負債比率とは|計算式・適正な目安・M&Aへの影響と改善対策

負債比率とは、自己資本に対する負債の比率です。本記事では、負債比率の意義と重要性、正確な計算方法と適正水準などの理解から、その改善方法やM&A戦略において負債比率が果たす役割などを解説します。自社の経営改善やM&A戦略の成功につなげるための参考としてください。

負債比率とは

負債比率とは、自己資本に対する負債の割合を表す指標です。会社の安全性の観点からは、負債比率が低いことが好ましい状態と言えます。一方で、会社の収益性の観点で見た場合、負債比率が低いことだけでは好ましいとは言えません。すなわち、会社の安全性と収益性の両面から判断することが求められます。

財務の健全性が分かる

負債比率は、企業の経営状況を把握する上で、特に財務の健全性を評価する際に役立つ指標です。具体的には、負債比率が高い企業は、借入金の返済負担が大きく、経営に対する影響が大きい場合が多くなり、逆に、負債比率が低い企業は、自己資本がしっかりと充実しており、経営の安全性が高いと評価することができます。このように負債比率を一つの基準として、企業の経営の安全性を正確に把握し、適切な判断を行うことが可能となります。

負債比率の計算方法

負債比率の計算方法は、以下の式で算出されます。

  • 負債比率(%)=(総負債額 ÷ 総資産額)×100

具体的な計算式

具体的な計算式を用いて負債比率を理解し、実例を挙げて分析しましょう。

〈設例〉A社 総負債が5000万円、自己資本が10000万円

  • 〈計算式〉 負債比率 = (5000 / 10000) × 100 = 50 %

この結果から、A社の負債比率は50 %であることが分かります。高い負債比率は経営リスクを示すことが多く、適正水準を維持することが重要です。

適正水準の目安

負債比率の適正な水準は、業種や企業規模によって異なるため、画一的に定義することは難しいのですが、一般的には、負債比率が50%以下であれば、財務健全性が高いとされています。一方で、負債比率が100%を超える企業は、財務健全性が低く、リスクが高い財務状態と言えます。

負債比率と用いた財務の判断基準として、業種や規模に応じた平均値を参考にすることが有益です。また、過去の負債比率の推移や競合他社との比較を行うことで、より精度の高い判定が可能となります。このように、企業の経営者や投資家は、負債比率の適正水準を理解することで、適切な資金調達や投資判断を行うことが可能となります。

業種別の適正比率の目安

各業種における適正な負債比率は、事業の性質や経営状況によって異なります。通信業界や建設業界では、設備投資が大きいため負債比率が高くなる傾向があります。一方、サービス業や販売業では、固定資産が少なく運営資金が必要な場合が多いため、負債比率が低い傾向となります。

負債比率が業界の適正水準を超えた場合、金融機関からの借入れが難しくなることがあるため注意が必要です。また、株式市場では投資家が負債比率を重視するため、高い負債比率が株価に悪影響を与えることもあります。経営状況や業界特性に応じて、適正な負債比率を維持することが重要です。

負債比率が高い場合のリスクと対策

負債比率が高い企業は、経営上のリスクが増加します。具体的には、金利負担の増加やそれに伴うキャッシュフローの悪化などが挙げられます。負債比率を引き下げる対策としては、負債を圧縮するために不効率な資産を売却する、増資など自己資本の増強を行うなどの方法があります。

また、利益率の改善やコスト削減に取り組むことで、収益力を改善し、負債の返済に努めることで、経営の安定化を図るなど、計画的な資産処分や収益改善策の実施が負債比率改善と企業の持続的な成長につながります。

金融機関からの借入れ制限や信用低下

金融機関は、企業の財務リスクを評価し、過大な負債を抱える企業に対し、融資の制限や金利など貸出条件を厳しくすることが一般的です。負債比率が高い水準の場、銀行との取引が制限されることに加え、取引先や顧客からの信頼喪失につながることがありますので、適切な負債管理が不可欠です。自社の財務状況や業界動向を常に把握し、適切な負債比率を目指す取り組みを心がけましょう。

営業利益が返済に回らず資金繰り悪化

企業が資金繰り悪化に陥る理由は、営業利益が十分稼ぎ出せていないことが主な理由ですが、他の具体的な原因としては以下の通りです。

  • 業種特有の状況による収益の低迷
  • 自社の資本構成が適正でない場合
  • コストが増加し、価格転嫁できていない場合
  • 先行投資がかさんでいる場合

企業が財務改善策を実行する際は、個別の状況に応じて対策を計画し、資産の効率的な活用や売上の拡大、支払い条件の見直し、借入金の返済条件の調整等を適切に実施していくことが重要です。

M&Aにおける負債比率の影響と対策

本章では、負債比率がM&Aに与える影響について、解説します。

買収価格への影響と適切な評価の重要性

M&A時において、買収価格と負債比率は大きな関係性を持っています。具体的には、負債比率の高い企業は、買収価格が下がる可能性が大きくなります。一方で、負債比率が高くても、収益性が高く、有益な資産を有している場合は、適切な評価を行うことで、買収価格にも適正に反映されますので、しっかり事前対策が重要となります。

M&Aのシナジー効果による負債比率の改善

負債比率はM&A後の譲受企業とのシナジーによって改善されます。具体的には、以下の効果が期待できます。

  • 売上や利益の向上
  • 経費削減や経営統合によるリストラ効果
  • 資本増強による負債の一括償還

M&Aにおける譲受企業は、一般的に、資本力があり、譲渡企業とのシナジー効果を期待することでM&Aを実行します。したがって、譲渡企業の収益力改善や資本の充実により、負債比率は改善します。

その他の財務指標

負債比率は企業の財務状況を判断する際に利用される指標の一つですが、他にも重要な指標が存在します。本章では、負債比率以外の財務指標及び活用方法について解説します。

自己資本比率

自己資本比率は、企業が自己資本でどれだけの資産を持っているかを示す指標です。一般に、自己資本比率が高いほど経営基盤が安定しているとされています。自己資本比率についても、業種ごとに適正な水準が異なるため、他社との比較や業界平均との対比が有効となります。

下表は貸借対照表です。企業が有している「資産」(図表左側)に対して、どのように資金を調達しているかを「他人資本」(=負債)と「自己資本」で表したものです。

自己資本とは、他人資本とは

流動比率

流動比率は、企業の短期的(一般的には1年以内)なキャッシュフローで、短期的で支払われるべき負債をどれだけ賄えるかを示す指標で、短期的な資金繰りの安全性が評価されます。流動比率についても、業種によって適正な水準が異なるため、同業他社との比較が重要となります。

その他の比率

以上の指標に加え、営業利益率や売上高利益率などの利益率なども重要な指標として活用可能できます。これらを併せて分析することで、より包括的な経営分析が可能となります。また、売上高総利益率や営業利益率などの利益指標は、企業の収益力を評価する上で重要な指標となります。資産効率は、資産をどれだけ効果的に活用しているかを示し、事業展開の効率性に関する評価に役立ちます。

  • 売上高総利益率=(売上総利益÷売上)×100
    • 売上総利益率の適正目安は、業種によって異なります。 売上に占める売上総利益の構成比が大きいほど、売上総利益率は高くなり、売上総利益率が高いほど、収益性の高い商品やサービスを提供している状態となります。
  • 営業利益率=(営業利益 ÷ 売上高)× 100
    • 本業でどれくらい効率よく稼いでいるのかを表し、企業業績を評価する基本的な指標の一つと言われます。
  • 資産効率(総資産回転期間)=売上高÷総資産
    • 資産効率は総資産回転期間とも呼ばれており、「総資産がどれだけ効率的に売上高を生み出したか」という資産運用効率を表す指標です。

負債比率とM&Aのまとめ

負債比率は企業の財務状況を評価する上で重要な指標ですが、経営分析の際には他の指標も活用して総合的な判断を行うことが重要です。具体的には、自己資本比率や流動比率、各種利益率なども考慮に入れ、業界平均や競合企業と比較することで、より正確な企業評価が可能となります。また、これら指標を使って企業の長期的な収益性や成長性を評価する際、市場環境や経営戦略にも目を向けることが重要でとなります。これらの財務指標を定期的にチェックし、適切な経営判断を行うことで、企業の持続的な成長が可能となります。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験実績が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。  みつき税理士法人と連携することにより、税務面や法律面のサポートもワンストップで対応可能ですので、M&Aをご検討の際は、成功するM&A仲介で実績のある、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。

 

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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