成功するM&Aとは?基礎知識・進行段階別の検討ポイントを解説

経営戦略の1つとしての活用が増えているM&Aですが、必ずしも成功するとは限りません。本記事では、M&Aの基礎知識と、M&Aを成功させるポイントを進行段階別に解説します。

本記事では、前半でM&Aの基礎を概説します。後半では、M&Aを成功裏に完了させるためのポイントを説明します。

M&Aの基礎知識

M&Aとは「Merders and Acquisitions」の略で、企業の合併譲受のことです。2つ以上の会社の合併、または譲受によって、それぞれの会社が抱える問題を解決することを目的としています。

M&Aを実施するメリット

M&Aを実施するメリットを、譲渡側・譲受側に分けて解説します。

譲渡側のメリット

M&Aを実施することで、譲渡側が得られるメリットは、以下のとおりです。

  • 事業承継問題を解決できる
  • 雇用や取引を維持できる
  • 金銭的なメリットを享受できる

譲渡側の大きなメリットとして、後継者不在をはじめとする事業承継問題を解決し、事業の継続が可能となることが挙げられます。また、不動産や設備、取引先などの資産を引き継ぐことで、従業員の雇用や取引先との継続的な取引も維持することが可能です。

譲受側のメリット

 M&Aの実施により譲受側が得られるメリットは、以下のとおりです。

  • 事業展開を実現できる
  • 事業規模を拡大できる
  • 事業の多角化を図れる
  • 弱点を強化できる

譲受側の主なメリットは、迅速な事業展開ができることです。すでに事業を行っている企業を譲受するためので、一から投資する必要がありません。また、事業規模が拡大すれば、生産コスト(費用)の低下による利益の増大が期待できます。

M&Aの代表的な5つの手法

M&Aを実施する際に用いられる手法は、主に5つあります。以下で詳しく解説します。

株式譲渡

「株式譲渡」とは、株式の売買により会社の経営権を譲受側に移行する手法です。株式取引のみであるため、手続きをスムーズに勧められるという特徴があります。

メリット譲渡側・債務者保護手続きが不要 ・独立性が維持しやすい
譲受側・譲渡側の従業員との再契約が不要
デメリット譲渡側・すべての株式を売却する場合、株主全員の同意が必要
譲受側・不要な不動産や簿外債務を引き継ぐ恐れがある ・対価として金銭が必要 ・譲渡側が存続することで、シナジー(相乗効果)の発揮に時間を要する場合がある
株式譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡

事業譲渡では、譲渡側の事業、資産、権利などの一部を選んで売買取引を行います。人材のほか、ソフトウェアやノウハウ、技術といった無形資産も譲渡対象です。

メリット譲渡側・譲渡対象の資産が少額の場合、手続きが容易
譲受側・必要な資産のみが対象のため、コスト(費用)を抑えられる ・不要な資産や簿外債務を引き継ぐリスクが低い
デメリット譲渡側・株主総会が必要 ・従業員や取引先への対応が必要
譲受側・資産の所有権や従業員、取引先の契約の移転手続きが必要 ・不動産移転の場合、取得税や登録免許税が発生する ・対価として金銭が必要
事業譲渡のメリット・デメリット

株式交換

「株式交換」とは、完全子会社となる企業の株式と、完全親会社の株式を交換する手法を指します。

メリット譲渡側・譲受企業の配当金の受領権利を得られる
譲受側・譲受資金の準備が不要 ・譲渡側企業は別法人なので、経営統合が進めやすい
デメリット譲渡側・親会社が未上場企業の場合、子会社で取得した株式の現金化が困難
譲受側・株式交付により、株主構成に影響がある
株式交換のメリット・デメリット

会社分割

会社分割は、事業の権利義務の全部、または一部を分割して承継します。複数の会社がそれぞれの事業を対象に行うことが可能です。「吸収分割」と「新設分割」に分けられます。

吸収分割とは、分割した権利義務を既存の会社に承継することを指します。新設分割とは、分割した権利義務を新設の会社に承継することです。新規合併会社を設立する際に、活用されやすい方法になります。

メリット譲渡側・特定の事業のみを切り離すことができる
譲受側・譲受資金の準備が不要 ・シナジー(相乗効果)を早期に発揮できる
デメリット譲渡側・株主総会の特別決議で3分の2以上の合意が必要
譲受側・簿外債務を引き継ぐ恐れがある ・一部の業種では、許認可の再取得が必要 ・株式交付により、株主構成に影響がある
会社分割のメリット・デメリット

吸収合併

合併は、「吸収合併」と「新設合併」の2つに区分されます。「吸収合併」とは、合併する企業のうち1社が存続し、他の会社のすべての権利義務を吸収することを指します。「新設合併」においては、合併するすべての企業が一度解散し、新設した会社にすべての権利義務を承継させます。

メリット譲渡側・従業員の雇用契約も譲受側に引き継げる
譲受側・シナジー(相乗効果)を早期に発揮できる ・譲受資金の準備が不要
デメリット譲渡側・会社がなくなる
譲受側・譲渡側のシステムや文化の統合に時間がかかる
合併のメリット・デメリット

M&Aの基本的な流れ

M&Aの基本的な流れは、以下のとおりです。

  1. M&Aの目的・方向性を明確化する
  2. M&Aに関する仲介業者などに相談する
  3. 市場調査を行い、M&A戦略を具体化する
  4. M&A先の選定・交渉をする
  5. 基本合意を締結する
  6. 譲受側によるデューデリジェンス(買収監査・企業調査)を実施する
  7. 最終条件の交渉・締結をする
  8. ロージング(成約)をする
  9. 譲受側側による統合プロセスを実施する
  10. M&A後の情報開示をする

成功するM&Aとは

M&Aの成約率は、一般的に3~4割程度と言われており、成約率はそれほど高い水準とは言い難い数字となっています。この記事では、そんなM&Aを成功に導くポイントを説明します。

戦略に基づき目的を明確にする

M&Aは、譲渡側にとっては事業承継の選択肢・資金調達・成長戦略など経営戦略の一つです。自社がかかえるどの課題に対する経営戦略なのか明確にすることで相手候補先の選定が変わります。また、譲受側にとってもM&Aは経営戦略であり、事業戦略でもあります。自社グループの組織体制強化や事業部の人材や技術の補完など戦略によって買収先の選定が変わります。このように何を目的にM&Aを実行するのか、すなわち企業戦略を明確にすることがM&A成功のカギとなります。

良好な人間関係を構築する

M&Aは成約することが成功ではなく成約後、譲受側がスムーズにM&A対象企業を引継ぎ、譲受側の企業戦略に沿ったシナジーを得て初めて成功と言えます。その為には、譲渡側の前経営者やM&A対象企業の従業員の協力なくして成り立ちません。その協力を得る為には、M&Aの交渉の際からお互いに敬意を払い、良好な人間関係を構築することが必須となります。

M&Aの専門家を活用する

M&Aは、財務・税務・法務・不動産など交渉の論点となる範囲が広く、M&A取引金額や条件などセンシティブな交渉事項も含まれる為、専門家の知識とノウハウを活用することをお勧めします。M&Aアドバイザリー等の専門家の活用により、交渉時に起こるトラブルの回避方法提案やセンシティブな交渉の代理などを行ってくれるので譲渡側・譲受側間の不要な摩擦を避けることが可能です。また、M&Aには重要な契約も多くありますので法務アドバイザリー等の専門家の活用により、M&A実行におけるリスクを回避することもM&A成功のポイントとなります。

【段階別】M&A成功の検討ポイント

以下では、M&Aを成功させるポイントについて、進行フェーズ毎に解説します。

事前準備の段階

M&Aの実施が決定したら、ベストなタイミングを逃さないために、早期に行動を起こしましょう。また、売上高や採算性・強み・課題など、自社に対する理解を深めることも重要です。相手企業からの質問に対し、明確に説明する準備をしておけば、譲受側探しをよりスムーズに進められるでしょう。

条件交渉の段階

条件交渉の際のポイントとしては、デューデリジェンス(買収監査・企業調査)を確実に行うことが挙げられます。譲受監査を通じて双方の信頼度を高め、良好な人間関係の構築も重要です。

M&A完了後の段階

M&A完了後は、従業員同士のトラブルを避けるためにも、従業員や取引先との良好な関係構築を心掛けましょう。従業員に信頼されているキーパーソンとの積極的なコミュニケーションに、重点を置く必要があります。

また、わかりやすい形でシナジー(相乗効果)による成果を上げることもポイントです。たとえば、取引先の紹介やクロスセルの商品展開を進めることなどが挙げられます。

M&Aの成功ポイントのまとめ

M&Aは、合併・譲受・譲渡により、企業が抱える課題を解決する経営戦略の1つです。M&Aを成功させるためには、専門的な知識が必要な場面も多く、できる限り早い段階で専門家に相談することが重要です。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループであり、第三者への承継であるM&Aだけではなく、事業所内承継、親族内承継など、メリット・デメリットを考慮した、複数の選択肢を提案します。完全成功報酬で途中費用はかからないので、お気軽にご相談ください。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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