IT・ソフトウェア企業のM&Aデューデリジェンス|リスクと評価

IT・ソフトウェア企業を買収する際、企業の正しい価値を理解し、将来のリスクを特定するためにデューデリジェンスは不可欠です。この記事では、IT企業に特有の論点について解説します。

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M&AデューデリジェンスでのIT企業の特性

デューデリジェンス(DD)は、M&Aにおいて譲受企業が対象企業の価値を評価し、潜在的なリスクや課題を特定するために実施する詳細な調査手続です。この手続を通じて、譲受企業は、対象企業の財務状況、事業内容、法務、税務などを多角的に理解します。

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IT・ソフトウェア企業を買収する場合には、一般的なDDに加えて、IT・ソフトウェア企業特有の論点を詳細に確認することが重要になります。

デューデリジェンスの目的と重要性

デューデリジェンスの主な目的は、M&A後の企業価値の評価や統合計画策定に必要な情報を収集し、リスクを適切に評価することです。これにより、譲受企業は、買収価格の交渉、譲受契約の条件設定、譲受後のリスク管理など、戦略的な意思決定を行うことが可能になります。

M&AにおいてDDは、将来の紛争を防ぎ、成功的なM&Aを実現するために不可欠な手続です。十分な調査を行うことで、予測できない問題の発生や、買収後の事業運営への悪影響を回避することができます。

IT・ソフトウェア企業のM&Aにおける特有の論点

IT・ソフトウェア企業のM&Aにおけるデューデリジェンスでは、他の業種と比較して特有の論点が存在します。対象企業の事業活動において、情報システムやITの活用は必要不可欠であり、情報システムが適切に機能し、効率的かつ効果的な情報処理を行うためのシステムが導入されているかを確認することが重要です。ITに関する基礎知識がDD実施において必要とされます。

無形資産の重要性

IT・ソフトウェア企業は、ソフトウェア著作権、特許、顧客リスト、ブランドなどの無形資産が企業価値の大部分を占めることがあります。これらの無形資産の評価は、財務デューデリジェンスでは会計処理の観点から行われますが、その技術的な価値や将来性は、専門的なITデューデリジェンスでのみ深く評価できます。

人材依存度

IT・ソフトウェア企業、特にソフトウェア開発企業では、優秀なエンジニアや技術者の確保が企業価値に直結します。デューデリジェンスでは、技術者のスキルセット、チーム構成、開発文化、リテンションリスク(離職リスク)、採用競争力などを評価し、M&A後の人材承継計画を立てることが重要です。

ビジネスモデルの多様性

IT・ソフトウェア企業は、SaaS(Software as a Service)、プラットフォーム、受託開発など多様なビジネスモデルを持っています。それぞれのビジネスモデルには異なる収益構造、コスト構造、成長戦略が存在するため、デューデリジェンスではビジネスモデルの特性を深く理解し、それに適した評価を行う必要があります。

技術の陳腐化スピード

IT業界は技術の進化が速く、プロダクトやシステムが陳腐化するスピードが非常に速いという特徴があります。デューデリジェンスでは、対象企業の技術が最新のトレンドに対応しているか、将来的な陳腐化リスク、およびそれに対応するための研究開発体制を評価することが重要です。

財務デューデリジェンスの実施

M&Aにおけるデューデリジェンスの中心的な部分の一つは、財務デューデリジェンスです。財務DDは、会計ファームなどの専門家が実施し、対象企業の財務諸表を詳細に分析します。

財務DDの調査範囲

財務デューデリジェンスの調査範囲は、譲受企業の目的や関心事項によって異なります。一般的に、以下の財務諸表項目が調査対象となります。

貸借対照表の調査

資産、負債、純資産の健全性を確認します。各項目に関し、デューデリジェンスでは以下のような観点で事実やリスクの洗い出しが行われます。

項目名確認・調査内容
現金及び預金実在性、管理状況、運用状況、余剰資金の有無、管理体制の適切性
売上債権売掛金・受取手形の実在性、回収可能性、債権管理方法(売掛金年齢表等の作成含む)、SaaS未収入金の実態
仕入債務買掛金・支払手形の実在性、適時性、債務管理方法
棚卸資産実在性、評価(評価損計上の妥当性)、管理状況、(ソフトウェアの場合)未完成工事仕掛品等の棚卸計上
有形・無形固定資産実在性、減価償却費の計算方法、投資状況、各資産(特に無形資産としてのソフトウェア)の評価・管理
有価証券投資有価証券の評価方法、担保設定状況、実在確認
保険積立金実在性、適正な会計処理、解約返戻金の有無
有利子負債借入金・社債等の実在性、返済条件、担保の有無
賞与引当金引当金の実在性、計算期間・計算方法、過去実績との整合性
退職給付引当金実在性、計算方法、過去実績との整合性
その他の引当金各種引当金(工事損失、製品保証など)の実在性

損益計算書の調査

収益性、費用構造、非経常損益などを分析します。以下の分析が、デューデリジェンスにおける企業価値評価やリスク検討の重要な材料となります。

項目名主な確認・分析内容
収益性DD収益構造の把握、事業ポートフォリオ別収益性、顧客別収益性、売上や利益の主な構成、部門・サービス別収益貢献度、季節変動や一時的要因の有無
人件費分析従業員数と構成(年齢・役職)、一人当たり人件費、賞与・退職給付含む変動要因、現状と将来の推移予想、雇用契約内容・勤怠管理体制の確認
正常収益力の把握純営業活動による継続的な収益を算出(非経常的、臨時的な費用・収益の控除)、過去数年の決算データ分析、将来見込みとの整合

運転資本の分析

対象企業のキャッシュ・フローを予測するために運転資本の動向を分析します。

その他の調査項目

IT・ソフトウェア企業に対するデューデリジェンスでは、以下のような点もチェックすべきポイントになります。

技術的負債の評価とM&A後の改修コスト・期間の見積もり

技術的負債は、過去の意思決定や開発手続によって蓄積された、将来のソフトウェア改修や機能追加にかかるコストや期間を増加させる要因となるものです。レガシーシステムの取り扱いも重要な論点です。これらの評価には技術的な専門知識が不可欠です。

知的財産の評価とライセンスコンプライアンス、データプライバシー対応

IT・ソフトウェア企業にとって、知的財産は事業価値の重要な源泉です。ソフトウェア著作権、特許の有効性、オープンソースソフトウェアの利用状況とそのライセンス遵守状況は、買収後のリスクを特定するために重要です。また、個人情報保護法やGDPRなどのデータプライバシー関連規制への対応状況も確認する必要があります。

主要顧客・パートナーとの技術連携状況の確認、クラウド活用状況とコスト

IT・ソフトウェア企業は、主要顧客やパートナーとの技術連携を通じて事業を展開していることが多いため、その連携状況や契約条件の確認は重要です。また、クラウドサービスの利用状況や、関連コスト、セキュリティ対策も確認すべきです。

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よくある質問|IT企業のデューデリジェンス(FAQ)

IT・ソフトウェア企業のM&Aデューデリジェンスについて、M&A担当者からよくある質問とその回答をまとめました。

Q:IT企業の技術力はどうやって調べるの?

IT・ソフトウェア企業の技術力は、プロダクトのアーキテクチャ、ソースコードの品質、開発手続、スケーラビリティ、セキュリティ、UI/UXなどを専門家が評価することで行われます。これには、技術的な専門知識を持つチームによる分析が必要になります。

Q:ソフトウェアのソースコードも見るの?

技術デューデリジェンスでは、ソースコードの品質、保守性、技術的負債の有無などを評価するために、実際にソースコードをレビューすることが一般的です。これにより、将来の開発コストやリスクを正確に把握することができます。

Q:「技術的負債」とは?どう影響するの?

技術的負債とは、過去の不適切な開発手続や設計によって蓄積された、将来のソフトウェア開発や保守に要する追加コストや時間の増加を招く問題のことです。M&A後に対象システムを改修する際に予想以上の費用や期間が必要になる可能性があり、買収後の事業計画に大きな影響を与えることがあります。

Q:優秀なエンジニアが辞めないか心配…。

M&Aにおいて人材は重要な要素であり、人事関連のコストや退職給付引当金などは財務デューデリジェンスの対象です。一般的にエンジニアのリテンションリスクは、スキルセット、チーム構成、開発文化、報酬水準などを評価することで把握されます。買収後の統合計画において、優秀な人材の維持に向けた具体的な施策を検討することが重要です。

IT企業のM&Aデューデリジェンスのまとめ

IT・ソフトウェア企業のM&Aにおけるデューデリジェンスは、一般的な財務デューデリジェンスに加え、技術・プロダクト・エンジニア組織といった無形資産の評価が重要です。IT・ソフトウェア企業に特有の技術的負債や知的財産、エンジニア組織などの側面を専門的に評価することが不可欠です。

みつきコンサルティングは、M&Aにおけるデューデリジェンス全般をサポートしており、IT・ソフトウェア企業の買収における財務デューデリジェンスの他、必要に応じて他の専門家と連携し、対象企業の真の価値を見極めるためのサービスを提供しています。

著者

綿引 征典
綿引 征典
国内大手証券会社にて顧客のお金や人生に関わる財産運用を助言。相続・事業承継専門の会計事務所を経て、当社では法人顧客の税務対策・申告、M&Aに係る財務・税務のアドバイザリーに従事。税理士

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