会計事務所のM&A|譲渡側・譲受側のメリット、注意点、価格相場

多くの業界と同じく、会計事務所においても後継者不足に関する問題が増えてきています。この記事では、会計事務所の現状やM&Aを行うメリット、売却相場などについて解説します。会計事務所を運営している人は参考にしてください。

税理士の高齢化が進んでいる

会計事務所を運営している、あるいは勤務している税理士は、年々高齢化が進んできています。ここからは、平均年齢や高齢化が進んでいる理由について解説します。

税理士の平均年齢は60代

日本税理士会連合会が発表した2014年のデータによると、60歳以上の税理士は全体の54%超を占めています。60代の人数は約30%となっており、次いで50代と40代が多い傾向です。このデータからも、税理士の高齢化が進んでいることがわかります。

参考:日本税理士連合会「データで見る税理士のリアル」

税理士の平均年齢が高い理由        

税理士の平均年齢が高い主な理由は、定年退職がないためです。65歳を超えても体力が続く限り働き続けられるため、その分平均年齢が高くなってしまう傾向があります。高齢の税理士が代表の事務所では、後継者不足が問題になっています。後を継がせたい子どもや孫がいても、税理士試験に合格できなければ税理士にはなれないため、後継者不足は解決しません。

会計事務所M&Aでの譲渡側のメリット

ここからは、会計事務所におけるM&Aの譲渡側のメリットについて解説します。

後継者問題を解決できる

M&Aを進める譲渡側のメリットは、M&Aの実現によって後継者問題が解決できる点です。税理士資格を持つ譲受側に会計事務所を引き継ぐことで、事務所の維持が図れます。しかし、M&Aを実施する際も、譲受側が高齢の可能性がある点は課題として残ります。後継者問題を解決したい場合には、できる限り若い税理士を抱えている譲受側を選ぶのも1つの方法でしょう。

従業員の雇用を維持できる

従業員の雇用を維持できる点も、会計事務所がM&Aを行うメリットです。もし運営している会計事務所をたたむとなれば、雇用している従業員は解雇しなければなりません。

しかし、M&Aを実現すれば、従業員の雇用を守れる可能性が生まれます。M&A後に従業員の雇用が維持されるか否かについては譲受側の判断となるため、契約締結前に交渉を重ねておきましょう。

クライアントを引き継げる

会計事務所をたたむ場合、それまで依頼をしてくれたクライアントは新たな会計事務所を探す手間が発生します。しかし、M&Aを実現し、そのままクライアントを引き継ぐことができれば、信頼を寄せてくれてきたクライアントに対しても筋を通せるでしょう。さらに、譲渡側の税理士がM&A後も譲受側に残れれば、変わらずサポートを続けられます。

経営の安定化・事業の促進が図られる

譲受側が大手である場合は、経済力をバックとしたシナジー(相乗効果)を生むことで、事業が安定・促進されます。豊富な経営資源や知名度、ブランド力を得られる点は、譲渡側にとって大きな魅力となるでしょう。そのなかでも、財務面での懸念が薄くなる点は、大きなメリットとして挙げられます。

会計事務所M&Aでの譲受側のメリット

ここからは、会計事務所におけるM&Aの譲受側のメリットについて解説します。

新規エリアに進出できる

譲受側はM&Aを実現することで、これまでに対応できなかったエリアの案件も受注できるようになります。エリアが広くなることは、そのまま売上拡大にもつながるでしょう。また、リスクなく業務拡大できる点は、譲受側が得られる大きなメリットです。

優秀な人材を獲得できる

M&Aを実現すれば、譲渡側が抱えている税理士や従業員をそのまま雇用できます。新たに雇用する税理士・従業員が退職しないよう十分な配慮を持って迎えましょう。税理士の資格は難関資格であり、専門性を持っている人材はとても貴重です。将来的にさらなる事業拡大を目指す際には、優秀な人材の確保は優先的に進めておくとよいでしょう。

事業の幅を広げられる

会計事務所のなかには、コンサルティングや経営分析を得意としている事務所もあります。自社にはない得意分野を持つ会計事務所をM&Aすることで、新たなノウハウを手に入れることが可能です。ノウハウや人材をM&Aによって確保することで、今まで取り組んでいなかった事業を始められる体制が整います。

会計事務所M&Aの流れ

会計事務所における一般的なM&Aスキームは、下記のとおりです。

  1. 希望条件の整理
  2. 譲受側とのマッチング
  3. 契約の交渉
  4. デューデリジェンス(買収監査・企業調査)
  5. 最終合意

契約の交渉を進め、デューデリジェンス(買収監査・企業調査)が実施された後に互いに問題がなければ最終合意となります。

会計事務所がM&Aを進める際の注意点

ここからは、会計事務所がM&Aを進める際の注意点について解説します。

株式譲渡によるM&Aはできない

会計事務所がM&Aをする際には、株式譲渡の形はとれません。個人の税理士が運営している会計事務所は法人ではないケースがほとんどです。そもそも株式会社ではないため、株式譲渡によるM&Aは制度上できないのです。代わりの一般的な手法としては、事業譲渡が用いられます。

M&Aの準備は入念に進めなければならない

M&Aの実現には一定の時間がかかるため、計画を立てて進めていくことが何よりも重要です。相手探しからデューデリジェンス(買収監査・企業調査)の実施にいたるまで、やるべきことは数多くあります。M&Aを検討する際には、まずは現状整理を入念に行い、実情や目的に沿った事業承継計画を立てるのがよいでしょう。

クライアントとの契約が解消される可能性がある

M&Aを実施した場合、譲受側とクライアントとの契約は巻き直しとなります。この場合、巻き直しのタイミングで譲受側とクライアントの契約が解消される可能性が少なからずあります。クライアントが困らないよう、譲受側とクライアントをつなぐ役割も譲渡側の重要な役割です。双方の橋渡しを丁寧に進めていきましょう。

会計事務所の売却価格相場

会計事務所の売却価格相場は、1年間の顧問報酬を基準に算出することが多いように思います。この場合、年間顧問報酬が3,000万円の場合は、M&Aの金額も3,000万円前後となります。その他、(正常)営業利益の3~6年分を基準とする計算方法も一般的です。営業利益が1,000万円の場合は、おおよそ3,000万円~6,000万円が売却価格相場となります。

実際の相場価格はデューデリジェンス(買収監査・企業調査)によって変わるため、事前準備を十分に整えておきましょう。

時価純資産法・DCF法で算出するケースも

コンサルティングや経営分析を業務の一部としている会計事務所が譲受側となる場合は、時価純資産法やDCF法で算出した企業価値を基準として売却価格を決めるケースもあります。

時価純資産法は、企業の価値を評価する方法の1つです。この方法では、企業が所有する全ての資産の市場価格を合計し、それから全ての負債を差し引いた金額を計算します。

DCF法は、未来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて計算する方法です。DCF法は将来のキャッシュフローの予測に基づいているため、特に成長産業や長期的な投資計画を持つ企業の評価に有効です。

会計事務所でM&Aを成功させるポイント

ここからは、会計事務所でM&Aを成功させるポイントについて解説します。

売上高を1,000万円以上にする

会計事務所でM&Aを成功させるポイントの1つは、売上高を1,000万円以上にすることです。会計事務所のM&Aは、売上高1,000万円〜1億円の案件が比較的成立しやすい傾向にあります。

一定以上の売上高を確保している会計事務所であれば、譲受側からのニーズが高いことが見込めるでしょう。売上が足りていない場合は、まず1,000万円以上の売上獲得を目指すとスムーズにM&Aの相手を見つけられます。

従業員や顧客への説明を丁寧に行う

従業員や顧客への説明を丁寧に行うことも、M&Aを成功させるポイントです。

会計事務所を支える従業員やお世話になってきたクライアントに対しては、M&A後の待遇やM&Aに至った経緯などを詳しく説明する義務があるでしょう。譲受側がM&A後もスムーズに経営を進めていくために、詳しい説明は重要な取り組み事項の1つです。他の業界と同様に会計事務所の業界においても、信頼やつながりが重要である点はしっかり押さえておきましょう。

専門家に相談する

M&Aを成功させたいなら、専門家への相談が確実な方法です。専門家の代表例としては、M&A仲介会社やファイナンシャル・アドバイザー、戦略コンサルタントなどが挙げられます。専門家に依頼をすれば、M&Aの締結をスムーズに進められるだけでなく、有利な条件を引き出せる可能性も高くなります。

会計事務所でのM&Aの活用例

会計事務所を運営している税理士がM&Aを活用する具体的な例としては、代表の立場を降りたいケースが挙げられます。M&Aを実現すれば、代表ではなく一介の税理士として活動を続けることが可能です。また、後継者不足を解消したい場合や、経営難の状態において案件を安定的に受注して従業員を守りたい場合においても、M&Aは効果的です。

会計事務所でのM&A事例

ここからは、会計事務所でのM&A事例を簡単に紹介します。下記のような年間売上や事業所歴を持った譲渡主がM&Aを成功させています。

 年間売上(予想売却額)事業所歴クライアント数職員数M&Aにいたる背景
事例13,000万円約30年50件4名後継者不在
事例26,000万円約35年60件6名代表を辞したい
事例33,000万円約30年45件4名サービスを拡大したい

譲受側についても、規模や事業歴はさまざまです。金銭面やM&A後の方針など、互いの条件が合致した際にM&Aは成立しています。

会計事務所M&Aのまとめ

この記事では、会計事務所の現状やM&Aを行うメリット、売却相場などについて解説しました。会計事務所を運営していてM&Aを検討している人は、あらかじめ基本的な知識を身につけたうえで、少しでも有利な条件でM&Aを進めていきましょう。

M&Aに関するご相談は、みつきコンサルティングにお任せください。みつきコンサルティングは、税理士法人グループであるためM&A(第三者への承継)ありきの提案ではなく、事業所内承継、親族内承継など複数の選択肢のメリット・デメリットを比較した提案が可能です。

当社も会計事務所であり、業界のことも詳細に知っているため、スムーズな承継のお手伝いができます。M&Aに関することはいつでもお任せください。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

【無料】資料をダウンロードする

M&Aを成功させるための重要ポイント

M&Aを成功させるための
重要ポイント

M&Aの事例20選

M&Aの事例20選

事業承継の方法とは

事業承継の方法とは

【無料】企業譲渡のご相談 
簡単30秒!最適なお相手をご提案

貴社名*
お名前*
電話番号*
メールアドレス*
所在地*
ご相談内容(任意)

個人情報の取扱規程をご確認の上、「送信する」ボタンを押してください。

買収ニーズのご登録はこちら >

その他のお問い合わせはこちら >