企業買収が失敗する理由とは?失敗する場合・公表成約事例を紹介

M&Aで失敗しないためには、事前の準備が重要です。この記事では、M&Aを検討されている中小企業の経営陣の方々に向けてM&Aが失敗する要因、失敗しないためのポイントと具体的な事例を解説しますので、ぜひ役立てください。

国内M&Aの成功率は約7割

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが実施した2020年M&Aの実態調査によると過去5年間の国内M&Aについて、約7割の企業が期待を上回る成果が得られているとの回答している。

また、過去5年間の海外M&Aについても、成果と得たと感じている企業が約6割に達しています。国内・国外共にM&Aの成功率が向上しており今後、企業の経営戦略にM&Aの活用が益々増加すると予想されます。  

成功した企業が重視したポイント

M&Aに成果を感じていると回答した企業(国内・海外ともに)が、M&Aを成功させる為に重視したポイントとして、「自社の戦略に合致したターゲット先の選定」を挙げています。自社の経営戦略の明確化と経営戦略実現の為のM&A対象企業を探すことが重要なポイントとなります。M&A検討する際は、自社の経営戦略に沿ってM&A戦略の立案してみてください。

買収が失敗するケース

M&Aにおける譲受企業側の失敗要因は、事前準備で回避できるものばかりです。

一方で、譲渡側が失敗したという話は殆ど聞かれません。譲受側・譲渡側ともに全体としては納得したからこそM&Aは成立したのですが、譲受側の事業運営上はそこからがスタートであり、その後に何年もかけて相乗効果を発揮し、投資回収をしていく必要があります。

M&A成立後に粉飾が発覚した

通常、譲渡企業の決算状況に不備がないかを確認する為に、譲受側は専門家に依頼しデューデリジェンス(買収監査)を実施します。

調査が不十分だと簿外債務や粉飾決算であることを見抜けず、M&A完了後に発覚することがあります。最悪の場合、M&Aの失敗のみならず自社の経営破綻の要因にもなりかねますので、慎重な調査を実施することをお勧めします。

「のれん代」による損失計上が発生した

のれん代とは、譲渡企業の時価純資産とM&A価額との金額差のことを指し、営業権と呼ばれます。のれん代は会計基準上、20年以内に毎年「のれん償却費」を費用として計上することが要求されます。

買収した企業を再評価した際に企業価値が下がると差額を減損処理する必要があります。のれん代の損失計上は会計上は損失となりますが、税務上は損金として認められないケースが多く、営業利益が減少しても実効税率が上昇することになります。適切なM&A価額の算出が重要となります。

投資対効果が得られなかった

M&Aの失敗の中で一番多いのは、予想していた投資対効果が得られなかったケースが挙げられます。

譲渡企業が優良企業であれば、多くの譲受希望企業が出てきます。そうすると市場の原理が働き、M&A取引価額が通常よりも上昇する傾向にあります。

また、デューデリジェンスの調査が不十分で通常よりも高いM&A取引価額でM&Aを実施してしまうなど、「高掴み」してしまうと投資対効果を得られないという事態に陥る可能性が高くなりますので留意が必要です。

企業イメージが悪化した

M&Aの失敗例としては、財務や会計上の失敗だけではなくM&A後の譲渡企業の不祥事が譲受企業のイメージ悪化に繋がるケースも散見されます。

コンプライアンスやハラスメント問題、労働環境や環境汚染問題など譲受企業のイメージを棄損する理由は様々です。特に文化・習慣・宗教など、日本企業とは異なる価値観を持つ海外においてM&Aを実施した場合に起こりやすい問題です。 

M&Aにおける譲受側の失敗理由

M&Aにおける譲受側の失敗要因は、事前の準備や調査で回避できることがほとんどです。失敗要因となるポイントを解説しますので下記を参考に、失敗回避対策を考えて頂ければと思います。

M&Aの目的が不明確だった

自社のM&Aを活用する目的が曖昧なまま成約に至った場合、M&Aの成約がゴールとなってしまい、M&A後のビジョンや運営方針が不明瞭でスムーズな経営統合ができないなどM&Aの失敗例として挙がる最も多い理由です。

自社のM&Aの目的(M&A戦略)を明確化にし、M&A後のビジョンや運営方針をしっかり検討することが重要です。

デューデリジェンス(買収監査・企業調査)が不十分だった

譲受側は、M&A対象企業の財務・税務・労務などの調査の為、デューデリジェンスを実施します。

このデューデリジェンスの調査が不十分だとM&A実行後に想定外の負債が発生したり、取引先とのトラブルを招いたりすることがあります。専門家に依頼し十分な調査を実施することをお勧めします。

価格設定が高額すぎた

M&Aにおいて、M&A取引価額の設定が非常に重要なポイントです。適正なM&A取引価額を上回る価額(高値掴み)で、M&Aを実行すると想定外の投資回収期間を要したり、のれんの減損等の発生で業績を悪化させたりする要因になります。

PMI(経営統合)で失敗した

M&Aは成約がゴールではなく,M&A後のPMI(経営統合)が終わり、スムーズな事業運営ができるようになって初めてゴールとなります。

PMIは経営、業務、意識、システムなど広範囲に渡り、統合作業が必要となります。範囲が広いこと一定の時間を要することを考えると計画と準備が非常に大切です。PMIを失敗すると非効率な事業運営の継続や従業員の不満にもつながりますので、綿密な計画と準備を怠らないように気をつけましょう。

M&Aにおける譲渡側の失敗理由

譲渡側のM&Aは1度きりのチャンスなので失敗することができません。失敗要因を確認しM&A検討時のポイントを掴んでおいてください。

情報漏洩してしまった

M&Aは秘密保持で始まり、秘密保持で終わると言われるほど情報の管理が重要です。自社がM&Aを検討していることが取引先に知られると取引中止や条件変更を招くこともあります。

また、従業員に知られると不安や不信感から退職のリスクも高まります。M&A検討時は、経営者や株主のみなど人数を絞り、情報管理を徹底することが重要です。

M&A交渉中の情報漏洩により譲渡対象企業のリソースが減り、交渉が破断になったというケースもあります。

譲受側にとって過度に有利な条件で進めた

 譲渡側は、譲受側の要望を受け入れ過ぎると、自社の社風や独立性が失われる可能性があり、M&A後も残る役員等の幹部や従業員から反発を受ける原因になります。

もちろんM&A後は譲受側の傘下に入ることになるので歩み寄る姿勢は大事ではありますが、残る従業員にとって良いことなのかどうかをしっかり吟味することが重要です。譲受側の過度な条件提示で経営層の意見が整わずM&A交渉が破断したというケースもあります。

株主の賛同が得られない

事業承継問題解決の為にM&Aを活用した場合、株式譲渡スキームが選択されるケースが多いです。

その名の通り、譲渡企業の株式を譲渡するのですが社歴の長い中小企業などでは、株券が紛失、株主の所在が不明、株主名簿が存在しない、株主名簿の株主が正確に反映されていないなど様々な問題が出てくることがあります。

譲受側との条件交渉が整ってもM&Aが実行できないということにもなりかねませんで、自社の株主と株券の把握を事前にするようにしましょう。

失敗した成約事例

実際に成約したM&A事例のなかから、失敗と思われるものを紹介します。

東芝の事例

東芝は、2006年に原子力部門強化の為、アメリカの原子力事業会社ウエスチングハウスを6,600億円で買収しました。

しかし、2011年に起きた東日本大震災による福島第一原発事故で、世界的に原子力発電の安全性を疑問視する傾向が強くなり、買収時に想定していた売上に届かず企業価値が下がってしまう事態に陥りました。

また、買収後にウエスチングハウスが巨額の赤字を抱えていたことが後に発覚し、不正会計と原発事故関連で巨額の損失となりました。買収後のPMIの実施が十分でなかったことや買収価額の高掴みをしてしまったことが失敗の要因と考えられます。

DeNAの事例

ゲームアプリ運営のDeNAは、キュレーションプラットフォーム事業の参入を目的に、2014年にキュレーションサイト運営のiemoとペロリを約45億円で買収。キュレーションプラットフォーム事業が新しい柱となる予定でした。

しかし、買収会社が運営する医療系キュレーションサイト「WELQ」に投稿されている記事が、ライターが作成した科学的根拠のない記事であったことが発覚。

当時の運営責任者が謝罪、買収後に増えた運営サイト10サイトが閉鎖という事態を招きました。買収時の法務・ビジネスデューデリジェンスの調査不足が失敗の要因と考えられます。

キリンの事例

キリンホールディングスは、2011年にブラジルでビール販売シェア2位のスキンカリオールを3,000億円で買収。当時、年10%の経済成長が見込めるブラジル市場を新な市場として参入。

しかし、その後の急激な景気の悪化やベルギーのビール会社との競争に負けたことを理由に、買収したスキンカリオールは1,100億円の減損を計上。キリンホールディングスは上場後初なる赤字を計上することになりました。買収前の市場調査不足が失敗の要因と考えられます。

日本郵政の事例

日本郵政は、国際物流の活路を求めてオーストラリアの物流会社トール・ホールディングスを約6,200億円で買収。

2007年の郵政民営化に伴い、投資家に対して明確な成長戦略を示す必要があったが、縮小する国内市場での成長戦略を描くことが難しかった為、成長戦略の活路として海外M&Aを実施しました。

買収後、当初見込んでいた利益を獲得することができず、4,000億円もの減損損失を計上。民営化以後、初めての赤字を計上することになりました。M&A後の成長戦略を明確にできなかったことが失敗の要因だったと考えられます。

M&Aで失敗しないための3つのポイント

前章の失敗事例からもM&A検討における事前準備が重要だと考えられます。失敗しない為の重要なポイントをご紹介します。

調査を慎重に行う

譲受側は、譲受前に譲渡対象企業のM&Aに伴う、ポジティブ要因やネガティブ要因をできる限り把握することが重要です。

具体的には専門家を活用したデューデリジェンス(買収監査・企業調査)で徹底的に調査行うことをお勧めします。この慎重な調査が、M&A後のシナジーやM&A取引価額の検討材料になることや、想定外のリスクの発生を回避することに繋がります。

PMI(経営統合)を確実に行う

M&A後、譲受企業は譲渡企業との経営、業務、システム、意識などの経営統合(PMI)を実施することになります。

PMIでは、譲受側の経営戦略実現の為、スピーディーか確実に実行することが重要です。しかし、譲渡企業の従業員からするとM&A後の劇的な変化は、不満を抱く要因にもなりますのでコミュニケーションを取りながら実行することをお勧めします。

信頼できるM&A仲介会社に依頼する

M&Aは、M&A戦略の策定からPMIに至るまで、広範囲に渡る知識と経験が必要となります。これらの知識や経験値は、自社のリソースで賄うことは難しい為、仲介会社やFA会社などM&Aの専門家の力を活用することをお勧めします。

経験豊富なアドバイザーは、条件交渉時のポイントやリスクとなりうる原因の把握などにM&Aを成功させる為の知見を要していますので、M&A専門家の活用は必須と考えます。

失敗しないM&Aのまとめ

M&Aは検討段階から成約後まですべてのフェーズで失敗要因が潜んでいます。M&A戦略の選定、デューデリジェンス実施による十分な調査、M&A後のPMIの実施など失敗要因回避する為のポイントをしっかり押さえ、自社のM&A戦略を実現して頂ければと考えます。

当社みつきコンサルティングは、税理士法人グループであることからM&A(第三者への承継)ありきの提案ではなく、事業所内承継、親族内承継など複数の選択肢のメリット・デメリットを比較して選択可能でございます。また、経営コンサルティング経験者も多く在籍しており、対象企業の詳細な事業分析を実施した上でシナジー創出を見込める候補先を紹介の為の独自ネットワークも持ち合わせております。M&Aご検討の際は是非、ご相談頂ければと思います。

著者

潟野和徳
潟野和徳名古屋法人部長
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。
監修:みつき税理士法人

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