事業承継アドバイザリーとは|業務内容・資格の種類と依頼先の選び方

後継者が決まらないまま、時間だけが過ぎていく。事業承継アドバイザリーは、そうした会社の承継を計画づくりから株価の把握、税務対策、M&Aの実行まで助言する専門業務です。依頼できる範囲と限界、資格の読み方、契約形態と報酬、後継者が不在なら第三者承継へ進む手順まで、頼む側の目線で整理します。

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事業承継アドバイザリーとは

「そろそろ後継者を決めないと」と思いながら、決算期のたびに先送りしてきた。相談の入り口は、たいていこの一言です。事業承継アドバイザリーとは、承継先の検討から計画づくり、自社株の把握、税務対策、M&Aの実行までを助言する専門業務を指します。まずは事業承継の全体像を押さえてから、どこを外部に任せるかを考えると迷いが減るはずです。

アドバイザーが担う守備範囲

会社の現状を整理し、選べる承継先を並べ、それぞれの税負担と手取りを試算する。ここまでが助言の中心です。実行段階では、後継者教育の設計や譲受企業探しまで踏み込むこともあります。守備範囲は広い一方、事務所ごとの得意分野には偏りがあるもの。

決めるのは経営者、整えるのが専門家

誰に渡すかという最終判断まで代行してくれる存在ではありません。判断材料を揃え、期限を切り、関係者の合意形成を手伝う役回りだと考えてください。この線引きを曖昧にしたまま契約すると、後で「思っていた支援と違う」というすれ違いが起きます。

コンサルティング・M&A仲介との違い

名称が似た支援が並ぶため、違いが分かりにくい領域です。下表では、支援の重心と関わる期間、報酬の決まり方という3つの軸で整理しました。どれが優れているという話ではなく、会社の局面によって使い分けるものと捉えるのが実務的です。

比較項目事業承継アドバイザリー事業承継コンサルティングM&A仲介
支援の重心承継全体の方向づけと助言特定課題の分析と実行支援相手探しと条件のまとめ役
関わる期間数か月〜数年の伴走型課題単位の短期集中型成約までのプロジェクト型
立場経営者側に立つ助言者経営者側に立つ実行支援者譲渡オーナーと譲受企業の間に立つ
主な成果物承継の方針と計画改善策・制度設計基本合意書・最終契約
報酬の形時間・月額・固定が中心プロジェクト単位が中心着手金と成功報酬が中心

課題を絞って深く掘るなら事業承継コンサルティング、相手探しまで進むならM&Aアドバイザリーの役割が近くなります。窓口の種類ごとの向き不向きは、事業承継の相談先の比較が参考になるでしょう。

相談が増えている背景

帝国データバンクの調査によると、2025年の全国の後継者不在率は50.1%。前年から2.0ポイント低下し、7年連続の改善となりました(出典:帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査(2025年))。それでも2社に1社は決まっていない計算で、後継者不足への対応策を外部と組み立てる会社が増えています。

事業承継アドバイザリーの具体的な業務

助言といっても抽象論ではありません。現状把握、計画策定、財産と税金の設計という3つの土台を固めたうえで、承継の実行まで並走するのが標準的な流れです。

事業承継アドバイザリーのサービス内容のフロー図。「現状把握と方向性の策定」「事業承継計画の策定」「財産分配と税金対策」という3つのステップから、アドバイザーによる包括的サポートを経て「円滑な事業承継の実現(M&Aによる第三者承継も含む)」へとつながる流れを説明しています。

現状分析と自社株の評価

決算書と株主名簿、借入の状況、個人保証の有無を洗い出すところから始まります。ここで多いのが、株が親族に少しずつ散っていたという発見。議決権が集まっていない会社は、承継先を選ぶ前に整理が要ります。

相続税評価額とM&A時価は別物

税務上の株価と、譲受企業が払う価格は一致しません。前者は財産評価基本通達に沿った計算、後者は収益力と純資産をもとにした交渉の産物。この二重性を理解しないまま「うちの株は◯円」と思い込むと、判断を誤ります。算定の考え方は企業価値評価の方法で整理できます。

承継計画の策定

いつ、誰に、何を、どの順番で渡すか。これを時間軸に落とし込む作業です。10年先まで細かく描く必要はなく、直近3年の打ち手が具体的であれば十分に機能します。書き方の型は事業承継計画の作り方が参考になります。

後継者の選定と育成

候補者がいる会社では、経営会議への同席や取引先への同行など、権限を少しずつ移す設計を組みます。育成の期間は5年前後を見込むケースが多いものの、業種と本人の経験値で大きく変わります。

候補者が辞退したときの備え

子が継ぐ前提で進めていたのに、本人から断られた。珍しい話ではありません。育成と並行して第三者承継の可能性も残しておくと、振り出しに戻らずに済みます。

税務・法務のリスク整理

贈与税・相続税の負担、遺留分への配慮、名義株の解消。放置すると承継そのものが止まる論点を、期限とセットで潰していきます。

事業承継税制を使うなら期限に注意

法人版事業承継税制の特例措置を使うには、都道府県への特例承継計画の提出が要ります。提出期限は2027年9月30日まで延長された一方、株式の贈与・相続そのものは2027年12月31日までに実行する必要があります(出典:中小企業庁 法人版事業承継税制(特例措置)の申請手続関係書類)。制度の前提となる認定は経営承継円滑化法の認定に沿って進みます。

税制を使うか、売却するかの比較

納税猶予は魅力的に見えますが、猶予が続く限り要件を守り続ける負担も残ります。手取りと自由度で比べたい場合は、事業承継税制とM&Aの比較が判断材料になります。

第三者承継(M&A)の実行支援

親族にも社内にも候補がいない場合、社外への承継が現実的な出口になります。ノンネームシートの作成、譲受企業の選定、デューデリジェンス対応、クロージングまで、局面ごとに必要な準備が変わるため、事業承継とM&Aの違いを先に押さえておくと話が早く進みます。

承継先ごとに変わるアドバイザリーの関わり方

同じ助言業務でも、渡す相手が変われば論点は入れ替わります。下表は、承継先ごとにアドバイザーが担う中心的な役割と、現場でつまずきやすい点をまとめたものです。

承継先アドバイザーの主な役割つまずきやすい点
親族内承継株式の移転設計、相続税・贈与税の試算、遺留分への配慮相続人が複数いると財産配分でもめる
従業員承継買取資金の調達支援、MBO・EBOの設計、個人保証の切替交渉後継者に株式の買取資金が足りない
第三者承継企業価値の試算、譲受企業の選定、条件交渉と契約実務従業員・取引先への開示の順序を誤る

親族に渡す前提なら親族内承継の進め方、役員や社員に託すなら従業員承継の資金対策が出発点になります。どちらも難しいと分かった時点で、第三者承継の検討に切り替える会社が多い印象です。

依頼するメリットと、任せきりにできない部分

外部を入れる価値は、知識そのものよりも「進む速さ」に表れます。反面、外注できない領域もはっきりしています。

第三者が入ることで得られるもの

社内では言いにくい話を、外部が代わりに言語化できる。これが最大の効用です。

感情から距離を置いた判断

創業家の思い入れや兄弟間の力関係は、当事者だけでは整理しきれません。第三者が数字と選択肢を並べることで、議論が事実ベースに戻ります。

候補先と専門家のネットワーク

譲受企業の候補、資金を出す金融機関、登記や契約を担う士業。必要な相手を必要な順番で紹介できるかどうかで、承継の所要期間は半年単位で変わります。

アドバイザーに任せきりにできない部分

従業員への説明、家族との合意、取引先への挨拶。この3つは経営者本人が動かないと収まりません。支援現場で最も多い失敗は、開示のタイミングを専門家任せにして社内に噂が先回りしてしまうケースです。

事業承継アドバイザーの資格の種類

事業承継に国家資格はなく、実務で名乗られているのは民間資格です。認定団体も想定受験者も異なるため、下表で違いを俯瞰しておきましょう。依頼する側にとっては、資格そのものより「何を学んだ人か」を知る手がかりになります。

資格の名称認定団体主な受験層依頼者から見た読み方
事業承継アドバイザー(BSA)一般社団法人金融検定協会金融機関の職員・幹部承継全般の基礎を体系的に学んでいる
事業承継アドバイザー3級株式会社経済法令研究会銀行の渉外・窓口担当初期相談の受け皿としての知識
金融業務2級 事業承継・M&Aコース一般社団法人金融財政事情研究会金融機関の職員M&Aの手順や関連法規まで押さえている
事業承継士一般社団法人事業承継協会税理士・公認会計士・弁護士など国家資格が前提で専門性が高い
事業承継プランナー一般社団法人事業承継協会支援機関の初期対応担当入り口の整理役に向く

事業承継アドバイザー認定試験(BSA)

単に事業承継アドバイザーといえば、このBSAを指すことがほとんどです。金融機関の職員が経営者の相談に応じられるよう設計された試験で、5択50問、合格基準はおおむね60点以上。合格率は50%前後で推移しています。

事業承継アドバイザー3級

銀行業務検定の一つとして2016年に始まった資格です。4択マークシート中心で試験時間は120分。難易度は年度によって振れ幅があり、記述式が加わった年は合格率が下がりました。

金融業務2級 事業承継・M&Aコース

CBT方式で通年受験でき、合格基準が100点中70点以上と明示されている点が特徴です。M&Aの流れや関連法規の出題比重が高く、合格率はおおむね5割から7割。受験料はいずれの試験も1万円未満に収まります。

事業承継士・事業承継プランナーとの違い

事業承継士は、税理士や公認会計士などの国家資格保有を受講条件とし、講座修了と試験合格を経て認定される仕組みです。プランナーは初期対応を担う人材の育成が目的。学びの深さと役割の位置づけが異なります。

依頼する側が資格をどう読むか

正直なところ、資格の有無だけで実務力は測れません。中小企業庁は中小M&Aガイドラインを策定し、これを遵守宣言した支援機関を登録するM&A支援機関登録制度を設けています。登録は約3,000件に達しており、ガイドラインは2024年8月に第3版へ改訂されました(出典:中小企業庁 中小M&Aガイドライン)。

資格より優先して確認したい3点

手数料の説明が書面で行われるか、自社と同じ規模・業種の支援経験があるか、担当者が成約まで替わらないか。この3点を聞けば、実務の厚みはおおむね見えてきます。

契約形態と報酬費用の見方

費用の話を後回しにすると、途中で止まります。契約の型を先に理解しておけば、見積書の読み方も変わるはずです。

主な契約形態

下表は、実務で使われる5つの契約形態を、費用の決まり方と向いている場面で整理したものです。

契約形態費用の決まり方向いている場面
時間契約1時間・半日・1日単位の単価単発の相談やセカンドオピニオン
プロジェクト制期間と成果物を定めて一括承継計画の策定など範囲が明確な依頼
顧問契約月額固定数年かけて伴走してもらいたい場合
成功報酬型成約や譲渡価額に連動M&Aなど成果を測りやすい局面
固定報酬型業務内容と期間で定額予算の見通しを優先したい場合

報酬の内訳と確認したい点

相談料、着手金、月額報酬、成功報酬。名称が同じでも中身は事務所ごとに違います。着手金が返還されない条件、成功報酬の算定基礎、譲受企業側からも報酬を受け取るのかどうか。この3点は契約前に確認したいところ。承継先ごとの総額感は事業承継の費用の内訳で比較できます。

依頼前のチェックリスト

初回面談で使える確認項目を、支援現場でよく効いた順に並べました。

  • 自社と同規模・同業種の支援実績を、具体的に説明できるか
  • 手数料の総額と算定根拠が、書面で示されるか
  • 親族内・従業員・第三者の3案を並べて比較してくれるか
  • 個人保証と借入の扱いについて、金融機関との調整方針があるか
  • 初回の提案でM&Aだけに誘導していないか
  • 担当者が成約まで一貫して関与する体制か

後継者が不在なら第三者承継という出口

候補者が見つからないまま数年が過ぎると、会社の価値は静かに目減りします。設備は古び、主要取引先の担当者も代替わりする。動くなら早いほうが有利、というのは実感として確かです。

相談から成約までの時間軸

企業価値の試算に1か月、候補先の打診と面談に3〜6か月、デューデリジェンスとクロージングに2〜3か月。順調でも半年から1年は見ておく必要があります。決算期をまたぐと資料の作り直しが生じる点にも注意。

ある金属加工会社の事例

関東の金属加工業、年商8億円、従業員35名。長男が別業界で管理職に就いており、承継を打診したものの辞退されたケースです。株価算定の結果、相続税評価額よりM&Aでの譲渡価額が上回ることが分かり、方針を第三者承継へ切り替えました。個人保証は成約時に解除され、社長は顧問として2年間残る条件。実際の成約事例でも、同じ経緯をたどった会社は少なくありません。

公的窓口と民間の使い分け

各都道府県には事業承継・引継ぎ支援センターが置かれ、2024年度の第三者承継の成約件数は2,132件と過去最高を更新しました(出典:中小企業基盤整備機構 事業承継・引継ぎ支援センターの実績)。無料で相談できる一方、候補先の幅や交渉の伴走までを求めるなら民間の支援と併用する形が現実的です。後継者がいない会社の選択肢を、まず並べてみることをおすすめします。

事業承継アドバイザリーに関するFAQ

初回の面談でよく出る質問を、実務での答え方でまとめました。

Q:資格を持たないアドバイザーに頼んでも問題ありませんか

問題ないケースがほとんどです。事業承継に国家資格はなく、実務経験と体制のほうが結果を左右します。現場ではまず、同業種・同規模の支援実績と、担当者が成約まで替わらないかを確認します。

Q:顧問税理士に相談するのと、どちらが先ですか

自社株の評価や相続税の試算が論点なら顧問税理士が先です。承継先そのものが決まっていない段階なら、選択肢を横並びで比べられる相手に相談したほうが早いでしょう。両方に同時に話を通す会社も珍しくありません。

Q:売り手が費用を払うタイミングはいつですか

契約形態次第です。着手金があるなら契約時、月額報酬なら毎月、成功報酬は成約時が一般的。着手金の返還条件と成功報酬の算定基礎は、契約書の文言を必ず読み合わせてください。

Q:途中で親族内承継から買収に切り替えられますか

切り替えは可能です。ただし、株式をすでに贈与している場合は買い戻しや納税猶予の扱いが絡むため、税務の再設計が要ります。贈与前であれば、方針転換の負担はほとんどありません。

Q:相談すると必ずM&Aを勧められませんか

そうとは限りません。後継者候補がいる会社には、育成と株式移転の設計を提案するのが筋です。初回の提案で選択肢が一つしか出てこない場合は、判断材料が足りていないと考えたほうが安全でしょう。

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事業承継アドバイザリーのまとめ

事業承継アドバイザリーは、現状分析から計画策定、税務対策、承継の実行までを助言する業務です。資格の有無より、支援実績と手数料の透明性、そして3つの承継先を横並びで比べてくれるかどうかが選定の軸になります。後継者が決まらない不安は、選択肢が並んだ瞬間から輪郭を持ち始めるものです。

当社は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として、中小企業のM&Aに特化した実績経験が豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が在籍しています。承継先の比較から企業価値の試算まで、初期の情報収集の段階からご相談いただけます。事業承継の進め方でお悩みでしたら、みつきコンサルティングにお声がけください。

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著者

潟野 和徳
潟野 和徳名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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