財務DDのキャッシュフロー分析とは?資金創出力・返済能力・FCF

財務デューデリジェンスにおけるキャッシュフロー分析は、対象企業の資金創出力や債務返済能力を詳細に把握するための重要な手続です。この記事では、キャッシュフロー計算書の構成から、各区分の分析ポイント、フリーキャッシュフローの活用、過去のトレンド分析と将来予測の基礎まで、M&Aにおけるキャッシュフロー分析の概要を分かりやすく解説します。

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M&Aの財務デューデリジェンスにおけるキャッシュフロー分析

財務デューデリジェンスにおけるキャッシュフロー分析の重要性

M&Aにおける譲受手続において、譲受対象企業が将来にわたり安定して現金を創出できるか、そしてその現金をどのように活用しているかを把握することは非常に重要です。譲受対象企業の「お金の流れ」を詳細に把握することは、単に過去の損益状況を理解するだけでなく、将来の収益性や健全性を予測し、譲受価格の妥当性を判断する上で不可欠な要素となります。

M&Aにおけるキャッシュフロー分析の目的

M&Aの財務デューデリジェンスでは、譲渡対象企業の財務状況を多角的に分析します。その中でも、実際に手元にある現金の流れ、すなわちキャッシュフロー(CF)を分析することは、企業の経営状況を深く理解するために不可欠です。

ここでは、財務デューデリジェンスでキャッシュフローを分析する主な目的を解説します。

企業の本当の稼ぐ力を見極めるため

損益計算書(PL)上の利益は、会計処理の方法によって変動することがあり、必ずしも企業の現金の増減と一致しません。利益が出ていても、売掛金の回収が滞るなどして手元の現金が不足する「黒字倒産」のリスクも存在します。

そこでキャッシュフロー計算書(CF計算書)を用いて、企業が事業活動を通じてどの程度現金を創出しているか、その質はどうかを評価します。これにより、会計上の利益に惑わされず、譲渡企業の本当の稼ぐ力(実態のキャッシュ創出力)を正確に把握することができます。

M&A後の財務的な健全性を確認するため

譲受後に事業を円滑に運営していくためには、資金繰りが安定していることが大前提です。キャッシュフロー分析を通じて、企業が借入金を滞りなく返済できる能力があるか、新規の設備投資を自己資金で賄えるかなど、企業の資金創出力と債務返済能力を検証します。

これは、譲受後の財務的な健全性を確認する上で極めて重要です。M&Aの直後に資金繰りが悪化し、想定外の追加資金が必要になる事態を未然に防ぎます。

適正な企業価値と契約条件を決定するため

企業価値を評価する際、その企業が将来にわたって生み出すフリーキャッシュフロー(FCF)は、譲受価格を算定するための重要な基礎となります。

キャッシュフロー分析は、損益計算書だけでは見えない財務的なリスクを早期に特定し、適切な譲受価格や契約条件を決定するための基礎情報となります。譲渡企業のキャッシュフローの実態を詳細に分析することで、その価値を適切に評価し、双方が納得できる価格交渉の根拠とします。

財務デューデリジェンスとキャッシュフロー分析の関係

財務DDの主要な目的は、譲受対象企業の将来計画を精緻化することにあります。この将来計画の精緻化には、対象企業の深い理解が不可欠であり、その中でキャッシュフロー分析は財務面からの深い理解を可能にする要素です。譲受企業が譲受対象企業の事業計画を評価する際、PL上の利益の予測だけでなく、その計画がどのようなキャッシュフローを生み出すのかを検証することが重要ですし、将来の設備投資計画や運転資本の増減がキャッシュフローに与える影響も考慮する必要があります。

例えば、設備投資には多くの資本的支出(Capex)が必要となることが多く、アセットヘビーな事業である場合には、多額の資金を抱えるリスクも伴う場合があります。これらの分析は、譲受価格の決定や、譲受後の統合プロセス(PMI)における資金計画の策定に直接的な影響を与えます。キャッシュフロー分析は、譲受手続における意思決定の質を高める上で、欠かせない手続の一つと言えます。

フリーキャッシュフロー(FCF)の算定と活用

フリーキャッシュフロー(FCF)は、企業が本業の活動から生み出した現金のうち、事業の維持・拡大に必要な投資を行った後に、自由に使える現金をどれだけ残しているかを示す指標です。これは、企業の真の資金創出力と、株主や債権者にとっての価値を測る上で最も重要な指標の一つとなります。FCFの状況は、譲受対象企業の魅力を測る上で重要な判断材料となります。

FCFの定義と算定方法

FCFは、以下の算式で算出されることが一般的です。

FCF = 営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフロー

投資キャッシュフローは通常、事業の維持や成長のための設備投資やM&Aなどを目的とした支出が多く、マイナスで表示されることが一般的です。したがって、FCFは営業CFからこれらの投資支出を差し引いた残りの現金と理解することができます。

例えば、営業CFがプラスであっても、多額の設備投資を行った結果、投資CFが大きくマイナスとなり、FCFがマイナスになることもあります。これは、企業が積極的な成長戦略を取っている場合に多く見られますが、その投資が将来的に十分なリターンを生むかどうかが、譲受側にとっての見極めポイントとなります。

企業価値評価への活用

FCFは、企業価値評価において広く用いられるDCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)の基礎となります。DCF法では、将来のFCFを現在価値に割り引いて合計することで、譲受対象企業の事業価値を算出します。FCFが高いほど、企業価値は高くなります。

FCFを分析する際には、以下の点に注目します。

観点具体例
FCFの安定性継続的にプラスのFCFを生み出しているか、その金額は安定しているかを確認します。安定したFCFは、事業の予測可能性とリスクの低さを示唆します。
FCFの成長性将来的にFCFがどのように成長していく見込みか、その成長が持続可能であるかを見極めます。これは、事業計画の妥当性評価と密接に関連します。
FCFの使途創出されたFCFが、借入金の返済、配当、自社株買い、新規事業投資など、どのように使われているかを確認します。健全な使途は、企業の財務戦略の健全性を示します。

過去のキャッシュフローのトレンド分析と将来予測

M&Aにおける譲受手続では、過去の財務状況を詳細に分析するだけでなく、その情報をもとに将来のキャッシュフローを正確に予測することが不可欠です。過去のトレンドを理解することは、将来の事業計画の蓋然性を判断する上で重要な基礎となります。

過去のデータから将来を予測する際には、単なる延長線上で考えるのではなく、市場環境の変化、競合の動向、譲受対象企業の戦略的な取り組みなどを総合的に考慮する必要があります。

トレンド分析の視点

過去数年間のキャッシュフロー計算書を時系列で分析し、以下の点を把握します。

観点具体例
営業CFのトレンド安定して現金を創出しているか、成長しているか、あるいは変動が大きいかを確認します。売上高や利益のトレンドと比較し、乖離がないか、乖離がある場合はその原因を探ります。例えば、売上が増加しているにもかかわらず営業CFが伸び悩んでいる場合、運転資本の増加や回収サイトの長期化などが考えられます。
投資CFのトレンド過去にどのような投資が行われてきたか、その規模は適切だったか、そしてそれらが現在の事業にどのような影響を与えているかを評価します。例えば、多額の設備投資が連続している場合、それが効果的に収益に結びついているか、あるいは将来的に減価償却費の負担が増加しないかなどを確認します。
財務CFのトレンド資金調達の依存度(借入か自己資金か)、返済状況、配当政策の一貫性などを評価します。過度な借入や、営業CFに見合わない配当は、将来の財務健全性を損なうリスクとなりえます。

将来予測における考慮点

過去のトレンド分析に基づいて、将来のキャッシュフローを予測する際には、以下の点を考慮します。

観点具体例
事業計画の裏付け譲受対象企業が提示する事業計画(売上高、売上原価、販売費及び一般管理費など)が、過去のトレンドや市場の成長性、競合環境、そして譲受対象企業の具体的な戦略と整合しているかを確認します。
キードライバーの設定売上や利益、各キャッシュフローに影響を与える主要な要因(キードライバー)を特定し、その変動可能性を考慮して複数のシナリオ(ベースケース、アップサイドケース、リスクケース)で予測を行います。
外部環境の変化規制の変更、技術革新、市場の成長性、競合他社の動向、代替品の出現、人材不足などがキャッシュフローに与える影響を構造的に捉え、予測に反映させます。

運転資本増減がキャッシュフローに与える影響

運転資本の増減は、特に営業キャッシュフローに直接的な影響を与えます。

観点具体例
売上債権の増加売掛金や受取手形が増加すると、売上が計上されても現金が回収されていない状態となり、営業CFを減少させます。逆に減少すれば営業CFは増加します。
棚卸資産の増加在庫が増加すると、仕入や製造のための現金が流出し、営業CFを減少させます。不良在庫の増加は、将来の評価損発生リスクも伴います。
仕入債務の増加買掛金や支払手形が増加すると、現金の支払いが遅れるため、営業CFを増加させます。ただし、過度な仕入債務の増加は、譲渡企業と取引先とのパワーバランスや資金繰りの悪化を示す可能性もあります。

これらの運転資本の増減は、過去のPLやBSの推移を見ながら特徴を掴むことが重要です。特に労働集約型事業の場合の人件費の上昇分が顧客へ転嫁できるか、あるいは多額の在庫を抱えるリスクを適切に管理できているか、といった点も財務面から特徴を掴むことができます。

キャッシュフロー分析を通じた企業価値評価

キャッシュフロー分析は、譲受対象企業の財務的な健全性だけでなく、事業の本質的な強みや課題、将来性を評価するための重要なツールです。この分析を通じて得られた情報は、譲受の意思決定、譲受価格の算定、そして譲受後の経営戦略に多大な影響を与えます。

資金創出力と債務返済能力の評価

キャッシュフロー分析の根幹は、譲受対象企業がどれだけの現金を創出できるか、そしてその現金をどのように利用しているかを評価することにあります。

資金創出力

営業キャッシュフローの継続的なプラスと安定性は、事業が自律的に現金を稼ぐ能力があることを示します。これにより、譲受企業は将来の成長投資や借入金返済を、外部からの追加資金調達に頼ることなく行えるかを判断できます。

債務返済能力

財務キャッシュフローの状況から、借入金の返済が滞りなく行われているか、そして将来にわたってその能力が維持できるかを評価します。特に、フリーキャッシュフローが借入金返済額を十分に上回っているかを確認することは、譲受対象企業の財務的な安定性を示す重要な指標となります。

潜在リスクと機会の特定

キャッシュフロー分析は、譲受対象企業が抱える潜在的なリスクや将来の成長機会を特定する上でも有効です。

リスクの特定

観点具体例
運転資本の悪化売上債権や棚卸資産の過剰な増加は、資金の滞留や不良債権化、陳腐化のリスクを示唆します
過度な投資投資CFが継続的に多額のマイナスであるにもかかわらず、その投資が将来の収益に結びついていない場合、資金効率の悪化や過剰投資のリスクがあります。
借入への依存営業CFが不足し、財務CFでの借入に頼って資金を賄っている場合、金利上昇や金融機関からの信用低下により、資金繰りが困難になるリスクがあります。

機会の特定

観点具体例
効率的な運転資本管理売上債権の回収期間短縮や棚卸資産の圧縮により、営業CFを改善し、より多くの現金を事業に再投資できる可能性があります。
遊休資産の売却不要な有形固定資産や投資有価証券を売却することで、投資CFを改善し、得られた現金を成長投資や債務返済に充てることができます。
健全な財務体質安定した営業CFと適切な投資、そして借入依存度が低い財務体質は、将来の成長投資やM&Aを円滑に進めるための大きな強みとなります。

このように、キャッシュフロー分析は、譲受手続において譲受対象企業の過去・現在・将来の「お金の動き」を深く理解し、譲受後の成功へと導くための意思決定に不可欠な手続です。譲受企業のM&A担当者様や中小企業のオーナー経営者様は、この分析を適切に活用し、譲受対象企業の潜在的な価値を最大限に引き出すことが求められます。

キャッシュフロー計算書の構成と分析ポイント

キャッシュフロー計算書は、企業の現金の流れを営業活動、投資活動、財務活動の3つの区分に分けて表示します。それぞれの活動における現金の増減を見ることで、企業がどのように現金を獲得し、利用しているかを詳細に分析することができます。これらの各区分の分析を通じて、譲受対象企業の「資金創出力」や「債務返済能力」を総合的に評価することが可能となります。

営業キャッシュフロー(営業CF)の分析

営業キャッシュフローは、企業が本業の営業活動からどれだけの現金を稼ぎ出しているかを示す指標です。売上高から売上原価や販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益に、減価償却費などの非現金費用を加算し、運転資本の増減などを調整して算出されます。営業CFは企業の収益性と資金創出力の中核をなし、その質と安定性は譲受手続において最も重視されるポイントの一つです。営業CFが継続的にプラスであることは、企業が安定した収益を生み出している証拠であり、自己資金で事業を運営できる能力があることを示唆しています。

営業CFの重要性

営業CFの分析の重要性は、以下の点にあります。

観点具体例
本業による資金創出力の評価企業が継続的に現金を生み出しているかを確認することで、事業の持続可能性を判断します。安定した営業CFは、企業の健全な運営を示す重要な指標です。
利益の質損益計算書の利益は、売掛金や在庫の増加などにより、現金の流入を伴わない場合があります。営業CFは、利益が実際に現金として裏付けられているかを示し、利益の信頼性を評価するのに役立ちます。

質の評価と乖離要因分析

営業CFの質を評価するには、利益との乖離要因の分析が重要です。損益計算書で高い利益が出ていても、営業CFが低い場合、「利益はあるが現金がない」状態に陥る可能性があります。主な乖離要因は以下の通りです。

観点具体例
運転資本の増加売掛金や在庫の増加、買掛金の減少により、現金が社外に流出している可能性があります。特に急激な売掛金や在庫の増加は、売上の水増しや不良在庫の兆候かもしれません
減価償却費の比率減価償却費は非現金費用であり、利益が高くても営業CFが低くなることがあります。これは、過去の設備投資が多いアセットヘビーな事業に見られる傾向です。
一時的な収益・費用不動産売却益などの一時的な収益があると、本業の収益性が過大に見え、営業CFとの乖離が生じます。逆に、一時的な費用による現金流出も影響します。

これらの要因を丁寧に分析することで、企業の本質的な資金創出力と健全性をより深く理解できます。

投資キャッシュフロー(投資CF)の分析

投資キャッシュフローは、企業が将来の成長のためにどのような投資活動を行っているか、あるいは資産を売却して現金を獲得しているかを示す指標です。

投資CFは、設備投資による現金の支出、子会社や有価証券の取得・譲渡による現金の増減、貸付金の貸付・回収による現金の増減などが含まれます。

投資CFの分析の重要性は、以下の点にあります。

観点具体例
成長戦略の把握企業がどのような分野に投資を行い、将来の事業拡大や技術革新を目指しているかを把握できます。例えば、積極的な設備投資は事業拡大意欲の表れと言えます。
資産効率の評価投資CFの状況から、企業が資産を効率的に活用し、不要な資産を売却して現金を捻出しているかどうかも評価できます。
資金の使途の健全性多額の投資CFのマイナスは、現金の流出を意味しますが、それが将来の収益に繋がる健全な投資であるかを見極めることが重要です。

設備投資の影響

M&Aにおいて、譲受対象企業の設備投資計画は特に重要です。設備投資は多額の現金支出を伴うため、投資CFに大きな影響を与えます。

設備投資の分析ポイントは以下の通りです。

観点具体例
投資の目的投資が新規事業の立ち上げ、既存事業の効率化、老朽設備の更新など、どのような目的で行われているかを確認します。
投資規模と計画過去の設備投資の規模とその効果、そして将来の投資計画が現実的であるか、そのための資金調達は可能かなどを評価します。過剰な設備投資は、将来のキャッシュフローを圧迫するリスクとなります。
投資の回収期間投資した資金がどの程度の期間で回収できる見込みか、投資に対するリターンが期待できるかを見極めることも重要です。

財務キャッシュフロー(財務CF)の分析

財務キャッシュフローは、企業が資金をどのように調達し、返済しているかを示す指標です。これは企業の資金繰りの状況と、株主や債権者に対する姿勢を反映します。

定義と重要性

財務CFは、借入金による現金の受入れ・返済、株式の発行による現金の受入れ、配当金の支払いなど、主に外部からの資金調達と返済に関する現金の増減が含まれます。

財務CFの分析の重要性は、以下の点にあります。

観点具体例
資金調達の状況企業が健全な方法で資金を調達できているか、あるいは多額の借入に依存していないかを確認します。
債務返済能力の評価借入金の返済状況を見ることで、企業が将来にわたって債務を履行できる「債務返済能力」があるかを判断します。財務CFが恒常的にマイナスで、かつ営業CFがそれを補えない場合、資金繰りに問題が生じる可能性があります。
株主還元政策配当金の支払い状況から、企業が株主に対してどの程度還元を行っているか、その政策が継続可能かなどを評価できます。

借入金返済の影響

譲受対象企業の借入金返済能力は、譲受価格や条件を決定する上で極めて重要な要素です。財務CFの分析では、特に借入金の返済状況に注目します。

観点具体例
返済計画の妥当性譲受対象企業の借入金の返済計画が、将来の営業CFやフリーキャッシュフロー(FCF)に見合っているかを確認します。過度な借入金返済負担は、将来の成長投資や資金繰りを圧迫する可能性があります。
新規借入の必要性営業CFやFCFが不足する場合、企業は新たな借入に頼る必要が生じます。その場合、追加の利息負担や財務リスクが増大する可能性があるため、注意が必要です。
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よくある質問|財務デューデリジェンスとキャッシュフロー分析(FAQ)

M&Aにおける財務デューデリジェンスのキャッシュフロー分析について、譲受企業のM&A担当者様や中小企業のオーナー経営者様からよくいただくご質問とその回答をご紹介します。

Q:会社はちゃんとお金を生み出せている?

貴社が譲受を検討されている譲受対象企業が本業でちゃんとお金を生み出せているかを確認するためには、キャッシュフロー計算書の「営業キャッシュフロー(営業CF)」の項目を分析することが重要です。

営業CFは、売上を上げて費用を支払うという、企業の本業の活動でどれくらいの現金が増減したかを示します。この営業CFが継続的にプラスであるならば、その企業は本業で安定して現金を稼ぐ力、すなわち資金創出力があると言えます。M&Aにおいては、この営業CFの健全性が譲受後の事業継続性や成長性を見極める上で最も基本的な指標となります。

Q:儲かっているのに現金がないのはなぜ?

損益計算書(PL)で利益が出ていても、手元に現金がない「黒字倒産」という状況は起こり得ます。この主な原因は、利益とキャッシュフローの間に発生する「乖離」です。

例えば、売掛金(まだ回収していない売上代金)や棚卸資産(在庫)が増加すると、会計上は利益が出ていても、実際には現金が流出しているか、滞留している状態になります。また、減価償却費のように現金の支出を伴わない費用が計上されることで、利益が良く見えても、実際の現金が伴わないこともあります。これらの要因をキャッシュフロー計算書の「営業キャッシュフロー」の分析を通じて深掘りし、実態を把握することが重要です。

Q:借金を返す力はあるの?

企業が借入金を返す力、すなわち「債務返済能力」があるかどうかは、営業キャッシュフローとフリーキャッシュフロー(FCF)を見ることで判断できます。営業CFが本業で稼ぐ現金を示すのに対し、FCFは本業で稼いだ現金から、事業の維持や成長に必要な投資(設備投資など)を行った後に残る自由に使える現金を指します。

このFCFが安定してプラスであり、かつ借入金の返済額を十分に上回っている場合、その企業は健全な債務返済能力があると言えます。特に、財務キャッシュフローの項目で借入金の返済が円滑に行われているかを確認し、将来の返済計画とFCFを比較分析することが重要です。

Q:フリーキャッシュフローって何?どう見るの?

フリーキャッシュフロー(FCF)は、企業が事業活動で生み出した現金の総額から、事業の維持・拡大に必要な投資(設備投資、運転資本の増加など)に充てた現金を差し引いた残りの現金のことを指します。

このFCFは、企業が借入金の返済、配当金の支払い、あるいは新たな投資などに自由に使える資金の量を示すため、企業の真の資金創出力や企業価値を測る上で非常に重要な指標です。FCFを評価する際は、その安定性、成長性、そして使途に注目します。継続してプラスのFCFを生み出している企業は、財務的な健全性が高く、株主価値の向上に貢献できる可能性が高いと判断されます。

財務デューデリジェンス キャッシュフロー分析のまとめ

財務デューデリジェンスにおけるキャッシュフロー分析は、譲受対象企業の本質的な「お金の流れ」を理解し、その資金創出力と債務返済能力を評価する上で不可欠な手続です。キャッシュフロー計算書の各区分を詳細に分析することで、利益と現金の乖離要因を特定し、フリーキャッシュフローを通じて企業価値を適切に評価することが可能となります。過去のトレンド分析に基づいた将来予測は、譲受手続の意思決定を強化し、譲受後の成功へと導くための重要な基盤を築きます。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A専門会社として15年以上の業歴があり、中小企業の財務デューデリジェンスに特化した経験実績が豊富な公認会計士・税理士が在籍しています。みつき税理士法人と連携することにより、税務DDを含めた財務調査をワンストップで対応可能ですので、財務DDをご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

著者

綿引 征典
綿引 征典
国内大手証券会社にて顧客のお金や人生に関わる財産運用を助言。相続・事業承継専門の会計事務所を経て、当社では法人顧客の税務対策・申告、M&Aに係る財務・税務のアドバイザリーに従事。税理士

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