廃業とは?倒産・破産・休業・閉店との違い、2023年公表の最新動向

廃業とは、経営者が自らの意思で事業を廃止することです。会社経営や事業運営に携わる方々の中には、後継者不在や将来の見通し不安などを理由に廃業を検討する方もいらっしゃるかと思います。本記事では、廃業と、廃業に似た状態である倒産や休業等との違いなどを解説します。

廃業とは

廃業とは、会社や個人事業主が自主的に事業を終了することを言います。廃業理由としては、後継者不在や経営者の高齢化、近年では新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の変化なども無視できません。

廃業の方法

「廃業」は、法律で明確に定められた言葉ではありませんが、事業を終了する意味を持つ言葉として使用されます。その他にも「倒産」、「破産」、「休業」など類似する言葉がありますが、それぞれ言葉の指す状況や意味が違うため、適切に理解することが重要です。下記に「廃業」とそれぞれの類似する言葉の違いについて解説しますので参考にしてください。

倒産と廃業の違い

「倒産」も「廃業」と同様に、法律で定められた言葉ではありません。一般的には経営が行き詰まり債務の支払いが困難になったことにより、事業継続が不可能になった状態を指します。主な相違点としては、「会社や個人事業主が自ら事業をやめる」のが廃業で、「債務の支払いができなくなったため事業を終了する」のが倒産になります。

民間調査機関である東京商工リサーチでは、廃業を「資産超過の状態で自主的に事業を終了する(自主廃業)」と定義し、資金不足や業績不振による破綻(倒産)と区別しています。また、同じく民間調査機関である帝国データバンクでは、下記のような状況を倒産と定義されています。

  • 銀行取引停止処分を受けた場合
  • 代表者が倒産を認め、債権者と個別に話し合いの上、債務整理を行った場合
  • 裁判所で会社更生手続を開始した場合
  • 裁判所で民事再生手続を開始した場合
  • 裁判所で破産手続を開始した場合
  • 裁判所で特別清算手続を開始した場合

破産と廃業の違い

「廃業」とは、会社や個人事業主が自ら事業をやめることを言いましたが、「破産」とは、倒産した会社や個人事業主が債権者に対して財産を配分するために裁判所で行う手続(破産手続き)のことを言います。破産手続きは、倒産した会社の約8割が行う手続となっています。

休業と廃業の違いとは何か?

休業とは、企業や個人事業主が事業を再開することを前提に、一時的に事業活動を停止することを言います。これは廃業や倒産とは異なり、企業や事業自体は存続させながら、事業活動のみを一定期間休止している状況を言います。

休業に関しては、税務署や労働基準監督署、各自治体に休業届を提出することで手続が完了するため、廃業などと比べて手続きは簡便です。また、営業を行っていない場合、住民税の均等割や固定資産税などを除き、事業運営時にかかる法人税や所得税、住民税などの税金は基本的にかかりませんので、一時的に事業活動を停止したい場合は検討してみてください。

注意点としては、休業期間中も税務申告や登記に関する義務は継続されること、2期連続で税務申告を行わなかった場合は青色申告が取り消されることが挙げられます。特に登記に関しては所定の期間を超えて義務が履行されないときは、法務局が強制的にみなし解散の登記を行い、廃業と同様の状態となることがありますので注意するようにしてください。

閉店と廃業の違いとは何か?

閉店とは、営業していた店舗を閉鎖することを言います。閉店の理由としては、倒産・廃業・移設など様々な理由が考えられます。このように閉店とは、店が閉まっている状態のことを指す言葉で閉店の背景は様々であるため、廃業や倒産とは異なる意味合いとなります。

休業と閉店の違い

「休業」とは、一時的に事業活動を停止することであり、将来的に再開の可能性を残した状態を言います。対して「閉店」とは、店舗の営業を終了する行為を指し、必ずしも事業そのものが停止・終了しているわけではありません。

廃業の最新動向(2023年公表)

この記事では、近年の日本における廃業の件数の推移と、会社が廃業に至る要因について解説します。

廃業の推移

民間調査機関である東京商工リサーチの調査によれば、2023年の休廃業・解散は、約5万件で、2年連続で増加、調査を開始した2000年以降では最多でした。

また、2023年の企業倒産は、8,690件で前年比35.1%増となっています。

廃業する背景

コロナ禍で矢継ぎ早に実施された中小企業向け各種支援策は、経営者の事業継続の可否の判断を先送りし倒産を抑制したと考えられます。現在では感染症の分類が5類に移行され各種支援策が縮小する中で、判断を先送りにしてきた経営者が休廃業・解散の選択を加速させているのではと予想されています。また、人件費や原材料価格の高騰、円安などの影響も考えると、市場や事業環境の変化への対応が遅れている企業や過小な資本力で対応しきれない企業など、生産性向上や利益改善を見通せない企業の倒産や休廃業がさらに加速すると見込まれています。

廃業して清算する場合の手続の流れ

この記事では、企業が廃業し清算する場合の手続きの流れについて解説します。廃業の手続きとしては、取引先や関係者への解散通知の実施や株主総会での決議・登記手続き、所有する資産の清算や負債の返済などが必要となります。万が一負債を清算できない場合には、「法的倒産」や「私的倒産」などの手続きも必要となります。

廃業手続き(通常清算)の流れ

会社の廃業を行う場合、図表のような流れで手続を行うことになります。以下の解説も参考に手続きの手順や流れを確認してみてください。

株主総会で解散の決議と清算人の選任

会社の解散には、株主総会にて議決権を持つ出席株主の3分の2以上の賛成による特別決議が必要となります。また、清算人の選任も必要となります。

本店や支店の所在地で解散登記

株主総会での解散決議から2週間以内に解散と清算人の登記を行います。

税金や社会保険関係の届出

税務署、都道府県税事務所、労働基準監督署、年金機構等に事業廃止に係る届出を提出します。

現務の結了、債権の取り立て

解散時に未完了である業務を完了することや未回収であった債権の回収を行います。

公告および通知

お世話になった取引先へ解散の説明が必要です。また、債権者保護の観点から解散事実と債権申出に関する事項の公告が必要となります。

会社が保有する財産調査・財産目録の作成・承認

会社が保有する財産調査を行い、財産目録を作成します。作成した財産目録は、株主総会へ提出し承認する必要があります。

解散・清算事業年度の確定申告

解散事業年度として、事業年度開始日から解散日までの確定申告を行う必要があります。また、解散日の翌日から1年ごとの期間を清算中の事業年度(清算事業年度)とし清算事業年度の確定申告も必要になります。

資産の現金化、債務弁済、残余財産の分配

会社が保有する資産を売却し現金化、債権者から申出があったすべての債務を弁済します。その後、残余財産がある場合は、清算人の決定に基づいて株主に分配を行います。

残余財産の確定申告

残余財産が確定したら、残余財産が確定した日から残余財産の確定申告が必要です。

決算報告の作成・承認

清算事務が完了すると最終的な決算報告書を作成し、株主総会で承認します。

清算結了の登記

株主総会で決算報告書の承認を終えた後、2週間以内に清算結了の登記を行う必要があります。

以上が、廃業し清算する場合の一般的な手続きとなります。各種手続きを確実の行うことはもちろんですが、期限が定められている手続きなどもあるため、注意してください。

M&Aを活用して廃業しない方法

取引先へ迷惑を掛けたくない、従業員の雇用を守りたい、自社ブランドや技術を後世に残したいなどを理由に事業を継続したいと考えているものの、後継者不在や業績不振などの問題で廃業を余儀なくされる経営者の方もいるかと思います。このような事業主の課題解決策として、近年、注目されているのがM&A(合併・買収)という手法です。この記事では、M&Aのメリットや国の制度、支援策について解説します。

M&Aを用いて廃業を回避するメリット

M&Aの活用で事業を継続し廃業を回避するメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 会社や事業の存続が可能になる
  • 従業員の雇用維持ができる
  • 売却益を得て、会社の資金を減らさずに引退後の生活資金を確保できる
  • 取引先や関係者への影響が最小限に抑えられる

M&Aにより廃業を回避することができると、事業主・従業員・取引先と会社に関係するすべての人にとってメリットがあると言えます。M&Aは経営者が変更されることを除けば、事業主にとって最も合理的な会社の出口戦略と言っても過言ではありません。

活用できる制度や支援策

日本政府は経営者の高齢化や後継者不在による廃業で、技術や経営資源の損失を防止するため、M&Aの促進や円滑な事業承継のための支援策をさまざま実施しています。主な制度や支援策を以下に記載します。

事業承継・引継ぎ支援センター

全国47都道府県に無料で利用できる公的相談窓口を設置。事業承継全般やM&Aのマッチング支援などが提供されています。

事業承継・引継ぎ補助金

M&A実行の際の専門家活用に係る費用や事業承継時の設備投資費用などを補助する制度を設けております。

事業承継税制

事業承継に伴う贈与税や相続税の負担を軽減する制度を設けております。

日本政策金融公庫の融資

M&Aや事業承継における各種資金の融資を行っています。

各種ハンドブック

「事業承継ガイドライン」や「中小M&Aハンドブック」など、M&Aや事業承継に関する情報をわかりやすくまとめたハンドブックが提供されています。

このように、日本では円滑な事業承継を後押しするため、さまざまな支援策を実施しています。中でもM&Aの促進には注力しており、国内のM&A件数は増加傾向にあります。コロナの影響や時代のスピード加速など市場や事業環境が目まぐるしく変化する中で、事業の継続・維持のみならず強化・拡大を目指す有望な次世代経営者に会社を引継ぐ機会となりますので、廃業を検討する経営者の方は、M&Aも事業承継の選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

廃業とは(まとめ)

少子高齢化、人口減少など国の抱える課題や人件費・原材料費の高騰、円安、新型コロナウイルス感染症の影響で、日本の市場や事業環境が大きく変化しました。また、経営者の高齢化や後継者不在など会社存続のために解決を必要とする課題もあり、倒産や休廃業する会社が増加傾向にあるのが現状です。現経営者の出口戦略(引退に仕方)として廃業という選択肢もありますが、技術やノウハウの継承、従業員の雇用維持を考えると会社を存続させることの意義は大きいと言えます。休廃業を検討の経営者の方は、事業承継の選択肢としてM&Aの検討もしてみることをお勧めします。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。また、みつき税理士法人と連携することにより、税務面や法務面のサポートもワンストップで対応可能です。M&Aをご検討の際は、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。 

著者

潟野和徳
潟野和徳名古屋法人部長
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。
監修:みつき税理士法人

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