デューデリジェンスのチェックリスト作成方法と分野別の主要項目

デューデリジェンスとは、M&Aにおける適正な買収価格や簿外債務の有無などを事前に調査するプロセスです。この記事では、デューデリジェンスのチェックリストの作成方法と、各分野における主要なチェック項目、効果的な活用法を詳しく解説し、買収を成功させるための実践的な知識を提供します。

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デューデリジェンスにおけるチェックリストの重要性

デューデリジェンスは、譲受企業が対象企業の経営状況を詳しく調査し、譲受の是非を検証するために行われる重要なプロセスです。この調査は広範囲にわたり、確認すべき項目や資料が多岐にわたるため、重要なポイントを見落とさず効率よく進めるためには、チェックリストの活用が不可欠です。

確認事項の抜け漏れ防止

チェックリストを網羅的に活用することで、デューデリジェンスにおける調査項目の見落としを防ぐことができます。事前に整理された項目に沿って進めるため、確認すべき事項が明確になり、調査の質を高めることに繋がります。

調査進捗の可視化

チェックリストを用いることで、調査の進捗状況が一目で分かり、チーム内の情報共有がスムーズになります。これにより、複数の担当者が関わるデューデリジェンスにおいても、全体の状況を把握しやすくなります。

進行の効率化

事前に整理されたチェックリストに基づいて資料収集や調査を進めることで、不要なやり取りが削減され、プロセス全体の効率化が図られます。これにより、デューデリジェンスにかかる時間とコストを最適化することが可能になります。

品質の均一化

チェックリストは、担当者の経験値に左右されずに一定以上の品質でデューデリジェンスを実施することを可能にします。統一された基準に沿って調査を進めることで、調査全体の品質を一定水準に保つことが期待できます。

チェックリスト作成時のポイント

デューデリジェンスを効率的に進めるためには、事前に適切なチェックリストを作成しておくことが非常に重要です。実用的なチェックリストを整備するためのポイントを理解し、準備を進めることが求められます。

目的と範囲の明確化

M&Aにおける譲受の目的やリスクの焦点は、案件ごとに異なります。事業承継や新規事業拡大など、譲受の具体的な目的に応じて、優先的に盛り込むべき重要項目を整理し、チェックリストに反映させる必要があります。

適切な対象期間の設定

資料収集や調査のスケジュールを立てやすくするためには、対象期間を明確に設定することが重要です。一般的には、直近3年から5年間の業績や税務申告内容をカバーすることが多く、これにより過去の傾向を把握することができます。

責任の役割分担の明確化

チェックリストには、誰がどの項目を担当し、どの資料をいつまでに用意するのかなどを具体的に反映させるべきです。これにより、プロジェクト全体の見通しが立ちやすくなり、各担当者の役割と責任が明確になります。

分野別デューデリジェンスと主要チェック項目

デューデリジェンスには、主に財務・税務、法務、事業、人事、技術の5つの種類があります。それぞれのデューデリジェンスにおいて、チェックリストの調査内容は異なり、専門的な視点からの確認が求められます。

財務デューデリジェンス

財務DDでは、対象企業の財務状況を正確に把握し、簿外債務や粉飾決算、資金繰りリスクなどを見逃さないことが重要です。これは譲受価格の算定や譲受後の経営統合に大きな影響を与えるため、最も詳細な調査が行われる分野の一つです。

財務諸表の確認

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の正確性を調査し、長期的な収益推移や財務構造を把握します。試算表、科目明細、監査報告書などの補助資料も確認し、会計ソフトや試算表との整合性を検証します。特に、譲渡企業の会計処理が適切な会計基準に準拠しているかを確認します。

売上・債権関連の調査

売上計上基準や売掛金の回収状況を確認し、架空売上や過剰な売上計上の有無を調査します。回収遅延や焦げ付きリスクの程度を把握することも重要です。主要取引先への依存度や契約条件の妥当性も評価し、譲受後の収益性への影響を分析します。

費用・債務関連の確認

未計上の買掛金や不正な支払いの有無を確認し、資金繰りへの影響を把握します。販管費(人件費、広告宣伝費など)の推移を調査し、過剰計上や架空計上、必要経費と比較して適正であるかを判断します。退職給付引当金や賞与引当金なども重要なチェック項目です。

在庫・資産の評価

棚卸資産については、実在性、回転率、滞留状況をチェックし、過剰在庫や不良在庫がないかを確認します。固定資産(不動産、設備)については、資産台帳の整合性を調査し、過大・過小評価がないかを検証します。有形・無形固定資産の減価償却費が適切に処理されているかも確認します。

キャッシュフロー分析

キャッシュフロー計算書(営業、投資、財務)を分析し、営業資金の安定性や借入金返済能力の有無を評価します。余剰資金の運用状況や過去の資金繰り状況、借入残高の推移、金利負担、金融機関との取引内容も調査し、将来の資金繰りを予測します。

簿外債務の有無の調査

未計上の買掛金や借入金、帳簿に載っていない負債や役員貸付金がないかを確認します。将来の修繕費や引当金計上状況から、修繕義務や訴訟リスクなどの潜在的リスクを洗い出します。偶発債務や保証債務も重要なチェック項目です。

税務デューデリジェンス

税務DDの目的は、過去の税務申告や納税履歴、源泉徴収、繰越欠損金の有効性などを確認し、譲受後の追徴課税や税務リスクを最小化することです。税務リスクは買収価格に大きく影響する場合があります。

過去の申告・納税状況の調査

法人税、消費税、地方税の申告書における計算ミスや申告漏れ、過去の修正申告の有無を確認します。税務調査の実施状況や結果通知を把握し、同様のミスが継続していないか確認します。譲渡企業の税務コンプライアンス体制を評価します。

源泉徴収の確認

役員報酬や給与の源泉徴収の正確性を確認し、外注費などとの区分ミスがないかを検証します。外部委託や報酬支払いにおける源泉徴収義務の有無もチェックし、適切な処理が行われているかを確認します。

繰越欠損金・税額控除のチェック

繰越欠損金の残高が適切に管理されているか、期限切れがないかを確認します。中小企業向け優遇税制や税額控除の適用要件を満たしているか、計算に誤りがないかを確認し、譲受後の税務上のメリットを評価します。

地方税・固定資産税のチェック

住民税や事業税の計算根拠、税率や控除項目が正しく適用されているかを確認します。不動産や設備などの保有資産の評価が適切か、過小評価による申告漏れがないかをチェックし、固定資産税の適正性を確認します。

消費税の取扱いの確認

課税売上と非課税売上の区分に間違いがないか確認します。簡易課税制度の場合は適用要件を満たしているか、売上規模や業種判定に誤りがないかを確認し、消費税の申告状況に問題がないかを検証します。

法務デューデリジェンス

法務DDでは、社内規定、債務などのリスク、契約状況などがチェックされます。これは譲受後の法的リスクを回避するために不可欠です。

社内規定の調査

法務に関する社内規定を把握し、法律との照合を行います。法令遵守、特に無認可事業や反社会的勢力への関与、税法違反、個人情報保護法違反などにも注意を払います。

債務などリスクの調査

譲受後引き継ぐ可能性のある簿外債務(不動産、金融資産、知的資産関連)を調査し、潜在的な返済義務やリスクを特定します。訴訟や係争の有無、環境規制関連のリスクなども確認します。

契約状況

重要な取引先との契約が継続されないリスクを評価します。信頼関係が深い取引先の場合、譲受後に取引が難しくなる可能性があり、今後の経営に大きく影響する場合があるため注意が必要です。特許や商標などの知的財産権に関する契約も確認します。

事業デューデリジェンス

事業DDでは、外部環境、内部環境の分析、事業計画書や契約内容の確認が行われます。これは、譲受後の事業計画策定や事業価値評価の基礎となります。

外部環境の分析

譲受を検討している事業に対する脅威となる要素(競合、新規参入企業、主要購入者、顧客ニーズやトレンドの変化など)を分析します。市場規模、成長性、規制動向なども評価し、事業を取り巻く外部環境を総合的に把握します。

内部環境の分析

企業が提供する商品やサービス、またそのネームバリューが持つ経済的価値や市場での希少性を多角的に調査します。現時点での評価にとどまらず、今後どのような成長が見込めるか、将来的な事業拡大の余地まで重視して分析を行います。

事業計画書や契約内容

利益計画、他社との契約内容、顧客リスト、仕入れリスト、予算など、事業に関するすべての情報が必要です。営業会議の議事録や資金サイトなどの情報も活用され、事業運営の実態と将来計画の整合性を確認します。

人事デューデリジェンス

人事DDでは、従業員の数、人件費、採用費などの数値項目に加え、従業員間の人間関係や譲受企業との相性も調査されます。特に、譲受後の組織統合(PMI)を円滑に進める上で重要な情報が得られます。

人事の調査

従業員の数、部署ごとの業務内容、責任者を調査し、人事に関する基本的な情報を把握します。従業員の雇用形態、給与体系、福利厚生なども確認し、労働条件が適正であるかを評価します。

費用の調査

給与や報酬の全体額のほか、面接、求人サイト掲載、合同説明会など、採用にかかるすべての費用を調査します。退職金制度や賞与、社会保険料の負担状況なども確認し、人件費全体の実態を把握します。

人間関係の調査

従業員同士の上下関係や派閥、その他の人間関係を調査します。特に、譲受企業の従業員との相性も重要であり、人間関係がうまくいかないとコミュニケーションが取りづらくなり、業務効率に影響が出ることがあります。

技術デューデリジェンス

技術DDでは、譲渡企業が所有する技術、市場における位置、譲受企業が持つ技術との相性がチェックされます。特に、新規事業展開や事業競争力強化を目的とした譲受において重要な分野です。

企業が所有する技術

譲受の大きな理由となるノウハウや技術のレベルと種類を調査します。特許、開発中の技術、研究開発体制なども確認し、譲渡企業の技術力が譲受企業の戦略と合致するかを評価します。

市場における企業の位置

譲渡企業の技術レベルが市場においてどの位置にあるかを判断します。特に技術の模倣の難易度や独自性が高い場合には、競合他社に対する優位性があり、価値が上がります。

譲受企業が持つ技術との相性

事業規模拡大を目的とする譲受の場合、既存技術との相性が重要です。相性が悪いと、技術面での価値が低下する可能性があります。譲受後の技術統合の実現可能性も評価します。

チェックリストを用いた情報収集・分析の進め方

チェックリストを活用した情報収集と分析は、デューデリジェンスの質を高める上で重要です。資料請求リストや質問票の適切な設計と運用が、効率的な情報収集と深度ある分析を可能にします。

資料請求リストの活用

デューデリジェンスでは、売り手から様々な資料の提出を依頼します。この資料請求リストは、必要な情報が網羅的に収集されているかを確認する上で非常に重要なチェックリストの一部として機能します。譲渡企業の担当者が資料を迅速に提出できるよう、具体的な資料名を明記することが有効です。

具体的な資料例

譲渡企業の概況、組織体制、事業内容に関する資料、過去3年から5年間の決算書、試算表、科目明細、各種契約書、不動産関連資料などが含まれます。特に財務デューデリジェンスでは、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書に加え、売上、費用、資産、負債に関する詳細な勘定科目明細が求められます。

デューデリジェンス(DD)における初期的な依頼資料リスト・開示資料リスト・インフォメーションリクエストシート・データリクエスト

質問票の設計と効果的な質問

チェックリストに基づく質問票は、売り手からの追加情報を引き出すために不可欠です。明確で具体的な質問は、効率的な情報収集に繋がります。質問票は、提出された資料だけでは把握できない詳細や、売り手の見解を確認するために用いられます。

質問のポイント

単に「はい/いいえ」で答えられる質問だけでなく、背景や理由を深掘りする質問を含めることが重要です。例えば、特定の会計処理基準を選定した理由や、特定の勘定科目の増減理由などを詳細に尋ねます。これにより、表面的な情報だけでなく、その背後にある実態やリスクを把握することが可能になります。

セルサイド・デューデリジェンスと資料準備

売り手が、譲渡に先立ち、自らでデューデリジェンスを行うことは、プロセスを円滑に進め、リスクを低減するために有効な戦略です。これにより、譲渡プロセスがスムーズに進む可能性が高まります。

売り手のメリット

事前に自社の問題点を把握し、譲受企業からの質問に対して迅速かつ正確に対応できるようになります。これにより、譲渡プロセスがスムーズに進み、譲受企業からの信頼を得やすくなります。また、潜在的なリスクを事前に洗い出し、対策を講じることで、譲渡価格への悪影響を最小限に抑えることも期待できます。

必要な資料の準備

決算書、税務申告書、各種契約書、組織図、人事関連資料など、譲受企業から求められるであろう資料を事前に整理し準備しておくことが重要です。資料の不足や遅延は、デューデリジェンスの遅延や譲受企業からの信頼低下に繋がる可能性があります。特に、譲渡企業固有の重要な情報については、機密保持契約を締結した上で提出することが求められます。

効率的なデューデリジェンス実現のための工夫

チェックリストをさらに効果的に活用し、デューデリジェンスのスピードと精度を高めるための具体的な工夫があります。これらの工夫を取り入れることで、デューデリジェンス全体の質を向上させることが可能になります。

クラウドサービスの活用

バーチャルデータルーム(VDR)やクラウドストレージを活用し、調査資料を一元管理することで、物理的なやり取りや移動を削減し、効率性だけでなくセキュリティ面の向上も期待できます。これにより、資料へのアクセスが容易になり、遠隔地からの調査もスムーズに進められます。

テンプレートの作成

一般的なチェック項目をあらかじめテンプレート化しておけば、案件ごとに必要な部分をカスタマイズするだけでスムーズに着手できます。これにより、作業工数の削減や品質の均一化が図られ、デューデリジェンスの準備期間を短縮することができます。

専門家との連携

会計、税務、法務など、各分野の専門家が協力しやすい体制を整えることで、重複調査や見落としのリスクが低減します。調査結果のレビューや意思決定も迅速に進むため、より信頼性の高いデューデリジェンスが期待できます。

定期的なアップデート

法改正や会計基準の変更に対応するため、チェックリスト自体を定期的にアップデートすることが大切です。常に最新の情報を取り入れながら、精度の高いデューデリジェンスを実施することで、潜在的なリスクを見逃さないようにすることが重要です。

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よくある質問|デューデリジェンスでのチェックリスト(FAQ)

デューデリジェンスで用いるチェックリストに関して、よくある質問とその回答をまとめました。

Q:デューデリジェンスのチェックリストはどこで手に入るのですか?

DDのチェックリストは、書籍やM&A仲介会社、会計系コンサルティング会社(いわゆるFAS)などの専門家が提供するテンプレートとして入手できます。また、インターネット上でも一般的なひな形が公開されていることがあります。ただし、DDは案件固有の状況によって調査項目が大きく異なりますので、テンプレートをそのまま利用するのではなく、専門家と相談して、自社の案件に合わせてカスタマイズすることをお勧めします。

Q:チェックリストにはどんな項目があるのですか?

デューデリジェンスのチェックリストは、財務、法務、人事、技術、事業など、DDの種類によって調査内容が異なります。例えば、財務DDでは、財務諸表の正確性や簿外債務の有無、売上・費用・資産の妥当性などが主なチェック項目です。人事DDでは、従業員の数、給与、人間関係などが含まれます。各分野で確認すべき具体的な項目が詳細にリストアップされています。

Q:チェックリストを効果的に使うコツはありますか?

効果的な使用のためには、まず譲受の目的と調査範囲を明確にすることが重要です。次に、担当者の責任範囲を明確にし、資料収集の進捗を可視化します。バーチャルデータルームなどのクラウドサービスを活用して資料を一元管理し、定期的にチェックリストを更新することも有効です。また、チェックリストはあくまでも出発点であるため、専門家との連携体制を構築し、深度ある分析やヒアリングを行うことが成功の鍵となります。

Q:チェックリストだけでデューデリジェンスは十分なのですか?

チェックリストは、情報の抜け漏れを防ぎ、調査を効率化する上で非常に有効なツールですが、それだけでDDが完結するわけではありません。チェックリストはあくまで網羅的な調査の出発点であり、個別の案件で発生する特有のリスクや問題点を発見するためには、専門家による詳細な分析やヒアリング、交渉が不可欠です。チェックリストで表面的な情報を確認し、その後に専門家が深度ある調査を行うことで、実態との乖離や潜在的なリスクを正確に見極めることが可能になります。

デューデリジェンス チェックリスト作成のまとめ

デューデリジェンスにおけるチェックリストは、M&Aプロセスを効率化し、潜在的なリスクを最小限に抑えるための重要なツールです。網羅的な項目設定と適切な活用により、質の高いDDが実現できます。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A専門会社として15年以上の業歴があり、中小企業の財務デューデリジェンスに特化した経験実績が豊富な公認会計士・税理士が在籍しています。みつき税理士法人と連携することにより、税務DDを含めた財務調査をワンストップで対応可能ですので、財務DDをご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

著者

綿引 征典
綿引 征典
国内大手証券会社にて顧客のお金や人生に関わる財産運用を助言。相続・事業承継専門の会計事務所を経て、当社では法人顧客の税務対策・申告、M&Aに係る財務・税務のアドバイザリーに従事。税理士

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