デューデリジェンスの進め方|譲渡オーナーが備える買い手調査

M&Aのデューデリジェンス(DD)は基本合意の後、譲受企業が会社を調べる8つのステップで進みます。何を準備すべきか不安なオーナー経営者に向けて、各段階の流れと売り手側の備え、調査結果が譲渡価格に及ぼす影響まで解説します。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。

デューデリジェンス(DD)とは|M&Aで買い手が行う調査

会社の譲渡を決めたオーナー経営者が、基本合意のあとに通る関門があります。譲受企業が対象会社の中身を調べる工程、それがデューデリジェンス(DD)です。譲受企業の作業に見えて、資料を出し質問に答えるのは譲渡オーナー側。ここでの見え方ひとつで、譲渡価格や条件は動きます。意味や分類はデューデリジェンスの基本で整理したため、本記事は「進め方」に絞ります。

譲渡オーナーが「進め方」を先に知る意味

譲受企業が何を、どの順で調べるのか。これを知らないまま臨むと、資料請求のたびに慌て、答えに詰まり、印象を落としがちです。逆に流れが頭に入っていれば、指摘されそうな点を先回りして整えられます。調査結果はDDと企業価値の関係にも直結する話。価格を守る意味でも、予習は効いてきます。

M&Aデューデリジェンスの進め方|8つのステップ

DDは、専門家の選定から報告書の受領まで、大きく8つのステップで進みます。下図が全体の流れです。順を追って、各段階で何が起き、譲渡オーナーが何を求められるのかを見ていきます。

M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)の進め方を表した8つのステップのフローチャート

ステップ1 DD専門家の選定

最初に、譲受企業が調査を任せる専門家を選びます。法務は弁護士、財務・税務は公認会計士や税理士、事業面はコンサルタントと、分野ごとに顔ぶれが変わります。対象会社の業種に明るく、M&A経験の厚い専門家ほど、論点を外しません。選定の勘所はDD専門家の選び方にまとめています。

ステップ2 依頼資料・Q&Aリストの作成

専門家が決まると、譲渡企業へ出してもらう資料と質問を一覧にします。ここで調べる範囲、いわゆるスコープを絞れるかどうかが、期間も費用も左右します。決算書、税務申告書、株主名簿、定款、議事録あたりが初期の定番。広げすぎず要点を突く設計はスコープ設定が参考になります。

ステップ3 譲渡企業による資料準備

リストを受け取った譲渡オーナー側が、資料をそろえます。手元にある決算書はよいとして、整理されていない書類を新たに作る場面も出てきます。負担は決して軽くありません。抜け漏れを防ぐには、分野別のDDチェックリストを先に用意しておくと、準備がぐっと楽になります。

ステップ4 資料の受領とVDRでの検討

開示された資料を、専門家が読み込みます。読むほどに追加の疑問がわき、Q&Aリストへ足していく往復が始まります。近年は紙の受け渡しではなく、バーチャルデータルームと呼ぶオンラインの共有システムが主流。安全に、かつ双方の手間を減らしてやり取りできます。

ステップ5 マネジメントインタビュー

資料だけでは見えない実態を、経営陣との面談で確かめます。マネジメントインタビュー、あるいはQ&Aセッションと呼ばれる場です。譲受企業は、経営課題や現場の空気、譲受後の体制までを直接聞き取ります。経理や法務の実務担当へ、個別に質問が及ぶこともあります。

ステップ6 追加質問への対応

面談を終えると、そこから新たな疑問がまた生まれます。最終契約の前に懸念を消しておきたいので、Q&Aの往復は続きます。最近は大量の資料をAIで一次整理し、論点抽出を早める動きも広がってきました。テクノロジーの使いどころはAI活用によるDDで掘り下げています。

ステップ7 Q&Aの再確認とリスクの洗い出し

たまった質問を譲渡企業へ提出し、回答をそろえます。この往復は、必要な情報が出そろうまで何度も繰り返すのが普通です。過去事例や業種特有のパターンと照らしながら、隠れた問題を掘り起こしていきます。譲受企業がどんな視点で穴を探すのかは、隠れたリスクの見抜き方が具体的です。

ステップ8 DD報告書の受領と交渉への反映

すべての調査を踏まえ、専門家が結果をDD報告書にまとめます。検出された問題点と、それが譲受価格に与える影響、対応策が並びます。譲受企業はこれを土台に、株式譲渡か事業譲渡か、価格をいくらにするかを再検討し、最終交渉へ臨みます。重い指摘が出たときの判断は問題発覚時の対応が参考になります。

デューデリジェンスにかかる期間と費用感

調査にかける時間と費用は、案件の規模や複雑さで大きく変わります。中小企業のM&Aなら、基本合意から数週間〜2ヶ月ほどが一つの目安。小規模でも一定の手間と費用は避けられません。中小企業庁も、当事者の意向を前提に、案件の特徴に応じて過剰とならない適切なDDを促しています。やみくもに広げるより、リスクの当たりをつけて絞る発想が実務的です。

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譲渡オーナーがDDの前に備えるべきこと

譲受企業のDDは、受け身で待つほど不利になりがちです。指摘は価格の減額材料に直結するからです。譲渡オーナー側から動いて、出せる状態を先に作っておく。ここが、価格と条件を守る分かれ目になります。

プレDD・セルサイドDDで先手を打つ

本格調査の前に、譲渡オーナー自身が簡易的に自社を点検する手もあります。初期段階の軽い確認がプレデューデリジェンス、本格的な自己調査がセルサイドDDです。弱点を先に把握できれば、指摘される前に説明を用意でき、交渉の主導権を手放さずに済みます。譲渡オーナー側の準備を通しで知りたいなら、売り手側のDD準備が役立ちます。

中小企業で論点になりやすい準備事項

支援現場で譲渡オーナーがつまずきやすい点は、だいたい顔ぶれが決まっています。DDの前に手を打ちたい代表的な論点を、下表にまとめました。

準備すべき論点譲受企業が見る理由と備えの勘所
名義株・株主の整理株主名簿と実態のズレは権利関係の火種。譲渡前に名義を実態へ合わせておく
簿外債務・未払い残業代決算書に載らない債務は減額に直結。退職給付や残業代の見込みを把握しておく
個人保証・社長貸付会社と個人の資金の混在は必ず問われる。清算の方針を先に決めておく
役員退職金の設計譲渡対価と退職金の配分は税負担を左右する。譲渡スキームと合わせて検討する
許認可・重要契約支配権移転を理由に解除できる条項の有無を確認。承継可否を早めに洗い出す

たとえば地方の製造業の案件では、決算書に載っていない未払い残業代が後から表面化し、譲渡価格の下方修正につながったことがあります。労務を先に整えていれば避けられた減額でした。

経営者保証の扱いは早めに金融機関へ相談する

譲渡オーナーの多くが、会社の借入に個人保証を付けています。会社は手放したのに保証だけ残る、という事態は避けたいところ。中小M&Aガイドライン(中小企業庁)は、M&A成立前に金融機関や専門家へ相談し、保証の解除や引き継ぎを最終契約に位置づけるよう促しています。ここは早いほど選択肢が残ります。

デューデリジェンスを円滑に進めるコツ

DConは、M&Aの中でもとりわけ時間と神経を使う工程です。滞りなく進めるための勘所を、譲渡オーナーの視点で押さえておきます。

協力姿勢とスケジュールの共有

資料の準備も回答も、譲渡オーナー側の負担は小さくありません。それでも、後ろ向きな対応は譲受企業の不信を招き、条件交渉に響きます。基本合意の段階でDDの期間と協力範囲を取り決め、双方でスケジュールを共有しておく。進捗と懸念を専門家も含めてこまめに回すと、遅延を防げます。

IDR・VDRの活用と誠実な対応

依頼資料・Q&AリストはIDRとも呼ばれ、必要な情報を先にリスト化しておくと調査漏れを防げます。大量の資料はVDRで一元管理すると、受け渡しも検索も一気に速くなります。DDは、最後は人と人の交渉。礼儀を欠かさず誠実に向き合う姿勢が、価格以上に効く場面もあります。

デューデリジェンスで必要となる主な資料

調べる分野によって求められる資料は変わりますが、多くのDDに共通するものと、種類別に追加されるものがあります。代表例を整理しておきます。

多くのDDに共通する資料

分野を問わず、ほぼどのDDでも求められる基礎資料があります。下表が代表例です。

書類名役割・確認できること
会社案内・沿革事業内容やこれまでの歩みを把握する
商業登記簿謄本設立・役員・本店所在地など正式情報を確認する
定款会社の目的や組織運営の基本ルールを確認する
株主名簿誰がどれだけ株式を持つか、株主構成を確認する
組織図・従業員名簿組織体制と人員の基本情報を把握する
役員経歴書役員や主要人材の経歴・人物像を確認する

財務DD・事業DDで追加される資料

共通資料に加えて、DDの種類ごとに詳しい資料が要ります。財務デューデリジェンスでは、下表のような財務・税務の書類が軸になります。

書類名確認の目的
決算書(数期分)過去の財政状態と経営成績の推移を把握する
税務申告書税額の計算根拠と申告の妥当性を確認する
試算表・月次資料直近の業績と季節変動を確認する
借入契約書・返済明細有利子負債と返済条件の状況を確認する
給与台帳・就業規則人件費や退職給付の負担を確認する

事業DDでは、売上や取引先、将来計画に関わる資料が中心です。下表が代表例で、DD全体の分類はデューデリジェンスの種類で見渡せます。

書類名確認の目的
商品・サービス別の売上資料どの事業が収益を稼いでいるかを把握する
主要顧客・仕入先の資料取引先との関係と依存リスクを確認する
事業計画書将来の戦略と数値計画の妥当性を確認する
許認可・登録関連資料事業に必要な許認可の有無と承継可否を確認する

デューデリジェンスの進め方に関するFAQ

進め方をめぐって、譲渡オーナーからよく寄せられる疑問に答えます。

Q:DDは何から何まで調べるのか

現場ではまず目的を確認します。すべてを均等に見るわけではなく、法務・財務・税務・事業を軸に、案件ごとの重点を決めて調べます。契約内容、財務の実態、税務リスク、事業の強み弱み。狙いは、取引を進めるかの判断と、価格・条件を決める材料集めです。

Q:DDの期間はどれくらい見ておけばいい

規模と複雑さ次第です。中小企業のM&Aなら、基本合意から数週間〜2ヶ月ほどが目安。小規模でも一定の時間はかかります。基本合意書で期間を定め、売り手と買い手でスケジュールを握っておくと、間延びを防げます。

Q:売り手は何を準備すればいい

決算書や申告書に加え、株主名簿や契約書一式を整えます。現場でまず確認するのは、名義株・簿外債務・個人保証の3点。ここが曖昧だと減額の口実になります。不安ならプレDDで先に自己点検しておくと安心です。

Q:DDで問題が出たら価格は下がる

契約条項と金融機関の条件次第です。検出された問題の重さで、価格の減額や表明保証での手当て、最悪は取引見送りまで幅があります。ただし事前に整えて説明できれば、減額を最小限に抑えられる余地は十分あります。

デューデリジェンスの進め方のまとめ

M&Aのデューデリジェンスは、専門家選定から報告書受領まで8つのステップで進み、その見え方が譲渡価格と条件を左右します。受け身で臨むほど不利になりがちですが、名義株や簿外債務、個人保証を先に整えておけば、指摘は先回りできます。何から始めるか迷う譲渡オーナーほど、早い備えが効いてきます。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として、中小企業の会社売却を数多く支援してきました。財務・税務の専門家が在籍し、DDの備えから譲渡価格の交渉まで一気通貫でサポートできます。会社売却を検討し始めた段階でも、まずはお気軽にご相談ください。

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著者

綿引 征典
綿引 征典
国内大手証券会社にて顧客のお金や人生に関わる財産運用を助言。相続・事業承継専門の会計事務所を経て、当社では法人顧客の税務対策・申告、M&Aに係る財務・税務のアドバイザリーに従事。税理士
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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