企業価値評価の算定結果を資料として残しておくと、株主総会での説明がぐっと楽になります。

親会社の株式を対価にする方法

存続会社ではなく、その親会社の株式を渡す三角合併も制度上は可能です。中小企業同士ではまれですが、上場会社グループが譲受企業になる案件では選択肢に入ってきます。

対価を交付しない無対価合併

100%子会社を親会社が吸収する場合や、同じオーナーが両社の株式をすべて持つ兄弟会社を合併する場合は、対価を交付しない無対価合併がよく使われます。株主構成が変わらないので、合併比率の議論も要りません。

資本金と準備金の額

株式を対価にするときは、存続会社で増える資本金や資本準備金の額も定めます。資本金が増えれば登記の登録免許税が上がり、1億円を超えると法人税の中小企業向け特例も使えなくなるため、その他資本剰余金への振り分けも含めて設計します。

効力発生日

合併の効力が生じ、権利義務が存続会社へ移る日のことです。債権者保護手続が終わっていなければ効力は生じないため、手続の期間から逆算して日付を置きます。遅れに備え、両社の合意で日付を変更できる条項を入れておくのが通例です。

株主総会の開催日は法定記載事項ではない

古い解説のなかには、株主総会の期日を必ず書くとするものがあります。これは旧商法時代の名残で、現行の会社法では求められていません。承認期限の目安として任意に記載するのは差し支えありません。

記載に不備があった場合のリスク

法定記載事項を欠いた契約にもとづく合併は、合併無効の訴えの対象になり得ます。提訴期間は効力発生日から6か月以内。無効が確定すると、取引や雇用の巻き戻しという厄介な問題が残ります。

任意的記載事項と売り手が確認したい条項

法定記載事項だけでも合併契約は成立します。とはいえ実際の契約書には、効力発生日までの約束ごとや人の処遇を定める任意条項が並びます。下表は、中小企業の合併契約でよく見かける任意的記載事項です。

任意的記載事項主な内容譲渡オーナーの確認点
財産の引継ぎ基準日の貸借対照表をもとに資産・負債を承継する基準日以降の変動をどう報告するか
善管注意義務効力発生日まで通常の範囲で業務を行う大型の設備投資や借入の予定がないか
従業員の処遇雇用の継続、勤続年数の通算退職金規程や給与体系の差をどう扱うか
役員の選任存続会社の取締役・監査役に誰が就くか退任する役員の退職金の扱い
定款変更商号や事業目的の変更社名が残るかどうか
剰余金の配当制限効力発生日までの配当を制限する合併前に配当を受けたい事情がないか
契約の変更・解除重大な変動や瑕疵が判明した場合の協議解除事由が広すぎないか
契約の失効株主総会や官庁の承認が得られない場合失効時の費用負担

従業員と役員の処遇は条文で明確にする

人の処遇は、合併後にもめやすい論点の筆頭です。従業員と役員では、確認すべき中身が異なります。

従業員の雇用と勤続年数

合併では雇用契約も包括的に承継され、従業員一人ひとりの同意は求められません。それでも勤続年数の通算や退職金規程の違いを書かずにおくと、不満の火種になりがちです。社員の雇用契約を引き継ぐ方法と照らして条文を確認しましょう。

退任する役員の退職金

合併を機に消滅会社の役員が退任するなら、退職金をいつ、どちらの会社が支払うかを決めておきます。支給のタイミングで損金算入の可否や手取りが変わるため、吸収合併時の役員退職金は税理士と早めに詰めたい論点です。

合併契約書では足りない論点は別の契約で補う

合併契約書は、会社法の手続を回すための書面という性格が強く、条文も簡素になりがちです。資本関係のない会社が相手の案件では、それだけで譲渡オーナーを守ることはできません。

表明保証や補償は最終契約で定める

決算書の正確性や簿外債務がないことを約束する表明保証、違反時の補償、オーナーの競業避止などは、合併契約とは別の最終契約書に盛り込むのが一般的です。

株式譲渡契約書との役割の違い

株式譲渡契約書は、売買条件と表明保証を1つの書面で定めます。合併では、会社法上の合併契約と、当事者間の取引条件を定める契約が分かれやすい。書面が増える分、どこに何を書いたかの整理が欠かせません。

吸収合併契約書のひな形と条文例

条文をゼロから起こす必要はありません。法務局の合併登記申請書の記載例には合併契約書の一例も収録されており、骨組みを確認するには十分な内容です。

吸収合併契約書の雛型・テンプレート(法定記載事項のサンプル)


吸収合併契約書のひな形(財産の承継・役員・従業員の処遇・解約条件などの記載例)

標準的な吸収合併契約書の条文構成

下表は、株式を対価とする吸収合併契約書の一般的な条文構成と、各条に書く内容の要旨です。存続会社を甲、消滅会社を乙とする書き方が定着しています。

見出し記載内容の要旨
第1条合併の方法甲が乙を吸収して権利義務を承継すること、両社の商号と本店
第2条合併対価と割当て乙の株式1株に対する甲株式の割当数、端数の処理
第3条増加する資本金等甲の資本金・資本準備金などの増加額
第4条効力発生日日付と、手続が間に合わない場合の変更方法
第5条財産の引継ぎ基準日の貸借対照表をもとにした資産・負債の承継
第6条善管注意義務効力発生日までの業務執行と財産管理
第7条従業員の承継雇用の継続と勤続年数の通算
第8条株主総会の承認両社が承認を得る期限
第9条合併条件の変更・解除天災や重大な瑕疵が判明した場合の協議
第10条協議事項契約に定めのない事項の扱い
第11条契約の効力株主総会や官庁の承認が得られない場合の失効

ひな形を自社用に直すときの注意点

ひな形はあくまで一例にすぎません。支援現場で修正が入りやすいのは次の3か所で、流用のままにしておくと後から協議がこじれます。

財産の引継ぎ基準日と効力発生日のずれ

基準日から効力発生日までの間に、大口の売掛金回収や借入返済が起きるのは珍しくありません。その変動をどう報告し、合併比率に反映させるかを一文入れておくと安心です。

契約解除の条件

「重大な変更が生じた場合は協議のうえ解除できる」とだけ書くと、何が重大かで揉めます。M&A契約のMAC条項と同じ発想で、売上や純資産の減少幅など判断基準を具体化する方法もあります。

作成通数と署名者

契約書の末尾には、作成通数、締結日、両社代表者の記名押印を記載します。原本を何通作るかは、後述する印紙税の負担に直結する部分です。

締結から登記までの手続とスケジュール

契約書に押印した日はゴールではなく、むしろ出発点です。株主と債権者への手続を期限どおりに進めて、ようやく効力が生じます。下表は、吸収合併の主な手続と期限の目安をまとめたものです。

手続期限・期間の目安根拠条文(会社法)
取締役会決議と合併契約の締結手続全体の起点748条
事前開示書類の備置株主総会の2週間前の日などから782条・794条
株主への通知または公告効力発生日の20日前まで785条・797条
債権者保護手続1か月以上の異議申述期間789条・799条
株主総会の承認効力発生日の前日まで783条・795条
効力発生契約で定めた日750条
変更登記と解散登記効力発生日から2週間以内921条
事後開示書類の備置効力発生日から6か月間801条

株主総会の特別決議

合併契約は原則として、両社の株主総会で出席株主の議決権の3分の2以上の賛成による特別決議を得て承認されます。オーナーが7〜8割を持つ会社なら、可決自体は難しくありません。気をつけたいのは、残りの株主への説明のほうです。

株主総会を省略できる簡易合併と略式合併

条件を満たせば、株主総会の承認を省ける場合があります。要件の読み違いが起きやすいので、使えるかどうかは早めに確認しておきましょう。

存続会社側の簡易合併

交付する対価の額が存続会社の純資産額の5分の1以下なら、存続会社は株主総会を省略できます。ただし、非公開会社が自社の譲渡制限株式を対価にする場合や、合併差損が生じる場合は使えません。

議決権の90%以上を持つ場合の略式合併

一方が相手の議決権の90%以上を持つ特別支配会社であれば、支配される側の株主総会は原則として不要です。親子会社の合併でよく使われますが、対価の種類によっては適用できない点に注意が要ります。

債権者保護手続と反対株主の買取請求

意外と見落とされるのが、取引先や金融機関といった債権者への手続です。株主対応とは別に、両社それぞれで進めます。

公告と個別催告

官報で公告し、把握している債権者には個別に催告します。異議を述べる期間は1か月以上です。定款で公告方法を日刊新聞や電子公告としている会社は、官報とあわせて公告すれば個別催告を省けるため、取引先が多い会社ほど事務負担を減らせます。

反対株主の株式買取請求

合併に反対する株主は、公正な価格での株式の買取を会社に請求できます。親族以外の少数株主がいる会社では、合併比率への不満がこの請求につながりやすく、事前の説明と合意形成が効いてきます。

効力発生後の登記と登録免許税

効力発生日から2週間以内に、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記を同時に申請します。合併契約書は、この登記の添付書類として提出する書面です。

登記申請の主な添付書類

法務局の記載例では、合併契約書、両社の株主総会議事録と株主リスト、公告と催告をしたことを証する書面、異議を述べた債権者への対応を証する書面、資本金の計上に関する証明書などが挙げられています。

登録免許税の目安

存続会社の変更登記は増加した資本金の額の1,000分の1.5で、消滅会社の合併直前の資本金相当額を超える部分は1,000分の7、3万円未満なら3万円です。消滅会社の解散登記にも別途3万円がかかり、商号変更や役員変更を同時に行えば税額が加算されます。

吸収合併契約書の印紙税

「契約書に印紙は要らない」と思い込んでいる経営者は少なくありません。株式譲渡契約書の印紙税は不要なので、同じ感覚でいると合併の場面で戸惑うことになります。

合併契約書は第5号文書として1通4万円

会社法748条の合併契約を証する文書は、印紙税法上の第5号文書にあたります。税額は記載金額に関係なく1通につき4万円で、国税庁の印紙税額の一覧表で確認できます。

原本の通数と電子契約

両社が署名押印した原本を2通作れば、印紙税も2通分で8万円です。署名押印のない単なる写しは課税されないため、グループ内の合併なら原本1通で足りる場合もあります。電子契約で締結すれば紙の課税文書を作成しないので、印紙税の対象外とする扱いが実務で定着しています。

印紙が不要な変更契約もある

合併契約を後から変更する覚書も、原則は第5号文書として課税されます。ただし国税庁の質疑応答事例によれば、労働契約の承継や就任する役員など、会社法が合併契約に定めるとしていない事項だけを変える文書は課税対象外です。

合併後の取引契約はどう承継されるか

「合併したら、取引先と契約を全部結び直すのでしょうか」。支援現場でいちばん多い質問かもしれません。結論からいえば、原則として結び直しは不要です。

包括承継で既存の契約はそのまま引き継がれる

効力発生日に、消滅会社の権利義務は存続会社へまとめて移ります(会社法750条)。取引契約も同じで、個別の同意や覚書がなくても法的には有効に続きます。取引先には、社名が変わる旨の案内状を送っておくのが実務上の礼儀です。

再締結や個別対応が必要になる場面

法律上は引き継がれても、契約条項や行政上のルールによって手当てが要るケースがあります。デューデリジェンスの契約書レビューの段階で洗い出しておくのが理想です。

COC条項と合併を解除事由とする条項

COC条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)は、支配株主の変更や合併を理由に取引先が契約を解除できるようにする定めです。店舗や事務所の賃貸借契約、代理店契約、ライセンス契約に多く、該当すれば事前の承諾取得や再契約が必要になります。

許認可の承継

許認可は法令ごとに扱いが異なります。建設業許可のように事前に認可を受けておかないと承継されないもの、合併では引き継げず新規取得が要るものもあります。営業できない空白期間が生じないよう、日程の組み方が問われます。

銀行口座と借入金、個人保証

口座名義は自動では変わらないため、名義変更か残高移管のうえ解約を依頼します。借入金は存続会社に承継されますが、オーナーの個人保証は当然には外れません。経営者保証の解除は、合併前に金融機関と譲受企業を交えて交渉しておきたいところです。

吸収合併契約書に関するFAQ

合併契約書の作成や、会社売却との関係について、オーナー経営者から寄せられることの多い質問をまとめました。

Q:吸収合併契約書は誰が作成しますか?

存続会社側が弁護士や司法書士に起案を依頼し、消滅会社側が内容を確認する流れが一般的です。税務への影響は税理士、条件調整はM&A仲介会社が担います。M&Aの相談先ごとに役割が違うので、窓口を一本化すると進行が安定します。

Q:締結した合併契約書の内容は後から変更できますか?

両社が合意すれば変更できます。株主総会で承認済みの内容を実質的に変えるなら、改めて承認を得るのが安全です。効力発生日だけを動かす場合も、消滅会社は変更前の効力発生日の前日までに変更後の日を公告しなければなりません。

Q:株式譲渡で売却した後、買い手に吸収合併されることはありますか?

あります。子会社化から数年後に親会社へ合併されるのは珍しくありません。社名や従業員の処遇が気がかりなら、株式譲渡の最終契約で一定期間の雇用維持などへの配慮を条項に入れるよう交渉するのが現実的です。

Q:ネットで入手したひな形はそのまま使えますか?

法定記載事項の抜け漏れ確認には役立ちますが、そのままでは使えません。合併比率、財産の引継ぎ基準日、従業員の処遇、解除条件は案件ごとに書き換えが要ります。第三者との合併なら、表明保証を定める別契約との整合も確認します。

税理士法人を母体とするM&A仲介会社|みつきコンサルティングが選ばれる理由

吸収合併契約書のまとめ|合併か株式譲渡かを先に見極める

吸収合併契約書は会社法749条の項目を押さえれば形は整います。ただ対価の形や債権者保護手続、個人保証まで見ると、株式譲渡のほうが合う会社も多いのが実情です。手続の重さに不安を感じたら、契約書づくりの前に手法そのものを見直すのが近道です。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社です。中小企業M&Aの支援経験が豊富なアドバイザーが、合併と株式譲渡の比較から税務面の確認まで一貫して伴走します。スキーム選びに迷ったら、お気軽にご相談ください。

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著者

西尾 崇
西尾 崇事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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