M&A業務でのマンデートとは、M&A仲介会社等が依頼主からアドバイザリー業務を正式に依頼されることです。本記事では、M&A業界でのマンデートとその意味、使い方、M&A仲介会社がマンデートを獲得した後の業務内容について解説します。
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マンデートとは
M&Aにおけるマンデートとは、依頼主(譲渡側又は譲受側)とM&A仲介会社が締結するアドバイザリー契約です。 「マンデートを持っている」とは、依頼主から正式にM&A仲介業務を受託している、ということを意味します。
マンデートは英語では「mandate」と表記され、「命令」、「指令」、「任務」などの意味があります。「権限を与える」という動詞の意味も含まれています。職務執行令状や委任統治といった用法も存在します。これらの意味から、「代わりに行う特定の任務の権限を与えること」というニュアンスが伝わります。金融、政治、ビジネス、外交など、幅広い専門分野でこの用語が使用されています。
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マンデートの2つの意味
M&Aのマンデートは、次の2つの意味合いで用いられています。
契約としての意味
M&A仲介会社やアドバイザリー会社が、M&A(会社売却、企業買収)を支援するため、依頼主と取り交わすアドバイザリー契約を意味します。この契約には、業務内容、手数料、機密保持条項などが明記されます。
委任状としての意味
依頼主がM&A専門家に対し、M&Aの業務を委託することを表します。具体的には、交渉代行、契約手続、クロージング業務などの委託を指します。

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M&A業界での「マンデート」の使用例
いわゆるM&Aコンサルタントは次のような会話を交わします。
- 「B企業がA社の今回の買収案件においてマンデートを獲得した」
- 「マンデート取得のためには、契約条件の調整が必要となることがある」
マンデートの獲得手法
M&A仲介会社は、依頼主(譲渡オーナー、譲受企業)との間で、M&A仲介契約やアドバイザリー契約を取り交わすことで、マンデートを獲得します。契約取り交わしにあたっては、M&Aコンサルタントは、依頼主のニーズを正確に理解し、最良のM&A戦略を提示することが必要とされます。また、契約条項を明瞭にし、当事者双方にとって納得できる条件で契約を取り交わすことが大切です。
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M&Aでのマンデートの必要性・重要性
M&Aのプロセスでは、譲渡先の選定からクロージングまでの一連の作業を自社だけで行うのは困難なため、多くの企業はM&A仲介会社などの専門家と契約を結びます。この際、依頼主からM&A専門家に与えられる業務の「委任状」がマンデートとなります。
マンデートの獲得は、専門家にとって非常に重要で、正式にM&A業務を開始できる証となります。M&Aコンサルタントが業務遂行に必要な権限を委任されたことを示すものであり、M&Aの成功に向けて重要な役割を果たします。業界慣習上、マンデートは専任で契約するケースが多く、アドバイザー選びはM&Aにおける重要事項です。
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マンデート取得後のM&A業務
M&A業界においてマンデートが成立した後に実施される主な業務は、以下の5つのステップに分類されます。
M&A業務 5つのステップ
- M&Aの目的等の整理
- 企業の売却・買収プロセスの開始
- デューデリジェンスと条件交渉
- 最終契約書の締結
- クロージング
| ステップ | 主な内容 |
|---|---|
| 1 M&Aの目的等の整理 | ・M&Aの目的等を整理する ・M&Aスキームやスケジュールが構想される ・譲渡側では企業価値を基にした概算価格の決定を行う ・スケジュールが立案される |
| 2 企業の売却・買収プロセスの開始 | ・企業の譲渡手続が進行する ・ロングリスト・ショートリスト等を用いて最適な譲渡先・譲受先を探す ・交渉が開始される ・昨今では比較的早々にトップ面談が組まれるケースが増えている |
| 3 デューデリジェンスと条件交渉 | ・譲渡先・譲受先の候補先が絞られたら、意向表明や基本合意の手続を経てデューデリジェンス(DD)に進む ・DDは企業の詳細調査であり、財務状況や業績などを確認する ・専門家に依頼して慎重に実施することが求められる ・買収後に発生する予期しないリスクをチェックし、大きな損失を被る可能性を回避する ・DD後は最終的な条件交渉を進める ・平行してM&Aを見据えた協議を始めることも多い |
| 4 最終契約書の締結 | ・最終的な契約書(株式譲渡契約書など)の締結が行われる ・契約書には、M&Aの目的、方法、売買価格、スケジュール等が明記される ・株主総会の開催や債権者保護手続き、従業員や取引先からの同意が必要となる場合もある ・契約書に不備があると、M&Aが頓挫する恐れがあるため、専門家に依頼して十分に確認を行うことが重要 ・条件交渉が難航する場合、M&A成立までの期間が長引くことがある ・専門知識や経験豊富なM&Aアドバイザーに協力を依頼し、円滑な進行を図ることが推奨される |
| 5 クロージング | ・最終的にクロージングが行われる ・M&A効力発生日が到来すると、マンデートは終了となる ・別途、M&A後の統合プロセスや経営コンサルティングを依頼することもある |
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金融業界でのマンデートとは
金融業界でのマンデートとは、企業が株式発行などにより資金調達しようとする際に、その企業から金融機関が業務の委任を受けることです。具体的には、銀行や証券会社などの金融機関が、株式発行、上場、シンジケートローンの組成などを通じた資金調達に関する金融業務を企業から委任されることを指します。
- マンデートは、「代わりに行う特定の任務の権限を与えること」を意味します。
- 金融、政治、ビジネス、外交など多くの分野で活用されています。
- 金融業務では、資金調達のために金融機関に業務を委任することを指します。
- 大企業や上場企業は、新株の発行や上場を通じて資金調達を行い、関連する金融業務を銀行や証券会社に委任する場合があります。
企業が資金調達をする方法はいくつかありますが、中小企業においては銀行融資が一般的です。一方、大企業や上場企業では、新株の発行や上場を通じた資金調達が行われることもあります。大企業や上場企業が新株の発行や上場などで資金調達を行う際、関連する金融業務は銀行や証券会社に委任されます。そのため、「マンデート」という言葉は金融業務において重要な意味を持っています。
金融業界での「マンデート」の使用例
- B証券がA社株式上場を主導する主幹事としてマンデートを受けた
- マンデート範囲内で顧客のドル建て資産を保護するためにあらゆる手段を講じる
- アセットオーナーは、ファンドの方針に従い、リスク管理や資産配分、マンデートの責任を担当する
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M&A業務でのマンデートのまとめ
M&A業界におけるマンデートは仲介契約書や業務委託契約書を意味し、専門知識と豊富な実務経験が必要です。適切な仲介会社と契約を結べば、トラブルを回避しながら円滑な手続きが可能になります。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の実績を持ち、中小企業M&Aに特化した経験豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が在籍しています。マンデート契約から従事業承継まで、税務面や法律面のサポートもワンストップで対応可能です。M&Aをご検討の際は、みつきコンサルティングにご相談ください。
著者

- 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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