M&Aの手数料を進行順に解説|仲介会社の選定方法、注意点を解説

当記事ではM&Aのプロセス別の手数料、M&A仲介会社に依頼するメリット・デメリットについて解説しますので、M&Aをご検討されている人は、ぜひご参考にしてください。

1.M&Aのプロセス別の手数料はいくらか

M&A仲介会社選定にあたって重要な要素の1つである手数料について、以下では、各プロセス別に解説します。

相談料

M&Aを依頼する前の相談時に発生する費用です。M&Aを行った方が良いのか、希望のお相手が見つかりそうかなど、初期的な相談に対する手数料になります。仲介会社ではこの相談料は無料で設定されている会社がほとんどですが、稀に相談料が発生する仲介会社もあるため、事前に確認しましょう。

着手金

着手金無料の会社も増えておりますが、着手金がかかる会社は50万円から500万円まで、企業の総資産額に応じて課金されるケースが一般的で、FA契約を締結すると発生する費用となります。

着手金を払うことは、譲渡側の売却意思を確認するために設定している会社が多いため、交渉次第で値下げは検討しもらえるケースもありますが、無料になることは難しいようです。

着手金はM&Aの成否にかかわらず一度支払ったら返還されることがない費用となりますので、着手金を払うことに抵抗がある場合は、着手金無料の会社を選ぶことをお勧めします。

中間金

譲受側との基本合意契約締結時など、M&Aがある程度進行した際に支払う費用になります。有料の場合100万円程度の固定報酬または成功報酬の10%~50%と様々で、支払った中間金は成約時には成約報酬に充当可能です。着手金と同様にM&Aの成否にかかわらず一度支払ったら返還されることがない費用となります。

買収監査・会社調査費用

買収監査はデューディリジェンスと呼ばれることも多く、企業の価値、将来の収益性、リスクの調査および分析を行うプロセスです。買収監査費用は調査を実施する対象や規模、依頼する専門家の数などにより、必要な費用が変動しますが、費用は譲受企業にのみ発生することが一般的です。50万円~数百万円が目安です。なお、この費用は譲受企業が支払います。

成功報酬費用

成功報酬は最終契約締結後に支払うもので、譲渡代金等を基準として計算されます。成約報酬の計算方法にレーマン方式を採用する会社が多く、各社が独自の設定を行っています。また、成功報酬額について、最低報酬額の設定がある会社も多くあります。

レーマン方式については、第2章にて改めて解説します。

月額定額顧問料

月額報酬の設定がある場合は数万円から数十万円が一般的ですが、仲介会社の場合は月額報酬無料の会社が大半となっております。

2.M&Aの手数料を計算する際に使うレーマン方式とは

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レーマン方式の概要

レーマン方式とは、基準額の金額帯ごとに異なる手数料率を設定し、金額帯ごとに計算した結果を合算して成功報酬額を算出する計算方式です。成約金額に含める内容・金額帯や同料率、最低報酬の有無などは、FAごとに異なるため、契約の際は事前に確認しなければなりません。

レーマン方式の一般的な手数料率を下記に記載します。

【レーマン方式手数料率の一例】

成約金額(役員退職金支給などを含む)手数料率
5億円以下の部分5%
5億円超10億円以下の部分4%
10億円超50億円以下の部分3%
50億円超100億円以下の部分2%
100億円超の部分1%

レーマン方式の計算例

本項では、レーマン方式での成功報酬額計算について、2つの具体例を記載します。

例A〈買収価格が1億円の場合〉

  • 1億円×5%(5億円以下の部分)= 成功報酬額500万円(税別)

例B〈買収価格が18億円の場合〉

  • 5億円×5%(5億円以下の部分)       =2,500万円(a)
  • 5億円×4%(5億円超10億円以下の部分) =2,000万円(b)
  • 8億円×3%(10億円超50億円以下の部分)=2,400万円(c)    
  • 成功報酬(a+b+c)= 6,900万円(税別)

3.M&A仲介会社が担う主な業務

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M&Aの相手先を紹介・選定

希望するM&Aの条件に合う相手を、選定して紹介することは、M&A仲介会社の業務の一つです。相手先を探すだけでなく、シナジー(相乗効果)や成長性などを総合的に判断して、お相手先を絞り込み、最適なマッチングを実現することがM&A仲介会社の役割となっています。

専門家(弁護士・税理士・会計士等)の紹介

M&Aにおいて、税務会計法務の専門知識は必要不可欠です。専門家がいない、もしくは、専門家との連携が取れていない仲介会社の場合、M&Aをスムーズに進めることが難しくなってしまうことがあります。仲介会社を選ぶ際は、税務会計法律の各専門家の在籍や連携がとれる会社かを確認し、信頼できる仲介会社を見つけることが重要です。

スケジュールの作成・管理

M&Aを行うにあたりどのように進めていくかのスケジュールを作成管理するのもM&A仲介の業務です。M&Aには譲受側、譲渡側それぞれの関係者間の調整が各局面で必要となってきますので、スケジュールがしっかり立案実行されていない場合、交渉が止まってしまう恐れもあり、M&A仲介の果たす役割は大きいと言えます。

M&Aの相手先との交渉をサポート

相手先が見つかった後、M&A仲介は、経験と専門知識を活かして条件交渉を担うことになります。譲渡側、譲受側双方に譲れる点、譲れない点があるので、それぞれの意見を考慮して落とし所を見つけるのがM&A仲介の役割となります。

譲渡対価の提示

譲渡対価の希望額がいくらかであるかの根拠提示と価格交渉は、M&Aにおいて非常に重要なポイントとなります。M&A仲介は、さまざまな企業価値評価方法の中から、自社に最適な評価方法により、企業価値を論理的に算出します。また、価格交渉においても当事者双方が納得する価格で交渉することを得意としております。

4.M&A仲介会社に依頼するメリット・デメリット

本章では、M&A仲介会社に依頼するメリットとデメリットについて解説します。

メリット

譲渡側と譲受側の両方のバランスをとり、着地点を見つけることができやすいため、M&Aが成約しやすくなる傾向にあります。また、交渉がスムーズに進むことが多く、マッチングが上手くいけば、短期間で成立する場合が多い傾向にあります。

デメリット

M&A仲介会社は中立の立場で交渉を調整しますが、譲受側はリピート利用の可能性があるため、なかには譲受側に有利になるよう進める場合もあります。

また、着手金等の手数料がかかる会社の場合は、M&Aで成約しなかった場合でも、支払った手数料が返金されない場合があります。

5.M&A仲介会社の選定方法

本章では、M&A仲介会社の選定方法について解説します。

会社の実績と提供できる役務内容を把握する

M&Aには専門的な知識と経験が必要不可欠です。また、自社の業種についての知識と経験があるかも重要なポイントなりますし、弁護士や公認会計士など専門家とのサポート体制の有無など、M&A仲介会社及び自社の担当者がどれくらいの実績があるのか具体的な数字で確認すると良いでしょう。

契約の種類を確認する

M&Aにおいてアドバイザーを活用する場合、仲介とアドバイザリーの2種類の契約があります。また、M&Aにおいては譲渡側と譲受側の両方がいて成り立つものですが、アドバイザーの立ち位置の違いで仲介とアドバイザリーの違いが生まれます。仲介は、譲渡側と譲受側の両者とFA契約(ファイナンシャルアドバイザリー契約)を締結します。一方、アドバイザリーは譲渡側か譲受側の何れか一方との契約です。仲介かアドバイザリーかでそれぞれメリット・デメリットがありますので、どちらの種類が自社にあっているかを事前に確認する必要があります。

6.M&A仲介会社に依頼する以外の依頼先

本章では、M&A仲介会社以外の依頼先について解説します。

M&Aプラットフォーム

近年急速に広がりつつある形態で、インターネット上のマッチングサービスです。マッチングサービスに特化しており、M&A仲介会社よりも手数料が抑えられています。

事業承継・事業引継ぎ支援センター

全国47都道府県の商工会議所等に設置されており、中小企業を対象としたM&A・事業承継の相談を受け付けております。比較的中立な視点で相談でき、公的な支援制度についても情報を持っている一方で、具体的なソリューションを持っているケースは少ないため、より具体的な相談を行う場合は別の組織にお願いするケースがあります。

7.M&A仲介会社を選定する際に注意すべきポイント

本章では、M&A仲介会社を選定する際に注意すべきポイントについて解説します。

成功報酬型であれば費用が安いとは限らない

M&A仲介会社では成功報酬型の会社が主流ですが、成功報酬の金額は仲介会社ごとの計算方法によって大きく変動します。例えば、成功報酬を計算する際に、会社の資産全てを対象とする場合とそうでない場合とでは、報酬額は大きく変わってきますので、注意が必要です。

M&Aを勝手に進められる場合がある

近年、M&A仲介会社は急増しております。その中には、M&A業務経験の浅い会社も多くあり、善意悪意問わず、譲渡側と譲受側の双方が納得していなくてもM&Aを進める会社もあるということは認識したうえでM&A仲介会社の選定に臨む必要があります。すなわち、自社が信頼できる仲介会社にすることが大切です。

8.M&Aの手数料のまとめ

M&A仲介会社毎に様々な手数料の設定がありますので、今回の記事が、皆様が納得できて、信頼できる仲介会社選びのお役に立てれば幸いです。

最後に、我々、みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験実績が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。手数料も単純明快な着手金無料の成功報酬制としており、貴社のM&Aの成功にコミットする体制も整っております。成功するM&A仲介で実績のある、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。

著者

竹内忍
竹内忍執行役員 名古屋事業法人第一部長
国内商業銀行において、法人向けファイナンスのスペシャリストとして活躍。貸出先企業に対して多彩な経営支援を行うコンサルティング室のリーダーとして、幅広い業界での支援実績を残す。みつきコンサルティングでは、ITから製造業まで幅広い領域をカバーし、多様な支援実績を有する。
監修:みつき税理士法人