M&Aを検討する際には、海外を対象にした「クロスボーダーM&A」も視野に入ります。クロスボーダーM&Aの基本を理解し、そのメリットを活用できれば、高い効果も期待可能です。本記事ではクロスボーダーM&Aの基本と、具体的な手順や成功のポイントなどを解説します。海外企業も対象にしたM&Aに興味があるのなら、ぜひ参考にしてください。
1.クロスボーダーM&Aとは
クロスボーダーM&Aを実行するのなら、まずその概要を把握する必要があります。以下では、クロスボーダーM&Aの基本について解説します。
クロスボーダーM&Aとは海外資本の企業とM&Aを行うこと
クロスボーダーM&Aとは、国境を超えて海外企業とM&Aを行う方法を指します。譲受・譲渡企業のどちらかが海外企業の場合、クロスボーダーM&Aに該当します。海外企業との交渉・契約になるだけで、基本的な手順や手法は一般的なM&Aと同じです。そのため複雑に考えることなく、M&Aにおける1つの手段として検討できます。
▷関連:企業買収とM&Aは違う?メリット・デメリットや手続・手法を解説
2.クロスボーダーM&Aを実施する主な目的
クロスボーダーM&Aは、さまざまな目的を持って実施されるケースが多いです。以下では、クロスボーダーM&Aにおける主な目的を解説します。
市場の成長が見込める海外での事業を始める
クロスボーダーM&Aは、海外のグローバルな市場に参入するきっかけになり得ます。販路の拡大や新規顧客の開拓などを、海外市場で進めることが可能になります。
海外の技術を取り入れた新たな製品開発
海外資本の企業と提携することで、国内には普及していない技術やノウハウが手に入ります。海外の技術を取り入れた新たな製品開発も、クロスボーダーM&Aにおける目的になります。
3.クロスボーダーM&Aの種類について
クロスボーダーM&Aには、いくつかの種類に分類されます。以下では、クロスボーダーM&Aの主な種類について解説します。
IN-OUT型とは
IN-OUT型とは、国内企業が海外企業を譲受するクロスボーダーM&Aです。近年はスタートアップやベンチャー企業による、IN-OUTの事例が増えています。アジアだけでなく、欧州をはじめとした巨大市場に参入しているのも特徴です。海外企業を譲受することで、先に解説したように国内ではまだ普及していない技術やノウハウを、自社に導入できる可能性があります。
OUT-IN型とは
OUT-IN型とは、海外企業が国内企業を譲受するケースです。国内企業の譲受をきっかけにして、日本市場に参入するケースもあります。一方で、日本市場は人口減少などを理由に縮小傾向にあるため、近年はOUT-IN型の事例が減っています。
4.クロスボーダーM&Aにおける2つの手法
クロスボーダーM&Aには、主に2つの手法があります。以下では、2種類の手法についての詳細を解説します。
1.三角合併
三角合併とは、存続会社が消滅する会社に現金や自社の株式を渡し、その代わりに親会社の株式を受け取る方法です。合併の当事者である2つの会社と、親会社が契約することから三角合併と呼ばれています。会社が所在する国が違い、その結果法的に合併当事企業になれない場合などに、実施される手法です。
2. LBO
LBOとは、「Leveraged Buyout」の略称です。譲渡企業の資産、今後の利益、キャッシュフローなどを担保に、金融機関から資金調達をする方法を意味します。譲受企業の資産を返済に当てる必要がないため、自己資金が少ない場合にも大型のM&Aが実現可能です。クロスボーダーM&Aは、比較的規模の大きな契約になりやすく、LBOを活用するケースが多いです。
5.クロスボーダーM&Aを実施するメリット
クロスボーダーM&Aには、さまざまなメリットがあります。以下では、クロスボーダーM&Aにおける主なメリットを解説します。
新しい市場への事業拡大が可能
クロスボーダーM&Aによって、海外の新規市場への参入が可能となります。事業拡大に加えて、新しいニーズの発見などにつながる点はメリットの1つです。国内市場では需要がない商品サービスが、海外市場でヒットする可能性にも期待できます。
譲渡による利益獲得につながる
譲受した海外企業を、別の企業に譲渡する形で利益獲得が可能です。海外企業には独自の魅力があるため、その事業やノウハウを欲しがる企業も多いです。譲渡を計画に含めて、M&Aを実施するケースも考えられます。
6.クロスボーダーM&Aによるデメリット・リスク
クロスボーダーM&Aには、メリットばかりではなくデメリットやリスクもあります。以下では、クロスボーダーM&Aにおけるデメリット・リスクを解説します。
カントリーリスクの懸念がある
カントリーリスクとは、契約した企業の属する国の政治や経済情勢によって、損害が発生するリスクを意味します。国内からは予想できない情勢の変化によって、損害を被る可能性のことです。
訴訟リスクにも注意が必要
アメリカなど訴訟が多い国の企業とのM&Aには、訴訟リスクも懸念されます。訴訟されたという事実が、のちに新しい問題を引き起こす可能性もあります。クロスボーダーM&Aを実施する際には訴訟に発展しないように、専門家の意見を参考にしつつ交渉することがポイントです。
7.クロスボーダーM&Aの具体例を紹介
クロスボーダーM&Aを実施した事例は、すでに多数あります。以下では、クロスボーダーM&Aの具体的な事例を紹介します。
非上場会社のクロスボーダーM&A事例
非上場会社の株式を50%以上保有していた依頼者が、ハンガリーの会社に株式を譲渡することを検討した事例があります。ハンガリーの会社も商品を日本に展開したいため、M&Aを検討する結果になりました。ハンガリーの会社は、早期にデューデリジェンス(買収監査・企業調査)を実施していたため、具体的な譲受金額の提示もスムーズに進められました。
▷関連:JTの海外M&A事例を紹介|企業の歴史やM&Aを実施する背景も解説
8.クロスボーダーM&Aを進める基本的な手順
クロスボーダーM&Aを進める際には、手順を理解することも重要です。以下では、クロスボーダーM&Aにおける基本的な手順を解説します。
クロスボーダーM&Aのメリットやリスクを把握する
まずはクロスボーダーM&Aの基本と、メリットやリスクを正確に把握する必要があります。上記で解説した内容や事例を参考に、基本的な知識を理解しましょう。
交渉先を探して契約を結ぶ
クロスボーダーM&Aの交渉先を探し、契約に至るまでの話し合いを進めます。交渉をスムーズにするために、あらかじめ具体的な譲渡条件や課題を明確にしておくことがポイントです。
企業文化の統合を意識したPMIの実施
クロージング(成約)後は、企業文化の統合を意識した「PMI」を実施します。PMI(Post Merger Integration)とは、譲渡後に行われる統合作業のことを指します。統合作業には数年の時間がかかることが予想されるため、あらかじめPMIを想定して、M&Aを進行することが成約のコツです。
9.クロスボーダーM&Aを成功させるためのポイント
クロスボーダーM&Aを成功させるには、いくつかのポイントを把握することが重要です。以下では、クロスボーダーM&Aの成功を近づけるポイントを解説します。
PMIの計画を立てる
PMIの計画を事前に立てて、M&Aが譲受した後の経営統合をスムーズに行えるように備えることが、1つのポイントです。先に挙げたようにPMIは、クロスボーダーM&Aにとって重要なプロセスになるため、時間をかけて計画する必要があります。KPIの指標を設定したり、決算報告やレポートラインの構築をしたりといった対策が考えられます。
交渉先の国に詳しい人材を確保する
クロスボーダーM&Aでは、海外企業やその国の特徴に詳しい人材がいると頼りになります。国によって考え方や企業風土の捉え方は異なるため、相手の意思を尊重するためにも、交渉先の国に関する知識を持つ人材が重要視されます。自社に該当する人材がいない場合には、専門家を外注で確保することも検討しましょう。
10.M&Aを本格的に検討するのなら「みつきコンサルティング」がおすすめ
国内・海外に関わらず、M&Aを本格的に検討するのなら、「みつきコンサルティング」の利用がおすすめです。
「みつきコンサルティング」ではさまざまな方法でM&Aの実施をサポート
「みつきコンサルティング」は、税理士法人系のM&A仲介会社です。税理士や会計士などが譲渡価格を正確に把握し、M&Aにおける最適な提案を実行します。M&Aの計画立案から成約までサポートできるため、分からないこともお気軽にご相談いただけます。条件や目的に合った提携先をご紹介できるため、M&Aにかける時間を削減できます。後継者がいないなど、なるべく早く成約をしたい場合にも、「みつきコンサルティング」をご利用ください。
11.クロスボーダーM&Aのまとめ
クロスボーダーM&Aでは、海外企業とM&Aの交渉・契約を締結します。国内でのM&Aにはないメリットがあるため、譲渡を検討する際には1つの手段として考えられるでしょう。一方で、クロスボーダーM&Aにはリスクもあります。事前に注意すべき要素や手順を確認し、トラブルに発展しないように備えるのもポイントです。
M&Aにお困りの際には、「みつきコンサルティング」へぜひご相談ください。専任のコンサルタントが、M&Aのクロージング(成約)までサポートします。まずは無料相談から、お気軽にM&Aの支援内容をご確認ください。
著者
-
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
最近書いた記事
- 2024年7月6日人材業界のM&A動向とは?メリットや手順、注意点、事例を解説
- 2024年7月6日M&Aファイナンスとは|MBOで中小企業も利用できる?手法も解説
- 2024年7月6日事業承継と株式譲渡|第三者承継で一般的な手法!手続・注意点も解説
- 2024年7月6日株式譲渡とは|M&Aでの従業員の扱い、メリット・デメリットを解説