TOBとは?M&A・LBO・MBOとの違い、改正30%ルール

M&Aの手法の1つに、TOB(株式公開買付)があります。上場会社を対象会社としたM&Aの一種です。本記事では、TOBの概要や目的、メリット・デメリット、手法などを解説します。

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TOB(株式公開買付)とは

TOBとは、M&Aの手法の1つで、英語では「Take Over Bit」、日本語では「株式公開買付」です。具体的には、不特定かつ多数の者に対して買付価格や期間などの公告を通じて、取引所外で株券などを買い付ける行為を示しています。市場での大量購入による株価の急騰を防ぎ、公平な取引の機会を設けるために利用されます。

TOB(株式公開買付)の目的

TOBの目的は、株式の取得による経営権の取得です。対象企業の株式を50%超取得すれば、経営権を取得できます。敵対的買収や上場会社の非公開化などで用いられます。そのほか、自社株を集めるためのTOBもあります。

M&Aとの違い

M&Aには様々な手法が存在しますが、TOBは「株式公開買付」という特定のスキームで、証券取引所を通さずに不特定多数の株主から直接株式を買い付けて経営権を獲得する方法です。つまり、M&Aという目的を達成するための手段の一つがTOBということになります。

証券取引所を通さないで実施する理由

TOBは原則として証券取引所を通さないで実施されるM&A手法です。証券取引所を通さない理由は、通常のM&Aによって証券取引市場内で株式の大量の買い注文が行われると、譲渡側の株価が急上昇する可能性があるためです。株価が急上昇すると、想定していた価格で株式が購入できなくなります。そのため、価格を抑えてM&Aをしたい際はTOBを採用し、証券取引所を介さないで進めることが可能です。

なお、市場内取引でもTOB規制の対象となるケースが存在します。これについては後述します。

LBOとの違い

LBO(Leveraged Buyout)とは、譲渡側の資産や今後期待されるキャッシュフローを担保として、譲受側が金融機関などから資金調達をして買収する手法です。LBOは自己資金が少なくてもM&Aが可能です。そのため、 信用取引投資としての性格が強い傾向にあります。

TOBをする際の買取資金の調達構成として、エクティは少額にとどめ、大部分をローンとする場合には、そのTOBはLBOである、ということになります。

M&Aの1種でであるTOB、LBO、MBOの違い

MBOとの違い

MBO(Management Buy Out)とは、企業の経営陣が投資ファンドや金融機関から資金調達を実施し、既存の株主から自社の株式を買い取る手法です。

現経営陣を買い手として行うのがMBOですが、対象会社が上場企業の場合には、一般にTOB規制に服するため、手法としてはTOBを採用する、ということになります。また、TOBを行うからといって、買い手が現経営陣でない第三者ということがあり得る、という点はMBOとの違いです。

TOB手続が必須となる場合

ここでは、TOBを実施する際のルールについて解説します。

5%ルール

TOBのルールの1つに、5%ルールがあります。5%ルールとは、「市場外での買付けにより買付後の発行済の株式全体の5%以上を保有する場合は、TOBによるM&Aを行う」という義務です。5%を超える株の保有は、経営や株価に与える影響が大きいため、このルールが定められています。

3分の1ルール(30%ルール)

1/3ルールもTOBのルールの1つです。1/3ルールとは、「買付後の株式の所有割合が発行済みの株式全体の1/3を超える場合は、TOBの実施が義務付けられている」というものです。相手方の人数が10人以内の場合などに適用されます。

なお、2024年5月15日に成立した金融商品取引法改正法により、以下に変更することが決まっています。改正法の施行日は、2026年5月1日です。

  • 上記「3分の1ルール」が「30%ルール」に改正されます。
  • TOB規制の対象取引が市場内取引による買付けにも範囲が拡大されました。具体的には、所有割合の30%超となる市場内取引(立会内)も、原則として公開買付けが強制されることとなりました。従来、市場内取引(立会内)については、時間優先・価格優先という競争売買原則の下、透明性や公正性が確保されているという理由で、限られた局面でのみ公開買付けが強制されていましたが、この改正により大幅に規制が強化されました。

TOB(株式公開買付)の種類

TOBは、敵対的TOBと友好的TOBの2種類に分けられます。ここでは、それぞれの違いについて解説します。

敵対的TOB(同意なき買収)

敵対的TOBとは、対象会社の取締役会の同意を得ずに買収する手法です。相手方への事前の告知が行われない場合も少なくありません。また、事前の告知があったとしても、条件面で妥結しなければ敵対的TOBに該当します。ただし、株式譲渡を用いる点は、友好的TOBと共通しています。

友好的TOB

友好的TOBは、対象会社の取締役会と事前合意がなされている状態で買収する手法です。グループ企業を完全子会社化する際などに用いられます。また、グループ企業以外でも、事前の協議や申し入れなどで対象会社から同意を得られる場合は、友好的TOBとなります。

TOB(株式公開買付)のメリット・デメリット

TOBを実施する際には、既存株主と買付者のそれぞれの立場で異なるメリットとデメリットがあります。以下の表ではメリットとデメリットを対比させています。

立場メリットデメリット
既存株主(売り手)・譲受側の安定した経営基盤や潤沢な資金が投入され、経営上のリスクを抑えて事業を拡大できます
・資金不足によって実現していなかった事業拡大などにも取り組めるようになります
・市場価格より20~40%程度高い価格で株式を売却できる可能性が高まります
・まとまった資金を一度に得られます
・経営権を喪失します
・TOB後に経営に口を挟めなくなる可能性があります
・役員が留任するケースであっても、多くの場合、影響力は低下します
・TOB成立後は通常の市場価格に戻る傾向があります
・上場廃止となる可能性があります
・流動性や換金性が低下するリスクがあります
買付者(買い手)・株価が想定外に急上昇する可能性が少なく、買収成立までの見通しが立ちやすいです
・買付期間や買付数、買付価格などをあらかじめ決められ、実施前にコスト計算やスケジュール調整ができます
・目標株式数に満たなかった場合は買収自体をキャンセルできます
・効率的な株式の取得が可能で、不必要なコストをかける必要がありません
・原則として20~60日の期間内に、株価変動の影響を受けずに大量の株式を取得できます
・市場価格に30~40%のプレミアムを上乗せするため、通常のM&Aよりも多くの費用が発生します
・敵対的TOBの場合は相手企業に抵抗される可能性が高く、成功率は低いです
・買収防衛策が発動される可能性があります
・買収が長期化したり、当初は想定していなかった対抗措置への対応コストが発生したりするリスクがあります
・法的手続や専門家への報酬など、相当な準備コストがかかります
・不成立となった場合は、これらの投資回収ができません

既存株主にとっては経営改善や高値での売却が期待できる一方で、経営権の喪失というリスクがあります。買付者にとっては計画的な株式取得が可能ですが、通常よりも高いコストがかかる点に注意が必要です。

TOB(株式公開買付)の手続・進め方

TOBを検討する際には、株主の理解を得ることが一般的です。事前に、株主にTOBにいたる背景などをしっかり説明する機会を持ちましょう。

ステップ手続内容実施者期限・法的要件重要なポイント
ステップ1
公開買付開始公告の公開・公開買付届出書の提出
TOBを行う予定であることを公開し、公開買付届出書を内閣総理大臣へ提出します譲受側(公開買付者)公開買付開始公告を行った日から10営業日以内に公開買付届出書を提出します公開完了後、公開買付届出書を提出すると、既存株主による売付け申込みの勧誘が可能になります。日刊新聞紙や電子公告(EDINET)により行われることが一般的です。社名、代表者の氏名、会社所在地、買付けの目的、買付価格、買付予定の株式の数、買付期間などを公告します
ステップ2
意見表明報告書の提出
対象会社が、TOBに同意するか反対するかを表明する意見表明報告書を内閣総理大臣に提出します対象会社(譲渡側)公開買付開始公告が行われてから10営業日以内に提出します意見表明報告書には、同意・反対の記載とあわせて、公開買い付けに関する意見や質問などの記載も可能です。報告書の写しを譲受側や金融商品取引所などに送付する必要があります
ステップ3
対質問回答報告書の提出
対象会社が意見表明報告書に質問を記載した場合、譲受側は対質問回答報告書を内閣総理大臣に提出します譲受側(公開買付者)5営業日以内に提出します譲受側は対質問回答報告書の写しを作成する必要があります。作成した写しは、譲受側や金融商品取引所などに送付します。質問に対する回答を記載し、必要に応じて条件を変更することもあります
ステップ4
公開買付報告書の提出
公開買い付けが終了したら、譲受側は公開買い付けに係る応募株式等の数など内閣府令で定める事項を公表し、公開買付報告書を内閣総理大臣に提出します譲受側(公開買付者)公開買付期間終了後、速やかに提出します。公開買付期間は原則として20営業日以上60営業日以内です公開買付報告書の提出をもって、TOBの手続きは完了です。TOBが成立した場合、譲受側は株式を取得し、対象会社の経営権を確保します。不成立の場合は、応募された株式は株主に返還されます

なお、TOBで100%の株式を取得できることは稀です。そのため、その後100%子会社を目指す場合には、いわゆるスクイーズアウトの手続に移行することになります。

TOBの事例:永谷園がMBOで上場廃止(2024年6月公表)

永谷園ホールディングス(HD)は2024年6月に、現経営陣が参加するMBOを実施することを発表しました。三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタルと連携し、TOBを行います。永谷園HDの経営陣はこのTOBに賛同しており、上場廃止の見通しです。

国内市場では人口減少により売上高の成長が難しい一方、コストの上昇が大きな課題となっています。非上場化することで、海外進出などの意思決定を迅速に行い、成長を目指す方針のようです。

TOB(株式公開買付)のまとめ

TOBとは、株式公開買付のことで、証券取引所を通さずに不特定多数の株主から株式を買い付けるM&A手法です。5%ルールや2026年までに施行予定の30%ルールなどの規制があり、友好的TOBと敵対的TOBの2種類があります。短期間に一定価格で大量の株式を取得できるメリットがある一方、市場価格にプレミアムを上乗せするため買収コストが高くなるデメリットもあります。上場企業の買収や非公開化を検討する際の重要な選択肢です。

みつきコンサルティングは、20年間・500件以上のM&A支援実績をもとに、上場企業のTOBを含む様々なM&A手法に対応しています。経営コンサルティング経験者も多く在籍し、対象企業の詳細な事業分析を実施したうえで、シナジー創出を見込める候補先を紹介できる点が強みです。本格的なご検討の前でも、情報収集を目的とした無料相談を随時お受けしています。

著者

西尾 崇
西尾 崇事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人

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