株式譲渡の流れ|手続をフローチャートで分かり易く解説!

株式譲渡は、事業承継において頻繁に用いられる手法の1つです。特にM&Aでは大多数が株式譲渡が採用されています。本記事では、株式譲渡のプロセスについて、わかりやすく解説します。株式譲渡を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

株式譲渡の手順

株式譲渡とは、既存の株主をが保有する自社株を譲渡することです。譲渡先は、親族、自社の役員・従業員、第三者の3択になりますが、第三者への譲渡がM&Aということになります。

① 請求者による譲渡承認請求 ② 対象会社(発行会社)での承認/不承認の決定※1 ③ 決定内容の請求者への通知 (請求の日から2週間以内) 期限内に 通知なし の場合 譲渡を承認の場合 譲渡を不承認の場合 請求者による買取請求があった場合 請求者による 買取請求が なかった場合 ④ 会社または指定買取人 による買取りの決定 会社が 買い取る場合 指定買取人が 買い取る場合 ⑤ 株主総会の 特別決議 ⑤ 指定買取人の 指定 ⑥ 購入代金の供託 (不承認の通知日から 40日以内) (不承認の通知日から 10日以内) ⑦ 請求者への買取りの通知 株券の供託 (株券不発行会社は不要) ⑧ 譲渡価格の協議※2 ⑨ 譲渡代金の決済 ※3 譲渡成立 ④ 株式譲渡契約書の締結 ⑤ 株主名簿の書換請求 ⑥ 株主名簿記載事項 証明書の交付 ※1 承認機関は取締役会(取締役会非設置会社は株主総会、定款で代表取締役等とすることも可) ※2 協議が整わないときは、裁判所に価格決定の申立が可能 ※3 期限内に通知がない場合(譲渡等承認請求の場合) 手続終了 (譲渡は不成立)

株式譲渡に関する手続について、以下で補足します。

1.株式の譲渡制限を確認する

株式譲渡の手続きを進める際には、自社の株式に譲渡制限があるかどうかを確認する必要があります。譲渡制限の有無によって、手続きが異なる点に注意しましょう。

2.株式譲渡承認請求をする

株式の譲渡制限がある場合は、株式譲渡承認請求をしなければなりません。株式譲渡承認請求とは、保有している株式の譲渡について承認を得るための手続きです。株式譲渡承認請求書を作成し、取締役会・株主総会での承認を受けなければ、株式譲渡はできません。

3.取締役会・株主総会での承認を受ける

株式譲渡承認請求を受けた譲渡側は、原則的に取締役会または株主総会で承認の可否を審議する必要があります。ただし、定款で別段の定めがある場合は不要です。

4.決定通知をする

取締役会・株主総会での承認を受けたら、譲受側に対して決定通知を出します。通知手続きは譲渡承認請求の日より、2週間以内に行う必要があります。ただし、定款により通知手続きの期限短縮が可能です。

5.株式譲渡契約を締結する

決定通知を送り、交渉による調整を終えたら、株式譲渡契約を締結します。この締結によって、譲渡側と譲受側の双方の合意が正式に認められます。契約書には、譲渡日、譲渡価格、譲渡対象株式の種類、株式数を明記するのが一般的です。

6.代金を決済する

諸手続きが終わったら、譲渡代金を決済します。M&Aでは「クロージング」「実行」という言い方をすることがあります。株式譲渡においては、契約締結時に一括決済することも多いです。ただし、決済するための前提条件を定めるケースもあり、その場合は譲渡契約締結後に前提条件を満たしてから決済をします。

7.株主の名簿変更、証明書(もしくは株主名簿の写し)を交付する

株式譲渡契約が完了したら、株主名簿の書き換えを、会社に請求します。この手続きは原則として譲渡側と譲受側が共同で実施します。株主名簿の書き換えが終わったら、その事実を示す株主名簿記載事項証明書を、譲受側に対して交付します。

株式を無償で譲渡する場合の手続

無償で株式を譲渡する場合でも、基本的な手続きの流れは、有償で株式を譲渡する場合と同じです。ただし、無償譲渡は贈与行為であるため、税務的な検討が必要です。

株式譲渡の手続に必要となる書類

ここでは、株式譲渡の手続きに必要となる書類について解説します。

株式譲渡の手続に共通する6つの書類

株式譲渡の手続きに共通する書類は、以下の6点です。

  • 株式譲渡契約書:譲渡する株式の金額や数などを記載するための書類
  • 株式名義書換請求書:株式の名義変更を依頼するための書類
  • 株式名簿:株主の氏名など基本情報を記載するための書類
  • 株主名簿記載事項証明書交付請求書:株主名簿記載事項証明書の交付を依頼するための書類
  • 株主名簿記載事項証明書:株主名簿に記載された内容を証明するための書類
  • 取締役の決定書:取締役会で決議した内容を証明するための書類

取締役の決定書は、株式譲渡と同時に取締役の変更(退任・就任)がなければ作成する必要はありません。

株式譲渡契約書の記載事項

参考までに、株式譲渡契約書の記載事項は、一般的には以下のようなものになります。

  • 第1条:基本合意
  • 第2条:譲渡代金の支払い方法、期日
  • 第3条:譲渡承認手続き
  • 第4条:株主名簿の名義書換え
  • 第5条:表明保証
  • 第6条:契約解除
  • 第7条:損害賠償
  • 第8条(競業避止義務)
  • 第9条(合意管轄)

ただし、契約自由の原則が認められているため、契約書の項目は必須ではありません。

譲渡制限株式の株式譲渡手続に関わる4つの書類

譲渡制限株式の株式譲渡手続きに関わる書類は、以下の4点です。

  • 株式譲渡承認請求書:株式譲渡の承認を社内に請求するための書類
  • 株主総会招集通知:株主総会を開催するための書類
  • 株主総会議事録:株主総会にて決議した内容を記録した書類
  • 株式譲渡承認(または不承認)通知書:株式譲渡の承認・非承認を通知するための書類

取締役会がある会社は、譲渡制限株式の株式譲渡手続きが、株主総会ではなく取締役会が承認機関となる点に留意しましょう。

株式譲渡の手続に関する注意点

ここでは、株式譲渡の手続きにおいて、注意するべきポイントについて解説します。

株式譲渡制限が定められているケースがある

非上場の中小企業の多くは、株式譲渡制限を定めています。株式譲渡制限がある場合、取締役会または株主総会での承認が必要となるため、事前に確認しておきましょう。譲渡制限の可否を確認した後に、それぞれの方法で譲渡を進めます。

売買価格決定が難航する可能性がある

契約締結前には、売買価格の決定が難航する可能性もあるのが実情です。対象会社により株式譲渡承認請求が拒否された際には、一部の例外を除いて、指定買取人が当該株式を譲受することになります。

株券発行会社の場合、株券の交付が必要となる

株券発行会社の場合は、譲受側に対して株券の交付が必要となります。株券発行会社は、株券が未交付であると、株式譲渡そのものは成立しますが、第三者に対する対抗要件を満たせませんので注意が必要です。株券不発行会社の場合は、株券を交付しなくても、同意のみで株式譲渡が成立します。

株式譲渡による譲渡益は課税対象になる

株式譲渡による譲渡益は課税対象となります。譲渡側が個人である場合は、所得税や住民税などが発生します。また、譲渡側が法人の場合は、法人税などが発生する点に注意しましょう。

株式譲渡をする際には、税金に関する知識が欠かせません。ここでは、株式譲渡の手続きに必要な税金の基礎知識について解説します。

株式譲渡益に適用される税率

株式譲渡益に課せられる税金は、法人と個人で税率が異なります。法人の場合と個人の場合の税率は、以下のとおりです。

分類項目税率
法人法人税等(法人税・地方法人税、法人住民税、法人事業税)30~35%(実効税率)
個人所得税、住民税20.315%(所得税15%×復興特別所得税2.1%+住民税5%)
株式譲渡益に課せられる税金と税率の違い

個人の場合、株式譲渡する際には確定申告が必要

個人が株式譲渡した場合には、確定申告が必要です。税金は「譲渡代金-(取得額+譲渡経費)」で計算します。譲渡経費は、仲介会社もしくはアドバイザリー会社に支払った手数料を指す言葉です。法人は、譲渡損益を含めた1年間の全ての損益に対して課税されます。

株式譲渡の手続のまとめ

株式譲渡を検討する際には、手続きの方法や流れについて、十分に把握しておきましょう。スムーズなM&Aを実現させるためには、専門家への相談も視野に入れることをおすすめします。

株式譲渡に関する相談は、みつきコンサルティングへお任せください。みつきコンサルティングは、豊富な実績を活かして株式譲渡の手続きをサポートします。また、税理士グループの強みを活かし、M&Aに伴う相続対策にもワンストップで対応します。

著者

潟野和徳
潟野和徳名古屋法人部長
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。
監修:みつき税理士法人

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