全国の中小企業の経営者が引退を予定する平均年齢は72歳となっています。ただし、この年齢は必ずしも引退や退任の目安とはいえず、多くの企業が事業承継の課題を抱えているのが現状です。本記事では、事業承継を始めるべき年齢や、社長を退いた後のことも含めて解説します。
事業承継・社長引退時の年齢層
社長が勇退する際の年齢についてみていきます。
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会社の規模と経営者の年齢
2021年版「中小企業白書」によると60歳~70歳で社長を引退する経営者が多いです。10年という幅がありますが、これは従業員規模数によって傾向が分かれます。
このグラフから読み取れるのは、従業員が少なければ少ないほど社長引退の年齢が上がるということです。従業員が少ない企業ほど社長の引退が与える影響は大きいといえます。「自分が抜けたら経営が成り立たない」という思いが強くなり、なかなか決心がつかず引退のタイミングが遅くなる傾向があります。
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交代後の経営者の年齢の推移
一方従業員が少ない企業ほど、社長交代後の年齢は若返る傾向にあります。これは親族内継承でよく見られる傾向で、30歳で子どもを産んだ社長が70歳で引退した際、ご子息の年齢が40歳になるというように、シンプルに規模が小さい企業ほど家業として営むケースが多く、顕著に数字に表れています。規模が大きい企業ほど、交代後の年齢が上昇していきますが、親族以外の従業員が多くいることで後継者候補が多くじっくり引き継ぎや育成に時間をかけられるため、若干の上昇が数字にあらわされています。
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退任予定年齢は72.2歳
日本商工会議所が2024年3月に公表した調査結果によると、既に後継者を決めている60歳代~70歳代が考える引退予定年齢の平均は72.2歳です。
経営者の高齢化と経営の関連性
経営者の高齢が進行しています。そのことと、業績等との関連性をみていきます。
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経営者の高齢化
帝国データバンクによると、2023年現在、社長の高齢化には歯止めがかからない状態が続いており、バトンタッチが間に合わず事業継続に影響を及ぼすケースが増加する可能性があります。
経営者の平均年齢(2024年4月調査)
下のグラフのように経営者の年齢は年々高まりつつあり、2023年には過去最高齢を更新し、平均年齢は60.5歳という結果になっています。
経営者の世代別の構成(2024年4月調査)
社長の世代別の構成比では、「50 歳以上」が約 8 割以上を占めています。この割合は毎年上昇しており、若手経営者の割合は依然として低い水準にとどまっています。
10年スパンでみても経営者の高齢化は進行
なぜ、年々高齢化が進むのか。上記で述べたように、引退の決心がつかないだけではなく、後継者が見つからない、後継者候補がいても育成が足りていない、後継者候補にした者に適性が無かったなど、各社によって細かな事情が発生していると考えられます。
ここから読み取れるのは2000年~2015年はそれぞれの年代でとがったグラフの形をしています。つまりある特定の年齢層で引退する社長が多いことを表しています。それに対して2020年のグラフは経営者年齢の多い層が「60歳~64歳」、「65歳~69歳」、「70歳~74歳」に分散し、なだらかなグラフの形になっています。
これは事業承継(廃業を含む)を早めに済ませた経営者と、時間がかかった、または高齢になってから事業承継に動き出した経営者がいるということです。一方で、70歳以上の経営者の割合は2020年も高まっていることから、経営者年齢の上昇に伴い事業承継を実施した企業と実施していない企業に二極化している様子が表れています。
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経営者の年齢と経営の関係
中小企業庁より経営者の年齢がどう経営に及ぼすかのグラフが発表されています。
経営者年齢が30代以下の企業では増収割合が6割程度であるのに対し、80代以上の企業では4割程度となっており、経営者年齢が上昇するほど増収企業の割合が低下していることが分かります。
さらに経営者の年齢別の取り組み内容についてのグラフです
※2出展:中小企業庁2021年版「中小企業白書」第1節 事業承継を通じた企業の成長・発展より
以上の3つのグラフから読み取れるのは年齢層の低い経営者ほど、新しいことへの挑戦や投資に積極的であり、それが増収につながっていると言えます。逆に同じ経営者が長く在籍することによって、安定が保たれつつも、新規事業や投資へ消極的になり伸び率は穏やか、または減収につながってしまうという結果になっています。
少々とがった表現になりますが、同じ経営者が長く在籍していても考え方や姿勢を時代に合わせてアップデートしようとする経営者は年齢がすべての要因とはなりません。しかし、そのような経営者ばかりではなく、自分の考えや方針がすべてで最善と信じて疑わない高齢の経営者も多いのが現実で、実際に数字にも表れています。
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事業承継は何歳から始めるべき?
実際に世代交代をするのは60代が多いですが、承継完了までには多くの時間を要します。
40代後半から検討を
後継者育成や諸手続き等を踏まえると40代半ば以降から検討をし始めるのが時間に余裕をもって準備を進めることができます。実際には40代から後継者候補を検討、選定、50代に入ってから後継者として育成、60代で諸手続き、引退という流れが一般的と言えるでしょう。実行に移すのは年齢や会社の状況を見極める必要がありますが、検討をするならば早いに越したことはありません。
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経営者を引退した後
これまで引退時の内容について解説してきましたが、早く引退すればするほどその先の生活も長くなります。社長引退後は具体的にどのようなライフプランになるのでしょうか。
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会社に残る場合
社長を引退した後も、引き続き社長職以外の役職に就任し、運営に携わっていくケースです。具体的な役職はケースバイケースですが、引退後も会社に残る事例は少なくありません。特に親族内承継、社内承継の場合、社長職引退後は会長職に就任し、社長職のサポート役に従事することが多いです。第三者への承継としてM&Aをした場合でも、引き継ぎ期間なく引退するのは譲受企業側もリスクになりますので、数年の引き継ぎ期間を設け会社に残ることが多いです。また、比較的若くして社長職を引退した場合、年齢的にまだ余裕があれば引き続き重要な役職として仕事を続けるケースもしばしば見られます。
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会社から離れる場合
社長職を引退し会社から離れる場合、今までとは全く別の人生を歩むことになります。家族とゆっくり過ごしたり、長期間の旅行に行ったりと自分の好きなことに時間を使いゆったりとした生活を送る社長や、会社の譲渡益で新しい事業を始めたりする社長など様々です。高齢になってから引退した場合は、今まで会社経営を優先しすぎるあまりプライベートを犠牲にしてきた社長も多いことでしょう。そのため、きっぱり引退し自分の好きなことに時間とお金を費やす社長が多いです。少数ですが、若くして引退し会社に残らない選択をした社長は後者の道を選ぶケースもあります。こうしたライフプランも、承継を検討するにあたって考慮しておくとより安心と言えます。
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事業承継と経営者年齢のまとめ
少子高齢化の影響で、経営者の高齢化と後継者不在の問題は年々大きくなっています。事業承継が成功する企業もあれば、廃業を余儀なくされる企業も増えているのは事実です。「まだ自分はやっていける」「交代するにはまだ早い」と思っている経営者様は大変多いですが、近年新型コロナウイルスの大流行のように何が起こるか分からないのが現実です。なにが起きてもどんな影響を受けても大丈夫なように、事前の準備、検討は最善の策と言えるでしょう。
みつきコンサルティングは税理士法人のグループ会社です。弊社では、後継者不在、M&Aについて無料相談を承っております。
著者
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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