事業承継の費用を比較|M&A・親族内・従業員承継の税金と手数料

後継者を誰に託すかで、手元に残る資金は大きく変わります。親族内承継・従業員承継・第三者への譲渡で、税負担や専門家報酬、手続にかかる期間がどう違うのかを現場目線で整理しました。判断を急ぐ前に、コストの全体像をつかみたいオーナーへ向けた一本です。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。

承継先で変わる事業承継の費用構造

会社を誰に引き継ぐか。その一点で、出ていくお金の中身は大きく変わります。親族へ渡すのか、社内の役員に託すのか、第三者へ譲るのか。同じ事業承継でも、かかる税金も専門家への報酬も別物です。承継の全体像は事業承継の全体像で整理していますが、本記事では費用に絞って3つの道筋を比べます。専門家選びの段取りは事業承継の相談先選びもあわせてご覧ください。

親族内承継のコスト構造

親族内承継は、外部に支払う手数料が最も小さい道です。子や配偶者へ株式を渡すため、仲介会社への成功報酬は発生しません。代わりに重くのしかかるのが、相続税や贈与税という税金面の負担です。株価が高い会社ほど、後継者が払う税額は膨らみます。意外と多いのが、納税資金まで手当てせずに贈与だけ進めてしまうケース。親族内承継の手順を踏みながら、早めに株価対策を組み立てるのが定石になります。

従業員承継(MBO)のコスト構造

役員や従業員へ引き継ぐ社内承継では、相続税はかかりません。論点になるのは、後継者が株式を買い取る資金をどう用意するかです。個人の貯蓄だけで賄えることは、ほとんどありません。そこで使われるのが、持株会社を設立して借入で買い取るMBOの資金調達という枠組みです。借入金利という見えにくいコストが、ここで効いてきます。進め方の詳細は従業員承継の流れで解説しています。

第三者承継(M&A)のコスト構造

第三者へ譲るM&Aは、創業者に売却代金が入る唯一の道です。相続税も贈与税も生じず、譲渡益にかかる所得税だけを見ておけば足ります。一方で、譲渡先を探す段階から仲介会社の関与が欠かせず、その手数料が最大の支出になります。手取りを増やす視点では、創業者利益の確保とセットで手数料の中身を理解しておきたいところです。M&Aと他の承継との見分け方は承継とM&Aの違いでも比較しています。

3つの承継方法を費用・税金・期間で比較

下表で、3つの承継方法のコストと手続期間を並べてみます。金額は会社の規模や株価で動くため、目安としてご覧ください。

事業承継にかかる費用-承継先による違い
比較項目親族内承継従業員承継第三者承継(M&A)
外部手数料小さい(専門家報酬が中心)中程度(MBO支援費用)大きい(仲介手数料)
主な税金相続税・贈与税所得税・贈与税所得税(譲渡益)
税負担を負う人後継者後継者譲渡オーナー
現金の動き対価の授受は少額後継者が買取資金を調達オーナーへ売却代金が入る
手続期間の目安半年〜数年1年前後半年〜1年半

同じ会社でも、親族へ渡せば後継者に納税負担が乗り、M&Aならオーナー自身に税金が生じます。誰がいつ、いくら負担するのか。取り違えると、資金繰りでつまずきます。

M&A(第三者承継)の手数料はどう決まるか

事業承継型のM&Aで、費用の大半を占めるのが仲介会社への手数料です。料金体系を知らないまま契約すると、想定外の支出に驚くことになります。内訳を分解して見ていきましょう。

相談料・着手金・中間金・成功報酬の内訳

仲介会社へ支払う費用は、大きく4種類に分かれます。相談料は無料の会社が多く、着手金も不要とする会社が増えています。基本合意の段階で中間金が生じる場合があり、成約時に成功報酬を支払う流れが一般的です。料金の全体像はM&A手数料の相場で25社を比べた記事が参考になります。

下表に、代表的な手数料の項目と目安を整理しました。

費用項目内容目安
相談料初期のヒアリング費用無料の会社が多い
着手金業務開始時の前払い費用無料〜数百万円
中間金基本合意時に支払う費用成功報酬の10〜20%程度
成功報酬成約時に支払う主たる報酬レーマン方式で算定

レーマン方式と成功報酬型の料金

成功報酬の計算で広く使われるのが、レーマン方式です。取引金額が大きいほど料率が下がる刻みで、5億円までの部分は5%が目安になります。詳しい計算ルールはレーマン方式の仕組みを見ると分かりやすい。着手金も中間金も取らず成約まで費用ゼロを掲げる成功報酬型の料金も主流で、最低報酬額の有無で実質負担は変わります。

見落としやすい最低報酬額

成約まで費用がかからないと聞くと、安心して任せたくなります。しかし、多くの仲介会社は最低報酬額を設けています。取引金額が小さい案件では、料率で計算した額より最低報酬額のほうが高くなることも珍しくありません。支援現場でよく見るのが、譲渡価格2,000万円ほどの小規模案件で、成功報酬がほぼ最低報酬額に張り付くケースです。料率だけを見て安いと判断すると、実際の手取りは想定より細ります。契約前に、最低報酬額がいくらで、どの金額をベースに料率を掛けるのかを確かめておきたいところです。

事業承継でかかる税金

承継方法が決まったら、押さえておきたいのが税金です。誰に、どの税が、いつかかるのか。承継先によって主役となる税目が入れ替わります。

譲渡オーナーが負担する所得税

M&Aで株式を売ったオーナーには、譲渡益に所得税と住民税がかかります。税率は所得税15.315%と住民税5%を合わせた20.315%の申告分離課税です。給与のような累進課税ではないため、数億円規模でも税率は一定に保たれます。ただし2025年分以降は、所得が極めて大きい層にミニマムタックスが及ぶ場面も出てきました。非上場株式の課税は株式譲渡にかかる税金で詳しく扱っています。

親族内承継で意識する相続税・贈与税

親族へ株式を渡す場合の主役は、相続税と贈与税です。相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除があり、これを超えた部分に累進税率がかかります。生前贈与で動かす場合は、年110万円を超えた分への課税。株価が高い会社ほど、後継者の負担は膨らみます。渡し方しだいで負担は変わるため、株式贈与での承継で選択肢を比べておくと安心です。

事業承継税制で税負担を猶予する

自社株の評価額が高い会社には、事業承継税制という強い味方があります。一定要件を満たせば、非上場株式にかかる贈与税・相続税の納税が猶予され、後継者の死亡といった事由で免除される仕組みです。法人版の特例措置を使うには、特例承継計画を都道府県へ提出します。計画の提出期限は2027年9月30日まで延長されましたが、実際の贈与・相続は2027年12月31日までという据え置きです。要件と手続は事業承継税制の要件で確認できます。制度の土台となる経営承継円滑化法もあわせて押さえると、認定の流れがつかめます。

事業譲渡では法人税・消費税が出る

会社ごと売る株式譲渡なら、会社に法人税はかかりません。注意したいのは、事業の一部だけを切り出す事業譲渡です。譲渡益が会社の利益に乗るため法人税が生じ、設備や在庫の移転には消費税も課されます。スキーム選びの段階で、この差を織り込んでおく必要があります。

専門家へ支払う報酬の相場

税金の試算も契約書の作成も、専門家の力を借りる場面が出てきます。誰に何を頼むかで、報酬の桁は変わります。代表的な専門家ごとに、費用感を押さえておきましょう。

税理士・会計士・コンサルタント

自社株の評価や税務の申告は、税理士や会計士の領分です。株価算定で数十万円から、申告書の作成で数十万円から数百万円が一つの目安になります。承継計画そのものを設計する事業承継コンサルの費用は、内容しだいで百万円単位まで膨らみます。初回相談を無料にしている専門家も多いため、見積もりを取って比べるのが堅実です。

弁護士・司法書士

法的なトラブルを抱えていない限り、弁護士の出番は限られます。顧問契約があれば追加報酬は軽く済むこともあり、相談料は1時間あたり数千円から数万円が相場です。一方の司法書士は、定款変更や役員変更の登記で必ず関わります。商業登記で数万円から、組織再編をともなう承継なら数十万円を見ておくと安心できます。

補助金と融資で費用を抑える

出ていく費用は、公的な支援で軽くできます。専門家活用やM&A後の統合にかかる経費は、国の補助金の対象です。承継後の設備資金には、低利の融資も用意されています。

事業承継・M&A補助金

M&Aの専門家費用を国が一部肩代わりするのが、事業承継・M&A補助金です。専門家活用枠では、譲受企業側で補助上限600万円、デューデリジェンス費用を計上すれば800万円まで、補助率は3分の2が目安になります。枠を組み合わせれば最大2,000万円規模の支援も見込めます。ただし対象は、M&A支援機関登録制度に登録された仲介会社への手数料に限られる点に気をつけてください。最新の公募要件はM&A補助金の要件で整理しています。

日本政策金融公庫と信用保証

買取資金や承継後の運転資金には、日本政策金融公庫の低利融資が活用できます。事業承継・集約・活性化支援資金は、株式取得の資金にも回せる制度です。信用保証協会には通常枠とは別枠の保証もあり、金融機関の審査ハードルを下げられます。融資の組み立て方は事業承継の融資制度で具体的に解説しています。

承継方法を決める前の費用チェックリスト

費用は、金額の大小だけで比べると判断を誤ります。誰が負担し、いつ現金が動くのか。支援現場で確認している視点を、チェックリストにまとめました。

  • 税負担が後継者と譲渡オーナーのどちらに乗るかを把握したか
  • 仲介手数料の最低報酬額と、料率を掛けるベース金額を確認したか
  • 後継者の買取資金や納税資金の調達先まで見通せているか
  • 事業承継税制や補助金の適用期限に間に合うスケジュールか
  • 個人保証の解除や債務の引き継ぎを費用計画に織り込んだか

このリストのどこかで詰まるなら、金額の安さより段取りの設計を先に固めるべきです。

事業承継の費用に関するFAQ

費用まわりで、相談現場に寄せられる質問を整理しました。

Q:事業承継の費用は誰が負担しますか?

承継先で変わります。親族内承継と従業員承継では株式を受け取る後継者が、M&Aでは株式を売る売り手が税金を負担するのが基本です。専門家報酬は依頼した側が支払います。

Q:M&Aの仲介手数料は成約まで本当にかからないのですか?

完全成功報酬制なら、着手金や中間金は発生しません。ただし最低報酬額が設けられていることが多く、小規模な案件では成約時の負担が料率計算より重くなる場合があります。契約前に最低額を確かめてください。

Q:親族内承継とM&Aでは、どちらが費用を抑えられますか?

外部への支払いは親族内承継のほうが小さく済みます。一方で相続税や贈与税が後継者に重くのしかかるため、トータルの負担では一概に言えません。株価と納税資金しだいで逆転します。

Q:事業承継税制を使えば税金はかからないのですか?

猶予される仕組みで、ゼロになるわけではありません。後継者が株式を持ち続けるといった要件を満たす間だけ、納税が先送りされます。途中で要件を外れると、利子税付きで納税義務が戻ります。

Q:買収する側でも補助金は使えますか?

使えます。事業承継・M&A補助金の専門家活用枠には買い手向けの類型があり、仲介費用やデューデリジェンス費用が補助の対象です。登録された支援機関への支払いが条件になります。

承継方法ごとの費用を見極めて納得の選択を

事業承継の費用は、親族内承継・従業員承継・M&Aのどれを選ぶかで中身が大きく変わり、負担する人も税目も入れ替わります。手数料の安さだけでなく、税金・納税資金・手続期間まで見渡して比べることが、納得のいく選択につながります。何から手をつけるべきか迷うのは、当然のことです。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社です。中小企業の会社売却と事業承継を数多く支援してきた経験から、親族内承継から第三者承継まで、費用と税務を一体で比較できます。承継先に迷ったら、初期段階の情報整理からお気軽にご相談ください。

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著者

西尾 崇
西尾 崇事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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