歯科医院のM&Aは、後継者不足や経営効率化を図る有効な手段です。本記事では、歯科医院M&Aの基礎知識、最新動向、メリット・デメリット、進め方、費用相場、成功事例まで詳しく解説します。
歯科医院のM&Aとは
歯科医院のM&Aは、歯科医院同士または歯科医院と企業との間で経営権を移転する取引です。株式譲渡、事業譲渡、吸収合併、分割など複数の手法があり、医院の規模や目的に応じて選択します。譲渡企業は事業を承継してもらうことで医院を存続でき、譲受企業は既存患者やスタッフ、ノウハウを獲得して短期間で事業を拡大できます。
M&A(Merger and Acquisition)は、合併・譲受を通じて企業や事業を統合・取得する行為です。歯科医院の場合、医療法や関連法令に沿った手続が必要で、専門家のサポートが欠かせません。
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事業承継とM&Aの違い
事業承継は、親族・役員・従業員・第三者への経営権移転全般を指します。M&Aは事業承継の一手段で、対価を伴う譲渡を行う点が特徴です。
居抜き売却との違い
居抜き売却は物件・内装・設備のみを譲渡する方法で、患者やスタッフ、ノウハウは引き継ぎません。一方、M&Aでは医院が培ったブランドや人材、契約関係を含めて承継するため、継続性と成長性に優れます。
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歯科医院M&Aが注目される背景
歯科医師の高齢化が進み、後継者不在率は90%を超えるとの調査もあります。廃業が増えると地域の歯科医療が不足する恐れがあるため、医院を承継できるM&Aが注目されています。また、若手歯科医師が新規開業より低コストで医院を取得できる点も市場を活性化させています。
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歯科医院M&Aの現状
歯科医院のM&Aは、どのような状況にあるのかを見ていきましょう。
世代交代が進まない現実
60歳以上の院長が経営する医院は全体の約6割を占め、廃業・解散が増加傾向です。M&Aで第三者に承継すれば、地域医療を守りつつ院長の引退問題を解決できます。
居抜き売却も選択肢
設備をそのまま活用できる居抜きは初期費用を抑えられますが、スタッフ雇用や患者基盤が継承されないため、譲受企業は新規集患や採用コストが発生します。
M&A市場の動向と後継者不在率
近年は企業や投資ファンドが歯科業界へ参入し、医院の買収ニーズが高まっています。好業績の医院が高額で譲渡される事例も増え、「惜しいと思う時が売り時」といわれるほど市場は活況です。
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歯科医院M&Aのメリット・デメリット
歯科医院の事業承継では、相手を探したり交渉したり、承継後の医院を運営したりするために専門的な知識や、新しく開業する場合とは違うノウハウが必要です。多くの歯科医師にとっては詳しく知らない分野なので難しく感じるかもしれませんが、譲渡側と譲受側の両方にとって、歯科医院のM&Aによるメリットは、デメリットよりも大きいことが一般的です。
歯科医院M&Aのメリット
歯科医院M&Aは譲渡側と譲受側の双方にさまざまなメリットをもたらします。それぞれの立場から見たメリットを詳しく見ていきましょう。
譲渡医院のメリット
譲渡する医院には次のようなメリットがあります。
医院の継続と社会的責任:
歯科医院をM&Aによって譲渡することで、医院を存続させることができます。これにより地域医療の継続が可能となり、長年通院している患者さんに迷惑をかけずに済みます。
従業員の雇用確保:
M&Aを通じて医院を引き継ぐことにより、スタッフの雇用を守ることができます。閉院する場合と異なり、スタッフが職を失ったり、転職を余儀なくされるリスクを減らせます。
経済的メリット:
譲渡によって譲渡益を獲得できます。この譲渡益は一般的に低い税率で個人所得となるため、税制面でも有利です。また、相続対策の観点からも有利となる可能性があり、将来的な資産管理にも役立ちます。
働き方の改革:
激務や経営のストレスから解放されることで、臨床に専念する選択肢が生まれます。また、新しい働き方を実現することも可能になります。勤務医としての再スタートや、別の医院での非常勤勤務など、ライフスタイルに合わせた働き方を選べます。
医院の発展:
適切な譲受医院を選ぶことで、自分の医院をさらに発展させることができます。後継者がいない場合でも、自分の築いた医院の価値を将来に引き継ぐことができます。
譲受医院のメリット
譲受する医院には次のようなメリットがあります。
効率的な事業拡大:
実績ある医院を取得することで、新規開業よりも低コストで事業を拡大できます。すでに患者基盤があるため、初期投資後すぐに安定した収入が見込めます。
ノウハウと人材の獲得:
対象医院のノウハウを一括で獲得できるため、成長スピードを高められます。また、経験豊富な歯科医師やスタッフを一度に獲得できるため、人材確保の面でも有利です。特に有能な幹部クラスのスタッフを確保できることは大きな強みとなります。
戦略的展開:
遠隔地への進出や多拠点展開など、戦略的な拠点確保が可能になります。地理的に離れた場所に医院を持つことで、リスク分散にもつながります。
診療内容の補完:
診療内容によっては、お互いの弱みを補い合うことができます。専門分野の異なる医院を譲受することで、総合的な診療体制を構築できます。
新規事業展開:
歯科医院経営のノウハウがない企業でも、M&Aを通じて新規事業として歯科医院経営を始めることができます。実績ある医院を取得することで、初期リスクを軽減できます。
歯科医院M&Aのデメリット
メリットがある一方で、歯科医院M&Aには双方にいくつかのデメリットも存在します。
譲渡医院のデメリット
譲渡する医院のデメリットは以下のようなものがあります。
専門知識の必要性:
お相手探しや交渉には専門的な知識が必要です。M&A仲介会社などの専門家のサポートがなければ、適切な条件での譲渡が難しい場合があります。
引継ぎ期間の確保:
円滑な医院譲渡のためには、一定の引継ぎ期間が必要になります。この期間中は譲渡後も関わる必要があり、完全に手を引くことはできません。
相性の問題:
お相手との相性はすぐには分からないため、譲渡後に価値観の違いなどから問題が生じる可能性があります。事前の十分な面談や情報交換が重要です。
譲渡の難しさ:
経営状態や立地条件によっては、すべての医院が譲渡できるわけではありません。譲渡条件によっては希望する譲渡価格での成約が難しい場合もあります。
譲受医院のデメリット
譲受する医院には以下のデメリットがあり得ます。
専門知識の必要性:
適切な医院を見つけ出し、交渉するためには専門知識が必要です。
選ばれる必要性:
良い条件の医院を譲受するためには、譲渡医院の先生に選ばれる必要があります。特に人気のある医院では、複数の譲受希望者との競争になる場合もあります。
相性の問題:
譲渡医院との相性はすぐには判断できません。文化や経営方針の違いから、譲受後に予期せぬ問題が発生する可能性があります。
患者への影響
院長交代により診療方針や技術が変わると、患者の信頼を損ねるリスクがあります。患者は長年慣れ親しんだ医師の診療を受けることで安心感を得ているため、急な変更は不安を与える可能性があります。譲受医院は旧院長と協力し、丁寧な引継ぎと情報発信を行うことが重要です。
従業員への影響
労働条件や評価制度の変更がスタッフのモチベーション低下につながる場合があります。特に長年同じ環境で働いてきたスタッフにとって、環境の変化は大きなストレスとなります。早期に方針を共有し、不利益変更を避けることで安心感を与えることが大切です。また、コミュニケーションを丁寧に行い、スタッフの意見も取り入れながら進めることが重要です。
歯科医院のM&Aを成功させるためには、こうしたメリット・デメリットを十分に理解した上で、専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。特に患者さんとスタッフへの配慮を怠らないことが、長期的な成功につながります。
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歯科医院M&Aの流れ
歯科医院のM&Aは、一般的に次の5つの段階で進みます。
- 譲渡医院と譲受医院のマッチングを行い、双方の希望条件をすり合わせます。
- 秘密保持契約を締結したうえで基本合意書を結び、条件面を明確化します。
- 譲受医院がデューデリジェンスを実施し、財務・法務・労務・医療機器の状態を詳細に調査します。
- 最終契約の締結で、調査結果を踏まえた最終条件を確定させます。
- クロージングを行い、対価決済と医院の引渡を完了させて一連の手続が終了します。
円滑に進めるポイント
デューデリジェンスでは、診療体制や患者データなど帳簿に表れない無形資産を共有し、リスクを洗い出すことが重要です。また、クロージング後も旧院長が一定期間勤務し、患者・スタッフへ方針を説明することで信頼低下を防げます。
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歯科医院の企業価値評価方法
歯科医院の譲渡価格は立地、患者数、設備年式などで変動しますが、一般的な相場は2,000万〜3,000万円程度です。新規開業に必要な5,000万円前後と比べ大幅に抑えられる点がM&Aの魅力といえます。
その評価方式は、年買法またはEBITDAマルチプル法を用いることが多い印象です。ただし、事業譲渡の場合は、譲渡する個々の資産(土地、建物、機材など)の価格を合計し、場合によってのれん代を加えて価格を決めることが多いです。
年買法
年買法では企業の価値を「時価純資産+のれん代」で算定します。これは基本的な考え方で、実際の価格は譲渡側と譲受側の交渉によって決まります。
- 時価純資産とは、現在の価値に換算した資産から負債を引いた金額です。例えば、土地の価格変動や保険積立金の解約返戻金なども考慮して計算します。
- のれん代は、税引き後の正常営業利益に業界の掛け率(1~3倍)を掛けて求めます。この掛け率は、新規開業と比べた収益達成の早さ、医師の継続勤務の有無、立地条件、自費診療の割合などによって変わります。
EBITDAマルチプル法
歯科医院の事業価値は、将来キャッシュフローの源泉となるEBITDA(営業利益+減価償却費+オーナー私的経費)を基準に算出する方法もあります。類似取引の倍率を掛け合わせて価格を求めるため、収益力の向上と私的経費の整理が評価額を押し上げます。
余剰資金やオーナー社用車など事業に不要な資産は非事業価値として別途評価し、加算します。
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歯科医院M&Aの注意点
歯科医院のM&Aで失敗を防ぐためには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。以下で解説します。
譲渡側院長による情報開示
医院が培った文化や診療方針を詳細に共有しないと、譲受医院が改革を急ぎすぎて患者離れを招くおそれがあります。譲渡側は医院の歴史や地域貢献の姿勢を丁寧に伝え、承継後の一体感を醸成しましょう。
デューデリジェンスの徹底
歯科医院では医療機器のメンテナンス履歴、スタッフの資格状況、診療報酬請求の適正性など業界特有の論点が多く存在します。譲受医院は専門家と連携し、財務数値だけでなく運営実態まで調査することが不可欠です。
歯科医院M&Aにかかる費用
主な費用は、仲介手数料と譲渡対価の二つです。仲介手数料は相談料・着手金・中間金・成功報酬で構成されますが、相談料や着手金、中間金を不要とする仲介会社もあります。
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歯科医院の譲渡方法・手続
歯科医院のM&Aでは、一般企業と違い医療法に従った手続が必要になります。譲受側となれるのは医師・もしくは医療法人などの医師資格者のいる非営利法人に限定され、株式会社が歯科医院の譲受主体になることはできません。
運営主体の種類によって選択できるM&A手法が異なるため、自院の状況に合わせた最適な手法を検討することが重要です。また、各手法には特徴や注意点があるため、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
歯科医院の運営主体の種類
歯科医院のM&Aを行う際は、運営主体の種類によって選択できる譲渡方法が異なります。歯科医院の運営主体には主に以下のものがあります。
- 個人事業主(個人医院)
- 医療法人
- 社団医療法人(持分あり)
- 社団医療法人(持分なし)
- 財団医療法人
- 社会医療法人・特定医療法人
医療法人のそれぞれには特徴があります。社団医療法人は議決権を持つ人(社員)によって構成される法人です。財団医療法人は寄附された財源をもとに構成される法人です。社会医療法人・特定医療法人は公益性などに関する特別な要件を満たしたものとして、当局から承認・認定を受けた法人です。
持分あり社団医療法人の場合、法人に出資した人が社員となり、退社時には法人財産のうち出資比率に応じた分を受け取れます。また、社会医療法人と特定医療法人は、税制上優遇的な扱いを受けられます。
運営主体別の利用できるM&A手法
歯科医院の運営主体によって、利用できるM&A手法(スキーム)は異なります。
個人事業主(個人医院)が利用できる手法
個人事業主(個人医院)が譲渡側となる場合、主に事業譲渡の手法を利用します。買い手は、これから開業する個人医師もしくは医療法人になります。個人医院の院長は複数の歯科医院の院長(管理医師)になることができないため、自身が買い手になることはできません。個人事業主が買い手側になりたい場合は、まず医療法人化することで分院として買収できる環境を整える必要があります。
医療法人が利用できる手法
医療法人の種類によって、利用できるM&A手法は以下のように異なります。
医療法人の種類 | 事業譲渡 | 持分譲渡 | 役員・社員の交代 (経営権の譲渡) | 合併 | 分割 |
---|---|---|---|---|---|
社団医療法人(持分あり) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
社団医療法人(持分なし) | 〇 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
財団医療法人 | 〇 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
社会医療法人・特定医療法人 | 〇 | × | 〇 | 〇 | × |
主なM&A手法の特徴
歯科医院の譲渡に利用できるM&Aの手法は以下のとおりです。
事業譲渡
事業譲渡とは、運営する事業を別の医師や医療法人に譲渡することをいいます。事業譲渡の最大の特徴は、譲渡内容を個別に決定できる点です。譲渡医院も譲受医院も、譲渡する資産や負債の範囲を自由に選択できます。
- 個人医院から個人医師への事業譲渡では、医療法上、売り手の現院長の廃業手続と買い手の新院長の診療所新設の手続が必要です。建物、内装、医療設備や什器に加えて、患者カルテ、従業員をすべて引き継ぐことができます。
- 個人医院から医療法人への事業譲渡でも、まず売り手の個人医院が廃業手続を行い、次に買い手側の医療法人が同じ場所で分院を開設する手続を行います。
事業譲渡の注意点としては、以下の点があります。
- 手続や契約が複雑になることがあります。個別の契約が必要なため、譲渡内容が多いほど手間がかかります。
- 個人医院の場合、保険医療機関コードの新規取得に時間がかかり、その間保険診療ができない期間が生じる可能性があります。これを避けるため、遡及請求申請を行いますが、その条件として診療の継続性が求められます。
- 事業承継をスムーズに行うためには、新しい医師が現院長のもとで一定期間(3〜6か月程度)勤務実績を作り、患者や従業員の信頼を得ておくことが重要です。
持分譲渡
持分譲渡は、持分あり社団医療法人でのみ可能な手法です。2007年4月の医療法改正以降、新たに設立される医療法人は持分なしが原則となっていますが、それ以前に設立された持分あり医療法人は多く存在します。
持分譲渡の仕組みとしては、まず買い手側が売り手社員の持分を取得し、過半数の議決権を確保します。これにより、社員総会で役員の解任や選任を実施できるようになります(医療法第46条の3の3)。その後、役員の選任を行うことで経営権を移動させることができます。
持分譲渡の特徴は、事業全体を包括的に譲受する点です。すべての資産だけでなく、負債も合わせて譲渡されるため注意が必要です。
合併・分割
合併や分割を行い、事業を移動させる方法もあります。
合併とは、2つの医療法人が1つの医療法人になることをいいます。合併には以下の2種類があります。
- 吸収合併:ある医療法人(譲渡企業)が別の医療法人(譲受企業)に吸収され、譲渡企業は消滅します。譲渡企業の資産・負債や従業員・患者カルテなどをすべて譲受企業が引き継ぎます。
- 新設合併:2つの医療法人が合併して、新たな医療法人を作ります。両法人の資産・負債や従業員・患者カルテなどをすべて新法人が引き継ぎます。
分割とは、医療法人の事業の一部を切り離し、他の医療法人に移行させることをいいます。分割にも以下の2種類があります。
- 吸収分割:ある医療法人の一部の事業(クリニック)を分割し、既存の別の医療法人の事業として継続します。
- 新設分割:ある医療法人の一部の事業(クリニック)を分割し、新規に法人を設立します。
ただし、特定医療法人、社会医療法人、持分あり医療法人は分割が認められていない点に注意が必要です。
居抜き
居抜きとは、歯科医院の内装や設備をそのまま残し、買い手に譲渡する方法です。たとえば、医療機器や受付、内装などをそのまま譲渡します。居抜きの注意点としては、建物の賃貸借契約で居抜きが禁止されている可能性がある点です。譲渡前に必ず確認するようにしましょう。
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医療法人に特有のM&A手法
個人医院とは異なる医療法人に固有の譲渡手法について説明します。
社団医療法人(持分なし)と財団医療法人のM&A
社団医療法人(持分なし)と財団医療法人では、経営権を移転する方法として社員・評議員の入れ替えによる経営権取得を行います。売り手法人の社員・評議員が辞職し、代わりに買い手側の社員・評議員がその地位に就いて、過半数の議決権を得ることで経営権を取得できます。買い手は、売り手側法人の社員・評議員・役員に対し、対価として退職金を支払うことが一般的です。
財団医療法人のM&A
財団医療法人は、金銭その他の財産の寄附行為により設立されています。合併を行うには、定款に吸収合併または新設合併をすることができる定めがある場合に限り可能です。また、合併契約を締結するには理事の3分の2以上の同意を得る必要があります。
社会医療法人・特定医療法人のM&A
社会医療法人と特定医療法人は、公益性に関する特別な要件を満たす医療法人(財団または持分の定めのない社団医療法人)です。医療の普及や社会福祉への貢献などに寄与し、かつ公的に運営されているとして国税庁長官の承認を受けた医療法人として、税制上優遇的な扱いを受けます。そのため、M&Aの手法として分割が認められていません。
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M&Aの成約事例
歯科医院をM&Aした成功事例にはどのようなものがあるのでしょうか。
愛媛県の個人クリニックの譲渡例
愛媛県にある個人クリニックでは、後継者不足からM&Aが実施されました。譲渡側がマッチングの際に気をつけた点は、金銭面だけでなく、医院がこれまで持っていた「地域の患者を優先する」という経営方針を重視してくれる譲受側を探すことです。マッチングの結果、同じ価値観を持った人材が見つかり、大きなトラブルもなく譲渡に成功しました。
70代の院長が経営する歯科クリニックの譲渡例
ノウハウや想いを引き継ぐことを重視してM&Aを実施したクリニックの例です。この事例では、契約締結からクリニックを引き継ぐまでに、4カ月の期間をもうけています。通常は数週間から1ヶ月程度なので、長い期間を費やしているのが特徴です。
譲受側は技術や診療方針を学べたほか、患者や従業員とも信頼関係を築くことができたため、M&A後の患者離れも避け、売り上げの増加に成功しています。
40代の院長が、医療法人にクリニックを譲渡した例
沖縄にある歯科クリニックが、医療法人によるクリニックの買収を受け入れた例です。譲渡側の院長は40代と若かったため、引退をするのではなく、法人内で人事異動をする形で業務を続けています。歯科医院のM&Aにおいては比較的珍しい事例です。
みつきコンサルティングのM&A成約事例
「みつきコンサルのM&A仲介」では、企業譲渡を果たしたオーナ経営者へのインタビューを紹介しています。

みつきコンサルティングの成約実績を見る|ご成約した譲渡オーナー様の体験談
成功する歯科医院M&Aの特徴
最後に、M&Aに成功する歯科医院の特徴について解説します。
医院の価値を把握している
歯科医院のM&Aで重要なのは、譲渡側と譲受側がそれぞれ、医院の価値を適切に判断することです。医院がこれまで築いてきたブランドや人材、ノウハウなどの財産が、M&Aによって損なわれないようにしなければなりません。
専門家と協力している
ひとくちにM&Aといっても、医院の状況や要望によって、最適な手法は異なります。よりよい選択肢を検討するためにも、コンサルティングサービスやM&A仲介会社などを活用しましょう。
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歯科M&Aのまとめ
歯科医院のM&Aは、後継者不足や経営効率化などの課題を解決する有効な手段です。しかし、M&Aにはメリットだけでなくデメリットや注意点もあります。M&Aに成功するためには、医院の価値を把握し、専門家と協力することが重要といえるでしょう。
歯科医院のM&Aを検討している方は、みつきコンサルティングにご相談ください。税理士法人グループのみつきコンサルティングでは、M&Aだけでなく、事業所内承継、親族内承継など複数の選択肢を提案します。また、M&Aに付き物である相続対策にもワンストップで対応可能です。
著者

- 事業法人第三部長
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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