家族間での株式譲渡等の方法・手順とは?税金を抑える方法も解説

家族間で株式を譲渡する方法には、譲渡と贈与、相続の3つがあります。この記事では、家族間で株式を譲渡する3つの手法それぞれのメリットやデメリット、手順などについて詳しく解説します。譲渡にかかる税金や、税金を抑える方法も解説するため、ぜひ参考にしてください。

家族間で株式譲渡等をする方法

家族間で株式譲渡等をする方法には、相続、贈与、譲渡の3つがあります。

相続:経営者の相続発生により、相続人である親族が株式を受け継ぐ
贈与:親族に無償で株式を贈る
譲渡:譲受側の家族が対価を支払い、株式を取得する

上記の方法は、それぞれ税金や手続きが異なる点も特徴です。詳しくは後述します。

家族間で株式譲渡等をするメリット

家族間で株式譲渡等をするメリットについて、相続・贈与・譲渡の手法ごとに解説します。

相続するメリット

家族内の株式相続は、被相続人の死亡によって自動的に行われます。あらかじめ遺言書が作成されている場合は、記載された遺言どおりに実行されるため、トラブルのリスクを減らせる点がメリットです。相続税の計算の際に、相続する財産が基礎控除額(3,000万円+法定相続人の人数×600万円)以下の場合は、相続税が発生しません。

贈与するメリット

家族内での株式の贈与は経営者の意思を反映しやすく、税率を抑えられるという特徴があります。贈与においては、暦年贈与と相続時精算課税制度のいずれかを利用して、節税することが可能です。

暦年贈与は、1月1日〜12月31日までの1年間(暦年)に贈与された財産が、贈与税の基礎控除(年間110万円)以下であれば、贈与税がかからない方法です。相続時精算課税制度は、60歳以上の祖父母や両親から20歳以上の子に対し、課税価格が累計で2,500万円までの贈与額に対する贈与税が非課税になる方法です。

譲渡するメリット

家族間の株式譲渡は、メリットとして、経営者の意向を反映しやすいことが挙げられます。譲受側は、株式を購入できる資金力が必要になるため、資金力がない譲受側候補の参入を防ぐことが可能です。また、譲渡側は、得られた譲渡益を新たな事業の資金や老後資金として、活用できるでしょう。

家族間で株式譲渡等するデメリット

ここでは、家族間で株式譲渡等をするデメリットについて、相続・贈与・譲渡の手法ごとに解説します。

贈与するデメリット

贈与のデメリットは、贈与税がかかる可能性があることです。年間110万円以上、または2,500万円を贈与する場合が対象です。暦年贈与が完了するまでに経営者が亡くなった場合、死亡から7年以前は相続扱いになります。資産額が高い場合、暦年贈与の非課税対象は年間110万円までです。多額の贈与をすると、手続きに時間がかかるため、経営者が亡くなる前に相続扱いになるケースもあります。

相続するデメリット

相続のデメリットは、相続争いの可能性があることです。相続争いは、複数の相続人がいる場合に起こりやすく、円滑な経営権の移行を妨げるリスクがあります。また、遺書で特定相続人を指定しても、法令に沿った形式ではない場合、無効となるケースもあるのが注意点です。

譲渡するデメリット

株式譲渡には、譲受側の資金準備が不可欠です。安い価格で株式譲渡をすると、譲受側に贈与税が課税される可能性があります。また、譲渡時には適正な価格設定と事前の会社承認が必要です。双方に資金の確保や価格の検討など、スムーズな取引を目指すための事前準備が大切です。

家族間で株式を相続するときの手順

以下では、家族間で株式を相続する場合の流れを解説します。

相続する人を決める

遺言のない場合は、法定相続人全員の参加による遺産分割協議で、遺産分割協議書を作成します。遺言がある場合はその内容を考慮し、後継者を決めます。遺産の分割が必要な場合は、以下の方法のなかから選んで相続します。

・株式のまま分割して相続する

・株を現金化して分割相続する

・誰か1人が株式を引き取る

株式の名義を変更する

次に、株式の名義変更を行います。上場株式の場合、相続人の証券口座を用意し、必要な書類を準備します。遺言書の有無や相続人の人数によって、名義変更に必要な書類が異なるため、証券会社に確認しましょう。

書類の準備ができたら、証券会社に名義変更を依頼します。株式を譲渡したい場合でも、名義変更の手続きを行って株式を相続人の口座に移してから、譲渡手続きを行うことが必要です。未上場株式の場合は、株式発行会社に相続手続きを申請して株式評価を依頼します。その後、相続人の間で遺産分割協議を経て、株主名簿を書き換えます。最後に相続税の申告と納付手続きを行います。

家族間で株式を贈与するときの手順

以下では、家族間で株式を贈与する場合の流れを解説します。

贈与契約書を作成する

株式を家族間で贈与する際、贈与契約書を作成します。口頭での契約も成立しますが、将来的に相続が発生する可能性がある場合、相続税計算に使用されることもあるため、文書形式にしておくとよいでしょう。

贈与契約書には厳密な形式はありませんが、贈与者と受贈者の意思を明確に示す必要があります。記載すべき項目は、以下のとおりです。

・贈与者の氏名

・受贈者の氏名

・贈与の意思

・贈与日

・贈与対象

・贈与方法

有効な契約書を作成するためには、これらの項目を最低限含むことが不可欠です。

名義変更をする

株式の贈与契約書の作成後、名義変更手続きを行います。上場株式は証券会社へ、非上場株式は発行会社へ依頼しましょう。手続き方法や必要書類、手数料などの条件は、証券会社ごとに異なるため、事前に把握しておくことが重要です。例えば、贈与契約書のコピーと移管手数料が必要であったり、受贈者も同じ証券会社に口座を持っていなければいけなかったり、などの条件があります。

家族間で株式を売買するときの手順

以下では、家族間で株式を売買する場合の流れを解説します。

譲渡承認の請求をする

譲渡承認とは、第三者に対する譲渡制限株式の譲渡において、企業に承認してもらうための手続きです。家族間で株式を譲渡する場合でも、株式譲渡承諾請求書を提出し、承認を得る必要があります。株式譲渡承諾請求書に記載する項目は、譲渡先、譲渡する株式の数や種類などです。

株式譲渡の承認決議をする

企業の決定機関である取締役会や株主総会で、株式譲渡の承認決議が行われます。定款に規定があれば、その内容に従って別の組織や役職者が承認決議を行うことが不可欠です。承認が得られると譲渡が可能ですが、承認が得られない場合は、企業が株を買い取る、もしくは指定の買い取り人に譲渡することになります。

株式譲渡の承認通知を送付する

株式譲渡の承認通知は、議決後2週間以内にしなければなりません。通知期限を過ぎた場合でも、通知がなされなければ、承認されたとみなされます。通知の期限は、企業と請求者双方の同意があれば2週間から変更できます。

株式譲渡契約を締結する

企業からの承認決議のあと、デューデリジェンス(買収監査・企業調査)や交渉を経て、株式譲渡契約書の締結手続きが行われます。契約書には、株式数や金額などの基本合意事項、譲受側に対して譲渡側が保証する事項である表明保証事項、両者の署名や捺印を記載します。

株主名簿を書き換える

株式譲渡の承認後、株主名簿の書き換え手続きを行います。中小企業に多い株式不発行会社では、譲渡側と譲受側が共同で請求しますが、株式発行会社では譲渡側のみが書き換え請求をします。この手続きは二重譲渡を防ぎトラブルを避ける方法として有効です。書き換え完了で株主権が発生し、譲渡手続きが完了します。

家族間で株式譲渡等をするときにかかる税金

ここでは、家族間で株式譲渡等をするときにかかる税金について解説します。

相続税

経営者の死亡に伴う相続税は、相続する遺産の総額に応じた累進課税制です。相続税の計算は、課税遺産総額から基礎控除を差し引いた額に基づいて行われます。相続税基礎控除は3,000万円に法定相続人数×600万円を加えた額で算出されます。

課税遺産総額=課税価格の合計額-相続税基礎控除額
※相続税基礎控除額=3,000万円+(法定相続人数×600万円)

贈与税

生前贈与での暦年贈与や相続時精算課税制度の限度額を上回った場合は、受贈を受けた側に対し超過した額に応じて贈与税が発生します。計算式は以下のとおりです。

贈与税=(贈与額-2,500万円) × 20%

※贈与者から受贈者への課税価格が、累計で2,500万円までの贈与額に対する納税を繰延する「相続時精算課税」が選択可能

一方、暦年贈与は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された資産額に対して税金が計算される暦年課税が適用されます。

贈与税=(1年間で贈与された合計額-基礎控除額110万円)×税率-控除額

税率は、特例贈与財産と一般贈与財産により異なります。特例贈与財産とは、父母もしくは祖父母など直系尊属から20歳以上の子や孫などに、贈与された財産を指します。

所得税

株式譲渡に伴う所得税は、株式の評価額が購入時よりも高い場合の譲渡益にかかる税金で、所得税・復興特別所得税・住民税が譲渡側に課せられます。譲渡価格から必要経費を差し引いた譲渡益に、税率20.315%が適用されます。

譲渡所得などの税額=譲渡益(譲渡価額-必要経費)×税率20.315%(所得税15.315%+住民税5%)

家族間で株式譲渡等をするときの税金を抑える方法

家族間の株式譲渡等にかかる税金を抑える方法について解説します。

事業承継税制を利用する

家族間での株式譲渡の税金抑制策の1つは、事業承継税制の利用です。事業承継税制は、中小企業の事業承継時に相続税や贈与税の免除や猶予ができる制度です。ただし、利用に際しては、特定の条件を満たす必要があります。事業承継税制は、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの期間、税金の特例措置が設けられています。

生前贈与を利用する

生前贈与の利用も、家族内での株式譲渡の税金抑制手段として挙げられます。年間110万円までの非課税枠の有効活用で、相続税の軽減が可能です。生前贈与は相続資産を減らし、相続時の課税対象額を抑えられます。

ただし、生前贈与加算制度には注意が必要です。生前贈与加算とは、故人の死亡前3年以内に相続人が故人から贈与を受けていた場合が対象で、相続人の相続税課税価格に贈与額を加算する規定です。

※生前贈与加算の期間は、2024年より3年から7年に延長されます。

家族間での株式譲渡等のまとめ

家族間の株式譲渡は、慎重な手続きと税務計画を必要とします。相続や贈与、譲渡にはそれぞれのメリットやデメリットがあります。事業承継税制や生前贈与などの税金を抑える手段の利用で、節税効果を高められますが、手法を利用する際は条件や有効期限を理解し、適切な活用が重要です。専門家と相談しながら、最適な手続きと節税方法を選択しましょう。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループであることから、家族間の株式譲渡をはじめ、事業所内承継、親族内継承などに伴う制度や税金対策についても適切なアドバイスができます。お気軽にご相談ください。

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著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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