オーナー経営者にとって、会社売却における家族の反対は最も深刻なハードルの一つです。長年の愛着や将来への不安から生じる反対を押し切れば、家族関係に亀裂が入る恐れもあります。本記事では、家族が反対する真の理由を紐解き、専門家が実践する「納得を引き出す対話術」や「第三者の活用法」を解説します。円満な会社売却と幸せなセカンドライフを両立させるための指針としてお役立てください。
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家族が会社売却に反対する5つの心理的・現実的理由
会社売却(M&A)を検討する際、家族の反対により破談になるケースは2026年現在の市場でも少なくありません。なぜ最も身近な存在が反対に回るのか、その背景には感情と勘定の両面が複雑に絡み合っています。
創業の歴史や家業への強い感情的愛着
家族、特に配偶者や親世代にとって、会社は単なるビジネスの場ではなく、家族の歴史そのものです。長年住み慣れた家を手放す際と同じような心理的負担がかかり、「先祖代々の家業を他人に渡したくない」という誇りや思い入れが強い抵抗感を生みます。この感情を無視して論理だけで説得しようとすると、かえって反発を強める結果になりかねません。
従業員の雇用維持と生活への強い懸念
中小企業の場合、家族は長年、従業員とその家族とも親交がある場合が多いものです。そのため、売却後の従業員の雇用や待遇がどうなるのか、強い不安を抱きます。買収側の譲受企業が「事業内容を転換して社員を解雇するのではないか」といった疑念は、譲渡オーナー以上に家族が敏感に察知するリスクでもあります。
譲渡価格への不満と客観的な価値の乖離
譲渡オーナー自身が抱く「主観的な価値」と、市場で提示される「客観的な価値」に乖離がある場合、家族は「もっと高く売れるはずだ」と不満を持つことがあります。特に株式という資産が「現金」に変わることによる、相続対策や財産管理方針の変化への戸惑いも、反対の要因となります。
老後の生活設計や世間体への漠然とした不安
「会社を売った後、近所や親戚にどう思われるか」という世間体や、安定した収入がなくなることへの恐怖も無視できません。また、仕事一筋だったオーナーが引退後に自宅に居続けることへの、配偶者側の心理的ストレスが反対に繋がることも実務上よく見受けられます。将来の生活環境がイメージできない不安は、想像以上に大きいものです。
経営状況の共有不足による不信感
日頃から会社の経営状況や売却を考えるに至った経緯が家族に共有されていないと、「会社が苦しいから逃げるのではないか」といった誤解や、独断で進めるオーナーへの不信感を招きます。情報の不足は、家族を「協力者」ではなく「批判者」に変えてしまう最大の要因です。
家族の反対を乗り越えるための具体的な4ステップ
家族の反対を解消し、円満な合意を得るためには、順序立てた丁寧なプロセスが必要です。下表の通り、4つのステップで感情的な対立を避け、建設的な議論を進めます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 検討段階からの早期対話と正式な話し合い | 最終決定してから報告するのではなく、検討段階から「なぜ売却を考えているのか」を誠実に伝えることが重要です。感情をぶつけ合う場にならないよう、家族全員が同席する正式な話し合いの場を設け、まずは家族の意見や懸念を否定せずに全て受け止める姿勢を見せましょう。 |
| 2. 経営状況の「見える化」による現状の共有 | 会社の「真の姿」を理解してもらうために、財務状況や将来の課題を客観的なデータに基づいて共有します。後継者不足や健康不安、業界の先行きなど、売却という決断の合理性を数字や事実で示すことで、家族も「今のままではいけない」という現状認識を共有しやすくなります。 |
| 3. 売却後のセカンドライフと具体的ビジョンの提示 | 売却によって得られるメリットを具体化します。創業者利潤による安定した老後生活、個人保証からの解放、家族と過ごす時間の確保など、家族にとってもプラスになる点を共有してください。引退後の生活設計(何を目標に生きるのか)を一緒に立てることが、家族の安心感に直結します。 |
| 4. M&A専門家など第三者の客観的な知見を導入 | 親子や夫婦間では、どうしても感情が先走ってしまいます。そこで、M&A仲介会社や顧問税理士といった専門家の力を借りるのが効果的です。第三者が間に入ることで、客観的な企業価値評価(譲渡価格の根拠)を提示でき、感情的な対立を抑えながら冷静な議論を進める助けとなります。 |
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会社売却を円満に進める実務の知恵
10年以上のキャリアを持つ専門家からのアドバイスとしては、実務では、単なる「YES/NO」の議論ではなく、家族のライフスタイルに寄り添った提案が成約の鍵となります。
配偶者の心配は「夫の不在」ではなく「自宅への定着」
熟年世代の譲渡オーナーの場合、配偶者が懸念しているのは「仕事がなくなった夫が、一日中自宅で何もせず過ごすこと」であるケースが多々あります。これを防ぐためには、会社売却後も顧問として数年残る契約や、新たな趣味・ボランティア活動への参加など、「譲渡後の居場所」をセットで家族に提示することが有効な説得材料になります。
部分的な譲渡や段階的な承継という選択肢
「全てを売る」という極端な選択だけでなく、まずは株式の過半数を譲渡し、自分は代表権を持ったまま数年かけて引継ぎを行う「段階的承継」という手法もあります。これなら家族の心理的負担も緩和され、時間をかけて心の整理をつけることができます。
個人保証の解除を「家族の安心」として強調する
多くの中小企業では、オーナーが会社の借入金を連帯保証しています。これは相続対象ともなりますし、家族にとっては潜在的なリスクです。M&Aによってこの個人保証が外れることは、万が一の際に家族に借金を残さないための「究極の守り」になります。この点を丁寧に説明することで、配偶者の理解を得られるケースは多いです。
相談事例:家族の反対を克服しハッピーリタイアした製造業
ここで、ある精密部品加工メーカー(従業員25名)の事例を紹介します。
70代の譲渡オーナーは、後継者不在のためM&Aを検討していましたが、創業時から支えてきた妻が猛反対しました。「社員がかわいそう」「まだ働けるはず」というのが理由でした。そこでオーナーは、M&Aアドバイザーを自宅に招き、妻も含めた3人で対話の場を持ちました。
アドバイザーからは、譲受企業が同業の大手で、福利厚生が今より充実すること、技術の継承を強く望んでいることを客観的に説明しました。また、オーナーの健康診断の結果を共有し、無理を続けるリスクを可視化しました。
最終的に、妻は「社員が今より幸せになり、夫も健康を維持できるなら」と納得し、会社売却に同意。現在は夫婦で全国の温泉地を巡るなど、穏やかなセカンドライフを楽しまれています。
▷関連:M&Aでの社長の役割とは?譲渡の時期・方法・条件・雇用・PMI
会社売却に家族が反対する際のFAQ
ここでは、家族との話し合いにおいてよくある質問と回答をまとめました。
会社売却後の家族関係が修復不可能になるリスクが極めて高いです。また、家族の反対が譲受企業に伝わると「オーナー家の合意が得られていない不安定な案件」とみなされ、買い叩かれたり、破談になったりする原因にもなります。
一昔前はM&Aにネガティブな印象を持つ人もいましたが、現在は国も推進する有効な経営手段です。廃業による雇用の喪失を防ぎ、技術を守るための前向きな決断であることを、根気強く説明する必要があります。
家族に切り出す前、あるいは初期段階での相談をお勧めします。家族への適切な説明方法や、客観的な資料の準備について事前にアドバイスを受けることで、初回の話し合いでの失敗を防ぐことができます。
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まとめ|会社売却への家族の反対を乗り越える
会社売却における家族の反対は、それだけ家族があなたの会社を誇りに思い、大切にしてきた証でもあります。焦らずに時間をかけ、専門家の力も借りながら誠実に対話を重ねることで、必ず道は開けます。
当社は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業のM&Aに特化した実績経験が豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が多く在籍しております。会社売却における家族反対への対応や、円満な事業承継をご検討の際は、みつきコンサルティングにご相談ください。
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著者

- 事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
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ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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