成功する「建設業界M&A」のポイント!注意点や対処法も解説

建設業M&A成功への道を事例解説とポイント集で学び、市場動向や成功事例を理解し、メリット・デメリットを把握。注意点とリスクを避けて、効果的なM&A戦略を立てましょう。

建設業界のM&Aの概要と最新動向

建設業会のM&Aとは、建設事業者との資本提携や買収を指し、多くの企業が成長や事業拡大のために活用しています。この分野のM&Aは、企業が保有している技術や人材、販路を広げるだけでなく、企業の競争力を強化し、業界全体の変革を促すことにも繋がります。最近では、労働力不足や後継者問題に直面する中小建設事業者がM&Aにより事業を引き継いでもらうケースが増加しています。

また、近年の動向として、大手建設業者が中小企業を買収する事例が増加しており、地域密着型の事業を傘下に収めることで市場シェアの拡大を図っています。さらに、環境技術やICTを活用した新たな事業領域への進出も増加し、例えば、不動産業界との連携によるM&Aも注目を集め、建設業界においても、より総合的なサービス展開が求められていると言われています。

M&Aとは?建設業における目的

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略で「合併と買収」を表す言葉です。M&Aには広義と狭義の意味があり、経営権や事業の権利移転を伴わないM&Aは広義のM&Aと分類されます。資本提携、業務提携、合弁会社の設立などがこれに当たります。経営権や事業などの権利移転を伴うM&Aは狭義のM&Aと分類されます。買収、合併、会社分割などがこれに当たり、一般的にM&Aという場合は狭義を指します。

建設業界では、土木や建築分野での業務範囲や技術力を広げ、競争優位を確保を目的としてM&Aが行われます。

また、後継者問題や人材不足に悩む中小企業にとって、強固な経営基盤を持つ大手企業とのM&Aは、事業承継の解決手段としても活用されています。地域での事業シェア拡大や合理化によるコスト削減、新たな事業領域への進出などの目的でもM&Aが選択されています。

建設業界の市場規模と成長性

我が国における建設業界の市場規模は非常に大きく、経済成長やインフラ整備需要に伴って拡大しています。国土交通省発表の「令和4年度(2022年度)建設投資見通し 概要」によると、日本の2022年度建設投資額は、政府と民間併せて約67兆円と想定されていて、過去と比較しても微増傾向が続いています。

一方で、建設技術の向上や労働力不足の解消に向けた努力が課題となっている業界でもあるため、競争力をより高めることが求められています。また、地球環境問題への対応やICT技術を活用したスマートシティへの取り組みなど、新たな価値を創出する可能性も秘めているため、市場規模の拡大に合わせた企業体力が必要不可欠な業界とも言えます。

成功する建設業界M&Aのポイント

建設業M&Aの成功事例としては、大手建設会社が中小企業の技術や顧客基盤、地域事業を取り込むことで競争力を高める例や、中小建設会社同士が互いの強みを活かし、効率化を図る例などがあります。

M&Aが成功するためのポイントとしては、事業内容やシナジー(相乗効果)の把握、譲渡側と譲受側双方のM&Aの目標やビジョンの共有が図れるか、資金調達や資料収集分析が適切に行えるかなど、適切な専門家への相談が不可欠です。また、M&A後の統合作業で、従業員との信頼関係を築き、円滑な情報伝達や統合業務分担が行われるよう譲渡側と譲受側が協力することも重要です。

建設業(土木工事業含む)のM&A件数の推移(2018~2022年)
建設業(土木工事業含む)のM&A件数の推移(2018~2022年)

出典:レコフM&Aデータベース

2021年から2022年にかけては、ほぼ横ばいの成約件数でしたが、新型コロナウイルス感染症やウクライナ問題の解消、世界経済の回復が進めばM&A件数も増加基調に戻ることが予想されます。

M&A成功の5つのポイント

M&Aは、企業が経営資源をより効率的に活用し、競争力を高めるための手段です。建設業界においてもM&Aは重要な戦略であり、成功させるためには以下の5つのポイントを押さえることが重要です。

  1. 目的の明確化:M&Aの目的を明確にすることで、適切な譲受企業を選びにつながり、競争力を高めることに直結します。
  2. 財務状況の把握:譲渡企業の財務状況を正確に把握し、適切な譲渡価格で交渉を行い、双方が納得した譲渡価格を決定することが大切です。
  3. 事業の統合:M&A後、経営戦略や業務フローの統合、人材の配置等、円滑な統合作業となるような綿密な計画立案が必要です。
  4. コミュニケーション:M&Aにより生じる変化に対して、従業員に適切な情報伝達と対応を行うことで、スムーズな運営が可能になります。
  5. 法務・税務の対応:M&Aに伴う法務・税務面の対応は重要かつ専門性の高いミッションであるため、専門家のサポートは不可欠です。

建設M&Aのメリットとデメリット

建設業M&Aのメリットとデメリットについて解説します。メリットは、事業規模の拡大、経営効率の向上、新たな技術や人材の獲得、地域エリアや事業領域の多様化等が挙げられます。

一方、デメリットとしては、企業文化の違いによる軋轢や、人材のつなぎ止め失敗、各種経営資源の不足、負債の増加等が挙げられます。M&Aを成功させるためには、これらのメリットとデメリットを把握し、適切なM&A戦略の立案と対応を行うことが重要です。

譲受側のメリット

譲受側には、以下のようなメリットがあります。

  1. 事業の拡大:M&Aによって、事業を短期間で拡大し、市場シェアを確保することができます。
  2. 人材・技術の獲得:M&Aによって、優秀な人材や独自の技術を持つ企業を取り込むことができます。
  3. 経営体制の強化:譲受した企業の経営資源を活用し、自社の経営体制を強化することができます。
  4. 事業リスクの分散:M&Aによって、事業領域や営業エリアが多様化し、事業リスクを分散させることができます。

譲渡側のメリット

譲渡側には、以下のようなメリットがあります。

  1. 資金調達:M&Aにより大手企業の傘下に入ることで、資金調達が容易になり、経営の安定化や成長戦略への投資が可能となります。
  2. ビジネスノウハウの獲得:譲受企業のビジネスノウハウを活用し、自社事業の強化を図ることができます。
  3. 組織改革の促進:M&A後、グループ会社とのシナジー戦略の実施のために社内体制の再構築を行うことで、生産性向上や経営効率化につながります。
  4. 後継者問題の解決:M&Aによって、譲渡企業の事業承継問題の解決を図ることができます。

デメリットとトラブルの対処法

M&Aにはデメリットも存在し、以下のような問題が生じることがあります。

  1. 企業文化の相違:異なる企業文化の統合が難しい場合があります。対応策としては、事前のコミュニケーションを重視し、相互理解を深めることが重要です。
  2. 人材の流出:M&A成立後、従業員の大量離職が発生するケースがあります。具体的には、旧経営者と人的なつながりが深かった年配の社員や役員、大きな経営方針の変更や急激な統合施策についていくことができない社員の離職などがあり得ます。譲渡企業での人材流出は、事業運営に大きな支障をもたらすことになり、しいてはM&Aの失敗につながりかねませんので、M&A後の統合戦略は慎重かつ時間をかけて進める必要があります。
  3. 業績悪化:M&A直後に業績悪化するケースがあります。この場合、M&A計画で狙ったシナジー(相乗効果)が期待できないだけでなく、譲受企業の業績も悪化し、共倒れしてしまう可能性もあります。M&A実施後の譲渡企業の業績見込みについては、業績悪化のシナリオも想定に織り込んだうえでデューデリジェンス(買収監査・企業調査)を行うことにより、予め想定することは可能です。また、業績悪化時の旧経営陣の責任や保証などを最終契約書に記載する、M&A後も旧経営者をしばらくの期間続投させるなども有効な対策といえます。

建設業M&Aの注意点とリスク

建設業M&Aには多くの注意点とリスクが存在します。まず、事業の規模や特性に応じて適切なお相手とのM&Aを検討することが重要です。また、土木や建築、不動産などの業務範囲によってもシナジーがあるお相手かどうか確認すると良いでしょう。譲受検討時に譲受企業は、譲渡企業の財務状況や営業実績などを把握し、適切な評価額を算定する必要があります。

さらに、最終契約内容の確認を行い、適切な労働条件や取引条件を確保することも求められます。また、業界動向や地域の市場状況を把握し、競合他社との差別化を図ることも大切です。その他のリスクとしては、事業承継や人材の確保、業務の効率化やコスト削減など、M&A後の経営課題への対応が挙げられます。

買収後の経営統合の課題

M&A後の経営統合作業では、さまざまな課題に直面します。まず、両社の業務内容やシステムの統合が挙げられます。これには、業務プロセスの見直しやシステム開発、運用の最適化などが含まれます。また、両社の人材育成や雇用条件の統一も必要であり、適切な研修や労働環境の整備が求められます。

さらに、企業文化や経営方針の統一が難しい場合、経営効率の低下や組織の軋轢が発生することもあります。これらの課題を解決するためには、経営陣のリーダーシップや適切な情報共有、譲受側と譲渡側がお互いに協力して統合作業を実施する体制の整備が不可欠です。

経営の相性と文化の違い

建設業界でのM&Aも、M&A手法としては他業界と同業に株式譲渡が一般的です。そのため、M&A後は、譲受企業が親会社、譲渡企業がその子会社として、あくまでも別会社として存在するカタチとなります。とはいえ同じグループ会社になりますので、経営の相性や文化の違いは、建設業M&Aで特に重要となる要素です。

企業文化は、組織の価値観や行動パターンを決定づけるため、両社の文化の違いが大きい場合、経営統合や従業員の受け入れが難しいことがあります。また、経営陣同士の信頼関係も、M&A成功のポイントであり、相互の理解や協力がなければ、経営統合がスムーズに進まないことがあります。このような問題を避けるためにも、事前に十分なリサーチや対話を行い、双方の価値観や経営方針の適合性を確認することが不可欠です。

M&Aに必要な法令対応と手続

M&Aには、許認可や法令への適切な対応や手続きが求められます。まず、譲受側と譲渡側の双方に関わる手続きについて正しく理解し、適切なタイミングで履行することが求められます。これには、各種契約書の作成や許可申請などが含まれ、税務や労務に関する手続きも重要であり、適切な申告や支払いを行う必要があります。さらに、M&A後の企業の運営や管理において、各種法令や規則の遵守が求められます。

M&Aにおける契約手続と法務

事業の拡大や事業領域の多様化を目指す企業にとって、M&Aは重要な経営戦略の一つです。特に建設業界では、土木、建築、電気設備など多岐にわたる業務を扱うことから、専門性を持った人材や技術を獲得するためにM&Aが積極的に行われています。

積極的にM&Aに取り組むにあたっては、契約手続きなどの対応が重要なポイントとなります。また、各企業の財務状況や評価額を精査し、適切な取引条件を設定したり、売却や譲渡に関する契約内容や規定に従って適切に運営を引き継いたりする必要があります。

このようにM&Aを円滑に進めるためには、専門の支援サービスやM&A仲介業者の活用が有効です。M&Aの専門家は、事業承継や企業間取引のノウハウを持ち、適切なアドバイスやサポートを提供してくれます。無料相談も提供されていることが多いため、まずはM&Aの専門家に相談をしてみると良いでしょう。

建設業M&Aの今後の展望

建設業界では、様々な課題が深刻化しているため、M&Aを通じて課題解決を図っていくことが想定されます。また、大手企業と中小企業の協力関係の強化や地域内での互助・支援体制の構築が、M&Aを通じて行われることにより、業界全体の活性化や効率化につながることが期待されます。

建設業界のM&Aでは、地域密着型や中小規模の譲渡企業が多いため、適切な相手を見つけることが重要なポイントとなります。M&Aを行う際は、適切な評価や契約が重要ですが、同時に譲渡会社の地域での信用や実績がお相手探しの重要な要素となります。

IoTやAIの導入による変化

建設業界においては、IoTやAIの導入が進み、効率化や生産性向上に大きな変化が期待されています。また、建設現場でのデータ収集や分析が容易になり、労働力不足を補いつつ、品質や安全性の向上が図られています。

AIやIoTの活用は、施工管理や設備管理、資材調達など業務全体にわたって効果が期待されますし、コスト削減やリスク管理の向上も見込めるため、経営面でも大きなメリットがあります。一方で、このような新技術の導入には投資や教育が必要となるため、M&Aを通じて技術力を持つ企業と連携し、イノベーションを追求することが、今後の建設業界の競争力向上につながります。

環境対策と省エネルギー化への取り組み

建設業界では、環境対策や省エネルギー化への取り組みが強化されつつあります。M&Aの活用により、省エネルギー技術や環境対策を行う企業との連携が可能となり、業界全体での変革が期待されています。

また、公共事業や入札制度においても、環境対策や省エネルギー化が求められる傾向が強まっており、企業としての競争力を維持・向上させるためには、環境に配慮した取り組みが必要となります。

今後のM&Aにおいては、環境に配慮した技術やノウハウを持つ企業との連携がポイントとなり、買収や合併を通じて環境対策や省エネルギー化に取り組む企業が増えることが予測されます。

建設業M&Aのまとめ

建設業M&Aの今後のポイントは、業界全体の競争力向上や効率化を目指して、人材や技術力を持つ企業との連携を進めることです。また、環境対策や省エネルギー化への取り組み、IoTやAI技術の活用が、建設業界における新たな価値を創出し、市場の成長につながることでしょう。M&Aを進める上では、適切なM&A相手の選定や、法務や財務面でのサポートが欠かせません。経営者や関係者は、M&Aの専門家やM&A仲介業者と連携し、効果的なM&A戦略を検討することが重要です。

業界の特色に合わせたM&Aの実現は、「みつきコンサルティング」にお任せください。経営コンサルティング経験者が数多く在籍する当社なら、対象企業の詳細な事業分析を実施したうえで、貴社の課題解決を見込める候補先を紹介いたします。税理士法人グループであることから、M&Aにつきものの相続対策もワンストップで対応可能です。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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