デューデリジェンスとは、譲受企業が対象企業のM&Aにおけるリスクを詳細に調査するプロセスです。この記事では、デューデリジェンス(DD)を進める上で避けるべき代表的な注意点と、譲受企業と売主の双方がスムーズにM&Aを進めるための実践的なポイントを解説します。DDを成功させるためのポイントや失敗を回避するための具体的なアドバイスも提供しますので、ぜひご一読ください。
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デューデリジェンスの概要
デューデリジェンス(DD)は、M&Aや事業承継、提携などの取引において、譲受企業が対象企業の事業、財務、法務、税務、労務などの状況を詳細に調査・分析する重要な手続です。この調査は、譲受企業が対象企業の実態を正確に把握し、M&A後の問題を未然に防ぎ、適切な譲渡価格や条件を決定するために不可欠とされています。
M&Aのプロセスにおいて、デューデリジェンスは通常、基本合意締結後に実施され、最終契約締結前に完了することが一般的です。専門的な知識と経験が求められるため、M&Aアドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士などの専門家への依頼が推奨されます。
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7つの注意点|DDでのチェックポイント
デューデリジェンスは、M&Aの成否を左右する重要な手続であるため、その実施には様々な注意点が存在します。ここでは、特に陥りがちな代表的な注意点と、それらに対する具体的な対策を詳説します。

これらのチェックポイントを押さえることで、ディールブレイクや買収後のトラブル予防に役立てることができます。
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1 情報管理の徹底と秘密保持の不備
デューデリジェンスでは、対象企業の機密情報や経営情報を取り扱うため、情報漏洩のリスクが常に存在します。このリスク管理を怠ると、対象企業への損害だけでなく、M&A自体の破談や法的問題に発展する可能性があります。
情報管理の不備は、DDの リスクの中でも特に重要な項目の一つです。特に中小企業のM&Aでは、情報の取り扱いに対する意識が不足しがちであるため、細心の注意が必要です。
具体的な対策としては、秘密保持契約(NDA)の締結を徹底することが最も重要です。また、情報へのアクセス権限を厳格に管理し、閲覧の必要がある人員だけが情報にアクセスできるような体制を構築すべきです。物理的な資料だけでなく、データルームなどの電子情報も厳重に管理することが求められます。
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2 調査範囲の不適切な設定とリスクの見落とし
デューデリジェンスの調査範囲は、M&Aの規模や対象企業の事業内容、譲受の目的に合わせて適切に設定する必要があります。調査範囲が広すぎると、不必要なコストや時間がかかり、DDの効率が低下します。逆に、調査範囲が狭すぎると、M&Aにおいて重要なリスクや問題点を見落とす可能性があり、譲受後のトラブルに直結する恐れがあります。
例えば、財務DDにおいては、実態純資産価額の算定や将来キャッシュフロー予測に影響を与える項目を特定し、その範囲内で重点的に調査することが求められます。特に、簿外債務や偶発債務、オフバランス取引など、表面化していない潜在的な負債や義務の発見は、M&A トラブル予防の観点から非常に重要です。
適切な調査範囲を設定するためには、譲受企業はM&Aの目的を明確にし、その目的を達成するために必要な情報が何かを事前に特定するべきです。専門家と密に連携し、どの領域を深掘りすべきかを決定することが失敗回避に繋がります。
▷関連:DDのスコープ設定|M&Aの目的と予算に応じた調査範囲を解説
3 専門家選定の失敗と不十分な連携
デューデリジェンスは、財務、法務、税務、労務など多岐にわたる専門知識と経験を要する手続です。そのため、M&Aアドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士といった各分野の専門家に依頼することが強く推奨されています。専門家選定の失敗は、DDの リスクを増大させます。
例えば、経験不足の専門家を選定したり、特定の分野に偏った専門家のみに依頼したりすると、重要なリスクを見逃す可能性があります。また、専門家間の連携が不十分な場合、情報共有の不足や分析の重複が生じ、DDの品質が低下することも考えられます。
対策として、M&A経験が豊富で実績のある専門家を選定すること、そしてDDチーム内で円滑なコミュニケーションを確立することが重要です。専門家同士が情報を密に連携し、それぞれの知見を統合することで、DDの総合的な品質を確保し、リスクを最小限に抑えることができます。
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4 開示情報の真偽と網羅性の確認不足
売主から開示される情報(財務諸表、契約書、事業計画など)は、デューデリジェンスの根幹となる要素です。しかし、開示された情報が不正確であったり、意図的に隠蔽された情報があったりすると、譲受企業は誤った判断を下し、譲受後に予期せぬ問題に直面するリスクがあります。これは、DDにおいて最も注意すべきポイントの一つです。
特に、中小企業のM&Aにおいては、財務記録の整備状況が不十分な場合もあり、不正経理の有無を確認することが重要です。例えば、現金及び預金の実在性、売上債権の回収可能性、棚卸資産の評価、有形・無形固定資産の減損、偶発債務など、各勘定科目の詳細なチェックが求められます。
この注意点への対策としては、提供された資料を鵜呑みにせず、必ず裏付けとなる証拠や追加資料の提出を求めることが必要です。また、経営陣や主要担当者へのヒアリングを徹底し、口頭での説明と資料の内容を照合することで、情報の真実性と網羅性を確認します。
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5 財務実態の正確な把握の欠如
財務デューデリジェンスの最大の目的の一つは、対象企業の実態純資産価額を正確に算定すること、そして将来の収益力やキャッシュフローを適正に評価することです。しかし、この財務実態の把握が不十分であると、譲受企業は適切な価格決定ができず、譲受後に大きな損失を被る可能性があります。これは、DDで気をつけるべき重要な点です。
具体的には、通常の会計処理では表面化しない簿外債務や偶発債務、過年度の会計処理の誤り、資産の過大評価や負債の過小評価など、多くの修正事項が存在する可能性があります。また、非経常的な損益項目や将来発生しない費用を適切に調整し、対象企業の「正常収益力」を把握することも重要です。
対策としては、会計基準に関する深い知識と分析技術を持った専門家による、徹底的な財務DDの実施が不可欠です。特に、対象企業の事業構造やビジネスモデルを理解し、その上で財務諸表の各勘定科目について深く掘り下げた分析を行うことが、トラブルの予防に繋がります。
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6 DD実施のタイミングとディールブレイクのリスク
デューデリジェンスの実施タイミングは、通常、基本合意締結後から最終契約締結前までとされています。しかし、この期間は限られており、時間的な制約の中で広範な調査を行う必要があります。スケジュール管理を誤ると、DDが不完全に終わったり、最終契約締結に間に合わなくなったりするというリスクが生じます。
また、DDの結果次第では、当初の譲渡価格や契約条件が見直されたり、最悪の場合にはディールブレイク(交渉の中止)に至ったりすることもあります。譲受企業は、DDによって明らかになった問題点に対して、冷静かつ戦略的に対応する必要があります。
この注意点への対策としては、DD開始前に詳細なスケジュールを策定し、関係者間で共有することが重要です。また、DD中に予期せぬ問題が発覚した場合に備え、事前に代替案や交渉戦略を検討しておくことが、失敗回避の鍵となります。売主側も、譲受企業側の調査に全面的に協力し、情報提供を迅速に行うことで、円滑なDDを支援すべきです。
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7 売主とのコミュニケーション不足と情報開示の非協力
デューデリジェンスを円滑に進めるためには、売主と譲受企業間のオープンで協力的なコミュニケーションが不可欠です。売主が情報開示に非協力的であったり、重要な情報を隠蔽したりすると、譲受企業は対象企業の実態を正確に把握できず、DDの質が著しく低下します。これは、DDのプロセスの中でも、譲受企業側からコントロールしにくい大きなリスクと言えます。
情報開示の不備は、譲受企業にM&Aに関する誤った判断を促すだけでなく、譲受後のトラブルや法的紛争、さらにはディールブレイクに繋がる可能性もあります。売主側の協力が得られないと、DDのプロセスが遅延し、M&Aの全体スケジュールにも影響を及ぼします。
対策としては、M&Aの初期段階から売主との信頼関係を構築し、情報開示の重要性について十分に理解を促すことが大切です。売主側も、デューデリジェンスは譲受企業が安心して譲受を進めるための重要な手続であることを認識し、可能な限り協力的な姿勢を示すべきです。透明性の高い情報開示は、結果的にM&Aの成功確率を高め、トラブルの予防に貢献します。
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DDの品質確保と失敗回避のための実務アドバイス
デューデリジェンスの品質を確保し、M&Aの失敗を未然に防ぐためには、上記の注意点を踏まえた上で、以下のような実務的なアドバイスを実践することが重要です。DDで陥りがちな失敗パターンを避け、ポイントを押さえることで、譲受企業と売主双方にとって望ましいM&Aの実現を目指します。
DDのプロセス全体を通じて、譲受企業と売主双方が、コミュニケーションを密に取り、信頼関係を構築することが何よりも重要です。これにより、情報の透明性が高まり、予期せぬ問題が発生した場合でも迅速に対応できる基盤ができます。
譲受企業への実務アドバイス
以下の表は、譲受企業がDDを成功させるための実践ポイントをまとめたものです。
| 実践ポイント | 内容・詳細 |
|---|---|
| M&Aの目的と戦略の明確化 | 何のためにM&Aを行うのか、譲受後のビジョンを明確にすることで、DDの調査項目や深掘りすべきポイントが明確になります。 |
| 経験豊富な専門家の活用 | M&Aアドバイザー、弁護士、税理士など、各分野の専門家を早期に選定し、DDチームを組成します。専門家の知見を最大限に活用することで、リスクを低減できます。 |
| DDスコープの綿密な設定 | M&Aの目的と対象企業の特性に合わせて、調査範囲と深度を綿密に設定します。広範すぎず、狭小すぎず、効率的な調査を心がけます。 |
| 質問リストの事前準備と柔軟な対応 | 調査項目に基づいた質問リストを事前に準備し、効率的に情報収集を行います。また、売主からの回答に応じて、追加の質問や深掘りを柔軟に行います。 |
| 対象企業へのヒアリングの徹底 | 経営者や主要担当者へのインタビューを通じて、書類では把握できない事業の実態や潜在的なリスクを把握します。 |
| リスクとリターンのバランス評価 | DDの結果を単なるリスクの洗い出しで終わらせず、それが譲渡価格や契約条件にどのように影響するか、M&A後のシナジー効果とリスクのバランスを総合的に評価します。 |
| PMI(統合プロセス)への視点 | DDの段階から譲受後のPMIを意識し、統合を円滑に進めるための情報(例えば、会計システムやITインフラの統合可能性、人材の状況など)を収集しておくことも有効です。 |
▷関連:M&A後のPMIを成功させるデューデリジェンス|統合リスクの対応
売主への実務アドバイス
譲渡オーナーは、譲受企業側のDDに協力することで、M&Aの円滑な進行とより良い取引条件の獲得に繋げることができます。以下の表は、譲渡オーナーがDDに協力する際のポイントをまとめたものです。
| 項目 | 内容・詳細 |
|---|---|
| 情報開示資料の準備と整備 | 財務諸表、契約書、事業計画など、譲受企業が求める資料を事前に整理し、迅速に開示できる体制を整えます。情報の整理は、DDの手間を減らし、スムーズな進行を促します。 |
| 透明性の高い情報開示 | 隠蔽や虚偽の情報は、後のトラブルやディールブレイクの原因となります。質問に対しては、可能な限り正確かつ誠実に回答し、必要に応じて追加資料を提供します。 |
| 経営陣や関係者の協力体制 | 譲受企業からのヒアリングや現地調査には、経営陣や関連部署の担当者が積極的に協力し、必要な情報提供を行います。 |
| 潜在的な問題の事前把握と対応 | 譲渡オーナー自身も、自社の事業や財務における潜在的な問題点やリスクを事前に把握し、譲受企業に説明できるように準備します。場合によっては、DD前に自社で改善策を講じることも考慮します。 |
| DDチームとの連携 | 譲受企業側のDDチームと密に連携し、質問の意図を理解し、的確な情報を提供することで、DDの効率を高めます。 |
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税理士法人グループによる財務デューデリジェンス
M&Aに潜む財務リスク、見逃していませんか?
よくある質問|デューデリジェンスの注意点(FAQ)
ここでは、デューデリジェンスに関する読者の皆様からよく寄せられる疑問とその回答をご紹介します。DDで気をつけることや失敗回避のヒントとしてご活用ください。
DDを進める上で最も気をつけるべきことは、情報の正確性と網羅性の確認、そして専門家との密な連携です。売主から提供される情報がすべて正しいとは限らず、重要なリスクや負債が隠されている可能性もあるため、鵜呑みにせずに多角的な視点から検証することが重要です。また、財務、法務、税務など専門性の高い分野の調査は、経験豊富な専門家に依頼し、彼らの知見を最大限に活用することが、DD におけるリスクを最小限に抑え、失敗の回避に繋がります。
M&AのDDでよくある失敗は、重要なリスクの見落としと情報開示の不備です。重要なリスクを見落とす原因としては、調査範囲の不適切な設定、専門知識の不足、時間的制約による調査不足などが挙げられます。また、売主が情報開示に非協力的であったり、意図的に情報を隠蔽したりすることも、失敗事例としてよく見られます。これらの失敗は、適切でない譲渡価格や、譲受後の予期せぬトラブル、最悪の場合はディールブレイクに繋がる可能性があります。
重要なリスクを見逃さないためには、デューデリジェンスにおいて多岐にわたるチェックポイントを確認する必要があります。特に、財務面では簿外債務や偶発債務の有無、過去の会計処理の適切性、将来の収益力やキャッシュフローの適正性を詳細に確認することが重要です。法務面では、係争中の訴訟や契約違反の有無、コンプライアンス体制の確認が不可欠です。また、事業面では、主要顧客やサプライヤーとの関係性、競争環境、技術リスクなども、徹底的に調査すべきです。
DDを成功させるための秘訣は、計画性、専門家の活用、そして関係者間の協力的なコミュニケーションです。まず、M&Aの目的を明確にし、それに合わせた適切なDD計画を策定します。次に、財務、法務、税務などの各分野で経験豊富な専門家チームを組成し、彼らの専門知識を最大限に活用します。そして最も重要なのは、譲受企業と売主、そして専門家チームの間で、透明性の高い、オープンなコミュニケーションを維持することです。これにより、情報の質が高まり、予期せぬ問題にも迅速な対応ができます。
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デューデリジェンスでの注意点のまとめ
デューデリジェンスで失敗しないためには、情報管理を徹底し、適切な範囲で調査を行うことが大切です。専門家と協力して財務の実態を正確に把握し、譲渡オーナーとよく話し合うことでリスクを減らせます。基本を守り慎重に進めることが、M&A成功の鍵です。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループとして15年以上の実績を持ち、財務調査に精通した公認会計士が在籍しています。税務を含めた専門的な調査をワンストップで提供します。財務デューデリジェンスをご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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