M&AはMergers and Acquisitionsの略語で、会社や事業の合併と譲受を意味します。本記事では、M&Aの基本的な意味から、その種類、目的、関連する専門用語、さらには国内市場の最新動向までを分かりやすく解説し、その全体像を明らかにします。
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M&Aとは?その意味と略語の成り立ち
近年、M&Aという言葉を耳にする機会が増えていると感じる方も多いのではないでしょうか。M&Aを簡潔に説明すると、会社や事業を売買する行為のことです。具体的には、株式譲渡や事業譲渡、合併といった方法を用いて、譲渡オーナーから譲受企業へ会社や事業が移転するのです。この一連の動きは、会社全体を売却するケースもあれば、特定の事業の一部だけを売却するケースもあります。
M&Aの正式名称とその略称の由来
M&Aは「Mergers and Acquisitions」という英語の頭文字を取った略語です。Mergersは「合併」、Acquisitionsは「譲受」を意味しますので、日本語に直訳すると「企業の合併・譲受」という意味になります。この略語が示す通り、企業が一体となったり、他の企業を譲受したりする行為全般を指すのです。
ただし、M&Aの実務においては、会社全体を売却する方法として「株式譲渡」が大部分を占めています。そのため、この略称が実態とは少し異なる印象を与えることもあるかもしれません。
M&Aの読み方・発音
M&Aという略語の読み方や発音について、時折ご質問をいただくことがあります。この略語は、そのままアルファベットを読んで「エム・アンド・エー」と発音します。ちなみに、正式名称であるMergers and Acquisitionsは、「マージャーズ・アンド・アクイジションズ」と読みます。少し発音しにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。
M&Aすることの意味
M&Aの基本的な意味合いは、会社や事業の売買です。譲渡オーナーにとっては会社や株式の売却となり、譲受企業にとっては企業譲受という意味合いになります。ただし、実務においては譲渡オーナーが主導権を握るケースも少なくありません。この売買を通じて、企業は新たな成長の機会を得たり、事業の再編を進めたりすることが可能になります。
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M&A関連の重要用語・略語
M&Aの分野には、その仕組みをより深く理解するために知っておくべき専門用語が数多く存在します。これらの用語の意味を把握することで、M&Aに関する会話や情報収集が格段にスムーズになります。ここでは、特に重要なM&A用語について解説します。
バイアウトの意味
バイアウト(Buyout)とは、企業や事業の経営権を取得することを意味する用語です。これは「譲受」と同義であり、会社を売却することとは異なります。多くの方が「会社を売ること」と誤解されているケースを見かけますが、これは間違いですので注意が必要です。譲受企業が対象会社の支配権を握ることを目的とした取引を指す、という認識が正しい理解へと導きます。
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MBOの意味
MBOは「Management Buyout(マネジメント・バイアウト)」を略した用語です。このMBOの意味するところは、対象会社の経営層が、自社の株式や一部の事業部門を譲受し、その支配権を自ら握ることを意味します。特に、上場企業の株式を非公開にしたい場合などにも、このMBOが活用されることがあります。現経営陣が主体となって事業の継続を図るという点で、通常のM&Aとは異なる特徴を持っています。
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LBOの意味
LBOは「Leveraged Buyout(レバレッジド・バイアウト)」の略称です。この手法の大きな特徴は、譲渡企業の信用力を活用して、譲受資金を借り入れてM&Aを実施する点にあります。つまり、譲受企業自身の信用力に課題があったとしても、譲渡企業の高い信用力があれば、金融機関から融資を受けられる可能性があるという意味合いを持っています。少ない自己資金で大きな譲受を実現できる可能性があるため、資金調達の選択肢として重要な用語です。
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デューデリの意味
デューデリは「Due Diligence(デューデリジェンス)」の略称で、「DD」とも略されます。これは、M&Aを進めるにあたり、譲受企業が譲渡対象の企業価値や潜在的なリスクを詳細に調査する手続を意味します。財務や税務、法務、事業面など多角的な視点から、専門家による精密な調査が実施されます。このDDの結果に基づき、譲渡価格の妥当性や契約条件を最終的に判断します。想定外のトラブルを未然に防ぎ、M&Aを成功に導くために不可欠なプロセスです。
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PMIの意味
PMIは「Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)」の略称です。これはM&Aが成立した後、譲受企業と対象会社の間で、経営方針や業務に関するルールなどを統合していくプロセスを意味します。M&Aは契約が締結されて終わりではなく、その後の統合が成功して初めて本当の意味での成果が生まれると言われています。M&Aの効率的な実現と、シナジー効果の最大化を目的としてPMIを設定することが不可欠です。
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M&Aに対する基本的な理解
ここではM&Aの目的や具体的なスキーム、当事者の役割、M&A市場の動向ついて、その概要を説明します。詳しく知りたい方は「M&Aとは|目的やメリット・デメリット、手法、流れを簡単に解説」をご覧ください。
M&Aの主な目的と理由
近年、M&Aが増加している背景には、企業が抱える多様な課題を解決する有効な手段であるということがあります。単なる売買という言葉の裏には、企業存続や成長戦略、あるいは再編といった、より深い意味が込められています。ここでは、中小企業のオーナー経営者がM&Aによる売却を検討する主な目的や理由について見ていきましょう。
後継者問題の解決(事業承継対策)
長年会社を経営してきた譲渡オーナーの多くが直面する悩みが、後継者不足です。子どもが他分野で活躍しているなどの理由で、会社を承継する人がいないケースは多いです。このような場合、M&Aによって会社や事業を大手資本に託すことで、事業承継の問題や後継者不足の悩みを解決することができます。この点は、中小企業におけるM&Aが増加している大きな理由です。
事業の選択と集中という目的
M&Aは、事業の選択と集中を進める上でも重要な意味を持ちます。特に、会社の一部事業を売却するM&Aの多くがこの理由によるものです。不採算部門や自社の不得意な分野を売却し、そこで得た売却代金を、好調な事業や得意分野に集中的に投資することで、会社全体のさらなる発展を目指すことが可能になります。
企業再生・再編としての譲渡の意味
赤字経営や債務超過に陥っている企業でも、M&Aが選択されるケースがあります。会社や事業を清算するには、多大なコストと労力がかかるものです。そのような状況でM&Aによる譲渡が実現すれば、清算に伴う負担を軽減できる可能性も出てきます。ただし、当然ながら赤字や債務超過の対象会社を譲受企業へ売却することは、簡単な手続ではありません。この点は、譲渡オーナーにとって非常に難しい判断が求められる局面と言えるでしょう。
M&Aの種類と手法
M&Aには、その目的や対象に応じて様々な種類や手法が存在します。主に、会社全体を売却する場合と、事業の一部を売却する場合に分けられます。どのような方法を選ぶかは、譲渡オーナーの希望や譲受企業の戦略によって大きく異なります。専門家とよく相談して、最も適切な方法を選択しましょう。
会社全体を譲渡する場合のM&Aの意味
会社全体を譲渡するM&Aの手法としては、主に株式譲渡、合併、株式交換・移転などがあります。なかでも、M&A案件のほとんどが株式譲渡によって会社全体を売却するケースになります。株式譲渡では、譲渡オーナーである株主は株式の譲渡代金を受け取り、経営から退きます。一方、譲受企業は対象会社のすべての株式を取得することで、その経営を承継することになります。シンプルながらも、経営権が完全に移転するという意味で最も一般的な手法です。
事業の一部を譲渡する場合の意味
会社が複数の事業を展開している場合、その一部だけを売却するM&Aも行われます。この場合の手法としては、事業譲渡や新設分割+株式譲渡、吸収分割などが挙げられます。特に、新設分割で一部の事業を切り離して別会社化し、その新会社(または旧会社)の株式を譲渡する方法は、法律関係が比較的明確で分かりやすいとされています。この方法では、譲渡オーナーは株式の譲渡代金を受け取り、譲受企業は譲渡対象事業を持つ会社の全株式を取得して経営を行います。
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M&Aにおける当事者の役割
M&Aは、譲渡オーナーと譲受企業、双方にとって大きな決断を伴うものです。それぞれがどのような役割を担い、どのような手続を進めるべきかを知ることは、M&Aを円滑に進める上で不可欠です。
譲渡オーナーの主な役割
M&Aを検討する譲渡オーナーがまず行うべきは、会社や事業の価値を概算することと、譲渡先を選ぶことです。譲渡価格は安すぎれば損をしてしまいますし、高すぎれば譲受企業が見つからないため、この価値算定は非常に難しい問題です。会社や事業に「相場」というものは存在しないため、個別の事情に基づいて一件ずつ価格を算定する必要があります。財務に強いM&A仲介会社と相談しながら、妥当な価値を見極めることが肝要です。
譲渡先を選ぶことの重要性と譲渡オーナーが気にすること
M&Aでは譲渡オーナーが主導権を握ることがあり、その場合、複数の譲受企業候補の中から、ご自身で承継先を選ぶことができます。長年育ててきた会社や事業を、本当にこの譲受企業に任せて良いのかを慎重に見極めます。特に、会社の理念や方針を理解してくれるか、従業員の雇用を守ってくれるかといった点は、多くの経営者が気にされるポイントです。譲渡価格だけでなく、心理的な抵抗(例えば長年のライバル企業への譲渡)も考慮し、多少安くても他の譲受企業を選ぶという選択肢もあり得ます。
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譲受企業が重視するデューデリジェンス
M&Aの手続の中で、譲受企業が最も気にかけるのは「本当にその対象会社が提示された価格通りの価値があるのか?」という点です。対象会社に潜在的な弱みや欠点、あるいは隠れた負債があるリスクを避けるため、譲受企業はデューデリジェンス(DD)による詳細な調査を行います。DDでは、譲受企業が会社を買う前に、財務税務・法務労務・ビジネスなど、複眼的に譲渡企業を詳細に調査します。
デューデリジェンスに対する譲渡オーナーの対応
譲渡オーナーとしては、譲受企業が行うDDに誠実に対応する必要があります。多岐にわたる質問への回答や資料の提出を求められることになります。最終的な売却がまだ確定していない段階で、根掘り葉掘り調査されることに抵抗を感じる譲渡オーナーもいるかもしれません。しかし、譲受企業にとってDDは極めて重要な手続であり、これに譲渡オーナーが誠実に対応しなければ、M&Aを成功に導くことは困難となるでしょう。
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日本におけるM&A市場の現状と今後
日本におけるM&Aは、近年非常に活発化しており、今後もその傾向は続くと見込まれています。M&A市場の動向を理解することは、企業の戦略を考える上で不可欠な意味を持っています。ここでは、なぜM&Aが増えているのか、そして市場の具体的なトレンドについて見ていきましょう。
なぜM&Aが増加しているのか
国内のM&Aが今後も増加する、あるいは高水準で推移すると見込まれる背景には、いくつかの重要な理由があります。例えば、2024年には日本国内のM&A件数が過去最多の4700件に達したこと、2025年もそれを上回るペースで増加していることは、その活発さを如実に示しています。
特に中小企業でのM&Aが増加している背景には、後継者問題の深刻化、国内市場の縮小による将来の不透明感、労働力不足、従業員の高齢化、設備の老朽化といった多様な課題が挙げられます。これらの課題に対する有効な解決策として、M&Aが注目されているのです。
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M&A市場のトレンドと予測
最近のM&A市場には、主に三つの傾向が見られます。一つ目は、中小企業や個人を対象とした小規模なM&Aの急増です。これは、前述の後継者問題などが深く関わっています。二つ目は、大企業による海外企業とのM&Aの増加です。そして三つ目は、譲渡価格の増加です。
帝国データバンクの調査によると、60歳以上の経営者のうち約6割が将来的に廃業を予定しており、その約3割が「後継者不在」を理由に挙げています。黒字経営でも後継者がいないために廃業を予定している企業にとって、事業承継の手段としてのM&Aは、非常に効果的な解決策となるでしょう。
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M&Aの意味・読み方のまとめ
M&Aは「Mergers and Acquisitions」の略語であり、「合併と譲受」という意味を持つ、会社や事業の売買を指します。その多様な手法や目的、そして関連する用語の意味を正確に理解することは、大事です。
当社は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した実績経験が豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が多く在籍しております。M&Aをご検討の際は、みつきコンサルティングにご相談ください。
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著者

- 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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