会社売却の希望価格はどう決める?計算方法・高く売る秘訣を解説

会社売却の希望価格をどう設定すべきか悩む譲渡オーナーは少なくありません。一般的には「時価純資産+営業利益の2〜5年分」が目安ですが、業種や将来性で大きく変動します。本記事では、プロが実践する企業価値の算定方法から、税金・手数料を差し引いた「手残り」を最大化する戦略まで、10年以上の経験に基づき徹底解説します。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」
そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績にもとづく無料相談でお応えします。本格的な検討前の情報収集だけでもかまいません。まずはお話をお聞かせください。

会社売却の希望価格を決める際の基本的な考え方

会社売却において、譲渡オーナーが最初に直面する壁が「いくらで売りたいか」という希望価格の設定です。これは単なる個人の願望ではなく、買い手である譲受企業が納得できる「客観的な根拠」に基づいている必要があります。

理論価値と市場価格の違い

企業の価値は、決算書から算出される「理論上の数値」だけで決まるわけではありません。市場の需要と供給、さらには譲受企業とのシナジー効果によって、最終的な譲渡価格は変動します。

実務上、譲渡オーナーの「思い入れ」が価格に反映されすぎると、相場から大きく乖離し、成約が難しくなるケースを多く見てきました。まずは、市場で一般的に使われている計算式を知り、自社の立ち位置を把握することが成功への第一歩です。

中小企業のM&Aで最も使われる「年買法」とは

中小企業の会社売却において、最も簡便で広く活用されているのが年買法(ねんがいほう)です。この手法は、会社の今の静的価値(純資産価額)に、将来の稼ぐ力(のれん)を足すという非常にシンプルな考え方に基づいています。計算式は以下の通りです。

株式価値 = 時価純資産 + 営業利益 × 2〜5年分

ここでいう「2〜5年分」という期間は、その事業が将来にわたってどれだけ安定して利益を出し続けられるかという「期待値」を表しています。

会社売却の希望価格の相場をシミュレーション

具体的に、年買法を用いて希望価格の目安を計算してみましょう。自社の決算書を手元に用意して、以下の例と照らし合わせてみてください。

具体的な計算事例

例えば、以下のような財務状況の会社があるとします。

  • 時価純資産:1億5,000万円
  • 年間の実質営業利益:3,000万円
  • 業界の成長性:標準的(3年分を計上)

この場合、のれん価値を3年分で見るとすると、計算式は以下のようになります。

株式価値 = 1億5,000万円 +(3,000万円 × 3年)= 2億4,000万円

希望価格の相場早見表

時価純資産と営業利益の組み合わせによる、一般的な希望価格の目安をまとめました。

時価純資産年間営業利益利益の倍率(年)希望価格の目安
5,000万円1,000万円2〜5年7,000万〜1億円
1億円3,000万円2〜5年1.6億〜2.5億円
2億円5,000万円2〜5年3億〜4.5億円
5億円1億円2〜5年7億〜10億円

※上記はあくまで年買法による簡易的な目安です。

専門家の視点|なぜ営業利益をベースにするのか

実務では、単なる決算書の営業利益ではなく修正営業利益(正常収益力)を用います。中小企業の場合、オーナーの役員報酬が相場より高かったり、私的な経費が混ざっていたりすることがあります。これらを適正な水準に引き戻して計算し直すことで、会社本来の「真の稼ぐ力」を算出するのです。この補正作業こそが、希望価格を正しく設定するための鍵となります。

まずは、自社の価値が現状でどの程度なのか、客観的な数値を知ることが重要です。みつきコンサルティングが提供する譲渡価格算出ツールを活用すれば、簡単な入力で概算を確認できます。

企業価値を評価する3つの専門的アプローチ

年買法はあくまで簡易的な手法であり、取引金額が大きくなる場合や成長性の高いベンチャー企業などの場合は、より専門的な企業価値評価(バリュエーション)が行われます。下表の通り、3つのアプローチから評価を実施します。

評価手法内容
コストアプローチ(資産に着目)会社の「純資産」をベースに価値を測る手法です。時価純資産法では、資産と負債を全て時価で評価し直し、その差額を価値とします。客観性が高く、納得感を得やすいのが特徴です。

【メリット】
実態を把握しやすく、清算価値としての最低ラインを明確にできます。

【デメリット】
将来の収益性やブランド力などの無形資産が反映されにくい点があります。
インカムアプローチ(将来の利益に着目)会社が「将来生み出すキャッシュフロー」をベースにする手法です。DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)では、将来の予測フリーキャッシュフローを現在の価値に割り引いて計算します。

【メリット】
将来の成長性や独自の強みを最も理論的に価格へ反映できます。

【デメリット】
事業計画の予測に主観が入りやすく、前提条件一つで価格が大きく変動します。
マーケットアプローチ(市場価格に着目)「似たような他社の取引価格」を参考にする手法です。類似会社比較法(マルチプル法)では、同業種の上場企業の株価指標(EBITDA倍率など)を参考に算出します。

【メリット】
実際の市場データに基づいているため、客観性が極めて高いです。

【デメリット】
比較対象となる類似企業が存在しない場合には適用できません。

会社売却の希望価格を左右する「変動要因」

同じ利益水準の会社であっても、希望価格が大きく跳ね上がることもあれば、逆に買い叩かれてしまうこともあります。価格に影響を与える主な要因を整理しましょう。

価格のプレミアム(上乗せ)要因

以下のような要素があると、年買法で算出された金額以上の価格がつく可能性があります。

  • 独自の強み(無形資産): 特許技術、強力な販売網、優秀な人材の定着、長年の信頼に基づく顧客基盤。
  • 市場環境: DXやAI、環境対応など、成長性の高い業界に属していること。
  • シナジー効果: 譲受企業が自社を取り込むことで、売上拡大やコスト削減が劇的に進むと見込まれる場合。

価格の減額(ディスカウント)要因

逆に、以下のような要素は価格を下げる、あるいは破談の原因となります。

  • 簿外債務のリスク: 未払残業代、退職給付引当金の不足、訴訟リスク。
  • 属人性の高さ: オーナー社長がいなくなると回らない組織体制。
  • コンプライアンスの不備: 許認可の更新忘れや、契約書の未整備。

実務の知見:タイミングが価格の5割を決める

M&Aにおいて「タイミング」は非常に残酷です。業績が最高潮の時に売却を検討すれば、複数の譲受企業が競い合い、希望価格を上回る条件が出ることも珍しくありません。一方で、赤字転落後や業界が冷え込んだ時期に相談をいただいても、交渉の余地は限られてしまいます。「まだ売らなくても大丈夫」という余裕がある時期にこそ、準備を始めるべきです。

手残りを意識した「希望価格」の設定戦略

会社を売却した代金が、そのままオーナーの口座に残るわけではありません。最終的な「手残り」を考えるには、税金と諸費用の考慮が不可欠です。

株式譲渡にかかる税金(個人オーナーの場合)

最も一般的な「株式譲渡」の手法を用いた場合、キャピタルゲイン(譲渡所得)に対して一律の税金がかかります。

  • 税率:20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
  • 計算式:(売却価格 - 取得費 - 譲渡費用)× 20.315%

※ 取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費として計算することも可能です。

M&A仲介手数料の構造

専門家に依頼する際の手数料も、重要なコストです。一般的に「レーマン方式」という、取引金額に応じた成功報酬体系が取られます。

取引金額(基準額)手数料率
5億円以下の部分5%
5億円超〜10億円以下の部分4%
10億円超〜50億円以下の部分3%

※その他、着手金や中間金が発生する仲介会社もあります。

株式譲渡と事業譲渡の比較

手法によっても手残りは大きく変わります。

比較項目株式譲渡事業譲渡
受取手株主(オーナー個人)会社(法人)
主要な税金所得税・住民税(約20%)法人税(約30%)+消費税
特徴手続が簡易で税率が低い特定の事業だけ売却可能。二重課税のリスクあり

希望価格で会社を売却するための5つのステップ

希望価格を実現し、納得のいくM&Aを成功させるためには、5つの手順を順序立てて実行することが重要です。下表の通り、事前準備から最終調査まで段階的に進めます。

手順内容
1. 自社の棚卸しと磨き上げ(事前準備)決算書の数字を整えるだけでなく、業務フローのマニュアル化や、不要な資産(遊休土地や保険など)の整理を事前に行います。これにより、譲受企業のデューデリジェンス(買収監査)におけるマイナス査定を防げます。
2. 適切なパートナーの選定自社の業界に精通し、幅広いネットワークを持つM&A仲介会社を選びます。単に大手だからという理由ではなく、担当者の経験値や「自社の強みを正しく理解してくれるか」が重要です。
3. 譲受企業候補への訴求資料の作成財務数値の裏側にある「強み」を可視化した資料(企業概要書)を作成します。なぜ自社には価値があるのか、譲受企業にとってどのようなメリットがあるのかを論理的に説明できるようにします。
4. 複数の買い手との交渉一社だけに絞らず、複数の譲受企業と並行して交渉を進めることで「競争原理」が働きます。これにより、希望価格に近い、あるいはそれ以上の条件を引き出しやすくなります。
5. デューデリジェンス(DD)への誠実な対応交渉が終盤に差し掛かると、譲受企業による詳細な調査が入ります。ここで新たなリスクが見つかると、最終段階で価格を下げられる(減額交渉)要因となります。情報は隠さず、誠実に開示することが信頼関係の構築につながります。

会社売却の希望価格に関するFAQ

ここでは、希望価格で会社を売却したい経営者からの質問と回答をまとめました。

Q:赤字企業でも希望価格をつけて売却できますか?

可能です。現時点での営業利益がマイナスでも、優れた技術や特許、稀少な許認可、あるいは譲受企業の既存事業との大きな相乗効果が見込める場合、純資産価値以上の価格で売却できるケースがあります。この場合、マーケットアプローチやインカムアプローチを用いて価値を証明していく戦略をとります。

Q:希望価格はいつ、どのように伝えればよいですか?

最初の段階では「幅を持たせて」伝え、詳細な資料開示やトップ面談を経て、具体的な根拠とともに提示するのが一般的です。最初から高すぎる固定価格を提示すると、検討さえしてもらえないリスクがあります。交渉の推移を見極めるアドバイザーの助言が欠かせません。

Q:役員借入金がある場合、売却価格にどう影響しますか?

役員借入金は、実務上は「自己資本」に近い扱いとして時価純資産に加算して評価されることが多いですが、売却前に整理しておくのが基本です。借入金としてそのまま残すと、譲受企業にとっては「負債」として映るため、必須ではありませんが、事前に返済するか、債権放棄などの対策が打てると理想的です。

まとめ|会社売却の希望価格を最大化するために

会社売却の希望価格は、単なる計算上の数字ではなく、オーナーが築き上げてきた事業の「価値」そのものです。しかし、その価値を正当に評価してもらうには、適切な算定方法の理解と、周到な準備、そして戦略的な交渉が欠かせません。まずは年買法などの簡易的な手法で相場を知り、そこから「自社にしかない強み」をどう価格に乗せていくかを考えていきましょう。税金や手数料を含めた「手残り」の最大化を意識することで、リタイア後の生活や次なる挑戦の資金を確実に確保できます。

「自社の価値がいくらになるのか」「希望価格は妥当なのか」という疑問をお持ちの際は、ぜひ一度プロの視点による査定を受けてみることをお勧めします。当社は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業のM&Aに特化した実績経験が豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が多く在籍しております。希望価格での会社売却をご検討の際は、みつきコンサルティングにご相談ください。

著者

伊丹 宏久
伊丹 宏久事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人

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