事業承継対策で不動産を利用?4つの活用方法、3つの注意点を解説

事業承継における不動産活用の概要

事業承継は、会社の株式を取得し経営権を掌握することが一番重要となりますが、引き継ぐ会社にはノウハウや設備・事業用の不動産など様々な資産があり、これらの資産も一緒に引き継ぐことになります。資産の状況によっては相続税や贈与税の負担が大きくなる可能性がありますが、不動産はこれらの税負担を軽減する事業承継対策アイテムの一つです。具体的な例で言うと不動産の購入により所有不動産の評価減や各種税制優遇措置の適用などが挙げられ税負担軽減に有効であると言えます。

ただし、不動産を活用した事業承継対策には、不動産価格の変動や税制優遇措置適用のための要件をクリアしなければならないなど、いくつか注意すべき点があることや選択した事業承継対策を行うタイミングも、併せて重要な検討事項となります。この記事では具体的な対策例に沿って解説します。事業承継対策を検討中の経営者の方は参考にしてください。

不動産を活用した事業承継対策 4つの活用方法

本来、事業承継は対象会社の株式を取得することで完了します。株の取得方法は、売買や相続、贈与など様々ですが、対象会社の状況次第では多額の株式取得資金が必要となったり、相続税や贈与税の負担が大きくなったりすることがあります。これらの準備資金の減額や税負担の軽減のため、不動産を活用した事業承継対策が、いくつかあります。この記事では代表的な4つの対策について解説しますので、参考にしてください。

不動産の購入

事業承継を実行する前に不動産を購入しておくと、所有不動産の評価額や自社株評価額の引き下げに有効なケースがあります。不動産購入で事業承継対策ができる理由としては、主に不動産の評価方法にあります。不動産の評価をする際「時価」を基準として評価されることが一般的ですが、相続税や贈与税などの税務上の評価では、時価よりも低い価格で評価される場合があります。税務上の評価では、国税庁が発表する「路線価」や市区町村が決定する「固定資産税評価額」を活用します。これらの評価額は時価の7〜8割程度の価格で設定されているため、所有不動産評価額や自社株評価額を下げる効果があります。

例えば、時価1億円の不動産(土地)を購入した場合、路線価での土地の評価は7,000〜8,000万円程度となります。現金で1億円を保有するよりも評価額が低くなるため、所有不動産や自社株評価額が低くなる可能性があります。

不動産評価の見直し

通常、会社が不動産を購入した場合、購入した金額が不動産の評価額として貸借対照表に記載されます。この不動産の評価額の見直しを行うことで所有不動産や自社株の評価額が下がるケースがあります。

例えば、バブルの一番高い相場の際に不動産を購入しており、現在の相場と大きく乖離がある場合や土地の状況が荒廃していたり、土壌汚染が確認されたりした場合には、不動産の評価額が下がるためです。事業承継前に不動産の評価額の見直しをしておくことは、事業承継対策として有効と言えます。

生前贈与の活用

事業承継の税負担対策として、相続人への生前贈与という方法があります。生前贈与は、法定相続人以外の人物を相続人とすることも可能で希望通りの相手に確実に不動産を引き継ぐことが可能です。また、生前贈与には基礎控除があり年間110万円までは贈与税がかかりませんので、計画的に生前贈与を活用することで税負担を軽減できる可能性があります。また、生前贈与の活用で相続対象資産をそもそも減らすことができるため、相続時の税負担を軽減する効果が期待できます。

特定事業用の小規模宅地等の特例の活用

特定事業用の小規模宅地等の特例とは、事業用の土地を相続し事業を継続する場合、一定の㎡数以下であれば土地の評価額を80%減することができます。よって相続時には20%部分しか相続の対象とならないため、事業承継対策の一つとして有効と言えます。相続時であれば、相続人が相続税の確定申告まで土地を所有し事業を継続していれば問題ありませんが、生前に事業を承継した場合は一定の要件を満たす必要がありますので注意が必要です。また、生前に事業承継した際、不動産の使用状況によっては、別の小規模宅地等の特例が適用され、特定事業用の小規模宅地等の特例よりも低い評価減率しか適用されない可能性がありますので、注意が必要です。

不動産を活用した事業承継対策 3つの注意点

事業承継対策として不動産を活用する場合にもいくつか注意点があります。この記事では主要な3つの注意点につき解説しますので、参考にしてください。

不動産価格の下落

事業承継対策としてのみ不動産を購入し、事業承継後に不動産の売却を前提としている場合、購入した不動産価額が下落するリスクに注意する必要があります。購入した不動産の価格が下落すると、事業承継対策として得られるメリットよりも、不動産を売却した損失のほうが上回る可能性があります。売却を前提とした不動産購入を活用する際は、価額が下落しにくい優良な不動産を選ぶことが重要と言えます。他方、このようなリスクを回避するためにも、新しい拠点や倉庫など事業に関連する不動産を購入することで、事業拡大や業務の効率化を図りつつ事業承継対策も講じることも選択肢の一つと言えます。

不動産価格の上昇

購入した不動産価格の下落のみならず急激な上昇にも注意が必要です。購入した後3年以内の不動産の評価は、評価時における通常の「取引価額相当額」にて評価されるため、購入した不動産価格が急激に上昇した場合、事業承継で不動産を承継する際に税務上の不利益となる場合があります。仮に事業承継対策として不動産を購入した後に急激に価格が上昇すると、土地の評価額が上昇し事業承継時評価額も上昇することになります。事業承継時の評価額が上昇した分、事業承継時の準備資金や税負担が増加することから、事業承継対策として不動産購入をしたとしても、本来の目的を達成することができません。そのため、事業承継対策として不動産を購入する場合、購入後の急激な上昇が見込まれる要因がないか慎重に見極める必要があります。

債務も承継される

不動産の購入資金を金融機関等からの借入を利用することで節税効果が得られる場合がありますが、この借入金はそのまま後継者に引き継がれるため、後継候補者に敬遠される可能性もあります。実際、後継者が事業承継を断る理由として「借入金や個人保証の引き継ぎ」が理由となるケースが多く見られます。後継者候補がいても、後継者に事業承継を断られる要因があってはなかなか事業承継が進みません。事業承継対策として不動産の購入を検討する際は、借入を行ってまでやるべき対策なのか後継者の方と十分に議論することが必要と言えます。

まとめ

不動産を活用した事業承継対策は、後継者にとっても非常に有効な対策の一つであり、対策をせず事業承継した場合と準備資金や税負担が大きく異なります。これらの対策は会社の評価や税金に係ることが多く専門的な知識が必要となるため、税理士や会計士など専門家に相談しながら事業承継対策を進めることをお勧めします。

弊社みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。 みつき税理士法人と連携することにより、事業承継対策のご相談はもちろんのこと税務面や法務面のサポートもワンストップで対応可能です。M&Aをご検討の際は、多くのM&A仲介実績のある、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。 

著者

潟野和徳
潟野和徳名古屋法人部長
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。
監修:みつき税理士法人

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